役職が上がるにつれて「部下への意識」が低下する傾向明らかに
ステージごとに異なる管理職の考えや意識を公開
管理職は企業の戦略実行を支える重要な役割を果たします。今回はALL DIFFERENT株式会社が2024年5〜7月に実施した「管理職意識調査」の結果をもとに、管理職の課題感や役割を果たすために努力していることなどについてご紹介します。
管理職に求められるものが変化していると8割が回答
昨今、労働者の価値観や働き方の多様化によって、管理職に求められる役割や業務は高度化しています。実際今回の調査では約8割の管理職が、10年前と比べ「求められる管理職像が変化した」と回答しました。
役割が変化した背景としては、DX推進による職場環境の変化や働き方の多様化により求められる組織づくりへのアプローチも変わってきていること、また、競争激化やデジタル技術の発達などによる市場環境の変化などが要因として考えられます。
ビジネスの不確実性が高まるなかで、事業推進の要となる管理職への期待や役割も変化してきているのでしょう。
[引用:株式会社ラーニングエージェンシー(現ALL DIFFERENT株式会社)「組織・チームのあり方の変化に関する意識調査」]
ステージが上がるほど課題の実感度は低下する
管理職は新任からベテラン、幹部候補と段階的にステージが進むにつれて、課題を実感する度合いが低下します。
[引用:ALL DIFFERENT株式会社「【調査】等級が上がるにつれて「部下を知る努力」低下傾向に」PR TIMES(2024/11/5)掲載]
上記を見ると、就任してから1〜3年目の新任管理職の79.1%が、自身の役割について課題を感じていることがわかります。4年目以上のベテラン管理職になると64.7%まで低下し、さらに部長などの幹部候補となれば53%となるのです。
新任管理職は「部下の観察」と「聞く力の強化」が上位に
各管理職は自身の役割を果たすために何かしらの努力をしていますが、何に重きを置いて取り組んでいるかはステージごとにやや異なる傾向が見られました。
[引用:ALL DIFFERENT株式会社「【調査】等級が上がるにつれて「部下を知る努力」低下傾向に」PR TIMES(2024/11/5)掲載]
新任管理職は部下に対する意識が強いため、以下の点が上位を占めます。
- 部下のことをよく観察する:53.6%
- 聞く力を強化する:53.6%
- 部下の強み・弱みを知る:51.8%
ベテラン管理職も順位こそ違うものの、新任管理職と同様の点が上位を占める結果となっています。しかし幹部候補となると以下のように変化が見られるのです。
- 部下の強み・弱みを知る:47.0%
- 部下のことをよく観察する:43.9%
- 経営の方針を深く理解する:42.4%
部下に関する要素のポイントは若干低下し、経営要素の割合が相対的に増してくる傾向にあるといえるでしょう。
新任管理職は助言を求める一方、幹部は新たな取り組みに努力
求められる役割の変化に伴い、管理職も自分自身の知識やスキルを伸ばす努力をしています。
[引用:ALL DIFFERENT株式会社「【調査】等級が上がるにつれて「部下を知る努力」低下傾向に」PR TIMES(2024/11/5)掲載]
新任管理職は「経営陣・上司・同僚に助言を求める」が54.5%となっており、次点の「新しい知識・スキルを習得するためにセミナーを受講する(36.4%)」と大きな差を付けていることがわかります。
ベテラン管理職は「新しい知識・スキルを習得するためにネットメディアを閲覧・視聴する(37.9%)」「新しい知識・スキルを習得するために書籍・雑誌・新聞を読む(33.6%)」となり、外部の情報を積極的に収集する傾向が見られました。
幹部候補もベテラン管理職と同様の傾向がありますが、「新しい仕事の取り組み方を積極的に試す(40.9%)」が最も多く、他のステージの管理職よりも約20ポイントの差を付けています。
上司とのコミュニケーション機会や自己学習を求めている
管理職のスキルを高めることは企業にとって重要な取り組みの一つです。成長の役に立った会社からの支援に関する調査結果は以下のようになっています。
[引用:ALL DIFFERENT株式会社「【調査】等級が上がるにつれて「部下を知る努力」低下傾向に」PR TIMES(2024/11/5)掲載]
新任管理職は「上司とのコミュニケーションの機会」が40.0%と最も多く、時点に「eラーニング等、自己学習制度(31.8%)」「会社からの役割や期待の伝達(27.3%)」が続く結果となりました。
ベテラン管理職も新任管理職と同様の傾向が見られますが、「職場の雰囲気・文化」が23.3%と割合が高くなっています。
幹部候補は他の管理職と比べ「eラーニング等、自己学習制度(40.9%)」や「経営層とのコミュニケーションの機会(39.4%)」、「上司との定期面談(34.8%)」が突出して高い結果となっているのです。
ステージが上がっても部下を知ろうとする意識は必要
新任管理職は現場従業員との距離感も近いため、部下とのコミュニケーションやマネジメントに対する意識が強い傾向にあります。
しかし徐々にステージが上がるにつれ、現場従業員との接点が減り、逆に上司や経営層との関わりが増えることになります。そのため、どうしても意識が組織や経営方針といった要素に向くことになってしまうのです。
それこそが幹部の重要な任務であるとはいえ、幹部候補の現場を知ろうとする傾向や、課題の実感度の低さは、事業推進や組織づくりにおいて、障壁となることも考えられます。
管理職の育成にあたっては、従業員との定期的な対話機会の創出や、企業側にも管理職に求める能力を本人の「努力による成長」任せにするのではなく、学びの機会を設ける仕組みづくりなどが求められると言えるでしょう。