年末調整の配偶者控除とは?必要書類や申告書の書き方・注意点を解説

年末調整における配偶者控除は、給与所得者の税負担を軽減する制度のひとつです。しかし、配偶者控除を受ける際は年収の壁に注意しなければなりません。本記事では、年末調整における配偶者控除の仕組みや申請方法、注意点などを紹介します。正確に申請するためにも、しっかりと把握しておきましょう。
目次
年末調整の配偶者控除とは?
年末調整における配偶者控除とは、扶養している配偶者が一定の条件を満たす場合に適用される税金の控除制度です。控除が適用されると、所得税や住民税の負担が軽減されるため、家計にとって大きなメリットがある制度といえるでしょう。
控除額は配偶者の収入によって異なりますが、配偶者の年間収入が103万円以下であれば全額控除が受けられます。なお、配偶者の収入に応じた控除額は後述します。配偶者控除を受けるには、年末調整か確定申告での申告が必要です。会社に勤めている場合は、年末調整時に申請をします。もしも申告が漏れてしまっても、確定申告期間内であれば申請が可能です。また、会社に勤めている場合は、翌年1月末の源泉徴収が配布される前であれば、年末調整を申請できる可能性があります。
扶養控除とは別の制度
配偶者控除と扶養控除は別々の制度ですが、どちらも所得税を軽減するための制度ですが、両者には、対象者や収入の面に違いがあります。
配偶者控除の対象は配偶者となり、配偶者の収入に応じた一定の金額が控除されます。一方、扶養控除の対象は、配偶者以外の親族や 子どもで、主に年齢や就労状況によって控除額が決まります。
配偶者控除の場合、年末調整で提出する書類も扶養控除とは異なり「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」という書類に記入します。
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控除を受けるための条件
配偶者控除を受けるためには、いくつかの条件があります。
- 配偶者が年間の合計所得が48万円以下(給与所得であれば103万円以下)であること
- 納税者自身の合計所得も1,000万円以下であることです。
- 納税者と配偶者が生計をともにしていること
- 青色申告者の事業専従者であり、その年を通じて一度も給与の支払を受けていない、あるいは白色申告者の事業専従者でないこと
事業専従者とは、個人事業主と生計をともにしている配偶者や、15歳以上の親族を指します。事業専従者は、青色申告、白色申告ともに配偶者控除の対象となりませんが、青色申告、白色申告で確定申告を行う場合、条件を満たせば給与を経費として扱えます。
控除額の上限
配偶者控除の控除額は、納税者と配偶者の収入状況によって変動します。
配偶者の合計所得が48万円以下であれば、最大38万円の控除が受けられます。しかし、納税者の所得が900万円を超える場合、控除額は段階的に減少し、1,000万円を超えると控除は受けられません。
このように、収入に応じて控除額が異なることに留意が必要です。
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年末調整の配偶者特別控除との違い
配偶者特別控除は、配偶者の収入が103万円を超えても一定の範囲内であれば控除が受けられる制度です。以下で詳しく解説します。
控除の適用条件が異なる
配偶者特別控除を受けるための条件は、配偶者の年間所得が48万円以上133万円以下であることです。配偶者控除が配偶者の所得が103万円以下の場合に適用されるのに対し、配偶者特別控除は、収入が多くても段階的に控除が受けられます。さらに、配偶者控除の条件に加えて以下を満たす必要があります。
- 配偶者が、納税者の扶養控除等申告書、あるいは従たる給与についての扶養控除等申告書に記載された源泉控除対象配偶者がある居住者として、源泉徴収されていないこと
- 配偶者が、公的年金等の受給者の扶養親族等申告書に記載された源泉控除対象配偶者がある居住者として、源泉徴収されていないこと
控除額の範囲が異なる
配偶者特別控除の控除額は、配偶者の収入に応じて変動します。配偶者の所得が48万円を超えると段階的に控除額が減少し、最大で38万円の控除が受けられます。配偶者の所得が増えるにつれて控除額は減少し、133万円を超えると控除は適用されません。
配偶者の収入が増加しても一定の控除が受けられる点が特徴です。
年末調整で配偶者控除を受けるための必要書類
年末調整で配偶者控除を受けるには、必要な書類に情報を正しく記入し、提出することが重要です。以下では、具体的な必要書類について詳しく解説します。
扶養控除等(異動)申告書
扶養控除等(異動)申告書は、年末調整の際に扶養家族や配偶者がいる給与所得者が提出する重要な書類です。なお、毎年更新が必要であるため、異動があった際には速やかに変更を申告することが求められます。正確に記入し、適切な控除を受けましょう。
保険料控除申告書と控除証明書
保険料控除申告書は、生命保険や地震保険などに加入している場合に提出する書類です。申請すると、支払った保険料に応じて税金の負担を軽減できます。年末調整前に保険会社から送られてくる控除証明書を基に記入し、書類に控除証明書を添付して提出しましょう。
3種類の控除申告書
基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書は、年末調整で使用される3つの控除を一括して申告するための書類です。基礎控除はすべての納税者に適用されます。なお、所得金額調整控除は、一定の給与所得者に適用される控除です。
対象者が提出する書類
住宅借入金等特別控除とは、住宅ローンを利用してマイホームを取得した場合、一定期間、各年末の住宅ローン残高に応じた金額が所得税や住民税の一部から控除される制度です。
住宅借入金等特別控除を受けるためには、住宅借入金等特別控除申告書と残高証明書、さらに源泉徴収票を提出する必要があります。残高証明書は金融機関から発行され、借入金の残高を証明する書類です。
また、源泉徴収票は給与所得を確認するためのもので、年末調整に必要な情報を含んでいます。これらの書類を揃えることで、住宅ローンに対する税控除を適切に受けることが可能です。
年末調整に必要な配偶者控除等申告書の書き方
配偶者控除等申告書の正しい書き方を理解することで、年末調整の手続きがスムーズに進みます。以下では、具体的な書き方について詳しく解説します。
基本情報
配偶者控除等申告書の基本情報欄には、申告者自身の氏名、住所、生年月日、マイナンバーなどの個人情報を正確に記入します。特にマイナンバーは重要な情報であり、間違いがないように注意が必要です。配偶者の氏名やマイナンバーも正確に記入しましょう。
合計所得金額の見積額
合計所得金額の見積額欄は、申告者や配偶者のおおよその年間所得を記入する欄です。給与所得者の場合は、年収から給与所得控除を差し引いた金額を記入します。
また、配偶者にアルバイトやパートなどの収入がある場合も、その合計所得を見積もって記入してください。正確な金額を把握するためには、源泉徴収票や給与明細を参考にすると良いでしょう。
控除の判定と控除額
控除の判定と控除額の欄には、申告者や配偶者の合計所得金額に基づいて、どの控除が適用されるかを確認し、控除額を記入します。
まず、配偶者の所得に応じて配偶者控除または配偶者特別控除の適用を判定し、適切な控除額を選びましょう。控除額は、配偶者の所得金額や申告者自身の所得に応じて異なるため、記入ミスを避けるためにも、税務署のガイドラインや給与担当者に確認することをおすすめします。
年末調整における配偶者控除の注意点
配偶者控除を受けるためには、いくつかの点に注意する必要があります。以下では、具体的な注意点について詳しく解説します。
保険金も所得として加算される
配偶者控除を受ける際は、保険金も収入として計算されることに注意が必要です。配偶者が受け取る保険金が一定額を超えると、合計所得が増えることになるため、配偶者控除の対象外になる可能性があります。
保険金は給与所得以外の収入として加算されるため、全体の所得額を正確に把握しておくことが重要です。不明点は、税務署や専門家に相談しても良いでしょう。
産休・育休中でも申請できる
産休や育休中でも、配偶者控除の申告は可能です。休職中であっても、その期間に産休手当や育休手当などの収入があり、合計所得が控除の条件を満たしていれば配偶者の控除対象となります。
収入が少ない時期でも、配偶者控除をしっかり活用することで税負担を軽減できます。忘れずに申請しましょう。
配偶者控除を受ける際は年収の壁にも注意
配偶者控除を受ける際は、年収の壁に注意が必要です。以下では、配偶者の収入によって控除が適用されなくなる年収の壁について詳しく解説します。
年収103万円
配偶者控除では、年収103万円が重要な「壁」となります。これは、配偶者の給与収入が103万円以下であれば所得税がかからず、配偶者控除が適用されるためです。この範囲内であれば扶養されているとみなされ、最大38万円の控除を受けられます。
配偶者の所得がすべて給与の場合で、年間の給与が162万5,000円までであれば、給与所得控除が適用され55万円が控除されます。つまり、103万円から55万円が控除されて所得が48万円になるため、配偶者控除が適用されるということです。
しかし、103万円を超えると配偶者控除の対象外となるため、配偶者の収入がこの額を超えないよう調整することが重要です。特に、配偶者がパートやアルバイトをしている場合は注意が必要です。
年収150万円
年収150万円は、配偶者控除・配偶者特別控除の最大額38万円を受けられるかどうかの重要な「壁」です。配偶者の年収が150万円以下の場合、配偶者特別控除を適用して最大38万円の控除が受けられます。
配偶者特別控除で最大38万円を受けるには、配偶者の合計所得が95万円に抑える必要があります。95万円に55万円の給与所得控除を足した額が、150万円になるためです。
年収201万円
年収201万円は、配偶者特別控除が受けられるかどうかの「壁」です。配偶者の年収が201万円以下であれば、段階的に配偶者特別控除を受けられますが、201万円を超えると控除の対象外になります。
先述したとおり、配偶者特別控除を受けるには、配偶者の合計所得133万円以下であることが条件です。給与所得が201万円以上の場合、68万3,000円の給与控除が発生して合計所得が133万円以上になるため、配偶者特別控除を受けられなくなります。
配偶者の収入が高くなるほど、その額に応じて控除額が減少するため注意が必要です。
年収1,000万円
従業員本人の合計所得金額が1,000万円を超えると、配偶者が要件を満たしていても、配偶者控除や配偶者特別控除を受けることができません。
所得が多い場合には、控除が適用されないことを理解し、計画的に年末調整を行うことが大切です。
年末調整の配偶者控除で税制の恩恵を受けよう
配偶者控除は配偶者の年収によって控除額が変動するため、年収の壁には注意する必要があります。また、配偶者控除のメリットを最大限に得るためには、適用条件を正確に理解し、適切な書類を提出することが大切です。記事を参考に年末調整をスムーズに進め、節税効果を高めましょう。
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