日本企業の働きがいや満足度の実態を世界平均と比較して解説
PwCのレポートに見る日本企業の従業員の本音とは?
働きがいや満足度を感じている日本企業の従業員の割合は、世界平均と比較して低い傾向にあります。本記事ではPwC Japanグループが2024年8月に公表した「グローバル従業員意識/職場環境調査「希望と不安」2024」のデータを引用しながら、日本企業の実態や従業員の本音に迫ります。
日本は退職意向を持つ従業員が急増
本レポートによると、日本では「1年以内に転職する可能性が高い」と回答した従業員が29%となっており、グローバル平均の28%を上回っています。
その差は、1%程度と若干ではありますが、その一方で、2023年の同調査によるポイントが20%であることをふまえると、退職意向を持つ従業員が著しく増加していることがわかります。
また新型コロナの影響で「大量離職」が生じた2022年時点(14%)と比較しても、約2倍増加している点も見逃せません。
[引用:PwC Japanグループ「グローバル従業員意識/職場環境調査「希望と不安」2024:絶え間ない変化の中で、成果を上げ続けるにはどうすればよいか?」]
やりがいや充実感が不足しているのが実状
日本で退職意向を持つ従業員が増えている背景には、やりがいや充実感の不足があります。
実際、現在の仕事において「充実感がある」と回答した従業員の割合が、グローバル平均の53%に対して、日本は34%に留まっているのです。
[引用:PwC Japanグループ「グローバル従業員意識/職場環境調査「希望と不安」2024:絶え間ない変化の中で、成果を上げ続けるにはどうすればよいか?」]
また「大変だがやりがいがある」と回答した割合は日本が33%、グローバル平均は49%となっており、こちらも大きな差があることがわかります。
このように日本はグローバルに比べて、従業員がやりがいや充実感を持てないケースが多く、それが退職意向につながっていると推察できます。
転職希望者の過半数がスキル向上の機会を求めている
従業員にとってキャリアアップやスキル向上は重要なテーマの一つと言えます。
しかし「企業は新しいスキルを習得する機会を十分に与えているか」という問いに対して、肯定的な回答をした日本の従業員の割合は約51%に留まっているのです。
その一方、1年以内に転職を検討している日本の従業員のうち、53%が転職の意思決定において「スキルアップの機会の有無を考慮している」と回答しています。
[引用:PwC Japanグループ「グローバル従業員意識/職場環境調査「希望と不安」2024:絶え間ない変化の中で、成果を上げ続けるにはどうすればよいか?」]
このことから日本では、「現在の仕事ではスキル向上やキャリアアップを実現できない」と考えることに端を発し、転職意向を固める従業員も多いと考えられるでしょう。
日本はグローバルに比べ生成AIの活用が遅れている
生成AIを日頃から活用している従業員のうち、グローバルでは76%、日本でも63%が「生成AIの活用が新たなスキル習得の機会となる」と考えています。
ただし日本では、そもそも生成AIの活用がグローバルよりも大きく遅れている実態があります。
「過去1年間に生成AIツールを一度も使わなかった」と回答した日本の従業員は57%であり、グローバル平均の37%より20ポイントも高いのです。
[引用:PwC Japanグループ「グローバル従業員意識/職場環境調査「希望と不安」2024:絶え間ない変化の中で、成果を上げ続けるにはどうすればよいか?」]
また「職場において生成AIの使用が許可されていない」と回答した従業員の割合も、グローバル平均が12%であるのに対し、日本は14%と高い傾向にあります。
報酬への評価も低い傾向に
従業員のやりがいや満足度には、報酬も大きな影響を与えます。
しかし「公正な報酬が支払われている」と回答した日本の従業員はわずか23%であり、グローバル平均の52%より29ポイントも下回っているのです。
[引用:PwC Japanグループ「グローバル従業員意識/職場環境調査「希望と不安」2024:絶え間ない変化の中で、成果を上げ続けるにはどうすればよいか?」]
その一方で経済的なストレスを抱えている割合については、グローバルと日本でそこまで大きな乖離はありません。
たとえば「貯蓄や休暇などに回す余裕がほとんどない」と回答した従業員の割合は、グローバル平均が39%、日本は38%とほぼ同じポイントを示しています。
いずれにせよ日本では報酬面に対する評価が低く、スキルアップの機会提供の少なさなども相まって、退職を考える従業員が増えていると言えるでしょう。
適正な報酬と成長機会の提供が従業員定着のカギに
1995年以降、生産年齢人口が減少し続けている日本では、採用競争の激化や採用手法の多様化・複雑化が生じ、新たな人材を確保することが年々難しくなっています。
こういった状況下では、既存従業員にどれだけ長く活躍してもらえるかが重要な課題となります。
そのため、あらゆる企業は従業員の定着率向上を目指し、やりがいのある仕事や生成AI活用を含めた成長機会を提供するとともに、適正な報酬や待遇を実現していくことが求められるでしょう。
[参考: |PwC Japanグループ「グローバル従業員意識/職場環境調査「希望と不安」2024:絶え間ない変化の中で、成果を上げ続けるにはどうすればよいか?」]