LMS(学習管理システム)とは?機能やメリット・デメリット、eラーニングとの違い
eラーニングを実施する際のベースとなる「LMS(学習管理システム)」。「eラーニングシステム」や「eラーニングプラットフォーム」などと呼ばれることもありますが、どのような役割を持っているのでしょうか。本記事では、LMS(学習管理システム)とは何かについて解説します。
目次
LMS(学習管理システム)とは?
LMSは「Learning Management System」の略で、日本語では「学習管理システム」と言われます。
LMSは、インターネットを利用しパソコン・スマホなどで学習するeラーニングを実施する際のベースとなるシステムです。教材の作成から配布まで、受講・成績管理などの機能を搭載しています。
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LMS(学習管理システム)が注目されている理由・必要性
LMSが企業に注目されている理由には、昨今の社会情勢の変化や従業員の意識の変化などが影響しています。主な理由を解説しましょう。
働き方の多様化が影響しているため
LMSが注目されるようになった背景として、働き方の多様化が挙げられます。
例えば、新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけに、リモートワークが普及しました。また、プライベートと仕事の両立などを目的に、フレックスタイム制度を導入する企業も増えています。それにともない、時間や場所に制限を受けずに研修や学習をできるeラーニングの需要が高まっています。
その一方、パソコンやタブレット端末を活用すればeラーニングを実施できますが、社員の受講状況の可視化や成績の把握などはできません。そこで、より効果的にeラーニングを運用できるLMSが必要とされるようになりました。
また、各企業がDX化を推進している流れも、LMSが注目される要素の一つでしょう。これまで対面で行っていた研修をオンラインで行うことで、研修で配布する資料の用紙代の削減や、研修運営業務の効率化を実現できるのです。
管理者の業務負担を軽減するため
LMSは、管理者の業務負担軽減の観点からも注目されています。
研修を実施する際、管理者の業務は多岐にわたります。例えば、研修対象者に合わせた教材の選定、当日の出欠確認、未受講者への受講の促しなどをする必要があり、これらを遂行するためには膨大な時間がかかります。
そこで、LMSを使えば、サーバー上で受講者データや教材の管理が簡単にできます。スキルや履修履歴から受講者を抽出し、受講の案内メールを自動送信したり、サーバー上にアップした教材を更新したりすることも可能です。
LMSを活用することで、管理者の業務負担が減り、教育計画の立案や教材の改善など、より重要な業務に集中できるようになるでしょう。
従業員の主体的なキャリア形成につなげるため
メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用への転換が進み、キャリア開発に関心を持つ従業員が増加していることも、LMSの活用に影響を及ぼしています。
ジョブ型雇用に転換することで、従業員のスキルや希望に応じたキャリア形成ができるようになりました。そのため従業員は、企業が用意した研修を受動的に受けるのではなく、自分のキャリアを見据えて能動的に研修を受講する意識を持つようになったのです。
LMSを活用すれば、従業員は企業が用意した研修に加え、自分の興味のある分野の研修を積極的に受けられます。企業にとっても、自発的に学習を進める従業員の増加は、自社の競争力向上につながるため、歓迎すべき状況と言えるでしょう。
従業員が効率的・積極的に学習を進めて、必要な知識やスキルを習得できる環境を構築するためにも、LMSの導入が求められています。
人的資本経営の取り組みにつなげるため
上場企業を中心に、人を資本と捉え、その価値を最大限に引き出すことで中長期的な企業価値向上につなげる「人的資本経営」が進んでいます。そこで、人的資本経営の一環として、LMSを活用する動きが出てきているのです。
自社の従業員の能力を高めるための積極的な投資が求められる中、場所や時間を選ばずに学習が進められるLMSは大きく貢献するでしょう。
LMS(学習管理システム)とeラーニングの違いとは?
eラーニングとは、インターネットを介し、パソコンやタブレット端末などを使用する学習手法を指します。一方、LMSはeラーニングを運用・管理するためのシステムです。
eラーニングを提供するサービスの中には、受講履歴や成績の管理機能を搭載しているものもあります。しかし、教材の配信や教育コンテンツの視聴など受講に特化した機能のみを有しているサービスが大半です。そのため、eラーニングサービスでは、受講者の受講履歴や成績などは把握できない場合があります。
LMSであれば、受講者一人ひとりの受講履歴、成績データなどを蓄積でき、管理者はそれらをいつでも確認できます。LMSは、eラーニングではカバーできない受講履歴や成績などを管理する機能を有したシステムと言えるでしょう。
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LMS(学習管理システム)の主な機能
ここからは、LMSが有する主な機能を、受講者側・管理側・教材作成・管理機能に分けてご紹介します。LMSの導入を検討する際は、ぜひご一読ください。
受講者側の機能
LMSが有している機能の中で、受講者向けの代表的な機能をお伝えします。
- 講座閲覧機能:受講可能な講座を閲覧し、興味・関心がある講座の受講申し込みができる機能
- 学習機能:教育コンテンツを視聴・受講できる機能
- 受験機能:受講後に学習の理解度を測るため、テストやクイズを受験できる機能
これらの機能により、受講者は自分の希望するキャリアプランに合わせて、スキルや知識を習得できます。また、インターネットを介して視聴するため、時間や場所を選ばず、受講者は自分のペースで学習を進められるでしょう。
管理側の機能
管理者向けに用意されているLMSの代表的な機能は次のとおりです。
- 受講者管理機能:従業員の名前や所属部署、保有資格などの情報を管理する機能
- 履修管理機能:受講者の学習進捗状況や成績などを管理する機能。
- サポート機能:成績が振るわなかったり、学習の進捗に遅れが見られたりする受講者をフォローする機能。
特に受講者管理機能は、所属部署や階層に合わせて教育を行う際に役立ちます。また、履修管理機能を使えば、人事評価の際に学習意欲や成績を反映させることもできるでしょう。
教材作成・管理機能
LMSは、研修で使用する教材の作成・管理機能も搭載しています。具体的な内容は、次のとおりです。
- コース作成・編集機能:複数の講座やテストを組み合わせて、オリジナルのコースを作成する機能
- オリジナル教材の作成機能:自社独自の教材やテスト、アンケートを作成する機能
- レコメンド機能:従業員のスキルやキャリアプランに合わせて、おすすめのコンテンツを紹介する機能
これらの機能を活用することで、従業員一人ひとりに合った教育を実施できます。従業員のキャリア開発にも役立つでしょう。
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LMS(学習管理システム)の活用場面
LMSは受講管理などに優れているため、さまざまな場面で活用されています。具体的な活用場面をご紹介しましょう。
企業研修・リスキリングでの活用
LMSの利用シーンとして挙げられるのが、企業研修や従業員のリスキリングです。
対面での研修を実施する際は、研修場所の確保やスケジュール調整といった業務負担に加え、会場費や交通費などのコストがかかります。そのため、研修内容によってはオンラインで実施する企業も多くあります。ただし、eラーニングの場合、従業員がきちんと受講しているかどうかまでは分かりません。そこでLMSを活用し、受講履歴を管理する企業が増えているのです。
さらに、業務上必要とされる新しい知識やスキルを学ぶリスキリングにも活用されています。LMSであれば、空き時間を使って学習を進められるため、忙しい従業員も効率良くスキルを習得できるのです。
教育現場の講義の一環として活用
LMSは企業だけではなく、教育現場でも活用されています。
例えば、新型コロナウイルス感染症が流行をきっかけに、多くの大学では、学生が自宅から授業を受けられるように環境整備に乗り出しました。LMSは、インターネット環境さえ整っていれば、出欠の確認に加え、レポート提出やテスト受験などもできるため、教育現場でも積極的に導入されています。
LMS(学習管理システム)のメリット
LMSが幅広い場面で使われているのは、受講者側・講師側・管理者それぞれにさまざまなメリットがあるためです。代表的なメリットをお伝えしましょう。
受講者側のメリット
LMSを使うことで受講者が得られるメリットとして、自分に合った学習ができる点が挙げられます。具体的に解説しましょう。
自身の理解度に合わせた学習ができる
LMSでは、自分の理解度に合わせて学習を進められます。
例えば、コンテンツを視聴中に分からない点が出てきたら、同じ部分を繰り返し視聴することが可能です。反対に、十分に理解できている部分はスキップできるため、より効率的に学習を進められるでしょう。
フィードバックがすぐに得られる
テストやクイズを通じて、学習の理解度についてのフィードバックを即座に得られるのも、LMSのメリットです。
対面研修でテストを受けた場合、答案が返却されるまで日数を要しますが、LMSはすぐに正誤判定や自動採点を行うので、テストやクイズの結果が即座に示されます。そのため、自分の苦手分野がその場で分かるため、学習計画も立てやすくなるでしょう。
自身の学習スタイルに合った教材を選べる
LMSではテキストや動画、画像などさまざまな形式の教材が提供されています。従業員は自分のスタイルに合った教材を選んで学習を進められるため、学習意欲も高まり、知識やスキルも習得しやすくなるでしょう。
講師側のメリット
LMSの導入は、受講者側だけではなく講師側にもメリットがあります。主なメリットをお伝えします。
教材の作成・管理を効率化できる
研修実施時には教材の作成・管理が欠かせませんが、LMSを使えばそれらを管理を行えます。例えば、対面研修では紙の教材を用いるケースが多いため、教材を受講者数に合わせて印刷して綴じたり、余った教材を処分したりする手間が生じます。LMSはデジタル教材を使うため、印刷や配布、処分の手間がかかりません。
LMSは、教材の更新も容易です。法改正など最新の情報に合わせて教材を即座にアップデートできるので、業務にすぐに役立つ知識を身につけてもらえるでしょう。
受講者一人ひとりに合ったサポートができる
LMSは受講者の学習の進捗や成績を自動的に記録するため、受講者一人ひとりに合わせたサポートやフォローが実現します。
例えば、成績が良く学習意欲が高い受講者に対しては、さらに高度な教材を提供し、成長を促すことが可能です。逆に、学習の進捗が思わしくない受講者に対しては、つまずきの原因を探り、適切なフォローを行えるでしょう。
指導・授業の改善に時間をかけられる
LMSを使えば、講師が同じ講義を繰り返し行う必要がなくなり、その分受講者への指導や授業の改善に力を入れられます。
受講者のテスト結果を分析して受講者が苦手としている分野を見つけ出せば、重点的な指導を行えるでしょう。また、LMSにはアンケート機能も備わっているため、講義終了後に受講者から意見を聞き、改善に活かすことも可能です。
採点・添削の手間が省ける
LMSは採点や添削を自動で行うため、講師の手間を大幅に削減できます。講師の負担軽減につながるだけではなく、教材の開発や講義内容の改善などに時間を割けるので、質の高い教育ができるでしょう。
管理者のメリット
管理者にとっても、LMSの導入はメリットがあります。代表的なメリットを紹介しましょう。
eラーニングの運用・管理が簡単に行える
LMS導入により、eラーニングの運用・管理に必要な、コンテンツ登録・履修者登録・コース割り当てなどを簡単に行うことができます。
eラーニングの運用・管理が容易に実施でき、管理者の負担を大きく削減できるでしょう。
eラーニングを浸透させられる
LMSはITリテラシーが低い従業員でも利用できるよう、操作性が工夫されています。そのためLMSの導入により、eラーニングの利便性や機能性が向上すれば、eラーニングを受講する従業員が増加するでしょう。
eラーニングの導入には費用や労力がかかりますが、LMSによってeラーニングが浸透すれば、導入コストが無駄になりません。
LMS(学習管理システム)のデメリット
従業員の知識・スキル向上にLMSが役立つ反面、LMSの導入にはデメリットもあります。導入前に知っておきたいデメリットをお伝えしましょう。
導入・運用に手間・費用がかかる
LMSの導入や運用には、受講者への説明といった手間や、利用料などの費用が必要となります。
従業員にLMSを活用してもらうためには、説明会の開催やマニュアルの作成などを行わなければなりません。自社独自の教材を利用する場合は、教材の作成や登録をする労力もかかります。さらに、システムの購入費や月額利用料も発生し、カスタマイズする場合は、追加の費用も求められるでしょう。
しかし、LMSを活用すれば業務効率化が図れるうえ、知識やスキルを習得した従業員により生産性の向上も期待できます。長い目で見て、費用対効果を検討してください。
システムに慣れるまでに時間がかかる
初めてLMSを導入した際、管理者も受講者も、システムに慣れるまで時間を要するでしょう。そのため、ITに詳しい人材がいない企業の場合、多少コストがかかったとしても、サポート体制が充実しているシステムを選ぶことをおすすめします。
また、受講者や講師がシステムに慣れるまでは、社内に相談窓口を用意するなど、フォローできる体制を準備しましょう。
LMS(学習管理システム)を導入し教育・学習の質を高めよう
企業が競争力や企業価値を高めるためには、従業員の教育への投資が欠かせません。LMSを使えば、効率的・効果的に教育を行えます。LMSを導入して、教育や学習の質を向上させましょう。
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