最新の調査結果から見えてきた育休の課題とは?
4割が復職後の職場のサポートは「十分ではない」の現状

国の制度として育児休業(育休)の定着が進む一方で、女性の復職後のキャリア形成や男性の育休取得期間などにおいては、まだまだ制度だけでは解決できない問題が明らかになっています。今回は、最新の調査結果をもとに、育休制度の現状と課題について詳しく解説します。
女性の育休取得|復職後のサポート不足が明らかに
女性の育児休業取得は当たり前になりつつありますが、復職後の職場環境には依然として課題が残されています。XTalent株式会社が実施した「女性の育休実態調査」によると、復職後の職場のサポートが「十分ではない」と感じている女性が4割を超えています。
その背景には、「時短勤務なのに業務量がフルタイムと変わらない」「制度はあっても実際の理解や配慮が不足している」といった声が挙げられています。
[出典:XTalent株式会社「女性の育休実態調査レポート」]
育休中の転職検討が半数以上
また、育休を取得した女性管理職の半数以上が育休期間中に転職を検討していることが明らかになりました。
主な理由として、「働き方への不満」や「昇進・キャリアアップが望めない」といった点が挙げられています。育休制度自体は整備されつつあるものの、復職後のキャリアパスや働き方に関する課題が依然として存在し、多くの女性が、子育てとの両立や将来を不安に感じていることがわかります。
[出典:XTalent株式会社「女性の育休実態調査レポート」]
ネガティブな変化がポジティブな変化を上回る現状
育休取得後、仕事面での変化については、全体回答において、ネガティブな変化があったと答えた70.6%が、ポジティブな変化を感じた51.9%を上回りました。
さらに、女性管理職におけるネガティブな変化については、「仕事の負担は減らしてもらえているが、配慮というより冷遇のように感じる」、「大きな仕事を任されなくなった」、「昇進が見込めない」といった声が挙がっており、これらの経験は、キャリアに意欲的な女性にとって大きな失望につながる可能性もあると言えます。
[出典:XTalent株式会社「女性の育休実態調査レポート」]
男性の育休取得|急速な進展と残された課題
男性の育児休業取得に関しては、近年大きな進展が見られます。
厚生労働省の「令和5年度男性の育児休業等取得率の公表状況調査(速報値)」によると、従業員1,000人超の企業における男性の育休等取得率は46.2%に達するなど、男性の育休取得率は大幅に向上しているものの、取得日数が少ないなど新たな課題も浮上しています。
取得日数の短さが浮き彫りに
同調査結果では、男性の平均育休取得日数は46.5日。女性の95.3%が、6か月以上の育休を取得しているのに比べて(厚生労働省調べ)、男性の育休取得日数はかなり短いことが伺えます。
また、男性の場合、育休の取得率が高くなるほど、平均取得日数が短くなる傾向があることもわかっています。
男性の育休取得を促進させる取り組みとは?
「自社の労働者の育児休業取得事例の収集・提供」や「育児休業に関する研修の実施」を行っている企業では、男性の育休取得率が高い傾向があります。
また、育児休業に関する個別の周知・意向確認を直属の上司が行うことや、電子メールや面談を通じて行うことが効果的であることも明らかになっています。これらの取り組みは、今後の育休制度の改善に向けて重要なヒントとなるでしょう。
[出典:厚生労働省「令和5年度男性の育児休業等取得率の公表状況調査(速報値)」]
[出典:厚生労働省「令和5年度男性の育児休業等取得率の公表状況調査(速報値)」]
真の両立支援に向けて
育休は着実に普及率が高まっていますが、女性に関しては復職後のキャリア形成支援、男性に関しては取得期間の延長が今後の課題となるでしょう。
育児と仕事の真の両立支援を実現するためには、企業と従業員が協力して、柔軟で多様な働き方を模索していく必要があります。
企業側には、単に制度を整備するだけでなく、復職後の働き方や評価制度の見直し、そして育休取得者とのきめ細かなコミュニケーションが求められるでしょう。一方、働く側も自身のキャリアプランを明確にし、企業とオープンに対話を行うことが重要です。