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組織を「ワンチーム」にする社内運動会の魅力とは?

運動会のプロが社内イベントを課題解決につなげるコツを伝授

公開日:2024/07/30
組織を「ワンチーム」にする社内運動会の魅力とは?

ウィズコロナ時代への移行とともに「リモートから出社」へと、オフィス回帰を図る企業が増えています。そんな中、改めて注目されているのが、“リアル社内イベント”の重要性です。そこで今回は、社内コミュニケーションの活性化はもちろん、運動不足の解消からストレスの発散まで、そのすべてを実現できる社内イベント「社内運動会」をピックアップしました。

お話を伺った人
  • 栗田宰年さん

    栗田宰年さん

    株式会社運動会屋

    セールスマネージャー


玉入れに徒競走、綱引き、ダンス、リレーに応援合戦、と言われて思い出すイベントとは?

そう、「運動会」です!運動会や体育祭は、定番の学校行事の一つですが、そんな運動会を、激アツの社内イベントとして開催する企業が増えています。

チームビルディング効果も期待できる「社内運動会」について、年間200件以上の運動会イベントを手がける運動会のプロ集団「運動会屋」の栗田さんにお話を伺います。

社内運動会は組織を“ワンチーム”にする絶好のイベント

ーー「 株式会社運動会屋」という“ド直球”な社名ですね!事業内容について教えてください。

そうですね(笑)。当社は、飲食店の経営なども行っていますが、社名の通り、主力事業は、企業をはじめとした、さまざまな団体の運動会の企画・運営、そのほか、運動会用品のレンタルなど運動会に関連した事業です。

ーー どのような企業が御社のサービスを利用されているのでしょうか?

社内運動会の開催は、さまざまな業種・規模の企業にご利用いただいていますが、もともと多かったのは、100人から300人規模の企業様です。ただ、1000人規模の開催も多く、大手企業様からのご依頼では、ドーム球場や国際展示場などの大きな会場を貸し切って開催するケースもあります。

最近では、30人から100人規模の企業様や、急成長しているベンチャー企業様などからのお問い合わせやご依頼も増えていますね。

ーー 依頼が寄せられる企業において「共通点」などはありますか?

開催の目的として「コミュニケーションを活性化したい」、「社員同士のつながりを強化したい」といったご要望は、共通して見られるように思います。

最近、社員数が100人未満の企業様からのご依頼が増えてきたのは、まさにコロナ禍後の傾向として顕著ですが、その背景にも、コロナ禍で発生したコミュニケーション不足の課題があるように思います。

一概には言えませんが、数十人規模の組織で毎日オフィスに出社して顔を合わせる環境であれば、おそらくコミュニケーションに大きな問題が発生する企業は少ないかと思います。それが、テレワークなどで対面で接する機会が減ったことで、コミュニケーション不足を原因にした問題が表面化するようになったのではないでしょうか。

組織が急激に拡大した企業様からの依頼が多いのも、新旧の社員の交流や企業文化の浸透などが課題に挙げられています。

もちろん「楽しめるイベント」として、エンタメ性を重視したお祭り型のイベント開催をご相談いただくこともありますが、コミュニケーションの機会が減ることで起きてしまった、チームワーク、横のつながりの欠如や、組織の一体感を取り戻すためのイベントとして、企画される企業様が多いですね。

ーー そのような課題を持つ企業にとって、やはり「運動会」は、絶好のイベントでしょうか?

ほとんどの人が経験したことのある運動会だからこそ、普段交流のない相手ともワンチームの一体感が生まれやすい。


運動会を一度開催するだけで、すべての課題が解決されるわけではありませんが、一体感の醸成やチームワークを強化する絶好の機会というか、スタート地点になることは、断言できますね。運動会は、チームで一丸となって「勝つ」という、とても分かりやすい目標に向かうイベントです。そのうえ、競技や種目が違っても運動会というイベント自体は、ほとんどの人が経験しているので、なんとなく勝手もわかる。好き嫌いの温度差はありますが、「何をどうしたらいいかわからない」という状況にはなりにくいので、普段、交流のない相手とも盛り上がりやすいんです。

なので、営業所など、複数の拠点がある企業の「全員集合イベント」としての開催も多く、普段は接点のない拠点間・部署間の交流を促進したい、という要望もよくいただきます。運動会では、普段接することのない社員同士が同じチームで競技に参加することで、新たな関係性が生まれやすいんです。

成功の秘訣は、課題起点の「誰も置き去りにしない」種目構成

ーー 「好き嫌いの温度差」とおっしゃるように、運動会を苦手と感じる人もいるかと思います。そのような人も楽しめる工夫があるのでしょうか?

そうですね。徒競走やリレーは、運動会の華とも言える競技ですが、運動が苦手な人にとっては苦痛でしかないはずです(苦笑)。

そこで例えば、経営陣の食べ物の好き嫌いや趣味などをテーマにした○×クイズだったり、玉入れでは高いカゴと低いカゴを設置して獲得できるポイントを変える戦略性をプラスしてみたり、など、運動が得意な人も、苦手な人も全員が楽しめて、かつ、社員同士の交流が生まれやすい種目構成を考えるようにしています。

体力勝負だけの競技に偏らず、誰も置き去りにしない、誰もが参加できるような構成にするのは、まず重要なポイントだと思います。

リレーは社内運動会でも盛り上がる競技の一つ。その一方で「全員が楽しめる」競技構成にすることがポイント。

ーー 「コミュニケーションの活性化」など、課題解決を目的として開催する企業が、運動会を成功させる秘訣もありますか?

当社が、社内運動会のサポートをする際は、まずお客様の要望をじっくりとヒアリングすることから始まります。

というのも、チームビルディングにしても、組織内の、「課」レベルなのか「部」レベルなのか、もっと大きいグループでのチームビルディングを目指すのかで、やるべき種目は変わってきます。開催の目的、運動会をすることで、どういった効果・成果を期待するのかを丁寧に聞き取りしてから、1つ1つの運動会を手作りでプランニングしています。

特に、課題解決を目的とした社内運動会の開催であれば、なおさら課題や目的を明確にしたうえでの種目の設定は重要ですね。

ーー なるほど。運動会に限らず、社内イベントは、社員の積極性も盛り上がりを左右すると思います。社員を巻き込む工夫については、いかがですか?

求心力というか、巻き込み方については、正直、「コレ」といった正解を出すのは難しいですね。というのも、そこは企業のカラーによっても大きく変わるからなんです。ある意味「強制」を強調した方が、士気が高まるような企業もあれば、それが逆効果になる場合もある。一方で、種目の合間のお祭りのような華やかな演出や企画が惹きつけに効果的なケースもありますし。

ただ、私たちの経験で言うと、経営陣が積極的に旗振りをしてくれるのと、(企業側の)運営にかかわる社員さんの温度感が高い企業様は、盛り上がり度合いも高いですね。

縁の下の力持ちにもスポットライトを当てられるのが運動会

ーー 御社が開催された社内運動会の具体的な様子も教えてください。

当社の社内運動会の最大の特徴は、"全員参加型"であることです。1日の中で行う競技は、8種目ほどが一般的ですが、その内の3つ程度は、運動が苦手な人や、年齢を問わず楽しめる種目を用意するよう心がけています。

例えば、先ほどお話しした戦略性をプラスした玉入れだったら、どちらのカゴをどう狙うか作戦を立てる時間を設ける。他にも、大玉転がしやクイズ大会など、体力に自信のない人も活躍できる種目を散りばめていきます。

ーーどんな種目が盛り上がりますか?

社員の個性や職場の特徴を活かした独自の競技で言うと、借り人競争や障害物競争は、盛り上がる競技の代表例です。

例えば、借り人競争は、「尊敬する先輩」をお題にして、競技の参加者が上司を連れてきて、仕事で困った時に助けてもらったエピソードを披露することで、普段は見えにくい先輩社員の貢献をみんなで共有し、感謝の気持ちを表現する機会にもできます。

また、日常業務に関連した障害物競争も社内運動会ならではです。経理の社員さんにスポットが当たるように、お札を素早く数える課題、電卓で高速計算を行う課題など、日々の仕事のスキルを競技に組み込みます。過去には、建築会社さんの運動会では、障害物として「丸太切り」を用意したこともありますよ。

こういう工夫で、運動が得意でない社員だけでなく、会社に長く貢献されている縁の下の力持ち的なベテラン社員などが活躍する場面が生まれます。同僚の意外な一面や卓越したスキルを目の当たりにすることで、互いの理解が深まり、職場の一体感が高まるんです。

ーー スムーズな運営のために心がけていることを教えてください。

入念な事前準備が何よりも大切です。イベント当日は、プロのMCや会場を盛り上げる音響チームとの連携を密にし、選手宣誓やルール説明も細部までこだわります。

当日は、全てオリジナルの台本を用意します。打ち合わせを重ねる中、会社の雰囲気や社員の皆さんの人となりなどがわかってきて、その企業様独自の台本が完成します。すると、思わぬ形でいろんな方にスポットが当たる結果となり、唯一無二の運動会となります。これは、リアルイベントならではの醍醐味ですね。

社内運動会は社員を“自社のファン”にする効果も実感

ーー 社内運動会を通して、会社にどんな変化が生まれるのでしょうか?

何より社員のコミュニケーションが活性化しますね。運動会直後は、職場のあちこちで当日の話で盛り上がっているのが常です。

「〇〇さんがいなかったら、綱引きで負けてたよ」 「二人三脚で足を引っ張り合ったのは内緒な(笑)」

そんな何気ない会話が、普段は話さない相手とも自然と弾む。それまではメールでしかやり取りしたことがなかった、違う部署の同僚とも顔なじみになる。コミュニケーションの壁が一気に取り払われるんです。運動会で見せた思わぬ一面が、仕事での信頼関係にポジティブに働くこともありますし。

仕事上の付き合いだけでは分からない一面は、誰しもあるのではないでしょうか? いつも控え目で話しかけづらい雰囲気の人が、徒競走をぶっちぎりの速さで駆け抜けたら、その後、話しかけずにはいられませんよね?もし、関係が険悪な部署同士があってもリレーで一緒に汗を流せば、わだかまりも解消されるかもしれません(笑)。

そういう風に、運動会で芽生えた一体感や、初めて知った意外な同僚の一面などが、日常の人間関係を良い方向に変えていく。社内イベントには、組織の垣根を超えたチームビルディングの効果があると、私は信じています。

ーー 御社の運動会を体験した企業の社員の方々の声もお聞かせいただけますか?

最近いただいた社員の方々のお声の中でも印象的だったのは、新入社員の方の感想です。

コロナ禍で入社された皆さんで、新人研修もオンライン。同期の顔も、先輩の顔も、パソコン越しでしか分からなくて、正直、会社に馴染めるか不安だったそうです。でも運動会で初めて、先輩方と言葉を交わすことができて、自分を温かく迎え入れてくれることを実感できた、と。「こんなに素敵な会社に入社できて良かった!」とおっしゃってくださって、本当に嬉しかったです。

こうした声を聞くと、社内運動会は「会社のファンづくり」ができるイベントなんだなと、実感しますね。

例えば、一般的なZ世代の社会人のイメージとして、飲み会を嫌うとか、仕事以外の場での交流を嫌がる傾向がある、といったドライな印象が聞こえてきますよね。ただ、私が運動会の現場で実際にお声を聞いたりするZ世代の社員の方々は「まさにこういうコミュニケーションができるイベントを待ってました!」という反応がほとんどです。その意味でも、運動会はまさに世代を超えた一体感、ワンチームを目指せる最適なイベントだと感じています。

ーー 運動会の効果はすぐに現れるものなのでしょうか?

効果の現れ方は企業によってさまざまですが、多くの場合、すぐに何らかの変化が見られます。例えば、運動会の翌日から職場の雰囲気が明るくなったという声はよく聞きます。

ただ、本当の効果は長期的に現れてくるものだと考えています。運動会は、社内コミュニケーション改善の「きっかけ」なんです。そのきっかけを活かして、どう継続的なチームビルディングにつなげていくかが重要です。

そのため、私たちは運動会後のフォローアップも重視しています。例えば、参加者アンケートの結果を分析してフィードバックしたりします。

こういった取り組みを通じて、運動会の余韻を長く保ち、その効果を最大化できるようにしています。

アフターコロナ時代の組織づくりを運動会の力で再定義する

ーー コロナ禍で、こういったオフラインイベントの開催が難しくなった際は、どのように対応されたのでしょうか?

今でこそ、社内運動会を再開したり、初めて開催する企業も一気に増えましたが、社員同士の交流機会が激減したことに危機を感じた企業様からの相談は、まさにコロナ禍の最中にも多く寄せられていました。その際に提案していたのが、オンライン運動会です。

ーーオンライン運動会ですか?

はい。当初は私たちも手探り状態でしたが、オンラインでも意外といろんな「競技」ができるんです。

クイズ大会は、最近、スマホで回答できるシステムもあるので、正解かどうかだけでなく、回答の速さをランキングにして競ってみたり、「手に靴下を何枚はめられるか」というゲームや、「家にあるものでしり取り」といったゲームもやりました。

やはり一体感やチームビルディングの効果は、オフラインの社内運動会に劣る感は否めませんが、遠方の支社や在宅勤務の社員、さらには海外拠点の社員まで、場所を問わず参加できる点は、オンライン運動会ならではのメリットだと思います。ある製造業の企業では、国内外の工場を含む全拠点でオンライン運動会を実施し、普段は顔を合わせない社員同士の交流が大幅に増えたと喜んでいただきました。

オンラインの良さもあるので、現在当社では、本社の社員は対面で実施し、地方拠点や在宅勤務の社員はオンラインで参加するオンラインとオフラインを組み合わせたハイブリッド型の運動会も、企業様の要望に合わせて開催しています。

「オンライン運動会」前に準備運動を行う参加者のみなさん。


シリコンバレーも注目!プロの運動会集団が描くビジョン

ーー これから社内運動会の開催を検討している企業に向けて、アドバイスをいただけますか?

まず、運動会の目的を明確にすることが大切です。「部署間の壁を取り払いたい」「若手社員の活躍の場を作りたい」など、具体的な目標を設定することをおすすめします。

次に、全員が参加できる工夫ですね。運動が苦手な人や体力に自信のない人でも楽しめる競技を必ず入れることが重要です。これにより、「運動会」に苦手意識がある人の先入観を払拭でき、より多くの社員の参加を促せます。

そして、準備段階から社員を巻き込むことも効果的です。各部署からメンバーを集めた実行委員会を作って、企画や運営に携わってもらうのが理想ですね。全社的に「自分たちで作り上げたイベント」という意識が芽生え、より主体的な参加につながります。

ーー1回の開催ですべてを変えるのは難しい、というお話もありましたね。

はい。やはり運動会を定期的に開催することをおすすめします。年に1回でも、2年に1回でも構いません。

あとは、運動会当日の盛り上がりを一過性のものにしないようにするのも大切ですね。運動会の様子を撮影した写真や動画を社内で共有したり、参加者の感想を集めて社内報で紹介したり、運動会後のフォローアップで、運動会で生まれた良好な関係性を日常の業務にも活かせるよう工夫することではないでしょうか。

ただ、何より、楽しむことを忘れないでいただきたいです。確かに、目的や効果は大切です。でも、それ以上に大切なのは、社員の皆さんが心から楽しめるイベントにすること。笑顔あふれる1日を過ごせれば、自然とチームの結束力も高まっていくはずです。

ーー 素晴らしいアドバイスをありがとうございます!最後に、運動会屋の今後の展望をお聞かせください。

私たちの最終的な目標は、「運動会を通じて、より良い社会づくりに貢献する」ことです。一見、大げさに聞こえるかもしれません。でも、一つ一つの企業でのコミュニケーションが活性化し、働く人々が幸せになれば、それは必ず社会全体にも良い影響を与えるはずです。

具体的には、まず国内でのさらなる事業拡大を目指します。企業規模を問わず、地方の企業にも、運動会の素晴らしさを広めていきたいですね。

そして、今後は海外展開にも力を入れていきます。すでにインド、タイ、ラオスでの開催実績があり、特にインドでは3年連続で実施しました。最近では、シリコンバレーにも売り込みに行ったのですが、好感触を得ています。個人主義や独立性が重視される文化の中で、「ちょっと面白そうだね」という反応で、チームワークや一体感を醸成する手段として注目してくれたんですね。

また、運動会の効果を科学的に検証し、その結果を企業の人事戦略に活かせるような提案もしていきたいですね。運動会が単なるレクリエーションではなく、企業の成長に直結する重要な施策として認識されるよう、努力を重ねていきます。

私たちの仕事は、単にイベントを企画・運営することではありません。人と人とをつなぎ、笑顔を生み出すこと。そして、その笑顔を通じて、より良い職場環境、ひいてはより良い社会を作ること。それが私たちの使命であり、「運動会」が持つ“チカラ”でもあると思っています。

ルワンダの学校で行われた運動会の様子。日本の運動会が世界の「UNDOKAI」へ!今後の展開にも注目したい。
ビズクロ編集部
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