WAFとは?仕組みや機能・セキュリティ対策について初心者にもわかりやすく解説

2024/09/03 2024/09/04

WAF

WAF

WAFとは

Webアプリケーションを狙ったサイバー攻撃に有効な「WAF」。サイバー攻撃が多発している近年、自社サイトを保護するためにはセキュリティの強化が必要です。本記事では、WAFの仕組みやFW・IPSとの違い、必要性などをわかりやすく解説します。

WAFとは?

WAFとは、「Web Application Firewall」の略で、Webアプリケーションの脆弱性を狙った攻撃からWebサイトを守るためのセキュリティ対策です。SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティングといったさまざまな攻撃をブロックし、サイトの安全性を高めます。

WAFは、企業のオンラインサービスを守るために欠かせない存在と言えるでしょう。

WAFの必要性

WAFが必要とされる理由は、近年Webアプリケーションの脆弱性を狙ったサイバー攻撃が急増しているためです。被害の拡大を防ぐためには、セキュリティを強化する必要があります。

株式会社サイバーセキュリティクラウドの「2024年第1四半期Webアプリケーションを狙ったサイバー攻撃検知レポート」によれば、2024年1月〜3月に、1日に約220万回のサイバー攻撃が検知されています。

[出典:株式会社サイバーセキュリティクラウド「2024年第1四半期「Webアプリケーションを狙ったサイバー攻撃検知レポート」を発表」]

WAFとFW・IPSの違い

サイバー攻撃のセキュリティ対策には、WAFの他にFW(ファイアウォール)とIPSと呼ばれるものがあります。ここでは、それぞれの特徴やWAFとの違いについて説明します。

FW(ファイアーウォール)

FW(ファイアウォール)は、ネットワークレベルで行うセキュリティ対策のことです。WAFとは防御するレイヤーが異なり、IPアドレスやポート番号といった、送信元と送信先の情報をもとにアクセスの可否を判断します。

ファイアウォールをインターネットと社内ネットワークの間に設置することで、悪意ある攻撃や不正な通信を防ぎ、情報資産を守ることができます。

WAFとファイヤーウォールの違いとは?仕組みや対策できる攻撃について解説

IPS

IPS(不正侵入防止システム)は、プラットフォームレベルで行うセキュリティ対策です。WAFがWebアプリケーションに特化しているのに対し、IPSはOSやミドルウェアを狙った攻撃など、さまざまな種類の攻撃を検知することができます。

IPSは、ネットワーク内の異常な動きを素早く察知し、攻撃を未然に防ぐことで、企業の重要なデータやシステムを守ります。

WAFの仕組み

WAFの仕組みは、アクセスパターンを記録したシグネチャを用いて、Webアプリケーションへのアクセスを照合し、通信の可否を判断するものです。これにより、悪意のあるアクセスをブロックします。

シグネチャにはブラックリスト型とホワイトリスト型の2種類が存在し、ブラックリスト型では拒否する通信のみを、ホワイトリスト型では許可する通信のみを定義します。

WAFのシグネチャとは?仕組みや設定方法・課題について簡単に解説

WAFの主な機能

ここでは、WAFの主な機能について見ていきましょう。

シグネチャの自動更新機能

シグネチャの自動更新機能は、WAFが常に最新の脅威情報に基づいてWebアプリケーションを保護できるようにする重要な機能です。この機能により、シグネチャが定期的に自動で更新され、最新の状態を維持できます。

特にクラウド型WAFでは、標準機能として搭載されていることが多く、管理者の手間をかけずに効果的なセキュリティ対策を実現します。

Cookieの保護機能

Cookieの保護機能は、ユーザーが訪れたサイトの履歴や入力したデータ、IDや利用環境などを記録したCookieを暗号化し、安全に保護するための機能です。これにより、第三者による不正なアクセスや情報の漏洩を防ぐことができます。

Cookieには個人情報や認証情報が含まれるため、Webアプリケーションのセキュリティを強化する上で非常に重要な機能と言えるでしょう。

特定URL除外・IP制限機能

特定URL除外機能は、警戒が不要なWebページを防御対象から除外することで、不要なブロックを防げる機能です。IP制限機能は、特定のIPアドレスや国からの通信をブロックすることで、不正アクセスや攻撃のリスクを低減します。

これらの機能により、Webアプリケーションのセキュリティが強化され、必要な部分だけを効率的に保護することが可能となります。

レポート機能

レポート機能は、WAFが検知・遮断したサイバー攻撃の詳細を確認できる機能です。どのような攻撃が行われたのか、その内容や頻度を把握することができます。

この機能により、セキュリティ対策の効果を評価し、今後の改善策を講じるためのデータとして活用できます。

WAFの種類

WAFの提供形態は、大きく「ホスト型」「ゲートアウェイ型」「サービス型」の3つに分けられます。どのような違いがあるのか、それぞれの特徴を見ていきましょう。

ホスト型WAF(ソフトウェア型WAF)

ホスト型WAF(ソフトウェア型WAF)は、既存のWebサーバーに直接ソフトウェアをインストールして使用するタイプのWAFです。この方式では、サーバー内部で直接通信を監視し、攻撃を検知・遮断します。

ホスト型WAFは、ハードウェアを追加しないため比較的低コストで導入できるのがメリットです。ただし、Webサーバーごとに保護する必要があるため、台数が多くなるとその分コストがかさみます。

ゲートウェイ型WAF(アプライアンス型WAF)

ゲートウェイ型WAF(アプライアンス型WAF)は、ネットワーク機器として独立して設置されるタイプのWAFで、ネットワーク型とも呼ばれます。この方式では、Webサーバーとインターネットの間に専用の機器を配置することで、すべての通信を監視・制御することが可能です。

ゲートウェイ型WAFは、複数のWebサーバーを一括で保護するのに適しており、大規模な企業や複雑なネットワーク環境で広く利用されています。独立して動作するため、他のシステムに影響を与えず、高度なセキュリティ対策を提供できる点が特徴です。

サービス型WAF(クラウド型WAF)

サービス型WAF(クラウド型WAF)は、ベンダーが提供するWAFをSaaS(Software as a Service)などの形態で利用するタイプのWAFです。ユーザーはインターネットを介してWAFの機能を利用できるため、導入や管理が非常に簡単に行えます。

自社で専用のハードウェアやソフトウェアを用意する必要がなく、導入コストを抑えることが可能です。また、ベンダー側で最新の脅威情報に基づいたシグネチャの更新が自動で行われるため、常に最新のセキュリティ対策を利用できます。

クラウド型WAFとは?仕組みや防げる攻撃・オンプレミス型との違い、おすすめ製品を比較

WAFで防げる攻撃の種類

WAFは、さまざまなサイバー攻撃からWebアプリケーションを守るツールです。ここでは、WAFで防げる攻撃の種類について説明します。

バッファオーバーフロー

バッファオーバーフローは、Webサーバーに対して許容量を超える大量のデータを送りつけ、システムの誤作動やクラッシュを引き起こすサイバー攻撃です。この攻撃手法により、サーバーが乗っ取られ他のサーバーへの攻撃に悪用されるおそれがあります。

WAFは、送信されるデータのサイズや内容を監視し、異常な動きを検知した際にはアクセスを遮断することで、Webアプリケーションを保護します。

クロスサイトスクリプティング

クロスサイトスクリプティング(XSS)は、SNSや掲示板サイトなど、ユーザーが入力操作できるWebサイトに悪質なスクリプトを埋め込むサイバー攻撃です。罠が仕掛けられたWebアプリケーションに表示されるリンクなどによって誘導され、標的のWebサイトにアクセスするとスクリプトが実行され被害を受けてしまいます。

これにより、パスワードが盗み取られてしまい、アカウント乗っ取りやネットバンキングでの不正送金などが発生する可能性があります。WAFは、このような悪質なスクリプトの挿入を検知し、Webアプリケーションを保護することが可能です。

SQLインジェクション

SQLインジェクションは、データベースを操作する言語であるSQLを悪用して、データベース内の情報の消去や改ざん、情報の流出を狙うサイバー攻撃です。攻撃者は、Webアプリケーションの入力欄に不正なSQLコードを挿入し、データベースに直接アクセスすることで情報を盗み出します。

SQLインジェクションはWebアプリケーションの脆弱性を狙った攻撃のため、WAFでの対策が効果的です。

OSコマンドインジェクション

OSコマンドインジェクションは、Webサーバーへのリクエストに不正なOSコマンドを注入し、サーバーに不正な命令を実行させるサイバー攻撃です。この攻撃により、攻撃者はサーバー上で不正なプログラムを実行したり、ファイルの操作を行ったりすることができます。

結果として、サーバーの乗っ取りや機密情報の漏洩といった重大な被害が発生するおそれがあります。WAFは、こうした不正なリクエストを検知し、攻撃を防ぐことが可能です。

DDoS攻撃

DDoS攻撃は、対象となるWebサーバーに対して複数のコンピューターから大量のパケットを一斉に送りつけ、正常なサービス提供を妨げるサイバー攻撃です。この攻撃により、サーバーがダウンしてしまい、Webサイトやオンラインサービスが一時的に利用できなくなることがあります。

Webアプリケーションの前面に設置して盾となるWAFは、DDoS攻撃にも有効です。異常なトラフィックを検知・遮断し、外部攻撃からWebサイトを守ることができます。

ブルートフォースアタック

ブルートフォースアタックは、パスワードの考えられるすべての組み合わせを総当たりで試し、正しいパスワードを見つけ出すサイバー攻撃です。特に短くて単純なパスワードの場合に突破されやすく、攻撃者は自動化されたツールを使用して不正なアクセス試行を繰り返します。

アカウントに不正アクセスされてしまうと、機密情報や個人情報が盗み出されてしまう可能性があります。WAFには一定回数以上のログイン試行をブロックするなどの機能があるため、このような攻撃からシステムを守るのに有効です。

ディレクトリトラバーサル

ディレクトリトラバーサルは、本来アクセスされることを想定していない非公開情報が保存されているファイルに、不正な手段でアクセスするサイバー攻撃です。攻撃者は、特定のディレクトリ構造を利用して、Webサーバー上の機密ファイルや設定情報に不正にアクセスし、情報を盗み出すことを狙います。

これにより、重要なデータが漏洩し、企業や個人に深刻な被害をもたらす可能性があります。WAFは、このような不正アクセスを検知・遮断することが可能です。

WAFで防げる攻撃とは?導入時のポイントやセキュリティ対策について

WAF導入時に注意すべきポイント

最後に、WAF導入の際に注意すべきポイントを4つ紹介します。

誤検知の可能性がある

WAFのセキュリティレベルが過度に厳しい場合、誤検知が発生し、正常な通信までも遮断する可能性があります。特定の正当なリクエストが攻撃と誤解されることで、サービスの利用に支障をきたす可能性があるでしょう。

このような誤検知を防ぐためには、WAFの設定を適切に調整し、定期的に監視・チューニングを行うことが重要です。

Webサイトが停止するリスクがある

新たな不正アクセスが発生した場合、WAFのシグネチャをチューニングする必要が生じることがあります。

シグネチャを利用したWAFは、自動アップデートによって最新の攻撃にも対応できるようになっていますが、自社のWebサイトが攻撃された場合は担当者やベンダーがチューニングしなければなりません。その際に、Webサイトが一時的に停止するリスクがあるのです。

このようなトラブル時のリスクを最小限に抑えるには、Webサーバーを分割し、それぞれにWAFを導入するのも一つの方法です。

すべての攻撃を防げるわけではない

WAFは強力なセキュリティ対策ですが、すべての攻撃を防げるわけではありません。例えば、botによる不正ログインや、OS・ミドルウェア・ネットワークに対する攻撃など、WAFだけでは対応できない脅威も存在します。

そのため、他のセキュリティシステムと組み合わせ、より万全なセキュリティ対策を構築することが重要です。多層的な防御を施すことで、企業の情報資産を守り、不正アクセスやデータ漏洩のリスクを最小限に抑えることができます。

想定以上にコストがかかる可能性がある

WAFを導入する際には、初期費用や月額費用が発生します。また、ネットワーク構成の再構築などが必要な場合、予想以上の高額な費用がかかることもあるでしょう。

特にオンプレミス型では、インフラ整備や運用コストが増大する可能性があります。その点、クラウド型WAFは初期コストを抑えられるのがメリットです。ただし、利用する帯域が増えるにつれて料金が上がるため、長期的な費用を考慮することが大切です。導入時には、総合的なコストを見積もり、最適な選択をすることが求められます。

WAFの導入・運用時の課題とは|スムーズに運用するためのポイントを解説

WAFを導入しアプリケーションをサイバー攻撃から守ろう

WAFは、Webアプリケーションをサイバー攻撃から守るための重要なセキュリティ対策です。しかし、WAFだけですべての脅威を防ぐことはできません。複数のセキュリティ対策を組み合わせて、万全な防御体制を整えることが求められます。自社にとって最適なWAFを導入し、企業の大切な情報資産をしっかりと守りましょう。

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