システム開発の体制図とは?作り方や役割一覧・作成する際のポイントを解説
システム開発におけるメンバーの役割や指揮命令系統を表す「体制図」。プロジェクトをスムーズに進めるために必要ですが「何を書くのか」「どのような手順で作成するのか」悩んでいる人も多いのではないでしょうか。本記事では、システム開発の体制図について詳しく解説します。
目次
システム開発の体制図とは?
システム開発プロジェクトの体制図とは、プロジェクトメンバーそれぞれの役割や指揮命令系統を示した図のことです。この図を作成することで、各メンバーの役割分担が明確になり、プロジェクトの進行がスムーズになります。
体制図の作成は、プロジェクトマネージャーやリーダーが担うのが一般的です。体制図を作成してメンバー間で共有することで、トラブルが起きた際にも迅速に対応でき、効率的なプロジェクト運営を実現できます。
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システム開発の体制図を作るタイミング
システム開発の体制図は、プロジェクトの企画が具体的になり、目的やゴールが明確になった時点で作成するのが理想的です。プロジェクトの最終的な目的や期限が決まらないうちに着手しても、必要な工程や人員を検討することはできないでしょう。
また、プロジェクトが進むと役割を終えた人員やチームが出てくることもあるため、必要に応じて体制図を書き換えていく必要もあります。
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システム開発の体制図を作成する理由
システム開発における体制図の作成は、プロジェクトの進行を円滑にするために行われます。ここでは、具体的な理由について詳しく見ていきましょう。
メンバーの認識を統一するため
システム開発プロジェクトでは、各メンバーがどのような担当を持ち、どのように動くのかを明確にすることが重要です。体制図を作成することで、全員が同じ認識を持つことができ、スムーズなコミュニケーションと協力が可能になります。
参加するメンバーの認識を一致させることにより、誤解や混乱を防げるため、プロジェクトを円滑に進められるでしょう。
指揮系統を定義するため
プロジェクトに関わる人数が多くなると、指揮命令系統が複雑化しやすくなります。この複雑さが原因で、作業や報告の遅れが生じ、プロジェクトが頓挫するリスクが高まるのです。
体制図を作成することで、誰が誰に報告するのか、どのような指示がどこから来るのかを明確に定義し、指揮系統を整備します。これにより、効率的な作業進行と迅速な問題解決が可能となり、プロジェクトの成功につながります。
システム開発の全体像をイメージしやすくするため
体制図があることで、プロジェクトに関わるメンバーが自分の業務だけでなく、プロジェクト全体の流れを把握しやすくなります。これにより、各メンバーが全体の方針や目標を理解しやすくなり、結束力が高まる効果も期待できるでしょう。
全体像を把握することは、各自の役割の重要性を再認識し、プロジェクトの成功に向けたモチベーション向上にもつながります。
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システム開発の体制図の作り方
ここでは、システム開発における体制図の作り方を紹介します。
システム開発プロジェクトの目的を決める
システム開発の体制図を作成するには、まずプロジェクトの目的を明確に定めることが大切です。目的が不明確な場合、プロジェクトの具体的な計画を立てることはできないでしょう。
目的やゴールをはっきりさせることで、無駄のない適切な人材配置が行えます。目的を決めることは、体制図の作成がスムーズになるだけでなく、プロジェクト全体の進行にもかかわる最も重要なポイントです。
業務範囲やチームを決める
プロジェクトの目的が明確になったら、業務範囲やチームを決めていきましょう。システム開発のチーム構成は、以下の3つに分けられます。
- 縦割りチーム:開発プロセスごとに分かれて作業を行う
- 横割りチーム:開発プロセス内の専門領域ごとに作業を行う
- 混合チーム:縦割りと横割りを混合させたチーム
縦割りチームは、幅広いスキルを持つジェネラリストと呼ばれる技術者を中心に構成されるチームです。担当する作業がはっきりしているためスムーズに進行できる一方で、専門スキルが必要となる問題については対応できない場合もあるでしょう。
横割りチームは、各領域の専門的な知識を持つスペシャリストで構成されるチームです。高品質な作業が期待できる反面、それぞれがこだわりを持って仕事をするためチーム全体との連携が上手くいかない可能性があります。
混合チームは、それぞれのメリット・デメリットを補えるチーム構成です。どのようなメンバーを中心にチームを構成するかを意識し、プロジェクトに最適な編成方法を選びましょう。
各チームに必要な人材を決める
次に、各チームに必要な人材を決めていきます。ここで最も注意したいことは、1人に対して複数の役割を与えないということです。同じ人が複数のチームのリーダーを兼任していると、負担が大きくなりミスが発生しやすくなります。
また、各メンバーの能力に合った業務を割り振ることも重要です。適切な人材配置を行うことでチームのパフォーマンスが向上し、無理のないプロジェクト運営が可能になります。
どうしても1人で複数のチームを兼任させなくてはならない場合は、記載間違いでないことがわかるよう体制図の書き方を工夫しましょう。
プロジェクト体制図を作成する
業務内容や必要な人材が決まったら、プロジェクト体制図を作成していきましょう。体制図作成の際は、各チームの役割や指揮系統を一目見てわかるようまとめることが重要です。これにより、メンバー全員が自身の担当業務を理解し、スムーズなプロジェクト進行が可能となります。
また、各メンバーの連絡先や報告ルートも記載することで、情報共有が円滑に行われるでしょう。
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システム開発の体制図を作成する際のポイント
ここからは、システム開発の体制図を作成する際のポイントを4つ紹介します。
混乱を防ぐため指揮系統は1つにする
システム開発プロジェクトでは、混乱を避けるために指揮系統を1つに統一することが重要です。複数の指揮系統が存在すると、齟齬や責任の不明確さが生じ、プロジェクトが停滞するリスクがあります。
指揮系統の確認ポイントとしては、誰が最終的な決定権を持つのか、各メンバーがどのように報告するべきかを明確にすることが挙げられます。これにより、チーム全体の効率が向上し、スムーズなプロジェクト進行が実現するでしょう。
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誰が見てもわかるよう各ポジションの役割を明確にする
プロジェクトの成功には、各ポジションの役割を誰が見てもわかるように明確にすることが不可欠です。役割が不明確だと、責任の所在が曖昧になり、タスクの漏れや重複が発生しやすくなります。
また、メンバー間のコミュニケーションが円滑に行われず、プロジェクト全体の進行に支障をきたす可能性があります。したがって、体制図には各ポジションの責任範囲と担当業務を詳細に記載し、全員が自分の役割を理解できるようにすることが重要です。
兼任者がいる場合は補足情報を入れる
システム開発プロジェクトでは、メンバーが複数の役割を兼任する場合があるため、どの業務が主な担当であるかを明確にすることが重要です。また、兼任者が多忙な時や不在の場合に備えて、代理を務める人物も明示しておくと良いでしょう。
これにより、業務の滞りや混乱を防ぎ、プロジェクトの進行が円滑に保たれます。体制図にこれらの補足情報を含めることで、全体の理解が深まり、効率的な運営が可能になります。
体制変更に応じて体制図を常に最新状態に保つ
長期にわたるシステム開発プロジェクトでは、メンバーの異動や役割の変更が生じることがあります。このような体制の変動に対応するため、体制図も常に最新の状態に保つことが大切です。
体制図が古い情報のままだと、メンバー間での誤解や指示の遅延が発生し、プロジェクトの進行に悪影響を与える可能性があります。定期的な更新と確認を行うことで、チーム全体の連携が円滑になり、プロジェクトの成功につながるでしょう。
システム開発の体制図の役割・ポジション
システム開発の体制図には、さまざまなポジションや役割が記載されます。ここでは、それぞれのポジションや役割について、詳しく見ていきましょう。
プロジェクトオーナー(PO)
プロジェクトオーナー (PO)とは、システム開発プロジェクトの最高責任者を指します。プロジェクトの方向性を決定し、目標達成のための戦略を策定するのが主な役割です。
また、プロジェクトの優先事項を決定し、リソースの最適な配分を指導するほか、ステークホルダーに対してプロジェクトの進捗に関する報告や説明なども行います。
プロジェクトマネージャー(PM)
プロジェクトマネージャー (PM) は、システム開発プロジェクトの計画から実行、完了までを監督する役割を担っています。PMの主な役割は、プロジェクトの進捗を管理し、スケジュールや予算内での完了を確実にすることです。
また、リスク管理や問題解決もPMの重要な業務の一つです。チームメンバーとのコミュニケーションを円滑にし、目標達成に向けた指導を行います。
プロジェクトマネジメントオフィス(PMO)
プロジェクトマネジメントオフィス (PMO) は、複数のプロジェクトを統括し、組織全体のプロジェクト管理を支援する専門部署です。PMOの主な役割は、プロジェクトの標準化、手法やツールの提供、ベストプラクティスの導入などを通じて、プロジェクトの成功率を向上させることです。
また、プロジェクト間のリソースの調整やリスク管理を行い、組織全体の戦略目標に合致するようにプロジェクトをコーディネートします。
プロジェクトリーダー(PL)
プロジェクトリーダー (PL) は、プロジェクトチームにおける現場の責任者です。プロジェクトの進行状況を監視し、チームメンバーに適切な指示を出してプロジェクトの目標達成を目指します。
また、メンバーのモチベーション管理や問題解決のサポートもPLの仕事です。プロジェクトマネージャー (PM) と連携しながら、プロジェクトの細部にまで目を配り、チーム全体のパフォーマンスを最大化する役割を果たします。
サブリーダー(SL)
サブリーダー (SL) は、プロジェクトリーダー (PL) をサポートし、チーム内の特定のタスクやサブプロジェクトを管理する役割を担うポジションです。特に大規模なプロジェクトで配置される傾向にあります。
SLは、チームメンバーの作業進捗を監視し、問題が発生した場合に迅速に対応します。また、PLからの指示をメンバーに伝えるのもSLの仕事です。
システムエンジニア(SE)
システムエンジニア (SE) は、システムの設計・開発・保守を担当する技術専門職です。クライアントの要件を分析し、最適なシステムの設計を行います。また、システムの実装やテストを担当し、プロジェクトの進行における技術的な課題を解決します。
チームをまとめながら業務を進めるため、技術力だけでなくコミュニケーション能力も求められるでしょう。
プログラマー(PG)
プログラマー (PG) は、システムエンジニア (SE) が作成した仕様書をもとに、プログラミングを行う仕事です。さまざまなプログラミング言語を用いて、システムの機能を実装し、システムが正しく動作するようにします。
また、バグの修正やコードの最適化を行い、システムの性能向上を図るのもPGの仕事です。
システム開発の体制図の良い例・悪い例
ここでは、システム開発の体制図の良い例と悪い例を紹介します。
システム開発の体制図の良い例
システム開発の体制図の良い例として、役割と指揮系統が明確に記載されたものが挙げられます。具体的には、体制図の頂点にPO、その次にプロジェクトの責任者となるPMを配置し、PMの下には各チームのリーダを配置しましょう。
プロジェクトに携わるメンバーを把握しやすくするには、各チームリーダーの下に作業スタッフの名前を入れるのも有効です。また、緊急時の連絡先や代替責任者の情報も含まれていると、迅速な対応が可能になります。このような体制図を作成することで、各メンバーの責任範囲が明確になり、誰がどの業務を担当しているかが一目で分かるようになるでしょう。
システム開発の体制図の悪い例
システム開発の体制図の悪い例として、役割や指揮系統が曖昧で不明瞭なものが挙げられます。このような体制図では、誰がどの業務を担当しているのかが分かりにくく、メンバー間での責任範囲が不明確になります。
結果として、コミュニケーションの混乱や齟齬が発生しやすく、プロジェクトの進行に支障をきたす可能性があるでしょう。また、緊急時の対応が遅れるリスクも高まります。このような体制図は、プロジェクトの成功を妨げる要因となるため、改善が必要です。
適切な体制図を作成しプロジェクトを円滑にすすめよう
適切な体制図の作成は、プロジェクトの成功に欠かせない要素です。明確な役割分担と指揮系統を設定することで、チーム全体が統一された方向に向かい、効率的に作業を進めることができます。また、体制図の定期的な更新を通じて、プロジェクトの進行状況に応じた柔軟な対応が可能になります。適切な体制図を整え、円滑なプロジェクト運営を目指しましょう。
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