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事業と組織にプラス、地元スポーツ支援の魅力とは

タクシー広告や屋外広告でもない。なぜスポーツ「応援」なのか

公開日:2024/11/25
事業と組織にプラス、地元スポーツ支援の魅力とは

スポンサーシップとは、企業がスポーツチームや文化活動、イベントなどに、資金やヒト・モノといったリソースを提供することで、その活動を「応援」する仕組みです。今回は、地元スポーツチームを応援するスポンサーシップに焦点を当て、その魅力や"ビジネス”としてのメリットを伺いました。

お話を伺った人
  • 田端 優さん

    田端 優さん

    税理士法人アーリークロス


地域に貢献しつつ自社の事業にもメリットを得られる、企業のスポーツ支援。多くのファンが熱狂し、地元愛や独特のコミュニティを築くスポーツの魅力を活用し、従業員が楽しみながら取り組めるスポーツの支援活動が、今、注目を集めています。

2024年に野村総合研究所が発表した「企業におけるスポーツ支援の実態把握に関するアンケート結果」によると、東京証券取引所に上場している企業を対象にしたアンケート調査では、何らかのスポーツ支援を実施する企業は、年々増加傾向にあり、とりわけ国内プロチーム・リーグのスポンサー関連の支援を行う企業が増えていることがわかりました。

そこで本記事では、Jリーグのサッカーチーム、アビスパ福岡のスポンサーであり、「オフィシャルDXパートナー」として、専門性を活かしたスポーツ支援を行う税理士法人アーリークロスの田端さんのお話を元に、企業によるスポーツ支援の具体的な内容、得られるメリットなどについてご紹介します。


スポンサー就任、DX支援など企業の強みを生かす

——税理士法人がスポーツ支援をするというのは珍しいのではないかと思います。どのような理由から、サッカーチーム・アビスパ福岡の支援に携わるようになったのでしょうか。

当社は、九州・沖縄地域で創業から事業継承までさまざまなご相談に対応している総合会計事務所です。このエリアでNo.1の会計事務所を目指しており、そうした意味からも地域への貢献、福岡の活性化に会社として取り組むことが重要だと考えていました。

また、法人名の「アーリークロス」は、ゴールをアシストするためにサイドから素早く出すパスを指すサッカー用語でもあります。お客様が事業で「ゴール」を決められるように、早く良いパスを出す存在でありたいという意味が込められた社名は、創業者のサッカー好きが高じて付けられたものでした。元々サッカーに親しみのある会社だったこともあり、ご縁があったアビスパ福岡のスポンサーとなり、さまざまな形で支援をさせていただいています。

——どのような形で、アビスパ福岡の支援に携わっているのですか。

まずはいわゆるチームのスポンサーの就任です。それから、Jリーグが行っている「シャレン!」という活動があり、ここにもアビスパ福岡を通じてシャレンパートナーとして参加しています。

Jリーグは全国にチームがあり、それぞれの地域とのつながりを大事にしながら活動しています。シャレン!は、Jリーグが大切にしてきた地域活性化をより強化するために、まちづくりや教育といったさまざまな社会課題の解決に向けて 、地域の人や企業などと一緒に取り組むものです。

そしてもう一つ、当社はアビスパ福岡と「オフィシャルDXパートナー」を2021年に締結しています。これは、会計ソフトを提供しているマネーフォワードさん、クラウド型の労務管理システムを提供しているSmartHRさん、そしてアビスパ福岡さんと当社の4社で共同で創設したもので、九州の地元企業のDXを協力して推進するための活動です。

——「シャレン!」というのは、具体的には、どのような活動をしているのでしょうか。

例えば、アビスパ福岡主催で、毎月社会活動に関する勉強会を開いています。地域の水害に関する防災、AEDの使い方など一次救命に関する講習、外国の方を雇用する際の考え方など、テーマは多岐に渡ります。会によって多少の違いはありますが、関係する企業の担当者や有識者が講師となって、グループごとに自分たちが企業として・また個人としてそのテーマの課題解決のために出来ることなどを話し合っています。

地域の課題に対して、自分たちが企業としてできることを具体的に考えるきっかけになりますし、それ以外にも、普段はあまり接点のない地元企業の方や、大手企業の方などいろいろな横のつながりが出来る良い場になっていますね。

——DXパートナーというのはどのようなことをしているのでしょうか。

地元企業の事業推進のため、DX推進をお手伝いするものです。

人手不足が深刻化するなかで、企業の成長にはDXをはじめとした省力化は必須になっていますが、一方で中小企業は、大企業と違って、いわゆるDX人材が社内に不在で、何から手をつけていいのかわからない企業が多いのが現状です。

そこで、まさにDXに直結するサービスや商品を提供されているマネーフォワードさんなどと並んで、私たちも税理士法人としての視点を持ちつつ、事業をより成長させるための効率化やIT化などのアドバイスを事業として行っています。

DXパートナーそれぞれの企業の専門性を活かして、九州地域の地元企業がDXに取り組めるようにお手伝いをするという取り組みですね。

スポーツ支援だからこそ得られるスポンサー企業のメリットとは

——地元のスポーツチームを支援することで、企業として得られるメリット、事業にプラスになっているなと感じることは何かありますか。

いろいろとありますが、一つはやはり知名度アップや企業としての信頼獲得には大きな効果があると思います。

スポンサーとして試合中継などで社名が多くの人の目に触れることでの認知度は肌で感じています。実際に、「アビスパ福岡さんのスポンサーですよね?」というお声掛けをきっかけに商談につながるケースもありますし。

——多くの人の目に触れるPRの目的で言うと、他にも選択肢はあったかと思います。スポーツスポンサーシップという手段ならではのメリットはありますか?

おっしゃる通り、タクシー広告や屋外看板などへの広告出稿なども認知してもらう手段ではあります。ただ、これは個人的な意見ですが、認知してもらったうえでの信頼感や親近感の獲得といった意味では、いずれもスポーツスポンサーシップの活動から得られる効果のほうが高いと感じていますね。

もともと福岡というか九州を拠点にする地元企業さんは、「地域をもっと盛り上げたい」という意識の高い会社が多いと思っています。そういった背景もあって、地元のチームを応援する活動は、単に社名を知ってもらう以上の仲間意識というか、信頼感、親近感を持っていただけているのかもしれません。

さらには、直接ではありませんが、私たちは税理士法人としてお客様の事業をお手伝いすることが仕事なので、そもそも多くの企業とつながりができることは会社としてもプラスだと考えているんです。

営業という形で出会うと、関係を構築するところから始まりますが、地元スポーツチームを応援するという共通の話題があると、ビジネスの側面なしに自然な形でお互いの人となりを知ることができます。

シャレン!の活動で出会う企業さんとの懇親会などもあるのですが、仕事の話抜きで会話をして、地元の皆さんと顔見知りになれるのはとてもありがたいことです。ビジネスの関係だけでなく、それこそ何か地域で問題が起きたときには、協力して解決に向けて手を組める関係が構築できるのではないでしょうか。

エンゲージメントが圧倒的に高いのもスポーツ支援だからこそ

——社内的にはどうでしょうか。アビスパ福岡を会社として支援していることを、社員の皆さんはどのように受け止めていますか。また、組織にとってのプラスの影響などはあるでしょうか。

まず、地元スポーツを応援するという取り組みが、社内のコミュニケーション活性化につながっていると思います。例えば新卒採用の社員たちとの試合観戦を企画したり、有志を募って試合の応援に行ったり。仕事以外のことで共通の話題ができるので、良いコミュニケーションのきっかけになっていますね。なかには、アビスパ福岡のスポンサーだと認識したうえで入社を決めてくれた社員もおり、採用活動にも寄与してるといえます。

それから、地元スポーツチームのスポンサーになることは、圧倒的に社員のエンゲージメントを高める手法だとも感じています。私も、入社後に観戦にいってゴール裏に自社の社名を見つけたときは、うれしくてつい写真を撮りました(笑)。もともとサッカー好きというのもありますが、自社を誇りに感じた瞬間でしたし、スポーツスポンサーシップならではの感情だと思いますね。

また、地元活性化への取り組みは社員にとっても目にみえる社会貢献の一つですし、さらにスポーツチームの支援は社員みんなが楽しみながら取り組むことができます。同じ広告予算があったときに、社員の「心」を盛り上げるのは、やはりスポーツ支援だからこそではないでしょうか。

税理士法人としての強みを生かし、さらなる貢献を

——事業的にも、組織的にもスポーツ支援ならではのメリットを感じていらっしゃるんですね。

もちろん、お金を使っている以上、費用対効果はどうなのかという点はみなさん気になるところだと思います。

しかし、地元のスポーツチームを応援するという選択肢を取った以上、定量的な費用対効果を会社として正確に出すのは難しいと思います。

ただ、スポーツ支援をしていることで思いつくネガティブな影響と言うのは、本当にないんです。強いて言うなら、ライバルチームのファンの方に営業しづらいくらい(笑)。結果として幸いにもビジネスにつながる実感も得られているので、私たちとしてはこの取り組みをかなりポジティブにとらえています。

——今後について、新たにスポーツ支援で取り組みたいこと、チャレンジしてみたいことなどはありますか。

企業としての取り組みなので、私たちの事業の強みを生かしたなんらかの貢献ができないかなと考えています。例えば、私たちは税理士法人というお金の専門家集団です。この知見を活かした、お金に関する啓蒙活動などもやっていければうれしいですね。

一般的にスポーツ選手は、学校を卒業して会社に就職するビジネスパーソンに比べて、割と早い段階で大きな金額のお金を手に入れることが多いと思います。それこそ、高校を卒業してすぐプロ契約をすれば、10代で何百万円、何千万円という大金をいきなり持ってしまうことになる。下手をすれば、散財してしまい、後になって困ってしまうことや、引退後のお金に関して不安に感じている選手も少なくありせん。

基本的な税や年金などの仕組みから、将来に向けたお金の管理や運用など、スポーツ選手が生涯を通じて必要になるお金の基礎知識をお伝えできれば、何らかの貢献ができるのではと考えています。

——まさに、税理士法人としてのみなさんの強みを生かした取り組みですね。

そうですね。スポーツスポンサーシップが持続的な関係であるためには、チームとスポンサー企業、どちらかだけに「メリット」があるのではなく、ともに成長することを目的にしなければなりません。

プロの選手とはいえ、お金のことだけでなく、プライベートで何か気掛かりがあったり、心配事があったりすれば、パフォーマンスに影響してしまうこともあるでしょう。

そこで、私たちはお金の専門家としての強みを生かした選手のサポートをするなど、できることはたくさんあるはずです。ひいてはそれが、地域貢献、地域の活性化につながれば、こんなにうれしいことはありません。これからも、自分たちの得意分野を活かしながら、私たちも楽しんでスポーツ支援に携わっていければと思います。

ビズクロ編集部
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