年末調整の還付金はいつ戻ってくる?もらえる人の条件や受け取る際のポイント
年末調整を受けると「還付金」を受け取れる可能性があります。還付によって戻ってくる金額はさまざまですが、平均額はいくらなのでしょうか。本記事では、年末調整の還付金はいつ戻ってくるのか、還付金がもらえる人の条件や受け取る際のポイントなどを詳しく解説します。
目次
年末調整の還付金とは?
年末調整の還付金とは、毎月給与から天引きされた所得税が納めるべき金額を超えていた場合に、納税者の手元に戻ってくるお金のことです。
毎月の給与から差し引かれている所得税は、前年の申告書をもとに概算で設定されています。この際、生命保険や住宅ローンなどの所得控除は考慮されていません。そのため所得控除なども含めて、企業が支払うべき税金を正確に算出する必要があります。この算出作業が年末調整です。
年末調整で計算した結果、源泉徴収された所得税が多かった場合、その差額が還付金になります。
年末調整の還付金を受け取る時期
年末調整の還付金は企業によって振込時期が異なりますが、多くの場合は、12月あるいは1月の給与振込と同じタイミングで振り込まれます。
年末調整は1年間の精算を目的にしていることから、12月の給与・賞与が確定した後に還付金の発生有無を計算します。そのため、12月あるいは1月に還付される傾向にあるのです。
年末調整で戻ってくる金額の平均額
年末調整で戻ってくる平均額の正確なデータは開示されていないものの、国税庁の公表データをもとに推定の金額を算出することができます。
- 源泉所得税・復興特別所得税の総還付金額:2兆5429億2700万円
- 1年を通じて勤務した給与所得者・1年未満勤続者の合計人数:5265万円
源泉所得税・復興特別所得税の総還付金額を、1年を通じて勤務した給与所得者・1年未満勤続者の合計人数で割った数値が、還付金の平均額になります。
このことから、2兆5429億2700万円÷5265万円=4万8,298円が、おおよその平均還付金額といえるでしょう。
[出典:国税庁「第148回 国税庁統計年報 令和4年度版」]
[出典:国税庁「令和4年分 民間給与実態統計調査」]
年末調整の還付金をもらえる人の条件
年末調整で還付金を受け取るには、主に以下8つの条件のいずれかに該当する必要があります。
- 扶養親族が増えた人
- ひとり親の人
- 夫と離婚・死別した人
- 本人または家族が障害者の人
- 個人で保険に加入している人
- 個人で社会保険料を支払った人
- iDeCoに加入している
- 住宅ローンを組んでいる人
それぞれの条件について、詳しく解説します。
扶養親族が増えた人
16歳以上の扶養親族が増えた場合、扶養控除の対象になり、支払うべき所得税が軽減されます。
16歳未満の子どもは扶養控除の対象にならないものの、収入によっては個人住民税の非課税対象になる可能性があります。扶養控除は1人あたりを対象にするため、還付金を正確に算出するうえでも、扶養親族が増えた場合は必ず申告しましょう。
ひとり親の人
子どもを養いながら、一人で生計を支えているひとり親の人を対象にした控除がひとり親控除です。
婚姻関係にある配偶者がおらず、かつ生計をともにする子どもがいる場合、所得税・住民税の控除が受けられます。
また、近年は事実婚を選択する人も増えていることから、令和2年度の税制改正によって事実婚をしていないことが条件に追加されています。
夫と離婚・死別した人
夫と離婚・死別し、かつ合計所得金額が500万円以下の場合に利用できるのが寡婦控除です。
同年の12月31日までに再婚しておらず、離婚・死別の状態が続いている場合、寡婦控除の対象になります。
ただし、ひとり親控除の要件を満たす場合、寡婦控除と同時に利用することはできません。この場合は控除額が多いひとり親控除のみ適用されます。
本人または家族が障害者の人
本人または家族が身体・知的・精神などの障害を有する場合、障害者控除を受けられます。
障害者控除では、「障害者」「特別障害者」「同居特別障害者」という3種類の区分があり、それぞれ適用条件や控除額が異なります。適用されるためには、自治体から発行される「障害者手帳」や「療育手帳」などの証明書が必要です。
個人で保険に加入している人
個人で加入している保険については、保険料控除という制度を利用して、支払った保険料の一部を税金から差し引くことができます。主な控除対象は以下の通りです。
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
生命保険控除には生命保険料のほかに、介護医療保険料や個人年金保険料も含まれます。
また、住居用の建物に地震保険料を支払っている場合、一定金額が控除対象になります。控除を受けるためには、契約している保険会社から届く控除証明書が必要です。
個人で社会保険料を支払った人
企業から天引きされる社会保険料とは別に、配偶者や子どもなどの保険料を支払っている場合、社会保険料控除の対象になります。主な控除対象は以下の通りです。
- 健康保険料(国民健康保険料も含む)
- 厚生年金保険料(国民年金保険料も含む)
- 厚生年金基金の掛け金(国民年金基金も含む)
- 介護保険料
- 雇用保険料
- 後期高齢者医療保険料
- 公務員共済の掛け金
これらの控除を受けるためには、各機関から発行される控除証明書が必要です。
iDeCoに加入している人
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、掛け金の全額が小規模企業共済等掛金控除の対象になります。
掛け金の支払いを証明する書類の提出をもって、控除を受けることが可能です。
住宅ローンを組んでいる人
住宅ローンを組んでいる人は、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を受けられます。これは住宅ローンを返済している人を対象に、所得税の一部を軽減するための制度です。
住宅ローンの控除額は、年末時点の住宅ローン残高だけでなく、住宅の性能などによっても異なります。主な控除条件には、以下が挙げられます。
- 住宅の取得から6か月以内に入居し、現在も継続して居住していること
- 住宅ローン控除を受ける年の合計所得金額が3,000万円以下であること
- 住宅の床面積が50平方メートル以上あること
- 返済期間が10年以上、かつ分割で返済していること
年末調整の還付金を受け取る方法
年末調整の還付金を受け取る方法は企業によって異なりますが、主に以下の2パターンに大別できます。
- 口座振込による還付
- 手渡しによる還付
それぞれのケースについて、詳しく解説します。
口座振込による還付
口座振込による還付は、手続きの効率化と正確性を重視した企業に選ばれる傾向があります。支払い手数料が増えないように、一般的には給与の支払いと一緒のタイミングで振り込まれます。
口座振込による還付は、手渡しによる還付に比べて手間やミスが減り、迅速に処理できるのが特徴です。また、還付金の金額や振込の日時が正確に記録されるため、後から確認しやすいメリットもあります。
手渡しによる還付
手渡しによる還付は、給与を手渡しで支給している企業に選ばれる場合があります。
また、手渡しは銀行口座に振り込むよりもタイムラグが少なく、即時性の高さを重視する企業から好まれる傾向にあります。
年末調整の還付金の計算方法
年末調整の還付金は、一般的に以下の5ステップで算出します。
- その年の給与・賞与の総額を計算する
- 給与収入額から給与所得控除を差し引き給与所得額を計算する
- 給与所得額から所得控除を差し引き課税所得額を計算する
- 課税所得額から所得税を確定する
- 所得税額と源泉徴収税額の差分から還付金額を計算する
各ステップの具体的な計算方法について、詳しく解説します。
その年の給与・賞与の総額を計算する
最初に、1月から12月までの期間で支給した給与・賞与を確認し、総額を算出します。
年末調整の段階では12月の給与は未確定のケースが多いため、これまでの傾向からおおよその金額を見積もりましょう。
給与収入額から給与所得控除を差し引き給与所得額を計算する
12か月分の給与・賞与の総額を出した後は、給与収入額から給与所得控除額を差し引きます。
給与所得控除額は、国税庁によって給与収入額に応じて段階的に設定されています。
給与収入額 | 給与所得控除額 |
162万5,000円まで | 55万円 |
162万5,001円〜180万円 | 収入金額×40%−10万円 |
180万1円〜360万円 | 収入金額×30%−8万円 |
360万1円〜660万円 | 収入金額×20%−44万円 |
660万1円〜850万円 | 収入金額×10%−110万円 |
850万1円以上 | 195万円(上限) |
例えば年収500万円の場合、「500万円÷4(1000円未満の端数切り捨て)×4×80%=356万円」が給与所得額になります。
[出典:国税庁「No.1410 給与所得控除」]
給与所得額から所得控除を差し引き課税所得額を計算する
給与所得額を算出した後は、生命保険控除や小規模企業共済等掛金控除などの所得控除の申請内容を確認し、その合計金額を給与所得額から差し引きます。
給与所得額356万円で、所得控除の総額が30万円の場合、「356万円−30万円=326万円」が課税所得額になります。
課税所得額から所得税を確定する
所得税は、「課税所得額×税率−控除額」で計算できます。税率と控除額は所得金額ごとに異なるため、国税庁の速算表を確認するとよいでしょう。
課税対象の所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円〜194万9,000円 | 5% | 0円 |
195万円〜329万9,000円 | 10% | 9万7,500円 |
330万円〜694万9,000円 | 20% | 42万7,500円 |
695万円〜899万9,000円 | 23% | 63万6,000円 |
900万円〜1799万9,000円 | 33% | 153万6,000円 |
1800万円〜3999万9,000円 | 40% | 279万6,000円 |
4000万円以上 | 45% | 479万6,000円 |
また、住宅ローン控除の条件を満たしている場合は、この段階で算出した所得税額から直接差し引くことになります。
[出典:国税庁「No.2260 所得税の税率」]
所得税額と源泉徴収税額の差分から還付金額を計算する
所得税額から源泉徴収税額を差し引いたときにマイナスが出た場合、その金額が還付金として納税者に戻ってきます。
このとき、計算結果がプラスになった場合は、その金額が追加徴収分として発生します。
年末調整の還付金を受け取る際のポイント
年末調整の還付金を受け取るためには、事前準備が何よりも大切です。ここでは還付金を受け取るうえで、気をつけるべきポイントを2つ解説します。
控除申告書を必ず提出する
控除申告書は、保険料控除や配偶者控除など、税金の負担を軽減するための情報を記載する大切な書類です。
控除申告書の提出が漏れていた場合、控除が適用されずに通常よりも多くの税金を支払うことになるため注意が必要です。必要書類を期限内に提出するためにも、従業員自身が必要な書類を把握し、早めに準備を進めることが大切です。
申告書は間違えのないよう記入する
申告書はただ提出すればよいものではありません。抜け漏れや誤りがない状態で提出することが何よりも重要です。
申告書に抜け漏れや誤りがあると、過払いの税金が戻ってきません。仮に虚偽の申告として税務署に疑いを持たれた場合は、税務調査の対象になる可能性もあるため注意しましょう。
年末調整で戻ってくる金額は事前に確認しておこう
年末調整の還付金は、税金の負担を軽減するうえで欠かせないものです。本記事を参考に還付金に関する内容の理解を深め、年末調整の準備を進めましょう。
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