債権管理とは?目的や業務フロー・課題、効率化する方法を簡単に解説
売掛金や貸付金など、企業が保有する債権を適切に管理する「債権管理」。債権管理は企業の資金繰りの健全化や、正確な税務申告に必要なため、適切に実施することが重要です。本記事では、債権管理とは何か、債権管理の目的や業務フロー、課題や効率化する方法をあわせて解説します。
目次
債権管理とは?
債権管理とは、企業が取引先に対して持つ売掛金や貸付金などの債権を管理し、期日通りに回収する業務のことです。
具体的には、取引先の信用状況の確認や請求書の発行、入金確認や支払い遅延時の督促などが挙げられます。債権管理を適切に行うことで安定した資金繰りを維持できるため、黒字倒産のリスクを軽減するとともに、企業の信用力の向上にもつながります。
与信管理との違い
債権管理と与信管理は、どちらも企業における財務の健全性を保つための業務ですが、それぞれ実施するタイミングと役割が異なります。
債権管理は、取引後に発生した売掛金などの債権を回収するプロセスであり、資金繰りの安定を図るのが主な目的です。
一方、与信管理は取引前に取引先の信用力を評価し、取引を行ううえでのリスクを最小限に抑えることを目的としています。
▷債権管理と与信管理の違いとは?課題や効率化のポイントを紹介
債権管理の目的
ここでは、債権管理を行う主な3つの目的について解説します。
債権を期限通りに回収する
債権管理の主な目的のひとつは、企業が持つ債権を期限通りに回収することです。債権を期限通り回収することで資金繰りが安定し、経営の健全性が保たれます。
債権には弁済期が設定されており、債権者はこの期間中に債権を履行しなければなりません。期限を過ぎた未回収の債権は、企業にとって財務リスクとなり得るため、迅速かつ確実な回収が求められます。
具体的には、取引先の支払い状況の監視や、弁済期を過ぎても回収できていない債権に対して督促を行うことで、債権の未回収リスクを最小限に抑えます。
債権の把握漏れを防ぐ
債権の把握漏れを防ぐことも、債権管理の目的です。債権の把握漏れが発生すると、回収すべき債権が未回収のまま放置されてしまい、経営に悪影響を及ぼす可能性があります。
企業規模が大きくなればなるほど、取引先や取引の回数が増加する傾向にあるため、より一層債権を正確に管理することが求められます。すべての債権を正確に把握し確実に回収するためには、システム化や定期的なチェックなどの体制を整えることが重要です。
債権の時効消滅を防ぐ
債権の時効消滅を防ぐことも、債権管理における重要な目的です。時効消滅を迎えた債権は、回収不能に陥るリスクがあります。
以下のいずれかに該当する場合、債権は時効により消滅します。
- 権利を行使できることを知った時から5年
- 権利を行使できる時から10年
回収不能リスクを軽減するためには、各債権の時効期間を正確に把握することに加えて、適時に督促や法的措置を行うことが重要です。
債権管理の業務フロー
ここからは、債権管理の具体的な業務フローを7つのステップに分けて解説します。
取引先を調査する
まずは取引先が信頼できるかどうかを確認するために調査を行います。
具体的には、実在する会社かどうか、反社会的勢力との関わりはないかを確認します。また、財務状況や過去の取引実績、支払い能力についてもチェックしましょう。
取引先の信頼性を事前に把握することで、売掛金の未回収リスクや経営に悪影響を及ぼすリスクを軽減します。
与信限度額を決める
続いて、調査結果をもとに与信限度額を決めます。与信限度額を設定することで、債権が回収不能に陥る貸し倒れリスクを回避したり、損失を最小限にしたりすることが可能です。
与信限度額は、取引先の財務状況や過去の支払い履歴などの信用力を考慮して設定することが重要です。また、同じ取引先の債権残高が増えるにつれてリスクが高まるため、未払の債権がある場合はそれらを積算して判断する必要があります。
契約書を交付する
与信限度額を決めたら、契約書を交付します。
契約書は、債権管理をスムーズに行うことに加え、取引を健全に行うためにも非常に重要です。万が一争いになった場合は、契約書が取引における法的根拠として扱われます。
契約書には決済の方法や期限、取引における条件、トラブルが発生した際の対応方法などを記載しておく必要があります。
請求書を発行・送付する
実際に取引が行われたら、請求書を発行・送付します。
請求書は売上計上後、支払期日の2〜3週間前には取引先に到着するように送付しましょう。これは、企業によって財務状況や支払いに関するルールが異なり、すぐに支払えるとは限らないためです。
事前に取引先の担当者とコミュニケーションを取り、無理なく支払いができるスケジュールや要望を確認しておくのもひとつの方法です。
債権管理表を作成する
債権管理をスムーズにするため、債権管理表を作成しておきましょう。売掛金を管理する際に役立つ資料として「売掛金残高一覧表」と「売掛金年齢表」が挙げられます。
売掛金残高一覧表は、取引先ごとに現在の売掛金残高がわかるように記載した一覧表です。一方、売掛金年齢表は、各売掛金がいつ発生し、いつ入金されるのかを月毎の時間軸で管理する表です。これらを照らし合わせることで、債権の見落としを防止し、現在の状況をリアルタイムで把握できるようになります。
なお、上場企業の場合は、会計監査において債権管理表の提出を求められるケースが多いため、日頃からしっかり管理しておく必要があります。
入金完了分の入金消込を行う
入金が完了したら、その都度入金の消し込みを行っていきます。
入金の消し込みとは、取引先からの入金を確認し、売掛金と照合して支払済代金として記録する作業です。入金消込によって、各取引先に未回収の債権があとどれだけ残っているかを正確に把握できます。
入金消込が正しく行われていないと、債権の現状把握が困難になり、二重請求や請求漏れが発生することがあるため注意が必要です。
支払い期日を過ぎた分は督促をする
支払期日を過ぎた分は、段階を追って督促を行います。
何らかの手違いが発生している可能性もあるため、まずは現状の確認から行う必要があります。この時点で支払いに応じない場合は、書面による通知や取引先への訪問などの方法に切り替えて督促を行います。それでも支払いに応じない場合は、裁判による回収を検討する必要があるでしょう。
いずれにせよ、支払期限を超過した案件には督促の労力やコストが発生するため、日頃から与信管理・債権管理を徹底しておくことが重要です。
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債権管理の課題
債権管理には、主に2つの課題が存在します。ここでは、具体的にどのような課題があるのかを見ていきましょう。
手作業での債権管理は人為的なミスが起こりやすい
手作業による債権管理は、人為的なミスが発生しやすい課題があります。債権管理は、取引ごとに発生する債権の管理・回収・時効の確認など、作業が煩雑になりがちです。
取引先が多くなるにつれて、どうしても入力ミスや確認漏れが起こりやすくなってしまいます。このようなトラブルは、企業としての信用や資金繰りに悪影響を与える可能性があるため、システムの導入や自動化などの対策を講じるのが理想です。
複数拠点ある場合は一元管理に手間がかかる
複数拠点を持つ企業では、債権の一元管理に手間がかかる点も課題です。
拠点ごとに独立して管理している債権データを本社に集約する手間に加え、全体の債権状況を把握する際に2重チェックや詳細情報の確認作業が発生します。データの整合性・正確性を保つためには、多大な時間と労力が発生することは避けられません。
複数拠点がある企業は、これらの時間と労力を削減するためのシステム導入が求められるでしょう。
債権管理を効率化する方法
債権管理はミスが発生しやすく、管理が煩雑になりがちです。ここでは、債権管理を効率化する3つの方法を紹介します。
債権管理の専門部門を設定する
債権管理を効率化する方法のひとつとして、債権管理の専門部門の設置が挙げられます。債権管理には専門的な知識やスキルが必要なため、他の業務と兼任すると正確性に欠ける可能性があります。
専門部門を設置することで専門性を高めると同時に、業務を行う担当者たちも債権管理業務に集中しやすくなり、結果的にミスの少ない効率的な債権管理が実現できます。また、責任の所在が明確になるため、組織として管理しやすくなる点もメリットです。
債権管理の方法・ルールを決める
債権管理の方法やルールを明確化しておくことも効率化につながります。
具体的には、債権管理表に記載する項目やテンプレート、保存場所や閲覧対象者などを決めておくと良いでしょう。方法やルールが明文化されていることで、一貫性と追跡性を兼ね備えた管理体制を構築できます。
加えて、これらのルールが関係者に浸透するよう、いつでも閲覧できる社内規定などに反映し、周知しておくことも大切です。
債権管理システムを導入する
債権管理の効率化には、専用システムの導入も有効です。
債権管理システムとは、売掛金の把握・入金確認・督促業務などをシステム上で一元管理することで、債権管理業務を効率化できるツールです。
システムを導入することで手作業による人為的なミスを軽減できるほか、リアルタイムでの債権状況の把握・管理が可能になります。また、複数拠点の管理も容易になり、各部門間の情報共有がスムーズに進むため、業務効率の向上や資金繰りの健全化が期待できます。
債権管理の必要性
最後に、債権管理における2つの必要性について確認しましょう。
資金繰りの健全化に必要
債権管理は、企業が取引先からの売掛金を確実に回収し、資金繰りを健全化するために必要不可欠です。債権が未回収のまま放置されたり、回収不能に陥ったりすると、企業の財務状況に少なからず悪影響を与えます。
適切な債権管理を行うことで、債権の支払い遅延や未回収を防ぎ、安定した資金繰りが実現できます。
正確な税務申告に必要
債権管理は、正確な税務申告を行うためにも必要不可欠です。売掛金や未収金などの債権は企業の収益として計上されるため、税務申告にも影響を与えます。
債権が正確に管理されていなかった場合、申告内容に誤りが生じ、過少申告や過大申告などが発生する可能性があり、企業の信用問題に関わるおそれもあるでしょう。
適切な債権管理を行うことは、税務申告の際に正しい情報を提供すること、ひいては税務リスクの回避にもつながります。
債権管理の必要性を理解し適切に実施しよう
本記事では、債権管理の目的や進め方、効率化する方法などについて解説しました。債権管理は、企業の資金繰りの健全化や正確な税務申告において欠かせない重要な業務です。
債権管理の目的や必要性を正しく理解することに加え、自社の課題に応じた対策を講じ、適切に実施していきましょう。
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