【弁護士が解説】生成AIをビジネスで使う際の法的リスク!
トラブルや炎上を防ぎ、ビジネスに生かす活用方法とは
生成AIの利活用がビジネスの現場で急速に普及する中、企業には法的リスクについての理解が求められています。知的財産権や個人情報保護法、各種業法違反など、具体的なリスクとその対策について、専門家の視点から詳しく解説します。企業が生成AIを安全に活用するためのポイントをまとめました。
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舟橋和宏さん
レイ法律事務所
弁護士
まず著作権侵害に注意、「疑われる」だけで炎上も
——生成AIの利用・活用時の法的リスクは、どのようなものが考えられますか。
使う側の立場で考えると、まずは著作権や特許権をはじめとした知的財産権の侵害です。これにはデザインやロゴマークに関する意匠権や商標権も含まれます。
それから対話型AI「ChatGPT(チャットGPT)」などで文書を作成する際に、社員情報や顧客情報等を入力する場合は、内容等によって個人情報保護法違反や秘密保持義務違反になる可能性も生じるでしょう。
さらに各種業法違反のリスクもあります。ChatGPTでは、利用規約で法律、財政等の専門的アドバイスは専門家のチェックを経なければならない旨が記載されており、例えば、法律問題の助言は資格なく行えず、弁護士法の規制対象です。
これら知的財産権、個人・秘密情報、各種業法の3つに抵触する恐れが、主なリスクといえます。
——中でも最もリスクが高く、注意すべき要素は何でしょうか。
知的財産権の中でも著作権侵害をあげたいと思います。過去には、あるイラストレーターの作品に似たイラストが生成AIを利用して作られたのではないか、イラストレーターの許諾を得ずにソーシャルゲームの広告に使われたのではとトラブルに発展した例があります。
結果的に裁判には至らず収束したようですが、海外ではクリエイティブな著作権をめぐるトラブルが訴訟に発展しているケースも多いです。
——このようなトラブルは、企業活動に対する影響も大きいのではないでしょうか。
そうですね。特に現代社会では「炎上」という形でトラブルが大きくなるのは、既にご存知かと思います。それも、イラストや画像作成に関するトラブルは「炎上しやすい」という特徴があるのです。
もちろん文章の生成にも危険性はあります。有名作家の作品をまるごと生成AIにインプットして、似たような作品を書かせたり、あるいは、作品の世界観を模倣した100年後の世界のような内容を書かせたりして公開してしまうと、これは大きな問題になりえます。
ただ、ビジネスシーンに限って考えると、例えば契約書などは、もともと「決まった定型文」があるような文書ですから、AIに生成させようが、人間がイチから作ろうが、ある程度同じような内容になるはずです。ですから、創作性が認められない場合もあり、著作権等のトラブルになることは比較的少ないと考えられます。
一方、イラストは公開した瞬間に「あの作品と似ているじゃないか」とSNSで一気に炎上するケースが多々あります。明確な根拠があるかないかに関係なく、ぱっと見で「似ている」と感じるだけで、「著作権侵害が起きた!」として広まってしまうんですね。
イラスト以外では音楽も同様で、感覚的に似ているかどうかを判断されることがあります。これらの問題は、著作権を侵害しているのかどうかの法的な解釈とは関係なく、「パクりだ、パクりだ」と大炎上していくわけです。
——あらゆる場面で生成AIが使われるようになったからといって、生成物の利用を気安く考えない方がいいですね。
慎重な判断が求められますが、便利なツールではあるので「使い様」でしょう。実際に、伊藤園の「お~いお茶」が 話題になるような面白い作品を作っているなど(※1)PR活動に上手く使われているケースもあります。
一方で、AIにクリエイティブな部分を任せることに批判的な人々を思わぬ形で刺激してしまうこともあり得ます。
AIに「クリエイティブな作業」を奪われると危機感を抱く人たちがいて、結果、アメリカでは俳優や声優によるストライキが起こりました。AIは便利な道具ですが、火種にもなりやすいのです。
⚫︎具体的な4つの事例における法的リスクをそれぞれ解説
・生成AIによって制作した「イラスト」の利用
・生成AIによって制作した「画像」の利用
・生成AIによってトレースしたイラストの利用
・生成AIによって生成した記事や文章の利用
⚫︎注意したい「NGプロンプト」と生成物の使い方
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