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フリーランス型正社員で社員と会社双方にプラスを フリーランスの自由と会社員の信用・安定を両立させる働き方

取材日:2023/06/13

DX支援事業を手掛ける、株式会社メタップス。フリーランスと会社員、双方のメリットを享受しながら働ける「フリーランス型正社員」について、制度導入の目的など、詳しくお話を伺いました。※本文内、敬称略

お話を伺った人

  • 阿夛浩孝さん

    阿夛浩孝さん

    株式会社メタップス

    プロダクト開発部門長兼re:shine事業責任者

  • 香東真琴さん

    香東真琴さん

    株式会社メタップス

    人事総務部/採用PR/社長室広報

この事例のポイント

  1. 自由と安定を両立しながら、フリーランスのように働く正社員
  2. フリーランスのメリットを損なわないよう注意し制度を設計
  3. サービス価値向上やタレントプール、企業にとってもメリット

フリーランスと会社員、両方の良い面を取り入れた働き方とは

「フリーランス型正社員」について、制度の内容を教えてください。

阿夛:フリーランス型正社員は、フリーランスと会社員、双方の良いところの両立を目指した働き方です。

フリーランスは、働く場所や時間など、働き方を自分で決めることができる一方で、一般的には、会社員が持っている社会的な信用や社会保障による安心がありません。

当社のフリーランス型正社員は、エンジニアなどの技術職を対象に、フリーランスの自由度を残した上で、会社員ならではのメリットを享受できないかと作った仕組みなんです。

我々メタップスと雇用契約を結ぶので、会社員としての社会的な信用がある肩書きをもち、雇用保険や厚生年金といった社会保障制度の枠組みに入ることが可能です。そのうえで、一般社員とは異なる内容の就業規則に従う必要がありますが、労務管理上問題のない範囲であれば、働き方に対する縛りは特にありません。

お仕事の中身はどうなるのでしょうか?

阿夛:基本的には、その方個人が元々持っている案件や、自分で新規に獲得したお仕事をしています。

ただし、個々の仕事に関して契約を結ぶのは、発注元のクライアント様とメタップスです。フリーランス型正社員はあくまでメタップスの社員としてその仕事に携わります。

メタップスとして持っている案件を依頼することもあるのでしょうか?

阿夛:仕組みとしてはもちろんあり得るのですが、みなさん安定した仕事をすでに持っていて、さらに好きな仕事をしたいという方が多いので、今のところはメタップスから仕事をお願いするというケースはあまりないですね。

フリーランス型正社員は、現段階では、フリーランスとしての実績がある程度あり、自分で案件の獲得や仕事の管理ができる人が対象になっているので、私たちが別で持っている案件をお願いすることが前提の制度ではないんです。

ただし、自分で獲得した仕事以外は一切しない制度、ということではありません。仕事がなくなったり、案件が途中で終わったりした場合に、ちょっとこっちの仕事手伝ってもらえませんかと声をかけることはもちろん可能です。

給与体系はどうなっているのでしょうか。

阿夛:給与は二階建ての仕組みになっています。携わった案件に関する売り上げの8割が給与原資となり、ベースとなる基本給とインセンティブという形でお支払いしています。残りの2割を、会社負担の社会保障関係の費用や、労務管理などのコストとしてメタップスがいただく仕組みです。

ただ、インセンティブを含めたひと月の支払い金額には上限があり、それを超えた分は積み立てて賞与や退職金としてお支払いしています。

フリーランスのメリットを損なわないように制度を設計

非常に細かく制度設計されているんですね。そもそも、どうしてフリーランス型正社員という制度を作ろうと思ったのでしょうか。

阿夛:5年ほど前、私自身が転職を考えたことがきっかけです。ちょうどそのころ、社内で一つのプロダクトを終え、今後のキャリアについていろいろと考えていたんです。元々エンジニアとしてずっと開発をやってきたので、フリーランスという道も一つの選択肢として検討していました。

しかし、自分には家族も子どももいるし、ローンを組むときにフリーランスで金融機関の審査が通るだろうか、万が一の将来の保障は大丈夫かと、フリーランスになることに不安がありました。今現在会社員として手にしている安心材料をできれば失いたくないと思うと、やはりフリーランスは難しくなってきます。会社員としてのメリットを残しつつ、ある程度自分でやりたい仕事を選ぶことができる…そんな条件を満たす働き方は、実際にはなかなかないということに気が付きました。

いろいろと考えあぐねた結果、今のフリーランス型正社員のような働き方はどうか、と思い至り、社内の弁護士や税理士、社労士など専門知識を持つ方々に相談をしてみることにしたんです。

返ってきた答えは、「フリーランスのように働く人を雇用する覚悟が会社にあるのなら、できるのではないか」、というものでした。契約や規則など細かい設計は必要なものの、制度としては可能ということですよね。

いけるかもしれないという感触を得たことから、当社の代表にもあわせて相談をしたところ、「うちでやったらいいじゃん」と。それだったら、メタップスにいながらこの仕組みを作ってみようと考え、フリーランス型正社員を作るプロジェクトを発足させました。

制度を作る上で気をつけたことや、これだけはズレないようにしようと意識したことはありますか。

阿夛:一番大切にしたのは、フリーランスとして働くからこそ享受できるメリットをできる限り損なわないように、という点です。

例えば、場所や時間を自由に選べるという働き方を担保する一方で、経費の取り扱いには一定のルールを設けるなど、自由と会社として統制すべき部分のバランスは、特に注意して制度を作りましたね。

そして何より、スキルや経験をアピールして自ら仕事を獲得し、受けた仕事の分だけお金を得られるというのは、フリーランスならではの醍醐味とも言えます。そうした仕事の仕方もできるだけ崩さないよう、意識しました。

フリーランスのプラスの面を残しつつ、会社員として最低限必要なルールを就業規則に入れ、そして保障や安定をどうやって担保するのか、このあたりは社労士や弁護士など専門の方たちに本当に助けていただきました。

厚生年金、育児休業…選択した理由は人それぞれ

これまで、何名くらいの方がフリーランス型正社員として働いてきたのでしょうか。

阿夛:制度ができたのが2020年の2月で、現在は3名がフリーランス型正社員として仕事をしています。現在はまだトライアンドエラーの時期で、制度に問題がないか確認をしている段階のため、それほど人数は多くなっていません。

ご希望いただく方は非常に多いのですが、当社側も体制を整えながらの段階ではあるので、ちょっとずつ…という状況ですね。

実際にフリーランス型正社員として働いている方たちは、制度のどういう点に魅力を感じてこの働き方を選択しているのでしょうか?

阿夛:本当に人それぞれです。育児休業など、出産・育児に関する制度を活用したいという方や、フリーランスだとお金の管理やいろいろな手続きが面倒くさいので、バックオフィス業務は会社に任せて、仕事に集中したいという方もいます。

それから、将来設計として、厚生年金に入っておきたいという声もありました。先ほどお伝えしたように、たくさん仕事をして給与の上限を上回って稼いだときは、その分の金額を賞与や退職金に回す仕組みなので、計画的にお金をためられる点が良いという声もあります。

働き方の面では、「フリーランスの時と、特に何も変わっていません」という感想が、実は一番嬉しい言葉ですね。それこそ、この制度が目指す働き方なので。

フリーランス型正社員、企業にとってのプラスとは

フリーランス型正社員を導入することで、会社としては、事業や組織の面でどのようなメリットがあると考えているのでしょうか。

阿夛:まずひとつは、この制度が、当社が事業として行っている「re:shine(リシャイン)」というサービスの付加価値につながると考えています。

re:shineはフリーランスに特化した仕事のマッチングサービスで、エンジニアやデザイナーなど多くの方に登録いただいています。今後、制度の中身がある程度固まった段階で、re:shineをご利用いただいているお客様が希望した場合、フリーランス型正社員を選択できる仕組みにしたいと考えているんです。もちろん、誰でもなれるわけではなく、いろいろな条件を満たすことが必要ですが、フリーランス向けの他のサービスと比べたときに、大きな差別化となるはずです。

もうひとつ考えられるのは、協力関係が構築できる、というメリットです。市場全体でエンジニアがどんどん足りなくなる中、re:shineとフリーランス型正社員を組み合わせることで、コミュニケーションをとれるエンジニアの数を飛躍的に増やすことが可能となります。要はいわゆるタレントプールですね。将来的に、新しい事業の立ち上げなど当社がエンジニアを必要とする際に、声をかけられる母数を増やすことができるんです。

なるほど、事業にも大きなプラスがあるのですね。逆にデメリットや課題はいかがですか?例えば、バックオフィスにおける管理のコストが増える懸念はないのでしょうか。

阿夛:フリーランス型正社員に限らず、人の増加に伴って必要最低限のコストは増えていくものなので、その点は特に問題ないと考えています。また、フリーランス型正社員に関していうと、売り上げに対する給与のお支払いになるため、そもそも他の社員のような評価をしていないんです。あわせて、目標設定や成長支援、教育、なども特に想定していません。

基本的にフリーランスとして自立して仕事をしてきた方たちなので、会社としての管理コストのようなものはそれほど大きくないと思います。ただし、一切ケアしないというわけではなく、1か月に1、2回ですが、1on1を実施して案件の進捗を確認したり、何か困ったことがあれば相談にのったり、必要な支援は行うようにしています。

他の社員と異なる働き方をする人が増えることで、例えば全体の帰属意識が低下したり、理念が浸透しにくかったりする、という問題はないのでしょうか?

香東:当社は、もともと8割から9割が中途で入社している社員で、契約社員や業務委託など多様な雇用形態の従業員が一緒に働いています。当社にいる理由も、自分のやりたい仕事がある、学びたいスキルがある、プロダクトが好きなど、人によってさまざまです。もちろん当社の理念に沿ったコンピテンシーの共有はしていますが、一概に「帰属意識」を求めるものではありません。

また、他の企業で働きたい理由ができた場合は、その挑戦を応援する文化もあります。

離職防止などもどちらかというとあまりやっていないかもしれません。というのも、根本的に会社として魅力があり、必要とされるサービスを生み出していけば、結果として人が集まると考えているからです。実際、当社では「Rejoin」と呼んでいるのですが、一度退職したあとに、また戻ってくる人も多いんです。

そのため、フリーランス型正社員が増えたとしても、社内の帰属意識などの違いが、何か問題になるということはないと考えています。

フリーランス型正社員、それ以外の社員がともに働く企業として、将来的に理想とするあり方、目指す姿などはあるでしょうか。

香東:当社で働く理由や働き方は、社員によってそれぞれ違います。そうした多様な人材がミッションビジョンバリューに沿って事業に関しては同じ方向を向き、ともに良いサービスを作り上げていくことが大切だと考えています。

一般社員、フリーランス型正社員、re:shineに登録いただいた方など、多くの人材が協力しながら、会社として目指す方向を向き、価値あるプロダクトを生み出していく、そんな姿が理想ですね。

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