会社都合のシフトカットは違法になる?会社が理解しておくべきリスクや注意点
「シフトカット」によってシフトを減らしてしまうと、従業員は収入が減少し、生活が困窮する可能性があります。そのため、企業にはシフトカットに関する正しい知識と適切な対応が必要です。本記事では、会社都合のシフトカットは違法になるのか、また会社が理解しておくべきリスクや注意点を解説します。
目次
会社都合のシフトカットとは?
会社都合によるシフトカットとは、会社側の都合で従業員が働く予定だったシフトを削減し、勤務時間を減らすことを指します。
会社側からすると、業務量の変動や経営判断といった理由から、該当の従業員が本来予定していた労働時間を短くせざるを得ない事情があるかもしれません。このような措置は、会社にとってはコストを抑えられるメリットがありますが、従業員側からしてみると、収入が減るため大きなデメリットとなります。
シフトカットの有無や程度によっては、従業員のモチベーションや生活にも影響を与えかねません。やむを得ない事情があり、避けられない選択肢として実行する場合であっても、会社と従業員の双方が納得できるバランスを見つけることが必須です。
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会社都合のシフトカットの具体例
会社の業績不振などが原因で従業員の勤務時間を減らすほかない、といった事態は、実際に起こり得ることです。ここでは、そうしたシフトカットの具体例をいくつかご紹介します。
シフトを直前で減らされた
飲食店などでは、予想よりも客足が少ない日には、人件費を抑えるために直前でシフトを減らすことがあります。たとえば、月初に10日分のシフトが組まれていたとしても、実際の売り上げ次第では、5日働いたあとで残り5日分のシフトを急きょカットされてしまうといったケースがあるのです。
この場合、事前の予告なく勤務時間が大幅に減らされてしまうため、従業員の収入にダイレクトに影響を及ぼします。
終業予定時間よりも早く切り上げさせられた
小売店などでは、閉店時間が近付くにつれて客数も減る傾向にあるため、閉店作業を担当していない場合は「今日はもう切り上げていいよ」といった形で退勤を促されることもしばしばです。
このような状況は、早く帰宅したい従業員にとっては朗報かもしれませんが、本来得られるはずの収入が減るという意味では、やはりデメリットです。加えて、同様の状況が続けば、そのたびに見込んでいた給料が減ってしまうため、生活に響く恐れがあります。
出勤日数を労働契約上の勤務日数よりも減らされた
業種によっては、仕事の量や納期次第で、月の半ばから極端に出勤日数を減らされるケースもあります。たとえば、雇用契約上は週5日の勤務となっていても、実際には週2~3日しか働かせてもらえないことも珍しくありません。
従業員は労働条件に納得のうえで契約を結んでいるため、勤務日数が減らされるといった、契約締結時に想定していなかった状況が発生すると、大きな経済的損失を被ることになります。
会社都合のシフトカットは違法になるのか?
結論からいうと、会社都合のシフトカットは違法とは見なされない場合が多いでしょう。
従業員と雇用契約を結んだ会社は、業務上の指揮命令権を有しています。この権限には、従業員に対して「自宅待機」を命じる裁量も含まれているため、会社都合でシフトをカットすること自体は、必ずしも法律違反とはならないのです。つまり、会社側の経営判断によって労働時間を調整することは、認められる可能性が高いといえます。
ただし、シフトカットを行った従業員に対しては、一定の対価を支払う義務がある点に注意が必要です。
シフトカット=無給でOKではない点に注意
シフトカットのために勤務しないからといって、その分は無給でよいというわけではありません。
会社都合で従業員に就労の機会を与えなかった場合、労働基準法によって休業手当の支払いが定められています。シフトカット時に休業手当をまったく支給しなければ、法令違反になる可能性があるのです。
休業手当とは?
休業手当とは、従業員が就労予定だった日に、使用者の責に帰すべき事由で就労できなかった場合に支払われる手当です。具体的には、経営不振などで営業を休止したり、シフトカットを行ったりする際に支払いの義務が発生します。
対象は正社員のみならず、パートやアルバイト、契約社員、嘱託社員など、雇用形態は問われません。
休業手当と休業補償の違い
休業補償とは、労働災害によって療養を余儀なくされる期間に対して支払われる制度です。休業補償は労働保険から賄われるのに対し、休業手当は会社に支払い義務があります。
どちらも休業に関するということは同様ですが、休業補償は労災の療養期間の生活安定を図るため、休業手当は一時的な就労機会の損失を補償するためであるという点が大きく異なります。
休業手当の計算方法
休業手当の計算は、従業員の平均賃金を基に行います。この際の平均賃金は、直近3カ月間の総賃金を総労働日数で割って算出します。休業手当として、この平均賃金の60%以上を支払うことが義務付けられており、労働契約や就業規則によっては、より高い割合で設定されている場合もあります。
◾️計算式の例
- 平均賃金 = (直近3カ月の総賃金) ÷ (直近3カ月の総労働日数)
- 休業手当 = 平均賃金 × 休業日数 × 支払い率(例:60%)
アルバイト・パートの休業手当の計算例
時給1,000円、1日8時間、週5日勤務のアルバイトスタッフの場合の計算式の例を見ていきましょう。
◾️計算式の例
- 1カ月の賃金 = 1,000円 × 8時間 × 20日 = 160,000円
- 平均賃金 = 160,000円 ÷ 30日(1カ月の日数) = 5,333円
- 休業手当(最低) = 5,333円 × 0.6 = 3,200円/日
したがって、このアルバイトスタッフの1日分の休業手当の最低金額は3,200円となります。就業規則にて70%などとより高い割合が定められていれば、その額を下回ることはできません。
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会社都合のシフトカットのリスク・注意点を理解しよう
会社都合によるシフトカットには、さまざまなリスクと注意点が伴います。適切な休業手当を支払わなければ会社側が法的リスクを負うことになるのに加え、従業員のモチベーション低下や生活への影響なども避けられません。シフトカットは経営判断として避けられないこともありますが、その影響を最小限に抑えることが何より大切なのです。
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