年末調整の扶養控除とは?扶養親族の条件や控除額について簡単に解説
年末調整には所得控除がいくつかあります。その中でも扶養親族がいる場合に適用される扶養控除は、所得税や住民税の算出に用いるため、課税額に影響を与えます。経済的な負担を軽減するためにも、年末調整の扶養控除について理解を深めましょう。
目次
年末調整の扶養控除とは?
年末調整における扶養控除とは、扶養親族がいる納税者が受けられる所得控除です。
一般的に、養わなければならない親族がいる人は、そうでない人よりも経済的負担が大きくなります。扶養控除は、そのような事情を考慮し、所得税や住民税といった経済的負担を軽減するために設けられた制度です。
対象の扶養親族一人につき扶養控除を受けられ、税額は扶養親族の人数に応じて減ります。ただし、所得税と住民税は反映される年度が異なり、所得税はその年の年末調整で反映され、住民税は翌年の課税に影響します。この違いを理解しておくことで、正確な税負担を把握できるでしょう。
なお、扶養控除額は、対象となる親族の年齢や同居の有無などによって異なり、38万円・48万円・58万円・63万円のいずれかです。詳しくは後述します。
配偶者控除との違い
配偶者控除と扶養控除の違いは、まず対象者にあります。扶養控除は扶養親族の人数に応じて適用されますが、配偶者控除は1人の配偶者のみに適用される控除制度です。
また、配偶者控除には納税者や配偶者の所得制限があり、これを超えると控除が受けられなくなります。一方、扶養控除には、扶養親族の所得制限はあるものの、納税者自身の所得に大きな制限はありません。
社会保険における扶養との違い
年末調整での扶養控除と社会保険における扶養には、適用範囲や判断基準に違いがあります。
先述したとおり、年末調整の扶養控除は扶養親族の所得や年齢によって判断されます。一方、社会保険における扶養は健康保険や年金の加入条件に関わり、扶養親族の年収が130万円未満(一定条件で150万円未満)であることが主な基準です。
年末調整の扶養控除を受けるための条件
年末調整で扶養控除を受けるためには、扶養親族の年齢や所得など、いくつかの条件を満たす必要があります。この章では、これらの条件を詳しく解説します。
配偶者以外の親族である
年末調整の扶養控除の対象となるのは、配偶者を除いた親族です。具体的には、6親等内の血族(親や子、兄弟姉妹、祖父母など)や3親等内の姻族(義父母や義兄弟など)が対象です。
扶養ときくと、納税者の配偶者や子どもなど、下の世代を養うイメージがあります。しかし、実際は上の世代も扶養控除の対象に含まれます。
よって、かなり広範囲の親族が対象となりますが、配偶者は別途「配偶者控除」があるため、扶養控除には含まれません。
対象者が16歳以上である
扶養控除の対象となる親族は、控除を受ける年の12月31日時点で16歳以上であることが条件となります。これは、税制上、16歳未満の子どもは扶養控除の対象外とされているためです。
ただし、16歳未満の扶養親族は住民税の非課税制度の判定を行う際に利用されます。年末調整の用紙に、16歳未満の扶養親族を記載する欄が設けられているのはこのためです。扶養親族が16歳未満でも、年末調整の用紙や確定申告書に漏れなく記載しましょう。
対象者と同一生計である
扶養控除の対象者は、必ずしも同居している必要はありませんが、同一生計であることが条件です。
例えば、親と子どもが別々に暮らしていても、親が子どもに生活費を仕送りしている場合、子どもは扶養親族に該当します。一方、同居していても、子どもが別の世帯を持って独立して暮らしている場合、扶養親族にはなりません。
つまり、就労や修学、療養などの都合により別居していても、生活費や学資金、療養費などの送金が行われている場合は「生計を一にする」ものとして取り扱われるのです。
所得金額の合計が48万円以下である
扶養控除の対象者となるためには、その年の合計所得金額が48万円以下でなければなりません。
控除対象となる扶養親族がアルバイトやパートなどの給与所得者であれば、103万円以下であることが条件です。これは、給与収入103万円から、給与所得控除55万円が差し引かれて、合計所得金額が48万円になるためです。
ただし、控除対象に該当する人で、給与所得のほかに事業所得や副業の雑所得などがある場合も、それらの所得の合計が48万円以下でなければなりません。
事業専従者として収入を得ていない
扶養控除を受けるためには、対象者が青色申告者の事業専従者給与を受けていない、もしくは白色申告者の事業専従者でないことが条件です。
例えば、青色申告事業者である父親の事業を子どもが手伝い、青色事業専従者給与を1円でも受け取っている場合、その子どもは控除対象扶養親族にはなりません。扶養控除と青色事業専従者給与、もしくは白色申告の事業専従者控除の二重適用はできないのです。
年末調整における扶養控除の区分と控除額
年末調整で適用される扶養控除には、対象者の年齢や状況に応じた区分があり、それぞれ控除額が異なります。控除対象扶養親族の種類と控除額は以下のとおりです。
- 一般の控除対象扶養親族:16歳以上の親族…控除額38万円
- 特定扶養親族:19歳以上23歳未満の親族…控除額63万円
- 老人扶養親族(同居老親等以外):70歳以上で納税者と別居している親族…控除額48万円
- 老人扶養親族(同居老親等):70歳以上で納税者と同居している親族…控除額58万円
次項でそれぞれ詳しく解説します。
一般の控除対象扶養親族
その年の12月31日時点で16歳以上、かつ年間給与収入が103万円以下の子どもです。これに該当する子どもがいる納税者は、所得から38万円が控除されます。
特定扶養親族
特定扶養親族とは、控除を受ける年の12月31日時点で19歳以上23歳未満の扶養親族を指し、主に大学生などが該当します。特定扶養親族は通常の扶養親族よりも控除額が大きく、63万円が適用されます。その理由は、教育費や生活費が増える年齢層であることが考慮されているためです。
老人扶養親族(同居老親等以外)
老人扶養親族とは、控除を受ける年の12月31日時点で70歳以上の扶養親族を指します。同居していない老人扶養親族の場合、「同居老親等以外」に該当し、控除額は48万円となります。
同居老親等(同居老親等)
同居老親等とは、控除を受ける年の12月31日時点で70歳以上の親や祖父母など、同居している高齢の親族を指します。この区分に該当する場合、控除額は通常の老人扶養親族よりも高く、58万円が適用されます。
年末調整における扶養控除の手続き方法
年末調整で扶養控除を受けるためには、必要な手続きを正確に行うことが重要です。この章では、扶養控除の手続き方法について詳しくご説明します。
扶養控除等(異動)申告書を作成する
年末調整で扶養控除を受けるためには、従業員本人が「扶養控除等(異動)申告書」を正確に作成し、会社に提出する必要があります。
この申告書は、扶養親族の名前や生年月日、所得などの情報を記載する書類です。また、異動があった場合にはその旨も記載が求められます。
会社は扶養控除等(異動)申告書をもとに年末調整を行い、扶養控除を適用します。記載内容に誤りがないよう、十分に確認することが重要です。
年末調整できない場合は確定申告を行う
年末調整で扶養控除を申請できなかった場合や修正が必要な場合は、翌年の確定申告で扶養控除を申請することが可能です。
申告書は税務署やインターネットから入手でき、必要な書類を添付して提出して申請します。確定申告を通じて、控除を受けることで、過剰に支払った税金が還付されるため、忘れずに行いましょう。
なお、確定申告の期間は、原則2月16日から3月15日です。インターネット申請を利用すれば税務署に出向かずとも確定申告ができます。
年末調整の手続きに必要な扶養控除申告書の書き方
年末調整で必要な扶養控除申告書は、正しく記入することが重要です。最後に、扶養控除申告書の具体的な書き方について、順を追って詳しく説明します。
本人の基本情報を記入する
扶養控除申告書の最初の部分には、給与所得者本人の氏名、住所、生年月日、個人番号などを正確に記載します。これらの情報は、年末調整を行う上で非常に重要な項目のため、誤りのないよう丁寧に書きましょう。
また、勤務先や会社名も記入欄があるため、所属する企業の情報も正確に記載してください。
扶養控除等を受ける対象者の情報を記入する
扶養控除申告書には、扶養控除を受ける対象者である配偶者や扶養親族の情報を記入する部分があります。ここには、対象者の氏名、生年月日、続柄、個人番号、年収見込みなどを記載します。
また、特定扶養親族や老人扶養親族など、区分に応じた控除額を受けるための情報も正確に記入しましょう。
本人や対象者が該当する場合に記載する項目
扶養控除申告書には、本人や扶養親族が障害者や寡婦などの特別な条件に該当する場合に記入する項目があります。該当する場合、障害者や寡婦(夫)、ひとり親の欄にチェックを入れ、必要な情報を記載しましょう。該当する控除が適用され、所得税の負担が軽減されます。
▷年末調整におけるひとり親控除について|寡婦控除との違いや適用できる条件・書き方を解説
他の所得者が控除を受ける場合に記載する項目
扶養控除申告書には、他の所得者が同じ扶養親族について控除を受けている場合に記入する項目があります。例えば、夫婦で扶養親族を分けて控除を受ける場合、その扶養親族の氏名や続柄、どちらが控除を受けるかを記載します。
この情報は、重複して扶養控除が適用されないようにするためにも必要な項目です。税額の計算ミスを防ぐためにも、正確に記入しましょう。
住民税に関する事項を記載する項目
住民税に関する事項を記載するでは、給与所得者がその年の住民税の控除に関して申告する内容を記入します。例えば、住民税の控除対象となる扶養親族や特別な控除が必要な場合、この欄に必要な情報を正確に記載しましょう。
住民税の控除は翌年の課税に反映されるため、この項目は漏れなく記入してください。
年末調整における扶養控除は所得控除制度のひとつ
年末調整における扶養控除は所得控除制度のひとつであり、扶養親族がいる納税者の税負担を軽減する制度です。
正しい扶養親族の情報を申告し、控除を受けることで、所得税や住民税が減額されます。控除の適用には、対象者の年齢や収入、同居の有無などの条件があるため、これらを確認して正確に申告することが大切です。年末調整を通じて適切な控除を受け、税負担を軽減しましょう。
年末調整ソフトの記事をもっと読む
-
ご相談・ご質問は下記ボタンのフォームからお問い合わせください。
お問い合わせはこちら