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面白い仕事と働きやすさ、万国共通の働きがいとは 「良い会社」の幅を広げて生涯のBoxファンを創出する

取材日:2024/09/18

クラウドベースのインテリジェントなコンテンツ管理ツールを提供する株式会社Box Japan。外資系企業でありながら、日本発の独自の工夫で働きがいを創出しています。やる気を引き出す施策、目指す組織像などについて、お話を伺いました。※本文内、敬称略

お話を伺った人

  • 風間 武也さん

    風間 武也さん

    株式会社Box Japan

    上席執行役員 人事本部長

この事例のポイント

  1. 働く上で大切な価値観「7 Values」で意識を共有
  2. 働きがい創出に重要な、万国共通の二つの要素とは
  3. 「良い会社」の幅を広げ、生涯のBoxファンを創出

働く上で大切にしている価値観「7 Values」

御社は、より良い職場づくりに取り組み、Great Place to Work ® Institute Japanの実施する調査で「働きがいのある会社」として認定されたと伺っています。働きがいの創出と関連して、最初に、御社が仕事をするうえで大事にしている価値、「7 Values」について教えてください。

風間:7 Valuesは、当社の創業社長であるアーロンが、自分たちはどういう会社でありたいのか、価値観や行動指針などを設立後に策定したものだと聞いています。

例えば「Take risks. Fail Fast. GSD.」は、リスクを取って、失敗してもいいから早くやりましょうといった考え方ですね。アジャイルの本質であり失敗したら、こうやって失敗したんだという経験をみんなに共有してほしいと。そうすれば少なくとも同じ失敗をする人が減りますし、本気で取り組んだうえでは失敗から学ぶことが多く、それが重要だということを示しているのがこの言葉です。

それから、「10x it!」はアーロンの好きな言葉の一つです。2倍とか3倍で考えずに10倍で考えてみよう、要は、小さくまとまるなという意味ですね。もっと思い切ってはっちゃけたことを考えてみようというのがこの言葉です。

ほかにも、「Make mom (or whomever you value most) proud」という、母親など大切な人に誇れる行動をしようという言葉や、「Blow our customers' minds」という、お客様の心を揺さぶろうという言葉など、仕事をするうえで大事にしてほしい価値観がつまっているのが、この7 Valuesです。

多岐に渡るそれらの言葉を、どうやって社員に意識付けているのでしょうか。

風間:確かに、何よりも重要なのがバリューを浸透させることです。内容が素晴らしくても、社員に根付いていなければ意味がありませんから。そこで、例えばバリューの考え方を集中的に学ぶような期間を年に数回設けています。

当社は中途採用の社員が多く、日本企業から来た方、外資系から来た方などバックグラウンドもさまざまです。

そのため、バリューの言葉一つとっても、全員が必ずしも同じ理解をするとは限らないという前提のもと、先ほどお伝えした「Make mom (or whomever you value most) proud」であれば、「誇りある行動とは、こういう行動」というのを共有しています。具体例で認識のズレを修正し、合わせていくための取り組みですね。

それから、7 Valuesアワードという表彰制度もあります。バリューのどれかに即した行動を見かけた社員は、匿名でも実名でもいいのでそれに投票するような制度です。バリューを体現した行動をとった人を四半期ごとに表彰し、あわせて投票した人にもスポットライトを当てるようにしています。また、評価制度にもリンクさせて、バリューの観点で言うとこういうところが良かったね、と評価できる仕組みにしています。

働きがいに重要なのは「面白い仕事」と「働きやすさ」

本社はアメリカですが、日米で働きがいに対する考え方の違いなどを感じることはありますか。

風間:何をもって働きがいを感じるかは、恐らく日本もアメリカも基本的に同じなのではないかと僕個人は思っています。もちろん地域によって多少の違いはあると思いますが、本質的にはそれほど違いはないのではないでしょうか。

働きがいを感じるためには、万国共通で大きく二つの要素が必要だと思います。一つは面白い仕事かどうか。刺激や挑戦要素、自分が成長できているという実感や業績に対して貢献したという手応えや賞賛、そうしたものを感じられるかが、仕事を面白いと感じられるかどうかにつながると考えています。これはすごく重要で、モチベーションの源でもあります。面白さがないと働きがいを生み出せないのではないかと思います。
他方、面白い仕事だからといって、ボロボロのオフィスでお給料も安い、福利厚生は整っていないし人間関係も悪いといった過酷な労働条件や環境だと、働きがいは感じ難いですよね。どちらかというと働きがいというよりもむしろ働きやすさですが、こうした職場環境やベネフィットが二つ目の要素だと思います。

ただし、いくら働きやすい環境でベネフィットが充実していたとしても、仕事そのものが面白くなければ、働きがいは上がりません。働きやすさが不十分だと不満にはつながりますが、こちらを上げたところで本質的なモチベーションにはならない、つまり不満を減らすだけなんです。不満を減らす要素とモチベーションを上げる要素、この二つの足し算が結局働きがいになっているのではないでしょうか。これは万国共通かなと僕個人は思っています。

ちなみにBoxのオフィスはグローバルで同じようなオフィス設計とコンセプトに基づいていて、世界共通でランチやカフェテリアを無料で提供するプログラムがあります。ベネフィットもほとんどがグローバル共通で、例えば不妊治療のプログラムやメンタルのサポートなども充実しています。ただし国によって社会保険制度の違いがあるので、そこはローカルユニークで整理しています。

キャリブレーションを繰り返し、納得ある評価を

今回、働きがいのある会社に認定されるにあたり、報酬に対する納得感が高いという点が評価されたポイントの一つに挙げられています。納得感を高めるために取り組んでいること、施策等がありましたらお伺いできますか。

風間:人が人を評価するのは本当に難しいですよね。それぞれの評価を合理的にすることももちろん大事ですが、納得感を高めるためには複数の目で評価を繰り返すことが必要だと考えています。

基本的に、評価する際は各チームのリーダーが、自分のチームメンバーに対してAやBをつけるという形が一般的だと思います。しかしその場合、自分のジョブファミリー観点から評価をするので、そのチームの中での閉じた評価になります。もちろん現場を預かっているファーストラインの評価は最重要なので、まずそこでの絶対評価を尊重するのですが、Boxではその後、各ファンクションのシニアリーダーが集まって横串で見る相対評価的な工程を取り入れています。

例えば直属のリーダーはAさんをすごく評価しているけれど、他部署の同じグレードのBさんと比較するとどうなんだろうという見方です。360度評価を取り入れていて、要は営業職だろうがマーケティング職だろうが経理職だろうが、同じグレードに照らし合わせたときに、どうなのかという観点です。さらにその後、人数を絞ってリーダーたちの評価も同様に行われます。

このやり方をキャリブレーションと呼んでいますが、少なくとも国内で3回はキャリブレーションを行い、その後日本法人の社長である古市がグローバルの責任者に報告をします。さらに各国の結果をその責任者が横串で見て、必要に応じて確認や修正をしながら評価を確定しています。

誰がどういう目線・役割で評価しているのか、その工程も共有されていますし、時間をかけて丁寧に評価していますので、仮に自分の評価に納得いかない社員がいたとしても、評価者は理由を説明できるんです。

例えば「私はチームの中で出来ていましたよね」と言っても、他のチームの同じグレードの人と比べてどうなのか、あるいはグローバルで見たときのバランスはどうなのかという、フィードバックが可能です。そういう意味で、この仕組みが客体である評価に対する納得感につながっているのかもしれません。

評価の仕方に対するマネージャー向けのトレーニング、評価者の育成なども必要になってくるかと思いますが、そこはどのように取り組んでいるのでしょうか。

風間:部下を持つマネージャーは必ず、マネージャーエッセンシャルズという10のトレーニングコースを受講し、Boxのマネージャーとしての基礎的な素養や考え方、行動指針みたいなものを学ぶ仕組みになっています。

私が特に重要だと思うのは、日常的な会話です。評価の時だけ1on1をしたり、上司として唐突にフィードバックをしても、部下の納得感を得ることはできません。やはり常日頃からの会話、ナッジ・チャット・ディスカッションをするよう研修では一貫して伝えています。

それから、評価の時期は毎回必ず、評価用のトレーニングが提供されています。よくあるハロー効果(一部の特徴に引きずられて全体の評価が歪んでしまう現象)とか、直近化効果(評価の対象時期全体ではなく直近のできごとに引きずられてしまう現象)など、起こりやすい"エラー”などについては、一度伝えて終わりではなく、毎回確認したうえで評価に入れるようにしています。

社長も個室なし、オフィスの作りにも工夫

働きがいのある会社として、さらに二つのポイントが挙げられています。一つは仕事に行くことが楽しみである、もう一つが経営・管理者層は気軽に話せるという点ですが、こちらの二つに対してはいかがでしょうか。

風間:まず最初の仕事に行くことが楽しみであるという点についてですが、どこからでも様々なデバイスから安全にコンテンツにアクセスができるツールを商品として扱っていることもあり、当社はもともとリモートに馴染みがある会社でした。そのためコロナ禍以降、完全リモートの社員が多くなってしまったんです。

その人たちにどうやったらオフィスに戻ってきてもらえるかを考え、ベタなやり方ではありますが、美味しいランチを用意したり、マメから挽いたコーヒーを準備したり、果物フェアや野菜を置いたり、振り返ると食べものが多いですが(笑)、強制的に出社させるのではなく、会社に行きたいと思ってもらえる仕掛けをいろいろと試みています。

それからイベントもよくやりますね。映画鑑賞会や、ハロウィン・クリスマスなどの季節の催し物なども各コミュニティが開催してくれています。

Xmasイベントに並んだ"boxケーキ"。「出社させる」のではなく「行きたくなる」工夫を。

前提として、フルリモートよりは一部出社の方が会社として望ましいと考えているということですね。

風間:そうですね。当社としては、オフィスに来てお互いに顔を合わせた方が、コラボレーションやイノベーションが生まれやすくなるなどビジネスにとってプラスが多いと考えています。

とりわけ中途採用で毎月5人、10人と入ってくる新しい仲間たちは、いきなりフルリモートだと人間関係を築くのが難しく、仕事の立ち上がりに時間がかかってしまうこともあります。即戦力として採用している中途採用者の立ち上がりが遅いというのも会社としてはマイナスですし、当社は出社を歓迎しています。あくまで推奨という形で、明確な決まりではないのですが、できれば週2、3回は会社に来てほしいというのが今の会社のスタンスです。

もう一つの、経営・管理者層は気軽に話せるという点に関して、何か取り組んでいることはありますか。

風間:ここに関しては、例えば「AMA(ask me anything)」という、社長の古市に何を聞いても良いというセッションを2週間に1回程度開催しています。Box Notesという同時編集ができるツールを使って聞きたいことを書き込んでもらい、社長がそれに答えるというものですね。出来る限りその場で回答し、確認が必要なものも、必ず後ほど回答する、ということをポリシーにして実施しています。このセッションを通じて、社員は、経営層に直接意見を言っても良いということを認識できますし、自分の意見に耳を傾けてくれるという安心感にもつながっているようです。

また、「Talk to Kats」、通称TTKと言う、社長と社員が1対1でランチをする取り組みも行っています。古市の愛称がカッツなので、そこからとった名称です。管理職以外の社員リストからランダムに選んだ相手と2週間に1回程度、1対1でランチを食べるんです。

ルールはなく、何を話してもよいのですが、社長には普段のランチで行くようなお店よりも、ちょっと高めのいいレストランに連れて行ってほしいということだけ、お願いしています(笑)。

社長との会話も5分10分の時間だと緊張したまま終わってしまいますが、食事をしながら1時間くらい話しをすると素も出てくるので、お互いが理解を深めるために良い機会になっているのではないかと思います。

経営陣とカジュアルに「対話」できる機会の多さが「7 Values」の浸透にもつながっている。

社長と2人で、というのはすごいですね。役職者の皆さんと打ち解けやすい雰囲気を作るよう工夫をしているんですね。

風間:そうですね。オフィスの作りにもこだわりがあって、役員以上になると個室があるのが一般的だと思いますが、当社では、どんなに偉くなっても個室を持ちません。

本社の創業者でCEOのアーロンも日本法人社長の古市も個室がないんです。オフィスに来ていただくとわかるのですが、縦長のフロアになっていて、古市はそのど真ん中にいるので、彼が立って360度回ると全社員を見渡すことができますし、彼の悪口を言えば直接聞こえるようになっています(笑)。

「良い会社」の幅を広げ、生涯のBoxファンを創出したい

今後のことも併せてお伺いしてよろしいですか。御社が理想とする働きがいのある会社、目指す姿として具体的に描いていらっしゃるものはありますか。

風間:まず事業に関して、私たちのサービスはありがたいことにかなり日本企業に浸透してきていますが、もちろんまだホワイトスペースもあります。電子署名やAIなどサービス機能の充実もどんどん進化していますので、愚直に提案していきたいと思いますし、すべきことを着々としていきたいと思います。

働きがいに関しては、先程お伝えした二つの要素、面白い仕事と働きやすい環境をさらに高めていきたいですね。これで良いと思った瞬間から衰退は始まりますので。

加えて、日本法人は比較的裁量を与えられているので、ビジネスの進め方や組織の作り方などの日本としての成功事例をヨーロッパやアジア地域のBoxオフィスに展開していければ面白いと考えています。すでに実施されているものもありますがもっとしていきたいですね。

例えば、日本では独自に代理店モデルを構築し、SIerの皆さんと協力してサービスの提供をしています。IT業界において、ハードウェアに関しては代理店を通して売り切るという形が確立しています。他方、私たちはSaaS専業ベンダーなので、月額使用料、サブスクリプションで商売をしている会社です。ハードに比べて単価が小さいわけですから、SaaS専業ベンダーが代理店を通じて100%販売するというモデルは、あまり聞いたことがありません。しかし、Box日本法人ではここまで成功していると思っています。

背景には日本の商習慣も大きく関係していて、日本企業ではSIerさんがかなりエンタープライズと言われる大企業の中に入り込んでるケースや、業界や地域のスタンダードをリードされていることも多いんですね。彼らを通じて提案をするとお客様も納得しやすいですし、これまでの実績があるため取引事務も行いやすいという声も聞きます。しかも彼らは高い技術力と営業力、そして広い営業網をお持ちです。実際、パートナー様の力を活用させていただいている側面は強いですね。

ただし、Slerという文化自体が欧米にはあまりないので、そのまま海外へ横展開が可能かどうかはわかりませんが、日本では少なくとも10年間の実績があります。これを可能な限り共有し、日本発での逆輸入みたいにできれば素晴らしいなどと妄想しています。つまり、本社からの指示に従うだけの日本法人子会社ではなく、本社とコラボレーションができる日本法人になるなんて、なんかワクワクしませんか?

本社との関係が、より「対等」になることで、楽しさも増しそうですね!では、最後に仮に御社のメンバーが外部から「Box Japanはどんな会社?」と聞かれたとき、皆さんがどう答えたら組織作りがうまくいっているなと感じますか。

風間:超ベタではありますが「良い会社」です。恐らく人によってその言葉に対する感じ方がたくさんあるのではないかと思います。当社の採用は約4割がリファラル採用、つまり社員からの紹介なのですが、知人を紹介するということは、その人にとって良い会社であり、知人にとっても良い会社であるだろうと思い、声をかけてくれているはずです。

例えば、働きやすい環境とか、日本の社会課題を解決できるサービスを扱っているとか、組織文化や雰囲気が良いとか、短期に経験を積み成長できるとか、その人によって評価するポイントは違うはずです。それぞれの社員にとって良い会社と思ってもらえる幅みたいなものをどんどん広げていって、良い会社と言われるポイントをこれからも増やして多様性に対応していきたいです。そして、生涯Boxファンみたいな人が一人でも多く増えるといいなと思いますね。

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