EX(従業員体験)向上は「すぐ辞める」の特効薬となる?

なぜ今、従業員体験向上が注目されるのかを解説

公開日:2024/08/26
EX(従業員体験)向上は「すぐ辞める」の特効薬となる?

EX(従業員体験)向上は、企業の成長と従業員の満足度を同時に高めることのできる、「真の働き方改革」として、近年、取り組む企業が増えています。なぜ今、EXが注目されているのでしょうか。EXの基礎知識とともに、わかりやすく解説します。

EX(従業員体験)とは?

EX(従業員体験)とは、従業員が会社で働くうえで得られる、さまざまな体験・経験の総称です。これには、仕事内容や業務上の経験だけでなく、職場環境や働き方、福利厚生など、あらゆる体験が含まれます。

そのため、必ずしもポジティブな体験・経験のみを指すものではありませんが、従業員がその企業で働く価値やモチベーションとして考えられることが多いでしょう。

例えば、周囲からあなたが「〇〇で働くって、どんな感じ?どんな会社?」と聞かれた時の答えが、まさにEXなのです。

企業にとってEXの向上は、従業員の満足度や幸福度、エンゲージメントなどを左右する重要な取り組みとされ、GoogleやAirbnbなどの先進的な企業では、すでにEX向上に取り組み、大きな効果を得ています。

EX向上が求められている背景

企業においてEX向上が重要視されるようになった背景には、主に3つの要因があります。順に見ていきましょう。

「非財務情報」開示の重要性

日本では、2023年3月決算以降から、人的資本の情報開示が義務付けられるようになりました。

義務化の対象となるのは、金融商品取引法第24条における「有価証券報告書」を発行する約4,000社の大手企業のみです(2024年8月時点)。しかし、2018年には、社内外に対する人的資本の情報開示の国際的なガイドラインである「ISO30414」が策定されるなど、「非財務情報」の開示は、多くの企業にとって、不可欠な取り組みになりつつあると考えられます。

「ヒト」を資本として捉え、その価値を最大限に引き出すための、あらゆる取り組みの一つとして、EX向上の取り組みや、それによる効果・成果に対してもステークホルダーの関心が寄せられているのです。

生産年齢人口の減少

超少子高齢化社会を迎える2025年は、国民の5人に1人が後期高齢者(75歳以上)になると予測されています。それに伴い、パーソル総合研究所が公開した「労働市場の未来推計 2030」によれば、2030年には約644万人の労働力が不足すると予測されており、多くの企業が「今以上」の人材難に陥ることが予想されます。

この状況下では、企業は限られた人材を最大限に活用する必要があるでしょう。

そのためにも、従業員の定着率を高め、生産性を向上させる効果が期待できるEX向上が重要であり、人材獲得の面からも、優れたEXを提供できる企業が競争優位性を得られると考えられているのです。

多様化した働き方への対応

働き方が多様化している点もEXが求められる背景の1つです。

リモートワークやフレックスタイム制など、働き方の選択肢が広がったことで、終身雇用にこだわらず、自身が望む「ワークライフバランス」が実現できることを条件に就業先を選ぶ求職者が増えています。

そのため、企業には、必要に応じて多様なニーズを受け入れることができる制度が求められることになり、必然的にEXの向上に取り組む結果となっていると言えるでしょう。

EX向上には「Employee Journey Map」が不可欠!

EXを向上させるには、Employee Journey Map(エンプロイージャーニーマップ)の作成が欠かせません。Employee Journey Mapは、従業員が入社してから退職するまでの体験を時系列で整理したものです。

Mapには、起きた出来事だけでなく、「入社時の期待感」「昇進時の達成感」「困難な業務に直面した際の不安」など、その時に抱いた感情や思考、心理的な変化も記載するのが特徴です。

まさに、「従業員の視点から組織」は見える化されるため、作成することで従業員視点でのEXの分析に役立つでしょう。適切な支援策や改善策を立案することができるようになります。

EX向上を人材戦略に取り入れよう

これからの人材戦略に欠かせない「EX」について解説しました。

適切な人事制度や環境整備に向け、ぜひEmployee Journey Mapを活用し、従業員視点での組織やEXの見える化をしてみてはいかがでしょうか。

ビズクロ編集部
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