2024年10月〜ふるさと納税は「何が・どう」変わるのか解説
寄付者には「改悪」の印象も、ルール改正の狙いは「地方支援の本質」
今年6月、総務省はふるさと納税制度における、仲介サイトの「ポイント付与」を禁止する方針を明らかにしました。この「ポイント禁止」のルール変更に対して、「なぜ?」と思った方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、ふるさと納税の制度改正についてわかりやすく解説します。
2024年10月からの返礼品に関する主な変更点
魅力的な返礼品を選べる楽しさは、ふるさと納税を利用して全国各地の自治体へ寄付を行う人にとっての「動機」の一つと言えるでしょう。
しかし、総務省は6月28日に、「ふるさと納税」を巡るルールについて、基準の見直しを行うことを告示しました。
その内容には、2024年10月から返礼品を強調した広告表現を禁止する、といったルールが盛り込まれ、利用者にとっては、一見、「改悪」とも言われる措置が話題となっています。一体どのような制度改正となるのか、詳しく見ていきましょう。
[参考:総務省「ふるさと納税の指定基準の見直し等」]
[参考:総務省「ふるさと納税の指定基準の見直し【令和6年6月28日告示第203号】」]
返礼品の宣伝に厳しい目
まず大きな変更点は、返礼品を強調した広告宣伝への規制です。2024年10月からは、新聞やテレビ、Webサイト、さらにはメールマガジンまで、あらゆる媒体で返礼品を過度に強調する表現を「禁止」としています。
「お得」「コスパ最強」「おまけ付き」といった表現はもちろん、寄附金額の引き下げや返礼品の増量キャンペーンも制限されます。
「返礼品」でアピールできなくなる分、自治体は、それ以外の「ならではの差別化」で、寄付者に対して魅力をアピールしなければなりません。
これらの規制は、ふるさと納税ポータルサイトにも適用されるため、各自治体においては、サイト運営者との契約見直しを迫られるケースもあるでしょう。
地元色豊かな返礼品へのシフト
自治体における返礼品の選定基準も、より「地域との関連性」に重きを置いた基準へと見直しされます。
例えば、当該自治体の区域内で生産された材料を100%使用した加工品や、地産の果物を90%以上使用したジュースなどは認められる一方で、区域内で生産された材料が、過半以上使われていない商品を「返礼品」に指定するのは認めないといったものです。
つまり、これからのふるさと納税は、より地域に密着した、その土地ならではの商品が返礼品として指定されることになります。
高額宿泊券にも新ルール!地元の宿泊施設を応援
2024年10月から、1人1泊5万円超の割引にも制限がかかります。
主に全国チェーンのホテルを対象に、1名1泊あたり5万円までの割引制限が設けられることになりました。
例えば、これまで20万円の寄付で、6万円の宿泊割引クーポンを返礼品として発行していた自治体も、寄付金額に関わらず、1名1泊あたり5万円までのクーポンしか発行できなくなります。
しかし、この「上限規制」は、下記の条件に該当する宿泊施設が対象です。
・宿泊施設の運営元が、「寄附先自治体の属する都道府県」以外でも宿泊施設を運営している
・宿泊施設名に、複数都道府県で展開しているチェーン名・ブランド名が含まれている
上記に該当しない地域の宿泊施設は対象外であり、引き続き5万円以上の割引が受けられる、とされています。
2025年10月、ポイント還元にさようなら
とりわけ、今回のふるさと納税見直しの話題で注目されたのが、「2025年10月から寄付者にポイント付与などを行うポータルサイトを通じた寄付を禁止する」ルールが盛り込まれた点です。
具体的には、楽天やさとふる、ふるなびといった、ふるさと納税仲介サイトにおいて、サイトを通してふるさと納税を行った際の「ポイント付与」が、事実上、禁止となります。
このポイント禁止に対しては、楽天が撤廃を求める署名活動を行い、猛反発するなど、今後の動向にも注目が集まっています。
ふるさと納税、あなたはどう活用する?
今回の見直しについて、仲介サイトにおける「ポイント付与禁止」は、寄付者にとっては、これまで貰えていたものがなくなるため、単純に損と言えるでしょう。
しかし、ふるさと納税の本来の目的は、全国から寄せられる寄付金により税収の地域間格差を是正すること、また、自治体が寄付金を活用して地域活性化を図ることにあります。
返礼品目当てで納税先の自治体を選ぶ人の中には、「寄付先の自治体を覚えていない」ということもあり、ネット上では「受け取った返礼品のアピール」は見かけても、寄付後の地域活性化の取り組みを発信する寄付者は、そう多くありません。
一部では「改悪」とも言われる、今回のルール変更ですが、自治体の政策や地域の魅力をじっくり吟味して寄附先を選ぶ、また、納めた税金がどう使われるのかに関心を持つきっかけになるなど、納税者としての意識を高める良い機会となるのかもしれません。