日本のオフィス、90%以上が紙文書を使用
約2割はいまだ文書を「紙とペンで作成」の実態
2024年11月、PDF Guruが実施した調査で、日本のオフィスにおけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の現状が明らかになりました。
90%以上の企業が依然として紙の文書を使用しており、デジタル化の遅れが浮き彫りになっています。
紙文書への依存が続く日本のオフィス
調査結果によると、完全にデジタル形式のみで文書を管理している企業はわずか10%未満でした。文書管理を一切デジタル化せず「紙のみで文書管理を行っている」企業も17%存在するという結果となっています。
[出典:PDF Guru「日本のオフィスにおける文書管理とデジタル化の課題」]
文書作成・保存方法の実態
文書作成ツールとしては、60%以上がMicrosoft Wordを使用していますが、約18%の回答者が今でも主にペンと紙を使用していると回答。このことから、デジタルツールが広く普及している現代においても、一部では、従来の手書き文化が根強く残っていることがわかります。
[出典:PDF Guru「日本のオフィスにおける文書管理とデジタル化の課題」]
文書の保存・共有方法については、79%がデジタルを活用。一方、その多くはクラウドストレージではなく、社内サーバーやUSBデバイス、外付けハードドライブを使用しています。このような状況は、情報セキュリティの観点のほか、情報の共有性や業務効率の面などの課題が発生しやすい管理状況ともいえるでしょう。
[出典:PDF Guru「日本のオフィスにおける文書管理とデジタル化の課題」]
遅れが目立つAI活用
さらに大多数の回答者が業務でAIツールを「 Rarely(めったにない)/never (一度もない)」と回答。「Daily(日常的に使う)」と回答した割合はわずか4%であり、ChatGPTなどのAIツールが広く普及している欧米諸国とは対照的な結果となっています。
[出典:PDF Guru「日本のオフィスにおける文書管理とデジタル化の課題」]
新技術導入の現状と課題
続いて、企業における新技術の導入に関しては、非常に興味深い実態が明らかになりました。
迅速な導入を行っていると答えたのはわずか7%。約46%は「遅い」または「非常に遅い」と回答。さらに、従業員の意識として、「遅い」「非常に遅い」ことに対して、多くの回答者は、ネガティブに捉えていないことがわかったのです。その理由としては、「慣れ親しんだ方法に安心感がある」「現状で特に不便を感じない」といった声が多く聞かれ、変革の必要性自体を感じていない実態が浮かび上がっています。
[出典:PDF Guru「日本のオフィスにおける文書管理とデジタル化の課題」]
新技術導入における障壁の一つは「世代間格差」か
調査では、デジタル化を進める上での具体的な課題も明らかになりました。
「高齢層の多い会社なので、もっと進めたいがなかなか進まない」「扱える人が少ないので時間がかかる」といった声が寄せられ、世代間のデジタルリテラシーの差が、新技術導入の大きな障壁となっていることがわかります。
一方で、「簡単な検索はAIに任せた方が楽なので、一度便利だと感じれば、皆抵抗なく使っている」という前向きな意見も見られました。
変革への一歩を踏み出すために
調査結果から、国内企業のデジタル化は、まだ道半ばの状況であることが伺えます。人材不足が深刻化するなか、企業が競争力を維持するためには、業務効率化や生産性の向上は避けては通れない取り組みとなるはずです。
重要なのは、急激な変化を求めるのではなく、組織の現状を理解したうえで、段階的な移行を進めていくことです。伝統的な業務プロセスの良さを活かしながら、新しいデジタルツールを効果的に組み合わせていく。そんなバランスの取れたアプローチが、今の日本企業には求められているのではないでしょうか。