電話のIVR(自動音声応答)とは?仕組みや種類・メリット、利用シーンを解説
電話の応対業務を自動化できる「IVR(自動音声応答)」。質問内容に応じた自動応答や自動振り分けによって、オペレーターの業務効率化や顧客満足度の向上を期待できます。本記事では、電話のIVRとは何か、仕組みや利用するメリットなどについて解説します。
目次
電話のIVR(自動音声応答)とは?
IVRとは、「Interactive Voice Response」の略称で、電話における「自動音声応答システム」のことを指します。
具体的には、顧客からかかってきた電話に対して自動音声でガイダンスを流し、ダイヤルプッシュ操作によって入力された情報を基に、顧客が求める情報を自動で提供したり、適切なオペレーターに転送したりする仕組みです。
IVRを活用することで、オペレーターが不在の時間帯も含め、24時間の顧客対応が可能となり、顧客満足度の向上や業務効率化、人件費の削減などを期待できます。
IVRが注目される理由
歯止めがかからない少子高齢化と、それに伴う労働人口の減少などにより、コールセンター業界でも人手不足が大きな問題となっています。
仮に新人を採用できたとしても、複雑なコールセンター業務をすべてこなせるようになるまでにはある程度の時間がかかります。加えて、業務に慣れないうちは精神的なストレスがかかりやすく、顧客とのトラブルやクレームを機に早期退職してしまうケースも少なくありません。
ひとたび退職者が出ると既存スタッフの負担が増加し、新人を採用して教育するまでの間にさらなる退職者が出てしまうという悪循環に陥る可能性もあります。
そこで、IVRを活用すればオペレーター業務の大幅な効率化と負担の軽減などを実現できるということで、近年IVRに注目が集まっているのです。
VRUとの違い
IVRと混同されがちなものに、「VRU(Voice Response Unit)」があります。VRUは日本語では「音声応答装置」と呼ばれ、電話の発信者が行った入力情報を保管し、それに基づいて対応や誘導を行うシステムです。
一方のIVRは、入力情報の保管は行わず、自動応答に特化している点でVRUとは異なります。
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IVRの仕組みとは?
IVRは、音声ガイダンスによって顧客にボタン入力を促し、選択された内容に応じた情報の提供やサービスに誘導するシステムです。
選ばれた選択肢によって、対応する自動音声で回答したり、担当のオペレーターに転送したりする流れが一般的です。音声ガイダンスの選択肢を階層化することで顧客が必要としている情報を絞っていき、自動音声で解決できない場合のみ、その分野について回答できるオペレーターに直接つなぐといった運用を行えます。
IVRに搭載されている基本機能
ここからは、IVRに搭載されている5つの基本機能を紹介します。
音声ガイダンス
音声ガイダンス機能とは、電話をかけてきた顧客に対して自動音声で案内を行う機能です。
顧客はガイダンスに従ってプッシュ操作などをするだけで、会話をせずに必要な情報を得られるため、オペレーターの負担軽減や業務の効率化を期待できます。
なお、音声はあらかじめ録音・設定したものを流すのが一般的ですが、なかには顧客の反応に応じて音声ガイダンスを自動生成できるシステムもあります。
電話転送
電話転送とは、顧客が行ったプッシュ操作に応じて、対応する回線に通話を自動転送する機能です。
転送先は複数設定しておけるため、分野によって転送先を振り分けたり、時間帯によって転送先を変えたりすることも可能です。
顧客の要望に応じて、その分野に詳しいオペレーターにつなげることができ、顧客満足度向上にもつながるでしょう。
オペレーター不在時の対応
IVRシステムには、オペレーター不在時に顧客対応を行う機能も搭載されています。
この機能があることで、休日や営業時間外なども含め、24時間いつでも顧客対応が可能になるため、顧客満足度の向上が期待できます。
ただし、オペレーターでなければ解決できない問い合わせについては、営業時間内にかけ直してもらうか、折り返し電話の予約を受け付けるなどの工夫が必要です。
SMSでの自動応答
IVRシステムには、かかってきた電話番号宛に自動的にSMSを送信する機能もあります。
例えば、オペレーター窓口が混雑している場合に、よくある質問をまとめたページのURLを送信するといった使い方ができます。その他、現地の地図情報が表示されるURLや申込みフォームを送るなど、さまざまな使い道が考えられるでしょう。
顧客管理(CRM)
IVRシステムの中には、顧客管理機能(CRM)が搭載されているものもあります。
過去の入電履歴・通話内容・サービスの利用履歴などを記録しておけるほか、かかってきた電話番号から記録されている顧客情報を呼び出し、モニターに表示させることもできます。
前回から期間の空いた問い合わせや、対応するオペレーターが変わった場合でも該当の顧客情報を共有できるため、顧客に一から説明してもらう必要がなく、蓄積された情報は営業支援やマーケティングなどにも役立つでしょう。
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IVRの種類
IVRは、「オンプレミス型」「クラウド型」「ビジュアル型」の3つに分類されます。ここではそれぞれのメリットなどを解説します。
オンプレミス型
オンプレミス型とは、自社の施設内に物理サーバーや関連機器を設置し、自社内で運用・管理するタイプのIVRシステムです。
オンプレミス型は自社専用にシステムの構築を行うため、要件に合わせて細かな調整やカスタマイズができる点がメリットです。例えば、社内の既存システムと連携したい場合などにも柔軟に対応できるでしょう。
ほかのタイプに比べると初期費用が高くなる傾向にありますが、長期的な運用コストは低く抑えることが可能です。
クラウド型
クラウド型IVRは、提供会社がシステムの保有・管理などを行い、利用者側はインターネットを介して提供されているサービスを利用するタイプのIVRシステムです。
自社でサーバーや機器を用意する必要がないため、初期費用が安く、スピーディーに導入できるのがメリットです。加えて、システムの運用管理も提供会社が行うため、自社には管理負担がほとんどないのも大きな魅力でしょう。
ほかのタイプに比べてスケーラビリティが高く、必要に応じて簡単にシステムの拡張や縮小ができるのもクラウド型の優れているポイントといえます。
ビジュアル型
ビジュアル型IVRは、スマホやタブレットなどの画面を用いて視覚的に案内を行うタイプのIVRシステムです。
顧客は画面上に表示されるガイドを見ながら操作できるため、音声案内よりも直感的で使いやすいのが大きなメリットです。複雑な問い合わせや手続きを簡素化し、顧客の満足度を高められる可能性がある一方で、専用アプリや機器が必要というデメリットもあります。
IVRの利用シーン
IVRの主な利用シーンとして、以下のようなものが挙げられます。
- コールセンター
- お客様相談窓口
- 郵便物・宅配便の再配達の受付
- 災害情報の発信
コールセンターやお客様相談窓口は1回あたりの通話が長くなりがちなため、IVRを導入することで業務量や負担の大幅な軽減を実現できます。
郵便物・宅配便の再配達の受付は日時を指定できればよく、オペレーターが必要な複雑さはないため、IVRによる対応が適しています。また、窓口の稼働状況に左右されず安定した情報提供が求められる災害情報の発信とも相性が良く、今後の活用が期待されています。
IVRを利用するメリット
IVRを利用する主なメリットを5つ解説します。
オペレーター業務を効率化できる
オペレーター業務を効率化できる点は、IVRを利用する大きなメリットです。
例えば、顧客が電話をかけてきた目的や質問内容に応じて適切なオペレーターに通話を振り分けることができ、効率よく業務を行えるようになります。
同時に、外部からかかってくる営業電話や間違い電話への対応も不要になるため、自動音声では解決できない場合や、重要度が高い案件の場合のみオペレーターにつなぐといった運用が可能になるのです。
このように、従来オペレーターが個別対応するしかなかった部分について大幅な効率化が期待できるでしょう。
▷電話業務を効率化するとっておきの方法|対応の削減に向けたポイントやおすすめのツール
問い合わせ電話の取りこぼしを防げる
IVRの利用には、問い合わせ電話の取りこぼしを防げるというメリットもあります。オペレーターの不在時・営業時間外・深夜などを問わず、24時間365日顧客対応が可能になるためです。
自社の勤務時間や営業時間に左右されることなく、顧客が必要なタイミングで多くの問題を解決できるようになるため、顧客の満足度向上や離脱防止を期待できます。
人件費を削減できる
人件費を削減できる点もIVRを利用するメリットです。
顧客満足度を高めるためにコールセンターを拡張しようとする場合、オペレーターの人数や稼働時間を増やした分だけ人件費が増加します。特に、午後10時から午前5時までの間は深夜手当が上乗せされるため、人件費がさらにかさみます。
その点、IVRならば人数・稼働時間・時間帯に一切左右されずにすべての問い合わせに対応できるため、人件費の問題をまとめて解決できるのです。
質の高いサービスを提供できる
IVRを活用することで、顧客に質の高いサービスを提供できるようになります。具体的には、以下のような点が挙げられます。
- 24時間365日対応可能
- 応答率の向上
- 保留時間・待ち時間の削減
- 対応内容のばらつき防止
- 専門的な問い合わせのみオペレーターが対応
顧客がストレスを感じやすい「つながらない」「待たされる」「解決できない」というケースが大幅に減るため、顧客満足度や企業イメージの向上につながる可能性があります。
顧客管理がしやすくなる
顧客管理がしやすくなるのも、IVRを利用するメリットです。
IVRシステムの多くは顧客管理システムを搭載しており、顧客ごとに過去の入電履歴・通話内容・サービスの利用履歴などを記録できるようになっています。
過去のやり取りを関係者間で共有できるため、それぞれの顧客に合わせた最適な対応が可能になるでしょう。また、蓄積されたデータは、問い合わせが多い時間帯やクレームの原因を特定するためのビッグデータとしても役立ちます。
▷電話業務がストレスになる原因|及ぼすリスクやストレスを解消する方法を解説!
IVRを利用し業務の効率化・顧客満足度の向上につなげよう
顧客からの電話応対業務を自動化できる「IVR」。自動音声によるガイダンスや、質問内容に合わせた振り分け機能などにより、オペレーター業務の効率化と顧客満足度の向上を両立できます。IVRの仕組みや活用例を理解し、積極的に取り入れていきましょう。
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