定額減税で7割が負担増を予想、年末調整の実態が明らかに
デジタル化進むも、法改正の対応に苦慮
今年も年末調整の時期が近づく中、令和6年度は「定額減税」に注意しなければならないこともあり、多くの企業が業務負担の増加を懸念しています。
2024年8月、弥生株式会社が従業員100名以下の企業に対して実施した調査によると、定額減税により73.7%の給与計算担当者が事務負担の増加を予想しています。一方で、その具体的な影響を把握しているのはわずか3割にとどまり、現場の不安と混乱が浮き彫りとなりました。
デジタル化が進む年末調整業務
[出典:「令和6年度『年末調整』に関する意識調査」弥生調べ]
調査結果によると、2023年分年末調整では、67.7%の企業が、年末調整の税額計算にツールを利用しており、そのうち29.8%がクラウド型ソフトを使用していることがわかりました。
[出典:「令和6年度『年末調整』に関する意識調査」弥生調べ]
また、申告書類の配布・回収においても、52%以上の企業がソフトを活用。100名以下の中小企業でも、デジタル化がスタンダードになりつつある現状が伺えます。
ソフト活用が主流も、残業増加は避けられず
[出典:「令和6年度『年末調整』に関する意識調査」弥生調べ]
しかし、デジタル化が進展する一方で、年末調整時期には、依然として64.5%の担当者が通常より残業が増加すると回答。10時間以上の残業増加と答えた人が31.1%に達し、いまだ負担の大きい業務であることも明らかとなりました。
法令把握と書類管理に苦心する給与担当者
[出典:「令和6年度『年末調整』に関する意識調査」弥生調べ]
負担を感じる業務としては、「最新の法令の把握」(34.7%)が最多。次いで「従業員への各種申告書の配布・回収」(30.6%)が挙げられました。これらの結果は、デジタル化が進んでいるにもかかわらず、法改正への対応や従業員とのコミュニケーションが依然として大きな課題となっていることを示しています。
定額減税の影響、理解不足が浮き彫りに
[出典:「令和6年度『年末調整』に関する意識調査」弥生調べ]
今年度から導入された定額減税に関しては、具体的な影響を把握している担当者が29.1%にとどまる一方で、「初めて知った」という回答が16.6%(6人に1人の割合)ありました。
[出典:「令和6年度『年末調整』に関する意識調査」弥生調べ]
事務負担については、73.7%の担当者が増加を予想。また、69.1%の担当者が月次の給与事務の負担増加を感じており、定額減税が年間を通じて業務に影響を与えていることが示唆されました。
Web対応への移行が加速
[出典:「令和6年度『年末調整』に関する意識調査」弥生調べ]
調査結果からは、今後のさらなる効率化への道筋も見えてきました。紙での申告書配布・回収を行っていた企業のうち、43.1%が今年からソフトを利用したPC・スマートフォンでの対応を予定、または検討していることが分かりました。特に従業員数が多い企業ほどこの傾向が強く、50名以上の会社では6割以上がWeb対応を検討しています。
年末調整業務の未来:効率化と人材育成の両立へ
今回の調査結果は、中小企業における年末調整業務の課題を示すとともに、今後の方向性も示唆しています。
この状況を踏まえ、企業は単なる業務のデジタル化だけでなく、担当者のスキルアップにも注力すべきでしょう。法改正や新制度への対応力を高めることで、長期的には業務負担の軽減につながります。
年末調整業務の効率化は、企業の生産性向上だけでなく、従業員の満足度にも直結します。今後は、テクノロジーと人材の両面からアプローチすることで、より効果的な改善が期待できるでしょう。