連結会計とは?連結財務諸表の作成手順・注意点についてわかりやすく解説
親会社・子会社など支配従属関係にある企業の経営成績および財政状態を把握するために行われる連結会計では、連結財務諸表を通して企業の状態を把握するため、連結財務諸表の作成が義務付けられています。本記事では、連結会計の概要や連結財務諸表の作成手順などを解説します。
目次
連結会計とは?
連結会計は、親会社と子会社などの支配従属関係にある企業グループ全体を一つの組織として捉え、その財務状況や経営状況を総合的に報告するための会計手続きです。
連結会計は「連結決算」とも呼ばれ、各企業の個別財務諸表を統合して作成されます。これにより、企業グループ全体の財務・経営状況の正確な把握が可能です。また、連結会計を導入することで、内部の資源配分や経営戦略の策定がより効果的に行えるようになります。
企業にとっては連結財務諸表を通じて透明性が高められ、信頼性のある情報を投資家やステークホルダーに提供できるため、経営の信頼性も向上するでしょう。
▷連結決算とは?対象となる企業や手順・連結財務表の種類について解説
連結会計を行わなければならない企業
連結会計を行わなければならない企業は、原則として、最終事業年度の資本金が5億円以上、または負債の合計が200億円以上の企業です。つまり、国内外の子会社や関連会社を持っていたとしても、この条件に該当しない企業は、連結決算を行う義務はありません。
ただし、義務はなくとも中小企業も連結決算を行うことができます。先述したとおり、連結決算には、企業グループの財務状況を正確に把握したり、不正を防いだりするメリットがあります。そのため、連結決算を行う中小企業は少なくありません。メリットについて詳しくは後述します。
連結会計の対象となる子会社
連結決算の対象となるのは、以下の3つの基準のうち1つでも条件を満たす子会社です。
- 議決権の過半数を保有している
- 議決権の40%~50%を保有し、その他一定の要件を満たしている
- 議決権の0~40%を保有し、その他一定の要件を満たしている
なお、「一定の要件」とは、以下いずれかのうち一つに該当する場合を指します。ただし、上の「3.議決権の0〜40%を保有し、その他一定の要件を満たしている」の場合は、以下の1、および2〜5のうち一つに該当することが条件です。
- 残りの議決権の過半数を親会社とグループ会社が保有していること
- 役員の過半数が親会社とグループ会社の役員で構成されていること
- 親会社に決定権を委ねる契約を締結していること
- 親会社から融資の大半を受けていること
- その他の親会社に従属している事実が確認できること
連結財務諸表とは?
連結財務諸表は、親会社が作成する財務諸表で、グループ全体の経営状況を把握するために、各子会社の個別財務諸表を基に作成されます。連結財務諸表を作成すれば、グループ全体の資産や負債、収益などが一目で分かります。
この章では、連結財務諸表を構成する5つの要素について詳しく説明します。
連結貸借対照表
連結貸借対照表は、親会社と子会社を含む企業グループ全体の資産、負債、純資産を一つにまとめた財務諸表で、グループ全体の経済状況を一目で把握できる照表です。連結貸借対照表は、投資家や経営者がグループ全体の健全性を評価する際に重要な役割を果たします。
連結損益計算書
連結損益計算書は、親会社と子会社を含む企業グループ全体の収益や費用、利益をまとめた財務諸表で、グループ全体の経営成績を表した計算書です。連結損益計算書は、投資家や経営者がグループ全体の収益力を評価する際の参考資料になります。
連結株主資本等変動計算書
連結株主資本等変動計算書は、親会社と子会社を含むグループ全体の株主資本の変動を示す財務諸表で、資本の増減や配当の状況が一目で分かる計算書です。グループ全体の資本構成を明確にし、投資家に対する透明性を高める特徴があります。
連結キャッシュフロー計算書
連結キャッシュフロー計算書は、親会社と子会社を含む企業グループ全体の現金の流れを示す財務諸表です。これにより、グループ全体の資金繰りや投資活動、財務活動の状況を一目で把握できます。連結キャッシュフロー計算書は、企業の現金の動きを透明にし、経営判断や投資判断をサポートする重要な役割を果たします。
連結附属明細表
連結附属明細表は、親会社と子会社を含む企業グループ全体の財務情報を補足するための詳細な資料です。この明細表では、各事業部門の業績や関連会社との取引状況など、連結財務諸表だけでは把握しにくい細かな情報が提供されます。連結附属明細表により、投資家やステークホルダーはグループ全体の経営状態をより深く理解することが可能となります。
連結会計のメリット
連結会計には、企業グループ全体の財務状況や経営状況を正確に把握できるなど、多くのメリットがあります。以下では、連結会計の具体的なメリットについて詳しく説明します。
企業全体の経営状況を把握できる
先述したとおり、連結会計を採用することで、親会社と子会社を含む企業グループ全体の営業成績や財政状態を一目で把握できます。各企業の個別状況だけでなく、グループ全体の強みや課題を明確に理解できるため、効果的な経営判断や戦略立案に役立つでしょう。
企業内部の不正行為を防止できる
連結会計を導入することで、親会社と子会社間の取引が透明化されるため、不正行為を防止する効果が期待できます。例えば、子会社が親会社に不適切な取引を行った場合でも、連結財務諸表を通じてその動きが明らかになり、早期に問題を発見できます。
また、グループ全体で財務情報を共有することで、個々の社員による不正行為を抑制することも可能です。これにより、企業全体の信頼性が向上し、健全な経営環境を維持することができるでしょう。
銀行融資を受ける際の手続きがスムーズになる
連結会計により企業全体の経営・取引状況が明確になるため、銀行が企業の信用力を正確に評価できます。これにより、融資申請時の必要資料が整理され、手続きが迅速に進行します。結果として、銀行融資を受ける際のプロセスがスムーズになり、資金調達が円滑に行えるようになるでしょう。
連結会計の手順
連結会計を正確に行うための基本的な手順について詳しく説明します。
各企業の個別財務諸表を作成する
まずは、各社の財務状況や企業間取引の現状を正確に把握するために個別財務諸表を作成します。
個別財務諸表には、貸借対照表や損益計算書などが含まれ、各企業の収益や支出、資産や負債の詳細が明らかになります。これらの情報を基に、グループ全体の財務状況を統合し、連結財務諸表の作成に進む準備を整えます。
全企業の財務諸表を集計する
次に、全企業の財務諸表を正確に集計します。集計時には、異なる会計基準や期間の違いに注意し、データの一貫性を保つよう努めましょう。
また、内部取引や債権債務の調整を適切に行い、重複や漏れがないように確認することも求められます。これにより、グループ全体の正確な財務状況を反映させることができます。
子会社の連結パッケージを収集する
子会社から親会社に提出される財務情報や各種資料のセットである連結パッケージを入手します。これには、個別財務諸表や取引明細、内部取引の一覧などが含まれます。
パッケージを収集する際には、情報の正確性とタイムリーな提出が重要です。子会社とのコミュニケーションを密にし、必要なデータが漏れなく揃うよう管理しましょう。これにより、連結財務諸表の作成がスムーズに進み、グループ全体の経営状況を正確に把握することが可能となります。連結パッケージの適切な収集は、連結会計の基盤を支える重要なステップです。
連結修正仕訳を行う
次に、連結修正仕訳を行います。前段階の個別財務諸表だけを合算しただけではグループ内の取引状況も含まれてしまうため、相殺する必要があります。この作業が、連結修正仕訳です。
連結修正仕訳は、以下の手順で進めます。
資本連結
資本連結は、親会社と子会社の資本を一つにまとめる手続きです。まず、親会社が子会社の株式を取得し、その持分を財務諸表に反映させます。次に、内部資本の重複を調整し、グループ全体の資本構成を明確にします。これにより、企業グループ全体の財務状況が一目で分かりやすくなります。
成果連結
成果連結は、親会社と子会社の利益や損失を統合する手続きです。まず、各社の利益を合算し、グループ全体の収益状況を明らかにします。その後、内部取引による利益や損失を調整し、正確な経営成績を反映させます。これにより、企業グループ全体の実際の業績を正確に把握することが可能です。
連結財務諸表を作成する
修正仕訳をもとに連結精算表を作成し、連結財務諸表を完成させます。
連結財務諸表作成のポイントは、各企業の財務情報を正確に統合することです。また、内部取引の調整や重複の排除も重要です。会計基準の統一やタイミングの一致にも注意し、グループ全体の正確な財務状況を反映させましょう。
連結決算報告書を作成する際の注意点
連結決算報告書を作成する際には、以下の注意点に留意する必要があります。スムーズかつミスなく作成するためにも、スケージュールを共有したうえで、会計記述を統一させることが大切です。詳しく解説します。
企業全体でスケジュールを共有する
連結決算では各企業の個別財務諸表の作成・収集が必要であるため、企業全体でスケジュールを共有し、遅れが出ないように管理することが大切です。
これにより、連結決算のプロセスが円滑に進行し、正確な財務報告が可能になります。
企業全体で会計基準を統一する
正確な書類の作成や作業効率の向上を図るためにも、企業全体で会計基準を統一することが重要です。同じ基準を用いることで、異なる部門や子会社間でのデータの整合性が保たれ、混乱を避けることができます。
また、統一された基準により、連結財務諸表の作成がスムーズになり、結果として迅速かつ正確な経営判断ができます。
▷【2024年最新】連結会計システムおすすめ11選比較|機能や選定のポイント
連結会計を正確に行うためにはシステムの利用がおすすめ
連結会計を正確に行うためには、専用のシステムを利用することがおすすめです。専用のシステムを利用することで、各企業のデータを迅速かつ正確に集計でき、内部取引の調整や財務諸表の作成がスムーズに行えます。
また、ヒューマンエラーを減少させ、効率的な業務運営も可能になります。ここでは、連結決算を行ううえでおすすめのシステムを3つ紹介します。
マネーフォワード クラウド連結会計
マネーフォワード クラウド連結会計は、企業グループ全体の財務データを簡単に集計・分析できる機能を備えています。ユーザーフレンドリーなインターフェースで操作もスムーズ。また、リアルタイムでデータを更新できるため、迅速な意思決定ができます。さらに、必要な情報を一元管理できるため、複雑な連結処理も簡単に行えるのも大きな魅力です。これにより、正確な連結財務諸表を作成できるでしょう。
提供元 | 株式会社マネーフォワード |
初期費用 | 要問い合わせ |
料金プラン | 要問い合わせ |
導入実績 | 15万社 |
機能・特徴 | 連結パッケージの収集を自動化・効率化、クラウドのため短期間・低コストで導入可能、リアルタイムで経営状況を確認、同時操作も可能など |
URL | 公式サイト |
DivaSystem LCA
DivaSystem LCAは、グループ全体の財務情報を簡単に管理できる機能が充実しています。特に、各企業の財務データを自動で集計し、連結財務諸表を迅速に作成することができるため、手作業の手間を大幅に削減できるでしょう。また、豊富な分析機能も搭載されており、経営判断に必要な情報を瞬時に提供します。さらに、導入サポートが充実しているため、初めての方でも安心して利用を始められます。
提供元 | 株式会社ディーバ |
初期費用 | 要問い合わせ |
料金プラン | 要問い合わせ |
導入実績 | 1,200社 |
機能・特徴> | 連結決算業務のデファクト・スタンダード、個別会計システム、監査法人、開示システムとつながる連結決算・開示エコシステムなど |
URL | 公式サイト |
OBIC7 連結会計システム
OBIC7 連結会計システムは、親会社と子会社の財務データを一元管理し、スムーズに連結財務諸表を作成することができるシステムです。大きな魅力は、使いやすいインターフェースと豊富な分析機能。また、内部取引の調整や修正が簡単に行えるため、業務の効率化が図れます。さらに、実績のあるサポート体制が整っているため、安心して導入できる点もおすすめ。正確で迅速な決算業務が実現するでしょう。
提供元 | 株式会社 オービック |
初期費用 | 要問い合わせ |
料金プラン | 要問い合わせ |
機能・特徴 | 連結データ収集、連結マップ外部データ受入、連結自動仕訳、連結予算管理、連結財務諸表、開示データ作成など |
URL | 公式サイト |
連結財務諸表を作成し正確な経営状況を把握しよう
連結財務諸表の作成は、企業グループ全体の経営状況を正確に把握するために非常に重要な作業です。連結財務諸表の作成することで、各子会社の業績や資産状況を明確に理解でき、効果的な経営判断が可能になるでしょう。企業全体でスケジュールや基準を共有することで、連結会計のプロセスがスムーズに進むため、しっかりとした準備を行うことが大切です。
また、専用のシステムを活用することで、作業の効率化やデータの正確性が向上します。本記事で紹介したシステムを活用すれば、業務のさらなる効率化が図られるでしょう。
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