MDM(モバイルデバイス管理)とは?基本機能や導入するメリット・必要性をわかりやすく解説
業務で利用するモバイル端末を管理するシステム、「MDM(モバイルデバイス管理)」。モバイル端末自体の普及やリモートワークの普及により、MDMの必要性が高まっています。本記事では、MDM(モバイルデバイス管理)とは何か、基本機能や必要性を分かりやすく解説します。
目次
MDM(モバイルデバイス管理)とは?
MDM(モバイルデバイス管理)とは、Mobile Device Managementの略称です。企業が従業員に支給するノートパソコンやスマホ、タブレットなどのモバイル端末を一元的に管理・保護するためのシステムを指します。
例えば、紛失時のリモートロックや、業務に不要なアプリのインストール制限など、企業のセキュリティ向上に役立ちます。ビジネスの現場で不可欠なこのツールは、情報漏洩を防ぐための強力な味方です。
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MDMの必要性
MDMの必要性は、世界的にますます高まっています。
株式会社グローバルインフォメーションの調査によると、世界のMDM市場規模は2023年に108億米ドルに到達しました。2032年には772億米ドルにまで成長すると予測されています。
このデータからも、企業がセキュリティ強化や業務効率化のためにMDMを導入する必要性が急速に増していることがうかがえます。MDMの導入は、今後より一層重要なものとなるでしょう。
[出典:株式会社グローバルインフォメーション「モバイルデバイス管理(MDM)市場レポート:タイプ別、展開タイプ別、組織規模別、業界別、地域別、2024年~2032年」]
MDMの基本機能
MDMの基本機能には、端末の管理やセキュリティ強化など、企業にとって欠かせない要素が多く含まれています。以下で、その具体的な機能について詳しくご紹介します。
モバイル端末の一元管理機能
モバイル端末の一元管理機能は、企業が従業員に支給した端末のハードウェア情報や設定情報を自動で取得し、利用状況を把握するためのものです。端末のアップデートやセキュリティ管理を効率的に行え、業務に適した端末使用ルールの設定や管理も可能になります。
この機能を活用することで、企業全体のセキュリティと業務効率が大幅に向上するでしょう。
モバイル端末の紛失・盗難対策機能
モバイル端末の紛失・盗難対策機能は、企業にとって重要なセキュリティ手段です。紛失や盗難が発生した際、端末の位置を追跡し、遠隔操作でロックをかけることができます。
また、機密情報の漏洩を防ぐために、必要に応じてリモートワイプ(遠隔データ消去)も実行可能です。万が一の事態にも迅速に対応し、企業の情報資産を守れます。
アプリケーションの一元管理機能
アプリケーションの一元管理機能を利用することで、必要なアプリの配信や不要なアプリの削除を効率的に行うことが可能です。
各端末にアプリを割り当て、またその利用状況を把握することもでき、業務に最適な環境を維持しながらセキュリティリスクを最小限に抑えられます。
MDMが普及した背景
MDMが急速に普及した背景には、企業のセキュリティ強化や業務効率化のニーズが大きく関わっています。以下で、その具体的な背景について詳しくご紹介します。
モバイル端末を業務で利用する機会が増えたため
モバイル端末を業務で利用する機会が増える中、端末の初期設定やアプリの管理が次第に煩雑化してきました。特に、複数の端末を一度に管理する必要がある場合、手動での設定や管理は非効率であり、エラーのリスクも高まります。
このような背景から、MDMの導入が進み、端末の一元管理が求められるようになっているのです。
リモートワークなど働き方の多様化が進んだため
リモートワークの普及など、働き方の多様化が進む中で、企業は新たなセキュリティリスクに直面しています。特に、オフィス外での業務が増える分、情報漏洩や不正アクセスのリスクが高まりました。
モバイル端末のセキュリティ対策としてMDMを導入することで、リモート環境でも安全に業務を進められ、情報資産の保護が一層強化されます。
MDMとMAM・MCM・EMMの違いとは?
MDMと類似するツールとしてMAM・MCM・EMMがあります。それぞれの役割や違いについて詳しくご説明しますので、ぜひご確認ください。
MAMとは
MAMとは、Mobile Application Managementの略で、モバイルアプリケーション管理を意味します。MAMは、企業が従業員のモバイル端末内のアプリを効率的に管理するために使用されるシステムです。
例えば、業務に必要なアプリの配信や設定の管理、不要なアプリの制限などができます。MAMを導入することで、企業は端末のセキュリティを強化しながら、業務効率を向上させられるでしょう。
MCMとは
MCMとは、Mobile Contents Managementの略で、モバイルコンテンツ管理を指します。このシステムは、企業がモバイル端末で扱う社内ファイルや資料などのデータを管理し、コンテンツの一括配信を安全に行うためのツールです。その際、アクセス制限や利用履歴の監視を行うことで、情報漏洩を防止します。
MCMの導入により、企業はモバイル環境でも安心してデータの管理や共有ができるでしょう。
EMMとは
EMMとは、Enterprise Mobility Managementの略で、企業のモバイル端末を総合的に一元管理するシステムのことです。EMMは、MDM・MAM・MCMの3つの機能を統合し、端末・アプリ・コンテンツを一括で管理します。
このシステムを導入することで、モバイル環境でのセキュリティと業務効率を高められ、企業全体のモバイル戦略を効果的に運用できるようになるでしょう。
MDMの具体的な活用シーン
MDMの具体的な活用シーンを知ることで、その効果やメリットがより明確になるでしょう。以下で、実際にどのように活用されているかをご紹介します。
内部不正の防止
MDMは、従業員による情報漏洩などの内部不正を防止するために非常に有効です。企業がMDMを導入することで、従業員の操作ログを確認したり、機密データへのアクセス権を厳格に管理したりできます。
また、不正な操作が発覚した場合、迅速に対応できるリモートワイプ機能や端末ロック機能も提供されており、企業の情報資産を守るための強力なツールとなっているのです。
BYODのセキュリティ対策
BYOD(Bring Your Own Device)は、従業員が個人所有のモバイル端末を業務に利用するスタイルで、利便性が高まる一方、情報漏洩のリスクが増大します。
MDMを活用すれば、業務データと個人データを分離管理し、業務に必要なアプリだけを端末に配信するなどの対策ができるため、個人端末でも企業のセキュリティ基準を維持できるでしょう。
従業員の働き方の可視化
MDMは、リモートワーク時に従業員の働き方を可視化するための強力なツールです。企業はMDMを通じて、従業員の勤務時間を正確に管理し、過重労働が発生しないように配慮できます。
また、業務時間中の端末の私的利用を防止する機能も備えており、業務効率を維持しながら、従業員の健全な働き方をサポートします。
このように、リモートワーク環境でも労働環境の適正化とセキュリティを同時に実現できるため、MDMは活用されているのです。
MDMを導入するメリット
MDMを導入することで得られるメリットは多岐にわたります。以下では、その具体的な利点について詳しくご紹介しますので、ぜひご確認ください。
モバイル端末を一元管理できる
MDMを導入することで、企業はモバイル端末の一元管理が可能になります。各端末の設定やセキュリティを一括で管理できるため、管理作業の効率化が図れるでしょう。例えば、端末の初期設定やアップデート、紛失時の対応も迅速に行え、担当者の負担を大幅に軽減します。
このように、MDMは企業全体のIT管理を最適化し、セキュリティリスクを最小限に抑えるための強力なツールです。
セキュリティリスクを低減できる
MDMの導入によって、紛失や盗難による情報漏洩などのセキュリティリスクを大幅に低減できます。
端末を紛失した場合でも、リモートワイプ機能を使ってデータを遠隔で消去することが可能です。また、端末の位置情報を追跡し、迅速に対応できるため、重要な情報資産を守れます。
こうしたセキュリティ対策により、企業は安心してモバイル端末を業務に活用できるのです。
モバイル端末の私的利用を防げる
モバイル端末の私的利用を効果的に防げることもMDM導入のメリットの一つです。
MDMには業務に関係のないアプリのインストールを制限したり、不適切なWebサイトへのアクセスをブロックしたりする機能があります。これにより、業務効率を妨げるリスクを抑え、企業のセキュリティポリシーに準拠した端末の利用が確保されるのです。
MDMは、業務専用の環境を維持しつつ、従業員の端末利用を適切に管理するための重要なツールと言えます。
MDMを導入するデメリット
MDMを導入する際には、注意すべきデメリットも存在します。以下で、そのデメリットについて詳しく解説しますので、導入前にぜひご確認ください。
導入・運用に費用がかかる
MDMの導入と運用には一定の費用がかかる点が、デメリットの一つです。具体的には、ソフトウェアのライセンス費用や、導入時の設定作業、さらに継続的な運用とサポートにかかるコストが発生します。
中小企業にとっては、この初期投資が負担になるかもしれません。しかし、MDMを導入することで得られるセキュリティ強化や業務効率化の効果を考えると、長期的には費用対効果が高いと言えるでしょう。
モバイル端末の利便性が低下する可能性がある
MDMを導入する際、セキュリティ強化のために端末に多くの制限をかけることで、モバイル端末の利便性が低下する可能性があります。
例えば、アプリの使用制限やインターネットアクセスの制限が厳しすぎると、業務に必要な作業がスムーズに行えなくなる場合があります。そのため、セキュリティと利便性のバランスを慎重に考慮することが重要です。
MDM導入の流れ
MDMをスムーズに導入するために、プロセスを理解しておきましょう。ここからは、具体的な導入の流れをご紹介するので参考にしてください。
MDMで管理するモバイル端末の情報を整理する
MDMを導入する際には、まず管理対象となるモバイル端末の情報を整理しましょう。具体的には、各端末のOSの種類やバージョン、台数、接続エリア、利用状況などを把握し、どの端末をどのように管理するかを明確にすることが必要です。
この情報整理がしっかりできていれば、MDMの設定や運用がスムーズに進み、企業全体のモバイル管理が効率化されます。また、無駄なコストの削減や、適切なセキュリティ対策の実現にもつながるでしょう。
モバイル端末の活用方針・利用ルールを決める
MDM導入の前に、企業内でモバイル端末の活用方針や利用ルールを明確に定めましょう。どのような状況で端末を使用するのか、どの機能が必要なのかがはっきりします。
業務専用アプリの使用制限や、外部アクセス時のセキュリティ強化など、具体的なMDMに求める機能を洗い出し、方針とルールを明確にすることで、導入後の運用がスムーズになるでしょう。
MDMを選定・導入する
市場にある複数のMDMソリューションの機能を比較し、自社のニーズに最も適したものを選定・導入しましょう。
適切なMDMを選ぶことで、導入後には企業全体のモバイル管理が効果的に行えるようになります。
MDMの運用を開始する
MDMの選定と導入が完了したら、いよいよ運用を開始します。運用開始時には、各端末への設定やポリシーの適用を行い、従業員に対して利用ルールの周知徹底を図ることが重要です。
利用状況をモニタリングし必要に応じて改善する
MDMの運用開始後は、端末の利用状況を継続的にモニタリングすることが不可欠です。
利用している従業員からの意見を収集し、業務に支障がないか、過度な制限がかかっていないかを確認します。そのうえで、必要に応じて制限の調整やポリシーの見直しを行い、運用の最適化を図りましょう。
MDM導入の際のポイント
MDM導入の際には、いくつかの重要なチェックポイントがあります。それぞれのポイントについて詳しく解説しますので、参考にしてください。
提供形態を確認する
MDMのサービス形態には、「オンプレミス型」と「クラウド型」の2種類があります。
オンプレミス型は、自社サーバーにシステムを設置し社内で管理するため、カスタマイズ性が高く、セキュリティ面での安心感があります。一方、クラウド型は、インターネット経由でサービスを利用するため、導入や運用が容易で、初期コストを抑えられるのが特徴です。
自社のIT環境やセキュリティ要件に合わせて、最適な形態を選ぶことがMDM導入の成功につながります。
対応OSを確認する
MDMを導入する際には、まず自社で利用しているデバイスのOSに対応しているかを確認する必要があります。iOS、Android、Windowsなど、各企業で使用されるOSはさまざまです。MDMがこれらのOSすべてに対応しているかを確認し、対応していない場合は別のソリューションを検討しなければなりません。
対応OSの確認を怠ると、管理対象外の端末が発生し、MDMの効果を十分に発揮できなくなる可能性があるため注意が必要です。
セキュリティ機能を確認する
MDMを選定する際には、自社が求めるセキュリティレベルに応じた製品を選ぶことが非常に重要です。
例えば、デバイスの遠隔ロックやリモートワイプ、暗号化機能など、セキュリティ機能の充実度は製品によって異なります。自社の情報資産をどの程度保護する必要があるかを明確にし、それに対応した機能を持つMDMを選ぶことで、安心して業務を進められるでしょう。
サポート体制を確認する
MDMを選定する際には、製品のサポート体制が充実しているかを必ず確認しましょう。導入後のトラブルや設定の変更、アップデート対応など、サポートがしっかりしている製品を選ぶことで、運用中に発生する問題を迅速に解決できます。
特に、24時間対応のサポートや、日本語でのサポートがあるかどうかは、長期的に安心して利用するための重要なポイントです。
MDMを導入しモバイル端末の管理を効率化しよう
MDMを導入することで、企業はモバイル端末のセキュリティを強化しながら、業務効率を高められ、従業員の働き方にも柔軟に対応できます。
情報漏洩のリスクに備えるべき現代のビジネス環境において、MDMはますます欠かせなくなってきました。MDMを活用して、より安心で効率的なモバイル端末管理を実現しましょう。
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