車両管理とは?目的や業務内容・導入事例についてわかりやすく解説
企業が保有する車両を管理する「車両管理」。従業員の安全確保や事故防止を目的に行われます。本記事では、車両管理とは何か?その目的や業務内容、システムを導入する際のメリット・デメリットなどを解説します。
目次
車両管理とは?
車両管理とは、企業が保有している社用車やリース車などを管理する業務です。具体的には、車両の保守点検や燃費管理、保険手続き、運行記録の整理などを行います。
車両を適切に管理することで、コスト削減や安全性の向上につながります。質の高い車両管理を実践すれば、車両に関係したトラブルも未然に防ぐことができるでしょう。
車両管理の目的とは?
企業における車両管理の目的は、コストの削減や安全性の向上など多岐にわたります。以下に詳しく解説します。
事故・トラブルを防ぎ従業員の安全を確保するため
車両管理の最大の目的は、事故やトラブルを未然に防ぎ、従業員の安全を確保することです。
定期的な点検やメンテナンスを行えば、車両の不具合や故障を早期に発見し、危険な状態での運用を未然に防ぐことが可能です。
企業は車両のオーナーとして、従業員の安全を守る責任があります。安全に車両を利用できることで、従業員は安心して業務を行えるでしょう。
業務停滞・賠償リスクを減らすため
車両管理を適切に行うことは、事故やトラブルによる業務の停滞や、賠償リスクを軽減するためにも極めて重要です。
車両の故障や事故が起きれば、業務が一時的に止まるだけでなく、修理費用や多額の賠償金が発生するリスクが生じます。さらには、企業としての社会的信用の低下にもつながります。
しかし、質の高い車両管理を徹底することで、こうしたリスクを最小限に抑えることが可能となるでしょう。
車両に関わる経費を管理するため
車両管理は経費の削減にも極めて重要です。
例えば、ガソリン代、修理費、保険料など、車両の維持には多くの費用が発生しますが、適切な車両管理はこうした経費を最適化するために役立ちます。
また、車両の稼働状況を把握して余剰な車両があることが分かれば、車両台数を削減でき、大幅なコストカットにつながるでしょう。
車両管理の業務内容
車両管理の業務内容は、車両の保守や運行記録の管理などが主な項目です。それぞれの業務内容について、以下に詳しく解説します。
運転手の管理
車両管理における主な業務の1つめは、運転手の管理です。
実務上では「運転者台帳」と呼ばれる書類にて、以下のような項目をチェックしています。
- 健康状態のチェック
- 点呼の実施
- 運転免許証の有効期限
- 運転記録の確認
- 適切な休息時間の確保
- アルコールチェックの記録
特に、トラックやタクシーといった業務用の車両を運行する場合には、法令で運転者台帳の作成が義務付けられています。なお、白ナンバーの車両には運転者台帳を作成する義務はないものの、運転免許証の有効期限は必ず管理しておきましょう。
[参考:e-gov 法令検索「貨物自動車運送事業輸送安全規則」]
車両の管理
車両管理業務の2つめは、車両の管理です。実務上では、以下のような項目をチェックしています。
- 車検や点検・整備の記録
- 自動車保険の管理
- 燃料使用量のモニタリング
- 最適な車両台数の把握
これらの項目をしっかり管理すれば、車両のコンディションをよい状態に保つことに加え、長期的なコスト削減が可能となるでしょう。また、車両の稼働状況を把握し、自社に適した車両台数を見極めるためにも有効です。
車両管理台帳の作成・管理方法
車両管理台帳とは、保有車両の状況や使用履歴を一元管理するための台帳です。一般的には、以下のような項目をチェックしています。
- 車両本体に関する項目(車名・登録年度・車体番号・型式・定員数・登録番号)
- 購入や配車に関する項目(購入/廃車年月日・新車/中古車区分・リース期間)
- 車検・整備に関する項目(車検有効期限・定期点検記録・整備工場名・整備状況)
- 使用・管理に関する項目(所属・運転者名・管理者・変更履歴)
- 修理・事故履歴
- 保険情報 ・自賠責保険 (保険年月日・保険会社・証券番号・保険金額)
- 任意保険 (保険会社・証券番号・保険期間・保険代理店・保険内容)
なお、台帳を用意する際には、すでに実績のあるテンプレートを流用すれば自社で作成する必要はありません。また、専用の車両管理システムを導入すれば、さらに高度な機能を実現することも可能です。
適切な車両管理のために必要な3つのこと
適切な車両管理を行うためには、いくつか重要なポイントがあります。特に重要な3つの要素について、詳しく説明します。
安全運転管理者を決める
乗車定員11人以上の自動車1台、あるいはその他の自動車を5台以上所有する企業には「安全運転管理者」を設置する義務があります。
道路交通法では、安全運転管理者の条件を以下のように定めています。
- 20歳以上(副安全運転管理者をおく場合は30歳以上)
- 運転管理に関して2年以上の実務経験がある、もしくは公安委員会の認定を受けている
- 過去2年以内に公安委員会から解任命令(道路交通法第74条の3)を受けていないこと
- 「酒酔い・酒気帯び運転」、「飲酒運転にかかわる車両・酒類等の提供・同乗」、「麻薬等運転」、「ひき逃げ」、「過労運転」、「放置駐車違反」、「積載制限違反」、「無免許・無資格運転」、「最高速度違反」、「自動車使用制限命令違反」といった交通違反をした日から2年以内でないこと
なお、副安全運転管理者は20歳以上で管理経験1年以上、または運転経験3年以上とされています。
[参考:警視庁「安全運転管理者等講習について」]
車両管理規程を作成する
企業内での車両運用ルールを定めた文書である「車両管理規程」を用意する必要があります。
車両管理規定の内容は企業ごとにさまざまですが、一般的には以下のような項目が規定されています。
- 安全運転管理者の選任について
- 運転者台帳の作成
- 安全運転の確保
- 車両の保守点検及び整備
- 保険の付保
- 社有車の私的使用について
- マイカーの業務使用 ・事故時の対応
こうした規程を作成すれば、車両の利用やメンテナンス、事故対応などに一貫した基準を設け、トラブルを未然に防ぐことができるでしょう。
車両管理部門・責任者を明らかにする
車両管理を円滑に進めるために、責任を持つ部門や担当者を明確化しましょう。
総務部や管理部に責任を置く企業が多いようですが、実際に社用車を運転する人物は別の部署にいるケースが多いものです。責任の所在をあらかじめ明確にしておくことで、トラブル時の対応をスムーズに行うことができるでしょう。
▷車両管理責任者とは?具体的な業務内容や安全運転管理者との違いを解説
車両管理によくある課題
車両管理によくある課題は、非常に手間がかかる点です。
免許証や保険の有効期限、車検の実施、車両やドライバーの状態チェックなどと業務が多岐にわたるため、どうしても手作業では管理コストが膨らんでしまう傾向があります。
こうした問題を解決するために、近年は車両管理システムを導入する企業が増えています。多くのタスクをシステム化してしまえば、より少ないコストで効率的な経営が可能となるためです。
車両管理システムとは?
車両管理システムとは、企業に求められる車両管理の作業を、一元的に管理できるツールです。
主な機能として、全車両の予約管理、各種日報や日常点検のスケジュール化、走行距離を計測して最適なルートをはじきだす機能などが備わっています。一度システムを導入してしまえば、業務の効率化に加え、従来の車両管理にかかっていた人件費も削減できるでしょう。
特に、2017年の中型トラックを対象としたタコグラフ搭載義務化、2022年の社用車へのアルコールチェック義務化などを受け、多くの業界で車両管理システムの導入が進んでいます。
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車両管理にシステムを導入するメリット
車両管理システムの導入には、多くのメリットが存在します。具体的なメリットについて、以下に詳しく解説します。
車両管理業務を効率化できる
車両管理システムは、車両や運転手の管理、稼働状況などのあらゆる業務を効率化してくれます。
また、手作業によるミスの減少が期待できるほか、遠隔地にいてもリアルタイムで車両管理の状況を把握できるようになるでしょう。結果として、車両管理に伴う管理者の負担が軽減され、労働環境の改善にもつながります。
車両管理・維持費を最適化できる
車両管理システムを導入すれば、管理に費やしていた人件費や作業時間を最適化することが可能です。
また、デジタルキー機能や稼働状況の集計機能などを駆使すれば、配車などの業務をより低コストで実施することにもつながり、車両の維持コストの削減を見込むことができます。
顧客のニーズに合わせた対応が可能になる
車両管理システムによる業務の効率化は、顧客のニーズに応じた臨機応変な対応を可能としてくれます。
車両の稼働状況や運行データをリアルタイムで把握できるため、緊急な依頼やスケジュールの変更にも迅速に対応できるようになり、顧客満足度の向上が期待できます。
また、アルコールチェックや安全運転教育などをより手厚く行う余地が生まれるため、コンプライアンス順守の側面にも良い影響が現れるでしょう。
運転の仕方を見直すきっかけになる
車両管理システムで走行データを分析すれば、より質の高い運転スキルを従業員に浸透させることができます。
ドライブレコーダーでもある程度同じ役割をこなせるものの、車両管理システムでは各車両の個別データを統合し、全体的な分析を行える点に強みがあります。
例えば、GPSでの場所特定、速度センサーを搭載したIoTデバイス、危険運転を感知したら管理者に通知など、ドライバーの運転状況を飛行機における管制塔のように把握することも可能です。
車両管理にシステムを導入するデメリット
車両管理システムの導入には、一定のデメリットも存在します。主な課題や注意点について、以下に詳しく説明します。
導入運用に費用がかかる
車両管理システムを導入すれば、当然ながら初期費用やランニングコストが発生します。
もし、大がかりなシステムを導入する場合には、ソフトウェアパッケージの購入やITインフラの補強が必要となり、初期投資が大きくなる可能性もあるでしょう。
また、導入後にも月額利用料やメンテナンス費用などがかかるため、長期的な費用負担をあらかじめ算定しておく必要があります。
必要性の周知や従業員への教育が必要になる
車両管理システムに興味を示さなかったり、抵抗を表す従業員が出てくるケースもあるでしょう。
そのため、導入効果を最大化するためには研修が欠かせません。企業ごとの事情をよく考慮した研修やサポート体制を用意して、従業員がシステムを気持ちよく使用できるようにバックアップすることが肝心です。
導入当初は「監視される息苦しさ」を訴える従業員も少なくないため、システムの価値や利便性を、あらかじめ周知しておくとよいでしょう。
車両管理システムの導入事例
車両管理システムの導入における成功事例を紹介します。自社の参考としてください。
株式会社手塚商事
ガソリンスタンドの運営と燃料の卸販売、ビルメンテナンス業を運営する株式会社手塚商事は、車両管理システムの導入により、日報にかかる作業時間を約30分短縮することに成功しました。
従来の日報業務は、ドライバーが配送先ごとに時刻や走行記録を紙ベースで記入していましたが、事務的な作業負担が重く、記入ミスも度々発生していました。
そこで、位置情報から日報を自動作成できるシステムを導入したところ、全ドライバーが毎日30分ほどの作業時間を短縮できる仕組みが整いました。現在も新機能を試しながら、更なるドライバーの負担軽減に取り組んでいるそうです。
株式会社京都新聞印刷
印刷工場で新聞を印刷し、京都府・滋賀県内の100を超える販売店へ届けている株式会社京都新聞印刷は、車両管理システムの導入によって問い合わせ数・対応の削減に成功したうえ、日々のレポート業務の効率化を達成しました。
新聞は配達時間が決まった商品であるため、10~15分の遅れで連絡が必要になり、30分以上遅れがあれば、複数の販売店から問い合わせが殺到するような業務特性を持ちます。そこで、車両管理システムにより常に全車両の位置を確認できる手段を整えたところ、トラックの現在地に対する問い合わせが劇的に削減されました。
今後も、自動作成されるレポートに到着時間の週平均・月平均などを表示し、配送コースの最適化に取り組むとのことです。
北海道車輌運送株式会社
北海道全域で物流サービスを提供する北海道車輌運送株式会社は、顧客からの「いつ着くか」という問い合わせに即座に返答できる体制が整ったうえ、運転手の安全意識を向上させることに成功しました。
同社の従来の課題は、自走員の現在地や業務進捗が把握できず、効率的な陸送が実現できなかったほか、安全運転の状況を把握できていない点にありました。
しかし、全車両の現在地を「見える化」できる車両管理システムを導入したところ、顧客からの進捗確認にスピーディに答えられるようになったほか、運転手同士もお互いの位置を確認できることから業務が効率化されました。
今後は、急発進・急停車の回数などを分析して、より安全な物流サービスの実現に努めるとのことです。
システムを導入し車両管理の適正化・効率化を図ろう
車両管理システムを導入すれば、企業の車両管理業務を効率化し、コスト削減や安全性向上をスムーズに実現できます。
従来の紙ベースの管理とは一線を画す効率性により、従業員の負担を軽減しながら正確かつ迅速な業務を後押ししてくれるでしょう。また、自動運転技術や自動車の電子化などの進歩につれ、ますます多機能なシステムになっていくことが予測されています。
時代に沿った車両管理システムを導入し、ビジネスを成長させるために役立ててください。
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