リファレンスチェックの違法性とは?法に抵触するケースや進め方を解説
業務遂行スキルやコミュニケーションスキルなど面接や書類では分からない候補者情報を収集する「リファレンスチェック」。採用におけるリスクを下げるために実施されますが、リファレンスチェックに違法性はないのでしょうか。本記事では、リファレンスチェックの違法性について解説します。
目次
リファレンスチェックとは?
リファレンスチェックとは、採用候補者の過去の仕事ぶりや人柄について、実際にその人と一緒に働いた経験のある第三者から情報を集めるプロセスです。候補者本人が書類や面接で伝える内容だけでは見えない「働き方」や「人間関係の築き方」を確認するために行われます。
リファレンス先には主に前職や現職の上司、同僚、部下が推薦者として選ばれることが一般的です。リファレンスチェックは、採用判断の精度を高める重要な手段として注目されています。
リファレンスチェックで収集できる情報
リファレンスチェックでは、候補者の職務能力、コミュニケーション能力、社交性、信頼性の4つについて具体的な情報を得られます。それぞれについて解説します。
候補者の業務遂行スキルに関する情報
リファレンスチェックでは、候補者が過去にどのような成果を上げたかや、仕事に対する姿勢について詳しく知ることができます。また、具体的な業務スキルや専門知識のレベル、課題への取り組み方も確認可能です。
候補者が新しい職場でどの程度即戦力として活躍できるか、またどのような成長が期待できるかを判断する材料となります。過去の具体例を基にした情報は、採用のミスマッチを防ぐうえで非常に有益です。
候補者のコミュニケーションスキルに関する情報
リファレンスチェックでは、候補者が職場でどのようにコミュニケーションを取っていたかを知ることができます。例えば、チームメンバーと積極的に意見交換を行っていたか、円滑に連携を図っていたかなどが確認可能です。
これらの情報は、候補者が新しい職場で良好な人間関係を築けるかどうかを見極めるうえで大いに役立ちます。特に協力が重視される職場環境では、重要な判断材料となるでしょう。
候補者の社交性に関する情報
リファレンスチェックでは、候補者がチームメンバーと協力できていたか、またどのように協調しながらプロジェクトに取り組んでいたかを確認できます。さらに、チーム全体の目標達成に向けてどの程度努力していたかも明らかになるでしょう。
この情報は、候補者が新しい職場で協調性を発揮できるか、また職場環境に適応しやすいかを判断するうえで重要な指標となります。
候補者の信用に関する情報
リファレンスチェックでは、候補者が職場でどの程度信頼されていたかを知ることができます。例えば、業務の期限をしっかり守っていたか、職場のルールや規律に従って行動していたか、さらに同僚や上司から「信頼できる人物」として評価されていたかなどが確認可能です。
こうした情報は、候補者が新しい職場でも信用を築き、安定した成果を出せるかを見極める重要なポイントになります。信頼性はチームや組織の成功に直結するため、欠かせない要素です。
リファレンスチェックの違法性
リファレンスチェックは、採用判断を補助するための正当な調査であり、適切な手順を踏めば違法にはなりません。ただし、候補者の個人情報を扱うため、本人の同意を得たうえで実施することが重要です。
また、個人情報保護法に則った運用をするために、目的外の利用や不当な質問は避けなければなりません。こうしたルールを守ることで、リファレンスチェックは安心して活用できる有益な手段となります。
リファレンスチェックが法に抵触するケース
リファレンスチェックは便利な手法ですが、法律を守らずに行うと問題になることがあります。どのようなケースが該当するのか確認しましょう。
候補者の同意を得ていない場合
リファレンスチェックを候補者の同意なしに行うことは、個人情報保護法や職業安定法に違反します。これらの法律では、個人情報の収集や利用には本人の同意が必要であると定められているからです。
同意を得ずに実施するリファレンスチェックは、候補者のプライバシーを侵害する行為とみなされるため、法律違反に問われます。
リファレンスチェックで収集した情報を第三者に提供した場合
リファレンスチェックで得た情報を第三者に提供することは、個人情報保護法に違反する行為です。この法律では、収集した個人情報を事前の同意なしに他者へ開示することを厳しく制限しています。
情報を提供した場合、候補者のプライバシーが侵害され、企業としての信頼性が損なわれるだけでなく、法的責任を問われることになるでしょう。リファレンスチェックを適切に運用するためには、情報の取り扱いに十分注意し、守秘義務を徹底することが求められます。
リファレンスチェックを理由として内定を取り消した場合
リファレンスチェックの結果を理由に内定を取り消すことは、解雇権の濫用とみなされ、違法行為に該当する可能性があります。
労働契約法では内定も雇用契約の一部とされ、正当な理由なしに取り消すことは認められていません。そのため内定後のリファレンスチェックによる内定取り消しは不当とされやすく、訴訟リスクを伴います。慎重な判断と適切なタイミングでの実施が重要です。
不適切な質問をした場合
リファレンスチェックで本籍や出生地、家族構成、家庭環境など、採用選考に直接関係のない質問をすることは、就職差別に該当する可能性があります。こうした質問は、候補者のプライバシーを侵害するだけでなく、法的に問題視されることが多いため避けるべきです。
採用に必要な情報収集は公平かつ適切に行わなければならず、不適切な質問はトラブルや法的リスクを招く原因となります。
違法にならない適切なリファレンスチェックの進め方
リファレンスチェックを適切に行うためには、法律を守りながら公正で透明性のある手順を踏むことが重要です。その進め方を解説します。
個人情報を管理する体制を整える
リファレンスチェックで得た個人情報を適切に扱うためには、明確な管理体制を整えることが不可欠です。従業員や外部委託先に対する情報管理のルールを定め、不要になったデータは速やかに削除することが求められます。
また、不正な取り扱いを未然に防ぐため、採用担当者には事前に研修などを行い、リファレンスチェックにおける違法行為やそのリスクを十分理解してもらうことが重要です。企業としての信頼性を確保しつつ、法令を遵守した採用活動を進めることが可能になるでしょう。
リファレンスチェックの必要性を伝え候補者の同意を得る
リファレンスチェックを実施する際は、候補者にその目的と必要性を明確に伝えたうえで同意を得ることが重要です。候補者の理解を深められるよう分かりやすく説明を行いましょう。
また、事前に同意を得ることは法律を遵守した運用をするために必要です。透明性を持った説明が信頼関係を築き、スムーズなプロセスにつながります。
候補者本人に推薦者を選んでもらう
リファレンスチェックを円滑に進めるためには、候補者本人に推薦者を選んでもらうことが効果的です。候補者が信頼する前職の上司や同僚を推薦者として選ぶことで、適切で正確な情報が得られる可能性が高まります。
また、推薦者に対しても、候補者同様にリファレンスチェックの目的や必要性を丁寧に説明し、事前に同意を得ることが重要です。双方の安心感を確保しながら、合法的かつ公正に進められるでしょう。
最終面接前にリファレンスチェックを実施する
リファレンスチェックを理由に内定を取り消すことは、解雇権の濫用とみなされ違法となる可能性があります。
そのため、最終的な採用判断に影響を与えるリファレンスチェックは、内定の前段階である最終面接前に実施しましょう。リファレンスチェックの結果を採用プロセスに組み込みやすくなり、内定後のトラブルを防げます。
適切なタイミングで実施することで、採用プロセスをスムーズかつ合法的に進めることが可能です。
リファレンスチェックを拒否された場合の対応
候補者からリファレンスチェックを拒否された場合、採用プロセスをどのように進めるべきか適切な対応策を考える必要があります。どのような対応方法があるかを見ていきましょう。
他の形で情報収集をする
リファレンスチェックが難しい場合、卒業証書や源泉徴収票、年金手帳などを用いて候補者の過去の経歴や学歴を確認するのも一つの方法です。これらの公式な書類は信頼性が高く、客観的な情報を得るのに役立ちます。
また、カジュアル面談や適性テストを活用することで、候補者の人柄やスキルを直接確認する方法も効果的です。これらの代替手段を組み合わせることで、採用判断の精度を高められるでしょう。
担当者を変えて再度面接をする
候補者が提示した情報に誤りがないか確認するために、担当者を変えて再度面接を行う方法があります。
異なる視点や質問内容で面接を進めることで、候補者の説明に矛盾がないかを確認できたり、より詳細な情報を得られたりする可能性が高まるでしょう。公平性を保ちながら候補者を深く理解するのに役立つはずです。
また、複数の担当者の意見を採用判断に反映させることで、より客観的で信頼性の高い判断が可能になります。
拒否している原因を解決する
リファレンスチェックを拒否される場合、その原因を丁寧に解決することが重要です。
まず、この調査が候補者の強みを確認するポジティブな目的であることを伝え、収集した情報は適切に管理され、他の用途には使われないと保証します。
また、今の上司や同僚以外の第三者を推薦者として選んでもらう提案をすることで、候補者が抱える不安を軽減できるかもしれません。候補者の視点に立った柔軟な対応を心掛けましょう。
推薦者に拒否された場合
推薦者にリファレンスチェックを拒否された場合は、その概要や主旨を丁寧に説明することが大切です。候補者の場合と同様に、ポジティブな目的で行われることや得た情報が厳重に管理されることを明確に伝えれば、理解を得られる可能性が高まります。
さらに、推薦者の負担を軽減するために、具体的な質問の範囲や回答方法を事前に共有することで協力を促すことも効果的です。
リファレンスチェックのトラブルを回避するための注意点
リファレンスチェックを行う際には、法的リスクや候補者・推薦者とのトラブルを未然に防ぐための注意点を理解することが重要です。最後に、トラブル回避のための注意点を確認しましょう。
内定後に虚偽の情報が見つかった場合は法律の専門家に相談する
内定後のリファレンスチェックで候補者の虚偽の情報が発覚した場合、法的な対応が必要となるケースもあります。このような状況では、まず法律の専門家に相談した方がよいでしょう。
専門家の助言を受けることで、労働法や雇用契約に基づいた適切な対応策を講じることが可能になります。また、虚偽の内容による内定取り消しが正当かどうかを判断するための法的な根拠を明確にすることも可能です。
専門会社に依頼する場合のリスクや注意点を理解する
リファレンスチェックを専門会社に依頼する際には、いくつかのリスクに注意が必要です。例えば、専門会社が不適切な調査を行った場合、その責任が依頼した企業にも及ぶ可能性があります。
また、候補者の同意を得ずに個人情報を提供することは法律に違反するため、必ず事前に専門会社を利用する旨を候補者に伝え、同意を得ることが必要です。
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SNSを活用したリファレンスチェックは実施しない
SNSを利用したリファレンスチェックは、候補者の同意があったとしても避けましょう。SNSの情報は個人情報保護法や職業安定法に抵触する可能性があり、法的リスクを伴うからです。
また、SNS上の情報は信憑性や文脈が不明な場合も多く、採用判断の基準として適切でないこともあります。採用活動は透明性と公平性を重視することが重要であり、リファレンスチェックは合法的かつ信頼性の高い手法で行うべきです。
違法にならない適切なリファレンスチェックを実施しよう
リファレンスチェックは、候補者の適性を見極める重要な手段ですが、法律を遵守し、透明性のある方法で実施することが求められます。候補者や推薦者の同意を得たうえで、個人情報を慎重に取り扱い、公平な手続きで進めることが大切です。
これらを徹底することで、トラブルを未然に防ぎ、信頼できる採用活動を進めることが可能になります。適切なリファレンスチェックを実施し、採用の成功につなげましょう。
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