熱中症は屋内でも発生!知っておきたい熱中症の要因と対応
オフィスのエアコンは「体感温度」に着目して快適を保とう
梅雨明けとともに本格的な夏が到来。猛暑日の熱中症対策というと、屋外活動時の対策を真っ先に思い浮かべがちですが、実は屋内でも毎年多くの熱中症が発生しています。今回は、つい油断しがちな「室内熱中症」について詳しくみていきましょう。
実は屋内にいても要注意!室内熱中症に気をつけて
「室内にいれば、多少暑くても大丈夫」そう思っていませんか?
総務省消防庁の最新調査によると、令和5年の熱中症による救急搬送者数は91,467人で、過去2番目の多さ。さらに驚くのが、発生場所の第1位は「住居」とされています。
つまり、熱中症の多くが「屋内」で発生しているのです。
[出典:総務省「令和5年(5月から9月)の熱中症による救急搬送状況」]
「気温」だけじゃない熱中症が起きやすい条件
熱中症を引き起こす要因は、気温や真夏の強い日差しだけではありません。
熱中症予防を目的にアメリカで提案された「暑さ指数(WBGT)」は、「気温・湿度・ 輻射熱(ふくしゃ熱)※」の3つの要素から、熱中症の危険度を示す指標を定めています。
※赤外線で伝わる熱のこと。輻射熱の例として、太陽の熱のほか、地面・建物・人体から出ている熱などがある。室内用のWBGT簡易推定図 Ver.4
[引用:一般財団法人日本生気象学会『「日常生活における熱中症予防指針」Ver.4』]
室内用のWBGT簡易推定図を見てみると、気温25℃であっても、湿度が95%を超える屋内の場所では、警戒基準であり、気温27℃になると、湿度75%で警戒基準になることが分かります。
このような環境下で、さらに、そのほかの環境・身体(からだ)・行動の要因が重なるなどすると、屋内外での活動にかかわらず熱中症が発生しやすくなってしまうのです。
◾️環境的要因
- 気温が高い
- 湿度が高い
- 換気不足
- 強い日差し
- 急な気温の上昇
◾️身体的要因
- 睡眠不足や疲労などの体調不良
- 高齢者や乳幼児
- 基礎疾患のある人
- 下痢やインフルエンザなどによる脱水状態
◾️行動要因
- 水分補給ができていない
- 慣れない運動や激しい運動をした
- 基礎疾患のある人
- 長時間の屋外作業
[出典:環境省「熱中症予防情報サイト」]
こんな症状があったら熱中症かも?知っておきたい応急処置
熱中症は、本人が気づかないうちに発症していることも少なくありません。以下のような症状が現れたら要注意です。
- めまいや顔のほてり
- 筋肉痛や筋肉のけいれん
- 体のだるさや吐き気
- 汗のかきかたがおかしい
- 体温が高い、皮ふの異常
- 呼びかけに反応しない、まっすぐ歩けない
- 水分補給ができない
[引用:一般財団法人日本気象協会「熱中症ゼロへ|熱中症の症状」]
これらの症状が現れたら、応急処置として、涼しい場所に移動して体を冷やし、水分と塩分を補給します。
ただし、対策をとっても症状が改善しない場合、また、呼びかけに反応しない、水分を摂っても吐いてしまうなど、自分で水分補給ができない場合は、重度の熱中症が疑われる危険な状態とされています。厚生労働省の熱中症予防のためのサイトでも、「ためらわずに救急車を呼びましょう!」と記載されているように、すぐに医療機関を受診するようにしましょう。
[参照:厚生労働省「熱中症予防のための情報・資料サイト|熱中症が疑われる人を見かけたら」]
こわい室内熱中症。空調温度は「暑い人」に合わせるべき?
屋内でも発症することのある、恐ろしい熱中症ですが、夏の訪れとともに、オフィスでよく見られる光景といえば、「暑い人 VS 寒い人」による温度設定を巡る攻防戦「エアコン温度戦争」です。
熱中症のリスクを避けるためには、「暑い人」に合わせるべきなのか、悩ましいところですが、この点、実は、室温だけでなく「体感温度」が重要なのです。
体感温度は気温、湿度、服装などの要因で変化します。したがって、一概にエアコンの温度だけで判断するのは適切ではありません。
熱中症のリスクを考慮し、室温28℃以下(湿度50〜60%程度)に保つことを心掛け、「暑い」と感じる人の周辺には、サーキュレーターを設置する。「寒い」と感じる人は、膝掛けやカーディガンなどの上着を羽織るなどの「体感温度」対策を講じてみましょう。
オフィスや屋内での作業におすすめの熱中症対策
また、オフィスでの熱中症対策は、組織としての取り組みも重要です。以下に、屋内でのおすすめの熱中症対策をまとめました。
- 夏場は室温28℃以下・湿度50〜60%程度を目安に室内環境を管理する
- ウォーターサーバーを設置してこまめな水分補給を促進する
- (作業内容や環境に応じて)休憩時間の確保を徹底する
- 遮熱・断熱対策:ブラインドやカーテンを活用して直射日光を避ける
- 従業員の体調チェックを行う仕組みを設ける
オフィスに限らず、さまざまな機械が稼働する工場などの屋内は、たとえ空調を推奨温度以下に設定していても、湿度や体感温度、風通しなどの要因から、熱中症のリスクが高まる可能性があることを認識しておかなければなりません。
厚生労働省が公表する「職場における熱中症予防対策マニュアル」なども参照し、適切な対策を講じるようにしましょう。