AI(人工知能)の意味とは?歴史やビジネスでの活用例・仕組み、できることをわかりやすく解説
言葉の認識や推論などの知的な行動をコンピューターに行わせる技術「AI(人工知能)」。日常生活やビジネスシーンでの普及が進んでいるため、耳にする機会も多いのではないでしょうか。本記事では、AI(人工知能)の意味とは何か、歴史や仕組み等をわかりやすく解説します。
目次
AI(人工知能)の意味とは?
AI(人工知能)とはArtificial Intelligence(アーティフィシャル・インテリジェンス)の略称であり、人間の思考プロセスを人工的に模倣する技術のことです。
人間が脳内で行う認識・分析・判断などのアルゴリズムを解き明かし、コンピューター上でどのように再現すれば人間のような知的行動ができるかを研究する分野でもあります。
AIの技術は日進月歩で発展しており、インターネットの検索エンジンやスマホの音声アシスタントなど、日常的に利用するツールの中に組み込まれるほど世の中に浸透しています。
AIの歴史とは?
AIは研究開発が始まってからすでに半世紀以上の時間が流れており、複数回のブームと冬の時代を経て、2000年代から現在に至る第3次AIブームが到来しています。
それぞれのブームの中でAIがどのような進化を遂げてきたのか、詳しく解説します。
1940年代~|AI研究が始まる
1943年に神経生理学者のウォーレン・マカロック氏と論理学者のウォルター・ピッツ氏によって「形式ニューロン」が提唱されたことが、AI研究の始まりと言われています。
形式ニューロンとは、人間の脳機能を数学的なモデルで表したニューラルネットワークの一種です。この理論を活用することで、現代のコンピューターの基本構造となる、ノイマン型コンピューターの構想が生まれました。
その後、機械が人間に近い行動が取れるかを確認するために、数学者のアラン・チューリング氏が「チューリングテスト」という質疑応答形式の思考実験に関する論文を執筆・発表したことで、AI研究開発がさらに加速していくことになります。
1950年代~|第1次AIブーム
AIという用語が初めて使われたのは、1956年に開催されたダートマス会議です。
この会議では、ニューラルネットワークをはじめ、自然言語処理や自己学習といった現代のAI研究に通ずるテーマが議論され、特に推論・探索の領域でAIが役立つと考えられていました。
1966年には自然言語処理プログラムの一種で、チャットボットの元祖と言われるELIZA(イライザ)が誕生し、第1次AIブームを呼び起こします。
しかし、AIが課題解決に不要な要素も計算してしまい、機能停止に陥るフレーム問題の解決策が見出せず、AI研究開発は冬の時代に突入しました。
1980年代~|第2次AIブーム
1980年代では、あらかじめ設定されたルールの集合体を基に判断を下すエキスパートシステムの研究が進み、専門家の代わりに推論を展開するシーンが増えていきます。
しかし、当時の3.5世代コンピューターでは蓄積できる知識量が少なく、精度面に大きな課題を抱えていました。この課題を解決すべく、エキスパートシステムの高度化を目指して発足したのが第5世代コンピューター・プロジェクトです。このプロジェクトが第2次AIブームの火付け役になりました。
とはいえ、エキスパートシステム自体にも課題がありました。それは、膨大な知識をコンピューターに蓄積することに必要な労力が大き過ぎた点です。この課題からも高度なエキスパートシステムの実現に対する難易度は依然として高く、実用化に至らないケースが増えていました。
そのうえ、1995年にはWindows 95が登場し、インターネットが急速に普及していったことに加え、AIが勾配消失問題や過学習問題に突き当たっていたことも相まって、第2次AIブームは下火になっていきます。
2000年代~|第3次AIブーム
第3次AIブームの契機となったのは、2006年に登場したオートエンコーダ(自己符号化器)です。
オートエンコーダによる事前学習で、勾配消失問題や過学習問題が解決されたことで、第3次AIブームが始まりました。やがて、ニューラルネットワークを用いた学習方法が「ディープラーニング」と呼ばれるようになり、Googleが1000万枚の画像から猫を識別するAIを開発したことをきっかけに、ディープラーニングへの注目度が急速に上がりました。
その後、2010年代にはモノとインターネットをつなぐ技術「IoT」が登場し、ビッグデータの活用が本格化していったことで、機械を動かす頭脳としてAIの必要性がさらに高まっていきます。
2010年代後半には、GoogleのTransformerモデルなどの深層学習モデルが生成系AI(ジェネレーティブAI)の基盤を作り、プロンプトによる指示・質問から文章・画像を出力するChatGPTやMidjourneyなどが誕生し、現代のAIブームへとつながっていきます。
▷【初心者向け】AI(人工知能)の作り方|必要なスキルやおすすめのツールを紹介
AIの仕組み・学習方法
学習が正確であればあるほど、予測や判断の精度が高まることがAIの特徴です。
AIの学習方法は大別すると3つに分けられます。
- 機械学習(マシンラーニング)
- 深層学習(ディープラーニング)
- 自然言語処理(NLP)
それぞれの性質を以下に解説します。
機械学習(マシンラーニング)
機械学習(マシンラーニング)とは、ビッグデータをコンピューターに読み込ませ、自動的な学習でデータの特徴やパターンを発見し、予測や分類などに役立てる技術です。
ベテラン社員の経験と勘で成り立っていた判断などの領域で、機械学習(マシンラーニング)の活躍が期待されています。
機械学習(マシンラーニング)には、主に3つの手法があります。
教師あり学習
教師あり学習とは、正解のあるデータをもとに学習を行う手法です。
例えば、商品の画像とそれに対応するカテゴリを学習させると、AIは新しい商品の画像を見た際に、それがどのカテゴリに分類されるかを判断できるようになります。
教師なし学習
教師なし学習とは、データに正解が与えられていない状態でAIが学習する手法です。
この手法は答えを正しく学習する用途ではなく、ビッグデータに隠れた構造を発見し、データのパターンやつながりなどを発見することに役立ちます。
例えば、顧客の購買データを分析し、共通の行動パターンがある顧客グループを抽出することで、マーケティング戦略などに活用することができるでしょう。
強化学習
強化学習は、AIが試行錯誤を繰り返しながら回答精度を高めていく手法です。
将棋やチェスなどの分野でも使われており、勝利という条件を満たすための最適な打ち手を、一定の強化方向に従ってAIが模索していくことが特徴です。
深層学習(ディープラーニング)
機械学習(マシンラーニング)と混同されやすい言葉の代表格として、深層学習(ディープラーニング)という技術があります。
深層学習とは、ニューラルネットワークを用いて、ビッグデータから特徴量の探索までを自動化することが大きな特徴です。機械学習が学習に判断指標となる特徴量の指定が必要なのに対して、深層学習ではAIが特徴量の抽出を自動で学習します。
この性質により、特徴量の設計をAIに委ねられるというメリットがある反面、特徴量がブラックボックス化しやすい点が深層学習(ディープラーニング)のデメリットです。
自然言語処理(NLP)
自然言語処理(NLP)とは、AIが人間の言葉を理解し、学習するための技術です。
人間と対話を行えるAIを実現するために重要な技術であり、書き言葉や話し言葉などを正しく理解することで、人間の質問に対して適切な回答を生成することができます。
この技術を活用して、スマートスピーカーや生成系AIなどのサービスが誕生しています。
▷AIでできること・できないことの一覧|具体例や活用事例を紹介
AIの基礎となるアルゴリズム
AIがビッグデータを解析するうえで、基礎となる3つのアルゴリズムが重要な役割を担っています。
- ニューラルネットワーク
- 遺伝的アルゴリズム
- エキスパートシステム
これらのアルゴリズムについて、以下に特徴や活用例を解説します。
ニューラルネットワーク
ニューラルネットワークとは、AIの頭脳とも言えるアルゴリズムであり、人間の脳の神経細胞(ニューロン)の働きを模倣したもので、人間が情報を判断するプロセスを人工的に再現しています。
具体的な活用例としては、画像認識や音声認識、自動運転や新薬開発などが挙げられます。ニューラルネットワークを活用することで、AIは膨大なデータから情報を識別したり、音声を正確に理解して応答する、といった能力を備えることが可能となりました。
遺伝的アルゴリズム
遺伝的アルゴリズムとは、生物学的な進化論を参考に、パラメータや解といった遺伝子情報の分析・選別を繰り返し、最適解を導き出すためのアルゴリズムです。
多種多様なグループから適応度の高い個体を選出し、選択・交叉・突然変異などを通じてより優れた個体を作り出すことで、より効果的な解を見つけていきます。
具体的な活用例としては、配送ルートの最適化や株式の自動売買など、細かな条件から最も効果的な選択をするケースにおいて、遺伝的アルゴリズムは大きな威力を発揮します。
エキスパートシステム
エキスパートシステムとは、専門家に代わって課題解決や意思決定を行うアルゴリズムです。
専門家が回答を出すまでのプロセスを参考に知識をルールとして構造化し「AならばB」という形式で推論を構成することで、専門家による意思決定を模倣しています。
具体的な活用例としては、レコメンド機能として使われるシーンが多いようです。患者の症状から治験オプションを推奨したり、ECサイトで購買履歴から商品を提案したりなど、データに基づいたアドバイスを実行することに長けています。
AIの種類
対象範囲の広さや推論の深さから、AIは主に4つの種類に分けられます。
- 特化型AI
- 汎用型AI
- 強いAI
- 弱いAI
それぞれの特徴を、以下に解説します。
特化型AI
特化型AIとは、一つの専門性に特化して設計されたAIです。医療や法律といった分野に特化した種類もあれば、顔認識や故障診断などのタスクに特化したタイプもあります。
特化型AIは、広範囲のタスクを処理することには向いていないものの、専門領域で高い精度と効率性を期待できることが特徴です。この性質から、特定の課題解決においては人間よりも早く正確に作業を行うことができます。
汎用型AI
汎用型AIとは、特化型AIのように領域を限定せず、広範囲の課題解決に対応できるように設計されたAIです。
人間のように会話・分析・予測などを活用して、異なる状況やタスクに柔軟に対応できる特徴があります。
強いAI
強いAIとは、AIの中でも特に高度なタイプであり、人間と同等あるいはそれ以上の知能を持つAIを指します。
自意識を持ち、プログラムされていない事象に遭遇したときにも過去の経験に基づき学習・判断する対応力がある点が特徴です。漫画やアニメに登場する感情のあるロボットなどは、強いAIに分類されると言えるでしょう。
弱いAI
弱いAIとは自意識を持たず、与えられた役割だけを全うするタイプのAIです。
自然言語処理を用いたAIアシスタントサービス「Siri」や、画像認識に特化した「Googleレンズ」などが、このタイプに分類されます。
弱いAIは複雑な思考や感情の理解ができないかわりに、高精度な処理能力を備えており、日常生活で私たちの作業をサポートするうえで欠かせない存在となっています。
AIができること
AIがサービスとして搭載される場合には、識別・予測・実行という3つの機能で構成されます。これらの機能において、AIができることを具体的に解説します。
画像認識
AIによる画像認識は、主に分類と検出という機能を活用して、画像内の情報を分析する技術です。具体的には、画像に写っているものが何なのかを識別することに加え、全体情報から場所の特定や領域の検出を行います。
活用例としては、顔認証によるスマホのロック解除をはじめ、製造現場での不良品検出、自動運転での物体検知などに役立てられています。
音声認識
AIによる音声認識は、音声をテキストに変換する技術です。具体的にはディープラーニングの技術を用いて音声データの特徴を抽出し、発音辞書や言語モデルを用いてテキスト化しています。
この技術を活用することで、録音データの文字起こしを自動化するだけでなく、スマホやスマートスピーカーに話しかけて天気の確認や音楽の再生などを行う、といった機能が実現されています。
自然言語処理
自然言語処理は、AIが人間の言葉を理解し、解釈する技術です。自然言語処理は主に自然言語理解(NLU)と自然言語生成(NLG)によって構成されます。
- 自然言語理解(NLU):フレーズと文脈をより正確に理解する技術
- 自然言語生成(NLG):文法などのルールに基づいて回答を生成する技術
この技術を活用して生み出されたのが、チャットボットやボイスボットといった対話型AIです。また、膨大なテキストデータを分析するテキストマイニングにも、自然言語処理が使われています。
予測・異常検知
AIはデータ分析によって未来の出来事を予測したり、普通ではないパターンを特定して異常検知を行うことができます。
この技術を活用し、製造現場で機械・設備が故障する前に前兆を検知する予知保全や、将来的に見込まれる販売数や使用量を分析する需要予測など、さまざまなシーンで予測・異常検知が行われています。
ビジネスにおけるAI技術の活用例
現代ではデータの分析・予測、業務の自動化まで、さまざまな領域でAI技術の導入が進んでおり、企業が直面する課題を解決する役割が期待されています。
ここでは具体的な事例を通して、AIがどのようにビジネスの現場で活躍しているかを紹介します。
自動運転|埼玉工業大学
埼玉工業大学は深谷観光バス株式会社と協業し、AIによる自動運転スクールバスの実証実験を行なっています。
この実証実験は、スクールバスにAIを搭載してアクセル・ブレーキの操作を行い、大学と最寄駅間の公道を自動運転(レベル2)で走行するものです。
AIの運転判断には障害物の検知機能が活用され、複数のLiDARセンサーやカメラの画像情報をディープラーニングで分析した情報により、運転が制御されています。
[出典:埼玉工業大学「埼玉工大、入学式で自動運転スクールバスを 2 年連続で運行」]
自動採点システム|富士通株式会社
富士通株式会社は、体操競技の採点をAIで自動化するシステムを国際体操連盟と共同開発し、第52回世界体操競技選手権大会で全種目に適用しました。
この自動採点システムは、選手に対して3Dレーザーセンサーを1秒間に約200万回以上照射することで動きをセンシングし、データ取得や骨格認識を行なったうえで、技の辞書と呼ばれるデータベースと照合して採点を導き出しています。
技の複雑化によって採点の公平性を保つのが難しくなっている体操競技において、自動採点システムの採点は審判機能の革新として注目されています。
[出典:富士通株式会社「国際体操連盟が正式採用した「AI自動採点システム」はスポーツ界をどう変えるのか」]
カンニング自動検知AI|株式会社ユーザーローカル
株式会社ユーザーローカルは、スマートフォンによる入学試験や資格試験でのカンニング行為の対策として、AIによるカンニング行為の自動検知システムを開発しました。
この自動検知システムは、会場にWebカメラとエッジ端末を設置し、ディープラーニングによる行動推定技術を用いて、受験者の姿勢・骨格・視線などの映像データからカンニングなどの不正行為を自動で検知するというものです。
試験官による目視チェックで発生していた死角を補うだけでなく、潔白な受験者があらぬ疑いをかけられることを予防する役割も果たしています。
[出典:株式会社ユーザーローカル「ユーザーローカル、教育機関向けカンニング自動検知AIを開発」]
人型ロボット|ソフトバンクロボティクス株式会社
感情を認識できる世界初の人型ロボットとして2014年に誕生した「Pepper(ペッパー)」は、ChatGPTなどの機能追加によって劇的な進化を遂げています。
もともと音声と表情の認識機能を通じて感情認識をしていたPepperは、ChatGPTが組み込まれたことで会話力が向上し、より自然な会話体験ができるようになりました。
これにより、介護施設や教育機関での導入が進み、地域社会への貢献事例を着実に積み重ねています。
[出典:ソフトバンク株式会社「AIでさらに自然なコミュニケーションが可能に。進化した介護向けPepperにインタビューしてきた」]
▷AIのメリット・デメリット|今後の課題やビジネスにおける活用事例を紹介
新技術の開発におけるAIの必要性を理解しよう
昨今では生成系AIブームによってAI開発競争が過熱し、AIによるイノベーションが大きなテーマとなっています。
特に少子高齢化が進む日本においては、AIとの協業による効率化は不可欠であると言えるでしょう。本記事を参考にAIの歴史を振り返りながら、自社に最適なAI導入について模索してみてください。
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