生成AIは人類の救世主?それとも環境破壊への推進役?

水を大量消費するAIがもたらす環境リスクと企業が考えるべきこと

公開日:2024/09/05
生成AIは人類の救世主?それとも環境破壊への推進役?

生成AIは多様なデジタルコンテンツを生み出すことができ、業務効率化や生産性向上などに役立ちますが、環境面のリスクを抱えていることをご存知でしょうか。この記事では生成AIの概要やメリットを踏まえ、環境リスクや企業が考えるべきことをご紹介します。

生成AIとは?

生成AIとはテキストや画像、音楽といったデジタルコンテンツを新たに生み出す人工知能です。代表的なものとして、Open AIの「ChatGPT」やGoogleの「Gemini」などが挙げられます。

従来のAIでも学習内容を構造化したモデルの作成や、特定行為の自動化は可能でしたが、オリジナルコンテンツの自動生成までは対応できませんでした。

一方、生成AIはデータのパターンや関係性などを学ぶことによって、まるで人間が制作したようなコンテンツを生成できるのです。

生成AIの活用メリット

生成AIの活用には以下のようなメリットが挙げられます。

メリット①:業務効率や生産性の向上

クリエイティブ業務に生成AIを導入することで、人間よりもはるかに短い時間で各種コンテンツを制作できます。

情報収集やデータ分析といった作業も自動化できるため、業務効率や生産性を飛躍的に高められるのです。

メリット②:人材不足の影響の最小化

生成AIではさまざまな業務の自動化が実現できるため、その分の従業員リソースを重要な業務に充てることが可能です。

その結果より少ない人手でも業務が回るようになり、人材不足による業務への影響を最小化できるでしょう。

メリット③:新たなアイデアの創出

生成AIによってWeb上に散らばる大量のデータを分析し、そこから示唆を抽出することで、新たなアイデアを創出しやすくなります。

デザインや広告テキストなどのアイデアも大量に生成できるため、これらの内容を参考にすることで、画期的なアイデアを生み出せるかもしれません。

生成AIがもたらす環境リスク

急速な進化と、かつてないほどの驚異的なスピードで普及する生成AIですが、その一方で環境面への負荷が高い側面があることも理解しておかなければなりません。

電力の過剰な消費

生成AIの学習を支えるには、GPU(画像処理装置)サーバーが設置されたデータセンターが必要です。

GPUはCPU(中央処理装置)よりも電力消費量が多いため、生成AIのデータセンターは大量の電力を消費します。

実際2024年1月にIEA(国際エネルギー機関)が発表した「Electricity 2024」では、2022年時点の世界全体の消費電力460テラワットに対して、2026年のデータセンターにおける総電力消費量は1,000テラワットを超える可能性があると示唆されているのです。

これらの電力を発電する際、当然CO2 も大量に排出されるため、生成AIに起因して地球温暖化のリスクが高まる可能性が指摘されています。

[参考:IEA「Executive summary – Electricity 2024 – Analysis」]

冷却のために使われる莫大な量の水

データセンターにおけるサーバー過熱を避けるには膨大な水が必要です。

カリフォルニア大学の研究チームによる調査レポートでは、以下のデータが出ています。

  • MicrosoftがChatGPTを数十日間トレーニングすると70万リットルの淡水が消費される
  • Googleのデータセンターでは冷却のために127億リットルもの淡水が消費される

日本人1人当たりの年間生活用水使用量の平均が約10万リットルであることを踏まえると、いかに水の消費量が多いかがわかるでしょう。

このまま何も対策をせずに生成AIを使えば、深刻な水不足に陥る可能性があるのです。

[参考:arXiv「Making AI Less “Thirsty”: Uncovering and Addressing the Secret Water Footprint of AI Models」]

[参考:TOTO株式会社「Q2 日本では毎日どれくらいの水を使うの? 」]

生成AI活用において企業が考えるべきこと

生成AIはその利便性や機能の裏側に大きな環境リスクを抱えています。

とはいえ生成AIは多くの企業にとって必要なツールとなっており、今さら活用をやめることはできません。

そのため企業は、データサーバーの電力供給にクリーンエネルギーを使っているなど、環境負荷が少ない生成AIを優先して選ぶ姿勢が求められるでしょう。

また無制限に生成AIを活用するのではなく、本当に必要な業務だけに導入するといったように、使用機会を慎重に判断することも必要です。

生成AIは便利!だけど使い方をよく考えることが大事

生成AIはテキストや画像など、さまざまなコンテンツを生み出せる画期的なAIです。

うまく活用すれば業務効率や生産性の向上につなげられ、人手不足の企業であってもスムーズな業務遂行を実現できます。

ただし現時点での生成AIは電力や水を膨大に消費するという課題もあります。

AI開発企業を中心に、さまざまな対策が検討されていますが、ユーザーである企業も環境負荷があることを踏まえ、適切な生成AIの選定や使い道を検討する意識が求められるのではないでしょうか。

ビズクロ編集部
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