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徹底的に"人"にこだわる 理念経営で会社と社員に愛着を生み出す

取材日:2023/02/28

"人" にフォーカスを当てた唯一のコンサルティング会社として、業界では珍しい「理念経営」を実現している株式会社ノースサンド。会社の熱量を維持したまま、順調に成長を遂げている理由や取り組みについてお話を伺いました。※本文内、敬称略

お話を伺った人

  • 潮屋香織さん

    潮屋香織さん

    株式会社ノースサンド

    人事部/広報担当

この事例のポイント

  1. 創業より"人"を重視し、継続する「理念経営」
  2. 「人材育成・意欲向上・ナレッジ共有」を実現する全社プレゼン大会
  3. キャリア形成の力強い味方「キャリアパートナー制度」

創業時から理念経営にこだわる

コンサルティング業界は平均離職率が20%程度とも言われる中、御社は社員の働きやすい環境づくりに注力し、離職率を4.7%に抑えています。取り組みを始めたきっかけは何ですか?

潮屋:コンサルタントは、お客様の会社に常駐して仕事をするため会社への愛着が生まれにくいという、業界特有の課題が存在します。そのような特性も背景にあり、創業後は社員の離職の多さが課題となっていた時期がありました。

そこで、会社全体の「方向性」と「言葉」を合わせるために2019年に理念をリニューアルしたのです。ビジョンを「世界をデザインする」、ミッションを「カッコいい会社を増やす」とし、社員共通の行動指針として8つのルール"8 Rules(ルールズ)"を掲げました。

【8 Rules】
- スピードで圧倒しよう
- 情熱がなければ意味がない
- 想像力と思いやりを持つ
- 迷わずチャレンジしよう
- 感謝・尊敬・謙遜
- 圧倒的な努力で驚かす
- 論理*感情で人を動かす
- 絆を深めよう

ビジョンやミッション、8 Rulesを社員に浸透させるために、どのような取り組みをしましたか?

潮屋:採用では、8 Rulesの価値観との親和性や共感度を重視しています。当社に入社する人はIT人材が多く、もちろんスキルセットは必要ですが、仮にITに関する仕事をした経験が少なくても、8 Rulesへの共感度が高ければ採用することもあるほど重要なポイントとしています。

入社後においては、社長により毎朝投稿されるメッセージや毎月開催される全社員集会内でのフィロソフィートークなど、さまざまな施策を通して理念の浸透を図っています。

今では、8 Rulesが社内の共通言語になるまで浸透しました。例えば、部下が提出した資料にフィードバックをする時も、「読み手に対する思いやりを持った文章に修正した方がよい」など、8 Rulesに則って説明する姿が社内で見受けられます。

潮屋さん自身、8 Rulesが社員に浸透していると感じた経験はありますか?

潮屋:はい、弊社のコンサルタントが経験したエピソードを聞いた時です。

ある時、お客様から「コンサルタントは一般的に、ある課題に対して決められた期間やリソースの中で、スコープ内の仕事しかしないのに、御社は視点を広げてその他に支援できることはないか、違うやり方でもできないかを常に追求してくれる」と、一緒に働く時間を有意義に感じてくれたことが伝わる、感動や驚きの言葉を頂いたというエピソードでした。相手への想像力や思いやりを持って仕事をした結果、お客さまを喜ばせることができたのです。

コンサルティング業界は、他社と差別化が図りにくい業界ですが、8 Rulesに則ったコンサルタント一人一人の行動によって、お客さまから選ばれる会社になれていることを知り、8 Rulesや理念経営の大事さを感じました。

ナレッジをプレゼンし共有する大会を毎年開催

コンサルティング業界は、コンサルティングサービスの質がお客様からの評価に直結する業界です。社員の育成を目的とした制度は設けていますか?

潮屋:2020年から年に一度、「Knowledge Fighting Cup」という全社プレゼン大会を開催しています。目的は、現場ナレッジの共有と若手社員にプレゼンの機会を与えることで、コンサルティングサービスの品質を高めることにあります。

コンサルタントはそれぞれのお客様先で業務にあたるため、社内で現場のナレッジを共有する場が基本的にはありません。

この大会では若手4人1組のチームで現場で活かせるナレッジをプレゼンし、ナレッジの質の高さにより優勝チームが決まります。各チームには、ディレクターやシニアマネージャーがアドバイザーとして参加するので、準備をする過程でさまざまなアドバイスをもらえるのも特徴です。

2022年に優勝したチームは、どんなプレゼンをしましたか?

潮屋:当社に2019年・2020年に新卒で入社した社員チームによる「新卒コンサルタントの育成術」をテーマにしたプレゼンです。

彼らは、同じく新卒入社のコンサルタントに、いつ、どのタイミングでどんなスキルを身に着けたのか、などのアンケートを行いました。その結果を踏まえて、スキルを「関係構築」や「資料作成」などの項目に分類し、各スキルを身に着けるためにすべきことを、難易度を軸に段階的に並べて網羅的に理解できるようにしました。

項目ごとにスキルと段階が明確に可視化されているので、この"道標"を見ることで、順を追って必要なスキルを身に着けられるのはもちろん、自分の「現在地」と「この先求められるスキル」が明確になるのも優れた点だと思います。

全社員の投票の結果、個人的にもチーム内でも活用できる点が評価され、優勝チームは見事優勝賞金100万円を獲得しました。

新卒社員が身につけるべきスキルを項目・段階に分けて「成功の道しるべ」として可視化(画像は、その一部を抜粋したもの)。

素晴らしい発表ですが、100万円の賞金を授与するのは、会社負担が非常に大きいように思えます。

潮屋:「Knowledge Fighting Cup」には、その金額以上の価値があると考えています。

大会を通じて若手社員のプレゼン能力が向上し、社内で活用できるナレッジが誕生しました。それに加えて、参加者の大会に対する想いや向き合い方を通して、仕事へのモチベーションも高まったと感じています。

また、このナレッジがあれば、経験の浅い若手社員と指導をする先輩コンサルタントやマネージャー側の両方にとって、どんなスキルを身に着ければ一人前になれるかがわかります。仮に同じような研修コンテンツをつくろうとしたら、もっと多くの費用がかかるはず。大会開催の意義はとても大きいです。

動機づけにこだわり社員の学ぶ意欲を引き出す

「Knowledge Fighting Cup」以外には、社員の能力を高めるためにどんな取り組みをしていますか?

潮屋:当社では研修コンテンツを年間100講座以上用意しています。研修にあたってこだわっているのは、動機づけです。なぜ学ぶ必要があるのかを理解してもらうために、コンサルティング経験の浅い社員には、スキルレベルチェックを受けてもらっています。

具体的には、お題に対してヒアリングやリサーチを行い、提案資料を作成し、プレゼンを実施するものです。このプレゼンを踏まえてスキルアセスメントが行われ、レーダーチャートで現在のスキルが示されます。自分に足りないスキルが見える化されるため、実践課題などに意欲的に取り組めるようになります。

社員の意欲を高めるために、他に取り組んでいることはありますか?

潮屋:多数の表彰制度を通して社員の表彰を行っております。毎月目立った活躍をした社員に贈られる「社長賞」や今期のテーマを体現している社員に贈られる「CHANGE賞」・「4E※賞」などがございます。また、年に一度の決起集会では、年間を通して会社拡大に貢献した社員に贈られる「敢闘賞」・「MVP賞」、その年の新卒社員で目立った活躍をした社員に贈られる「新人賞」などもあります。

これらの表彰制度によって働く意欲が向上し、もっと頑張ろうと自己研鑽に励む社員もいます。

※4E:ノースサンドの働き方宣言。Efficient(限られた時間で成果を出す)、Effective(成果で価値を提供する)、Enjoyable(好きな仕事を心から楽しむ)、Effortless(さりげなくニーズに応える)これらの頭文字を取って4E宣言としている。

今後のキャリアに関する悩みや参画する案件などの相談がある場合は、コンサルタントはどうすればよいのでしょうか?

潮屋:キャリアパートナー制度を設けています。これは、各コンサルタントの「パートナー」を営業部の社員が担当し、コミュニケーションを通じてコンサルタントのキャリア形成や次にどんなプロジェクトにチャレンジするかを相談しながら最大限に叶えていく制度です。

キャリアパートナーは、コンサルタントが希望する案件に参画できるように必要なスキルや経験などのアドバイスをしたり、今後のキャリアパスを一緒に相談します。

もちろん最終的にアサインを決めるのはお客様ですので、コンサルタントが希望する案件に100%アサインできるわけではございませんが、希望を最大限に叶えるためにはどうすれば良いかを一緒に考えます。

コンサルタントにとって、キャリアパートナーが一番最初に相談できる存在だと思ってもらえたら嬉しいですね。

キャリアパートナーの存在は、コンサルタントにとっては非常に大きいですか?

潮屋:キャリアパートナーは、キャリア形成だけではなく、悩みを相談する相手としても機能しています。

コンサルタントが参画している案件には、その案件を担当する営業部の社員もいますが、一緒に仕事をしているからこそ相談しにくい場合もありますので、キャリアパートナーはコンサルタントと会社の窓口のように相談に乗ってくれる「何か困ったときに何でも話せる人」として、力強い味方になります。

会社への貢献を評価の1項目として感謝を伝える

さまざまな制度を設けていますが、こうした制度はトップダウンでつくっているのでしょうか?

潮屋:ビジョンやミッションはトップダウンでしたが、制度は社員からの提案のほか、「キャリラボ」というコンサルタントのキャリア形成やスキル向上を目的とした活動をする有志のチームが提案したケースもあります。

また、社員の評価軸のひとつとして会社貢献を含めています。採用面接の面接官を務めたり、研修資料の作成や講師を担当したり、会社の広報用のYouTubeに出演するといった会社に対するさまざまな貢献を評価に反映することで、会社活動に積極的に参加してくれた社員への評価とともに感謝を伝えています。

社員の働き方において、大事にしている点を教えてください。

潮屋:先述でもお話しした通り、今期より4Eという働き方宣言を全社的に発表し、4つのE(Efficient(限られた時間で成果を出す)、Effective(成果で価値を提供する)、Enjoyable(好きな仕事を心から楽しむ)、Effortless(さりげなくニーズに応える))に対して各現場で工夫を凝らし、限られた時間で成果を出すことの重要性を説いています。

現在、コンサルティング業界では平均で月に約40時間の残業があると言われていますが、当社の平均残業時間は月25時間に抑えられています。今後も、この取り組みを徹底していくことで、残業時間を減らしていくことを目指していきます。

特に、キャリア入社の社員には、残業が常態化していた職場から転職されてくる方もいるので、入社時の研修で働き方に関する考え方を伝え、意識変革を促しています。

1年後には社員数が倍増する予定でも不安はない

今後の展望をお聞かせください。

潮屋:2023年2月時点で当社の社員数は350人ですが、キャリア採用でも毎月20~30人が入社するので、1年後には700人以上になっている予定です。

社員の人数が増えるとよく「会社のカルチャーが壊れないか」や「会社の一体感が損なわれるのでは」という言葉を耳にしたりします。ですが、弊社では、会社の熱量を維持したまま、我々が考える「正しい」スピードで成長をしています。

毎年開催されるGPTW社主催の働きがいのある会社ランキングでは6年連続でベストカンパニーに選出いただき、リンクアンドモチベーション社主催のベストモチベーションカンパニーアワードには3年連続で2位に選出いただきました。

これらの実績理由は、ひとえに「8 Rules」という、ノースサンドという会社で働くうえで最も大事にしている、8つのルールを素直に徹底しているからといっても過言ではありません。700人企業を目前として、今後も地道に継続し、変えるべき点があれば改善しながら、常にチャレンジしていきたいと考えています。

それだけ多くの人材が御社で働きたいと思う理由は、何だと思いますか?

潮屋:当社はコンサルタントのスキル以上に、"人"を重視したコンサルティング会社です。新しく入社いただく社員も、こういった考えに共感できる方にのみ入っていただいています。そのような点に興味や魅力を感じてくれる方が多いからじゃないでしょうか。

多くの人材を受け入れることで、御社のカルチャーが変化する不安はありませんか?

潮屋:不安は感じていません。弊社にはビジョン・ミッション・8 Rulesという共通の価値観があり、これらを徹底的に浸透させたからこそ今のノースサンドがあると考えています。採用の入り口ではカルチャーに共感できる方にのみ入社いただき、入社後もさまざまな施策を通してカルチャーの浸透を図っています。

一見して非合理な挑戦は「バカな」と言われるものだけど…

創業以来、御社はコンサルティング業界では一般的でない「理念経営」を地道に続けてきました。 この取り組みに対して、どのような想いがあるのでしょうか?

潮屋:当社の代表取締役社長CEOの前田(知紘氏)は、経営学者・吉原英樹さんの著書にある「バカな」と「なるほど」という言葉を通して、よく次の話をしてくれます。

"一見して非合理であるような行動をしている際に、周囲から「バカな」会社と思われるかもしれないが、このまま成長し続けることで、「なるほど」と納得してもらえる会社になりたい。"

私はこの想いを広報活動を通じて実現していきたいと考えています。

これからも"人" に徹底的にこだわったコンサルティングサービス・会社運営を通して、世の中にまだない新しい価値を提供していきたいです。

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