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持続性ある働きがいの源泉はコンカー流フィードバック 相手を思いやるフィードバックで「高め合う文化」を浸透

取材日:2024/10/22

お話を伺った人

  • 田中由香さん

    田中由香さん

    株式会社コンカー

    管理部 総務グループ/チーフカルチャーオフィサー(CCO)

この事例のポイント

  1. フィードバック文化の熟成にはコーチャビリティの強化も必須
  2. ポジティブフィードバックは公に、ギャップフィードバックには対案を

働きがいがあるから、社員が成長して業績が向上

まずは、7年連続の中規模部門での1位獲得、10年連続のベストカンパニー賞の受賞、おめでとうございます。ご感想を伺ってもよろしいですか?

田中:ありがとうございます。 当社の「働きがい」への取り組みは、コンカーが創業して2〜3年目(2013年頃)に、当時の社長の三村が、「日本一働きがいのある企業」を目標として掲げたのが始まりです。

私自身、入社して間もないころだったのですが、当時は、社員数20人足らずの会社だったので、正直「大それたことを言うな」と思っていました(笑)。ですが、その宣言から三村がチームを作っていく過程を見ていく中で、だんだんと「社員の一人ひとりが会社の目標に向かっていく組織になってきている」のを目の当たりにして、これは決して“大それた夢”ではないな、と。そして、初めて「No.1」の夢が実現したときには、涙が出るほど嬉しかったですね。その後も認定が続くことで、そのころからの夢や志を社長も社員も等しく持っているという自信になりますし、毎年ひやひやしていましたけれども、7年連続で一度も落とすことなかったことを嬉しく思っています。

社内や社外から、どういった声や反響が届いていますか?

田中:コンカー製品を通じて出会う企業様から、「御社の働きがいについて聞きたいんですけれども」というお声掛けをいただくことが増え、当社の施策を共有することも多くなりました。社内の反応は、”誇り”になっていると感じていますし、「ずっと認定企業でありたいよね」という共通認識があります

なぜ、働きがいの創出に力を入れているのでしょうか?

田中:当社は、「業績が高いから働きがいがある」とは考えません。逆なんですね。「働きがいがあるから、社員が成長して業績が上がっていく」、働きがいを高めることは「経営戦略の一つ」だと考えているのです。

また、「働きがいのある会社」認定へのエントリーは、「グランプリを取る」ことが目的ではなくて、組織の健康診断のようなものだと思っています。ざまざまな質問項目を分析して弱点を知るために応募している一面もあるのです。

働きがい創出は、御社にとって重要な「経営戦略」の位置付けなのですね。国内ではまだ耳慣れない「チーフカルチャーオフィサー(CCO)」という役職も、そういった背景からでしょうか?

田中:そうですね。CCOという役職は、私からの発信なのですが、組織づくりをするにあたっては、カルチャー醸成は欠かせませんし、実際にやってみると、それだけで正式な職務になるほどの仕事であることがわかります。

もともと私は、人事でもなく、広報でもなく、製品グループで翻訳の仕事をしていました。コンカーの製品はアメリカで開発しているので、英語版の製品のマニュアルやユーザーインターフェースをローカライズする業務ですね。

でも、カルチャー醸成は、本腰を入れてやるべき仕事ですし、それだけの価値がある仕事だと思ったので、「CCOの役職をください」と直談判しました。2018年に、翻訳業務と兼任で始め、2020年に専任になりましたが、めったに同じ肩書きの方とは会えませんね。

「高め合う文化」を構成する3つの柱

御社は「高め合う文化」を標榜しています。具体的な指標や行動指針をお教えください。

田中:「高め合う文化」には、「感謝しあう文化」「教え合う文化」「フィードバックする文化」という具体的な3本の柱があり、”相互に成長する”ことを促しています。

感謝し合う文化の代表的な施策が、コンカーが所属しているSAPグループ内で感謝をしたい同僚や部下、上司に感謝のメッセージをオンライン上で送ることができる「SAP Appreciate」です。以前はコンカー内で「感謝の手紙」という名称で実施していた施策でしたが、グループ会社のSAPと同じ仕組みを利用することになり、グループをまたいだメッセージ送付と自分の好きなタイミングで行えるようになりました。こういった制度は、おそらく珍しいものではないかもしれませんが、運営が「強化期間」を定期的に設けて奨励していることが当社の特徴です。

次が、教え合う文化です。これは、社員が先生になって開催する様々なワークショップですね。ワークショップのテーマは、業務に関わることでなくても構わないので、動画編集が学べる会などもあります。

時には、人に教えることで、プレゼンテーションスキルを伸ばしたり、練習の場にもなったり。社員同士の交流の場でもあるので、心理的安全性の確保にもつながっていると思います。

3つめのフィードバックする文化は、”コンカー流フィードバック”として出版された書籍にもなっていますね。

田中:はい。“コンカー流フィードバック”は、前代表の三村が書籍を出版したこともあり、3つの柱の中では、社内外で一番知られていると思います。

そもそも、フィードバック研修を行うようになった経緯は、三村がコンカーを立ち上げた当時、即戦力を重視して人を集めたことで、「文化」が度外視されるようになり、徐々に不平不満が蓄積するようになった時代の経験から、と聞いています。その時に、改めて「文化」の大切さに気付かされた、と。

でも、愚痴も建設的な言葉(フィードバック)で会社に伝えれば、問題改善のきっかけになるわけです。そこで「フィードバックで盛り上げられる会社になろう!」と動き出したそうです。

そうなると、フィードバックの仕方を学ぶ必要があります。そこからフィードバック研修を開発して、これまで醸成してきたという流れですね。今では、「ノーフィードバック ノーコンカー」という合言葉が、組織に根付くまでになっています。

フィードバック講座では、具体的にどういったことを学ぶのでしょうか?

田中:「フィードバック講座」は6時間に渡るボリュームのある講座なのですが、一部をかい摘むと、コンカーにおけるフィードバックのプロトコルなどを学びます。

プロトコルとは、例えば、「ポジティブなフィードバック90%に対して、ギャップフィードバックは10%」といった、コンカー流フィードバックのお作法のようなものです。

ギャップフィードバックの「ギャップ」は、当社では、「ダメ出し」ではなく、「理想と現状の相違」という観点でのフィードバックとしているため、ギャップという言葉を選択しています。

フィードバックというと、”ダメ出し”のイメージを持つ人も多く、そこから“粗探し”が始まるケースも少なくないかと思います。しかし当社では、フィードバックが新しい施策を考える機会や原動力になるようにしています。フィードバックによって、新しい施策へのチャレンジが始まり、そして、再度フィードバック、というサイクルで、相手の成長にブーストをかけるようなイメージですね。

また、フィードバックをする側と受ける側、双方が、他者からの助言に心を開いて、苦言も自己の成長につなげるスキルとされているコーチャビリティも学びます。

これらの考え方をフィーバックの基礎として入社時に学ぶのですが、その後も、組織全体で年に一度のフィードバック実施調査を行っています。

カルチャーを組織に根付かせるための取り組みや気をつけていることはありますか?

田中:1年に一度のフィードバック実施調査が”鍵”になっていると思います。もちろん調べただけでは実態を確認しただけで終わってしまうので、”なぜできてないのか”を詳しく分析して新しい施策をどんどん打っていきます。

具体的な例でいうと、新型コロナウイルス感染症の流行で当社もオフィス勤務からリモート勤務へと働き方を変えたのですが、顔を合わせる機会が減ったことで、意図せずとも日常的にあったフィードバックの機会も減ってしまっていることがわかりました。

そこで新設したのが「リモートワーク・コンカーStyle」です。リモートワーク時のルールのようなものですが、押しつけがましく息苦しいものにならないようStyleという言葉を選んでいます。

その一つに「フィードバックコンカーStyle」があり、

  • 上司との1on1の最後に自分からフィードバックを聞くこと
  • 他社様とのZoom会議の後に社員だけ残って振り返り会をその場でやること
  • ポジティブフィードバックを意図的により伝えていくこと
といった「コンカーStyle」を言語化して、ガイドにしてもらっています。このように、調査結果から見えたことを、一つ一つ丁寧に解決していくことで、文化が単なる飾りにならないようにしています。

コンストラクティブフィードバックで問題を探し、合宿で解決

日頃のフィードバックの取り組みとなると、いかがでしょうか?

田中:日頃の取り組みとしては、週1回、上司・部下の間で行われている1on1ミーティングでしょうか。ここで必ず「フィードバックありますか?」というやり取りがされています。特に、チームで進めているタスクがあれば、仲間を称えるコメント(ポジティブフィードバック)は盛んに交わされますね。

また、 年に1回「コンストラクティブフィードバック」という匿名の調査もしてます。会社に対する建設的なフィードバックを集めるためのアンケートなのですが、意見がある人だけが書いてしまうとノイジーマイノリティの言葉が目立ってしまうので、回答率95%を超えるまでは社員に回答の催促をしています。

コンストラクティブフィードバックで集まった改善要求は、経営陣から社員に回答をすることもあるのですが、社員全員が会社の課題について考える「合宿」も行っています。合宿のディスカッションテーマとしてアンケートの改善の方法を取り上げ、社員のアイデアから新しい施策として採用しています。

合宿でのディスカッションを通じて、どのような改善が行われているのでしょうか?

田中:例えば、「なぜフィードバックがしづらいのか」というアンケートの質問に対して、「相手が受け止めてくれないのではないか」という相手のコーチャビリティを疑う回答がありました。その声は「コーチャビリティの学びや、スキルを伸ばす機会が十分ではないのでは?」という課題を提起してくれたものですよね。

そこで、「コーチャビリティを高める」が合宿のテーマとなり、コーチャビリティの高め方や、自分自身のコーチャビリティの振り返り、コーチャビリティ力を測るテストの必要性などを議論しました。

合宿で問題が改善されていくのですね

田中:そうです。リモートワーク中の新入社員のキャッチアップの難しさを議題にした合宿もあります。

変わって、今年は、週3日程度の出社を奨励するようになったのですが、リモートワークに慣れたこともあり、出社に対する意見がコンストラクティブフィードバックで寄せられてきています。

出社への方針転換は、本国からの指示でもあるため、「では在宅勤務でいいですよ」とはならないのですが、少しでも納得してもらったうえで、シフトしたいと思っています。そのため、次回の合宿では、「出社による組織への効果・メリット」をテーマにして出社の必要性を議論する予定です。

モチベーションを引き出すポジティブフィードバック

フィードバック文化が組織に根付くことでどういったメリットがあるでしょうか?

田中:コンカー創業期の話に戻るのですが、社員が愚痴を言っていても会社は変わらないどころか空気が悪くなるだけです。

ですが、愚痴には、改善の気づきやチャンスが含まれていることも多々あるんです。それをただ不満として抱え込んでしまっているだけでは会社が成長する機会を失ってしまいます。愚痴を伝えることは、会社が伸びる可能性でもあり、それが組織面での大きなメリットになるのです。

当社のコンストラクティブフィードバックには、「ギャップフィードバックには、建設的な対策を必ず書き添えること」というルールがあります。単に「嫌だ」というだけの意見は書くことができず、改善のアイデアを添えなければいけない。これが、愚痴を単なる不平不満ではなく、気づきや改善につなげるポイントです。

では、ポジティブフィードバックはどう消化されていくのでしょうか?

田中:実は、 日頃「良いと思っていること」は、改めて伝えたり口にしたりしないものです。でも、「良いと思っている」もしっかり伝えないと、そのうち「変えた方がいいんじゃないか」と、淘汰されてしまうことがあり、我々も同様の経験をしました。

だから、「続けていい」を口にすることにも、大きな意味があると思いますし、コンカー流フィードバックには、「ポジティブなフィードバックは、人前で行う」というプロトコルもあるので、賞賛は本人のモチベーションにもなるし、前向きな組織風土の醸成にも貢献していると思います。

では、事業面でフィードバック文化のメリットを感じることありますか?

田中:当社は、やりがいと働きやすさを足したものが「働きがい」だと考えています。

社内アワードなどによる特別報酬制度は当社も取り組んでいますし、やりがいやモチベーションにポジティブなインパクトを与えますが、一方で、金銭的な報酬による"やりがい”は持続性が短いとも言われています。

私自身、アワードの賞金を1年後も日常的に思い出すか?と言われると怪しいです(苦笑)。でも、その時の評価の言葉や褒め言葉は忘れないものではないでしょうか?

もちろん、金銭的報酬と褒め言葉のどちらかだけでいいというものではないのですが、やっぱり金銭だけじゃなく、日々のポジティブフィードバックは働きがいにつながりますし、そのモチベーションは事業面にもプラスに働いていると実感しています。

社長交代後に目指すコンカーの未来像

現状感じている課題と、今後の展望をお教えください

田中:組織面では、社長が交代し、それに伴ってパーパスも一新されるという大きな変化がありました。新しいパーパスは、合宿で社員全員で考えたものを元に作ったものではありますが、さらなる理解と共感を強めていきたいと思っています。そのために立ち上げたタスクフォースもあり、全社員会議で発表の場を作っていたり、ワークショップを開くなどの活動を進めています。

事業面の展望はいかがですか?

田中:事業面の展望は、橋本(代表取締役社長・橋本祥生氏)が記者会見などで発表させていただいたことですが、AIとビッグデータを活用したサービスの強化を今後の大きな目標・方針として掲げています。

具体的には、ソリューションとして、「キャッシュレス」「入力レス」「ペーパーレス」「承認レス「運用高度化」の5つの「レス」を掲げています。

また、AI不正検知サービス「Verify」も導入される予定です。申請内容と領収書の内容の整合性、領収書の画像の使い回しの有無について、精度高くチェックするサービスになりますが、これは2025年の春にリリースされることが決まっています。

世界で約9,300万人の方に利用していただいているコンカー製品の強みを、今後は、ビッグデータの活用といった領域でも存分に活かしながら、「経費精算のない世界」の実現に向けて、より良いサービスの提供を目指していきたいと思っています。

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