システム開発の工程とは?流れや手法による工程の違い・V字モデルについて
システム開発を成功させるには、綿密な計画と適切な進捗管理が欠かせません。しかし、具体的な工程については理解していない方も多いのではないでしょうか。スムーズに開発を行うために、システム開発の基本的な工程の流れと、主な開発手法について把握しておきましょう。
目次
システム開発の基本的な工程の流れ
システム開発における工程とは、開発を行う上で必要な一連のプロセスを指します。ここからは、システム開発の各工程でどのようなことが行われているのかを見ていきましょう。
1.計画の立案
システム開発の最初のステップは計画の立案です。ここでは、プロジェクト全体のスケジュールや体制を関係者全員で共有します。プロジェクトを成功させるには、この段階で明確な目標を設定し、予算や必要なリソースを確認することが欠かせません。しっかりとした計画を立てることで、後の工程がスムーズに進行でき、効率的にシステム開発を進めることが可能になります。
2.要件定義
次のステップは要件定義です。これはシステム開発で実装する範囲や内容、つまりシステムに必要な機能などの要件を決定する工程を指します。ここでは、ユーザーのニーズや業務上の要件を詳細に洗い出し、それを基にシステムの仕様を明確にします。
このプロセスを通じて、関係者全員が同じ理解を持つことで、後の設計や実装をスムーズに進めるための重要な基盤が作られるのです。要件定義がしっかりしていると、システムの完成度が高まり、顧客満足度も向上します。
▷システム開発の要件定義とは?作成の流れや進め方のポイント・必要なスキル
3.外部設計
外部設計は、要件定義で決定した内容を基に、システムに実装する機能を明確化・具体化する工程です。この段階では、ユーザーが直接触れる画面やインターフェースの設計を行い、システムの全体像を具体的に描きます。
使いやすさや機能性を考慮しながら設計を進めることで、ユーザーにとって直感的で操作しやすいシステムを実現することができます。
4.内部設計
内部設計は、システムやソフトウェアの各種内部仕様を細かく定義する工程です。プログラムの動作やデータの流れ、各種モジュールの設計を詳細に行います。これは、開発を行うエンジニアに向けて行われるもので、システム開発をどのように実現していくかを表現する工程です。
この段階での設計がしっかりしていると、実装時のトラブルを減らし、効率的な開発が可能となります。また、内部設計はシステムのパフォーマンスや保守性にも大きく影響するため、非常に重要な工程といえるでしょう。
5.開発
開発工程は、プログラミングを行い、コンピューターへの指示を書き込むステップです。ここでは、設計段階で決定した仕様に基づき、実際にコードを書いてシステムを構築します。
この工程が順調に進むと、システム全体が形になっていき、動作する段階に近づきます。開発はシステムの心臓部を作り上げる作業であり、緻密な作業と高い技術が求められる工程です。
6.運用テスト
開発が完了した後は、システムが正しく動作するかを確認する運用テストを行います。実際の使用環境に近い状況でシステムを動かし、不具合や問題点を見つけ出す工程です。
テストを通じて、ユーザーが期待する動作がすべて正確に行われるか、エラーがないかを細かくチェックします。この工程は、システムの信頼性を確保するために重要です。テスト結果に基づいて必要な修正を行うことで、システムの完成度をさらに高められるでしょう。
7.リリース
運用テストで問題がないと判断されたら、次はシステムのリリースです。この工程では、実際の現場でシステムを導入し、既存のシステムから新しいシステムへの移行を実施します。システムを移行する方法は、新しいシステムに一斉に切り替える方法と、機能ごとに徐々に切りかえていく方法の2種類があります。
この工程には、ユーザー教育やデータ移行、環境設定などが含まれるため、慎重に進めなければなりません。また、スムーズにシステム移行を進めるには、さまざまな懸念点を考慮しながら手順書を作成することも大切です。
8.定期メンテナンス
システムのリリース後も安定して使い続けられるようにするには、定期的にメンテナンスを行うことも欠かせません。システムの運用と保守を継続し、不具合の修正や機能の改善を実施します。
また、定期的なチェックや更新を行い、セキュリティリスクを最小限に抑えることも重要です。この工程では、ユーザーが快適にシステムを利用できるように、長期的な視点でのサポートが求められます。
システム開発工程の主な手法
システム開発には、さまざまな手法が存在します。それぞれの手法には特徴があるため、プロジェクトの目的や規模に応じて最適な方法を選ぶことが重要です。
ウォーターフォールモデル
ウォーターフォールモデルとは、上流工程から下流工程に向けて順番にシステム開発を行う方法です。この手法では、計画・要件定義・設計・実装・テスト・リリースといった各工程を確実に進めていきます。各工程が完了してから次の工程に進むため、進捗状況が明確で管理しやすいのが特徴です。
計画的にシステム開発を行うウォーターフォールモデルは、高品質なシステム成果物に仕上げられるほか、人材や予算を確保しやすいのがメリットです。仕様が明確で変更が少ないプロジェクトに適しているため、計画的に進行することが求められる場面でよく使われます。
V字モデル
V字モデルとは、システム開発の開始から終了までの流れをV字のように進めるモデルです。この手法では、要件定義から開発までの工程をV字の左側で示し、各工程のテスト段階を右側で表します。
開発の各工程とテスト工程をリンクさせることで、検証作業を効率的に行うことが可能です。V字モデルは、特に品質管理が重要なプロジェクトで効果を発揮するでしょう。徹底したテストが行われるため、信頼性の高いシステムを構築することができます。
アジャイルモデル
アジャイルモデルとは、開発を小さな単位に分けて、同じ流れを何度も繰り返し行う開発方法です。この手法では、短期間で動作するソフトウェアを作成し、フィードバックを得ながら改善を繰り返していきます。
開発のサイクルごとに計画・設計・実装・テストを行い、徐々にシステム全体を完成させていくのが特徴です。アジャイルモデルは、変更に柔軟に対応できるため、ユーザーの要望や市場の変化に素早く対応する必要があるプロジェクトに適しています。
プロトタイプモデル
プロトタイプモデルとは、顧客のフィードバックを得ながら開発を進める方法です。この手法では、初期段階で試作版(プロトタイプ)を作成し、それをユーザーに評価してもらいます。得られたフィードバックをもとに改良を重ね、最終的なシステムを完成させます。
プロトタイプモデルの利点は、ユーザーの要望や期待に応じたシステムを作りやすく、早期に問題点を発見できる点です。ユーザーとのコミュニケーションを密に行い齟齬をなくすことで、スムーズにシステム開発を進めることができます。
スパイラルモデル
スパイラルモデルとは、システムを機能ごとに分割し、重要な機能から順に構築していく開発手法です。開発を複数のサイクルに分け、それぞれのサイクルで計画・リスク評価・設計・実装・テストを繰り返します。
スパイラルモデルの特徴は、リスク管理を重視しながら段階的にシステムを完成させる点にあります。重要な機能から順に開発することで、リスクを最小限に抑えつつ、柔軟かつ効率的にプロジェクトを進行させることが可能です。
DevOps(デブオプス)
DevOps(デブオプス)とは、開発担当者と運用担当者が密に連携し、柔軟かつスピーディーにシステム開発を進める手法です。開発と運用の間の壁を取り払い、協力して開発を進めていくことで、迅速なリリースと高品質なシステムの提供を目指します。
また、開発のライフサイクルを自動化することもDevOpsの特徴です。これにより、品質を保ちながらすべての作業を迅速に行えるようになります。
システム開発を正しい工程で実施するメリット
ここからは、システム開発を正しい工程で進めることによって得られるメリットを紹介します。
プロジェクトを円滑に進行できる
正しい工程でシステム開発を進めることで、プロジェクトをスムーズに進められることがメリットです。計画段階での明確な目標設定や要件定義により、チーム全体が同じ方向を目指して作業を進めやすくなります。
さらに、各工程が順序立てて行われるため、進捗状況が把握しやすく、問題が発生した場合でも迅速に対処できるでしょう。結果として、効率的なプロジェクト進行が可能となり、納期通りに高品質なシステムを提供できます。
システムの品質向上につながる
正しいプロセスに沿ってシステム開発を進めることは、システムの品質向上につながります。各工程での詳細な計画や設計、厳密なテストを通じて、不具合を未然に防ぎ、システム全体の完成度を高めることが可能です。
また、要件定義から運用テストまでの一貫した流れにより、品質管理が徹底されるため、信頼性の高いシステムを提供することができます。これにより、ユーザーの満足度が向上し、長期的な信頼関係の構築にもつながるでしょう。
コミュニケーションが活発になる
正しいプロセスに従うことで、開発側と発注側の間で活発なコミュニケーションが生まれます。各工程での定期的な打ち合わせや進捗報告により、双方の理解が深まり、意見交換がスムーズに行えるのです。
これにより、要望や変更点が迅速に共有でき、問題の早期発見と解決につながります。コミュニケーションが活発になることで、プロジェクト全体の連携が強化され、より質の高いシステムを効率的に開発できます。
システム開発の工程を正確に進めるポイント
システム開発を成功させるためには、各工程を正確に進めるためのポイントを押さえることが重要です。ここでは、とくに重要なポイントを4つ紹介します。
専門用語を把握しておく
システム開発において意思疎通をスムーズにするためには、専門用語を把握しておくことが重要です。開発側と発注側の間で共通の理解を持つことで、誤解や認識のズレを防ぎ、効率的なコミュニケーションが可能となります。
また、専門用語を理解することで、技術的な詳細や仕様についての議論が深まり、プロジェクトの質が向上します。これにより、円滑な進行と高品質なシステムの提供が実現しやすくなるでしょう。
具体的な開発目的を立てる
システム開発の工程を正確に進めるためには、開発の目的を明確にしておくことが重要です。目的が曖昧だと、プロジェクトの進行中に方向性がぶれたり、優先順位が不明確になることがあります。
具体的な開発目的を立てることで、チーム全員が同じ目標を共有し、効率的に作業を進めることが可能です。また、目的が明確であれば、進捗状況の評価や問題点の発見も容易になり、プロジェクト全体の質が向上します。
適した開発手法を選ぶ
システム開発の成功には、自社の状況に適した開発手法を選ぶことが求められます。開発手法ごとに特徴が異なるため、プロジェクトの規模や目的、チームのスキルに応じて最適な手法を選択しましょう。
例えば、綿密に品質を担保する必要があるプロジェクトにはウォーターフォールモデル、柔軟性が求められる場合はアジャイルモデルが有効です。適した手法を選ぶことで、効率的な開発が可能となり、プロジェクトの成功確率が高まります。
工程別比率をチェックする
システム開発において、各工程の工数比率を把握することも重要なポイントです。一般的な工数比率の目安は、要件定義に20%、設計に25%、実装に30%、テストに25%とされています。
これらの比率を知っておくことで、開発工数全体のバランスを理解でき、リソース配分やスケジュール管理がしやすくなります。
システム開発の工程を進める際の注意点
システム開発を成功させるためには、工程を進める際に注意すべきポイントがいくつかあります。これから紹介する注意点を押さえておくことで、プロジェクトのトラブルを未然に防ぐことができます。
システムに種類があることを把握する
システム開発には「オープン系システム」「Web系システム」「汎用系システム」など、さまざまな種類があります。それぞれのシステムには特有の特徴があり、開発の目的や用途に応じて適したものを選ぶことが重要です。
オープン系システムは自由度が高く、Web系システムはインターネット上での利用に適しています。一方、汎用系システムは、セキュリティと耐久性の高さが求められるシステムにも対応可能です。これらの種類を把握することで、プロジェクトの要件に最も適したシステムを開発できるようになります。
規模によって開発期間が異なる
システム開発の期間は、その規模によって大きく異なります。小規模なシステムであれば数週間から数か月で完成することがありますが、大規模なシステムでは数年を要することもあるでしょう。
例えば、社内で使用する簡単なアプリケーションと、全国規模で利用される大規模なデータベースシステムでは、必要とされるリソースや時間が異なります。開発期間を正確に見積もるためには、システムの規模と複雑さを考慮し、適切な計画を立てることが重要です。
外注する場合は比較を行う
システム開発を外注する際には、依頼する会社の選定が非常に重要です。適切なパートナーを選ぶことで、プロジェクトの成功率が大きく左右されます。選ぶ際には、技術力や実績、コスト、コミュニケーション能力などを比較検討しましょう。
複数の会社から見積もりを取り、比較することで、自社のニーズに最も合った企業を選ぶことができます。外注先の選択は、開発の品質と効率に直接影響を与えるため、慎重に検討することが大切です。
システム開発の成功には正確な工程の理解が重要
システム開発を成功させるためには、各工程を正確に理解することが不可欠です。計画から運用までのすべてのステップで、明確な目的と適切な手法の選択が求められます。外注する場合であっても、発注者が工程について理解することは欠かせません。本記事で紹介したポイントや注意点を参考に、システム開発の各工程について理解を深めておきましょう。
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