年末調整と確定申告の違いとは?関係性や控除の種類・両方必要となるケース
年1回行われる「年末調整」と「確定申告」。どちらも納めるべき所得税を確定させる手続きですが、どのような違いがあるのでしょうか。本記事では、年末調整と確定申告の違いや関係性、それぞれの控除の種類や両方の手続きが必要となるケースを解説します。
目次
年末調整と確定申告の違い・関係性
年末調整と確定申告は、どちらも1年間の所得に基づいて税金を計算して申告する手続きですが、手続き方法が異なります。年末調整は会社に必要書類を提出し、従業員の代わりに税金の調整をします。
一方、確定申告は個人が自分で税務署に申告するもので、主にフリーランスや副業での収入がある人が対象です。どちらも正しい税額を確定するために行いますが、年末調整は所得税の過不足金額を調整するために企業が行うもの、確定申告は所得税の税額を確定させるために個人が行うものという違いがあります。
年末調整とは
年末調整とは、給与所得者が本来支払うべき所得税額を算出し、納税額の過不足を調整するために会社が行う手続きです。ここでは、年末調整の対象者や実施時期、受けられる控除の種類について説明します。
年末調整の対象者
年末調整の対象者は、給与を受け取っている会社員やパートタイマー、アルバイトなどの従業員です。1年を通じて同じ会社で働いている人や、途中で入社して12月31日まで働いている人も対象となります。
年の途中で退職した場合でも、一定の条件を満たせば年末調整を受けることが可能です。また、副業などで他に所得がある場合は、確定申告が必要になることがあります。
年末調整の時期
年末調整は、通常11月末から12月上旬にかけて行われます。一般的には11月上旬頃までに従業員が必要書類を提出し、その書類をもとに会社側で年末調整を行います。
提出期限を過ぎてしまうと担当者の作業に遅れが生じたり、自分で確定申告を行わなくてはならなくなるため注意が必要です。
年末調整で受けられる控除の種類
年末調整で受けることのできる控除の種類は以下の通りです。
- 基礎控除
- 配偶者控除・配偶者特別控除
- 扶養控除
- 障害者控除
- 寡婦控除
- ひとり親控除
- 勤労学生控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 社会保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 住宅ローン減税制度(2年目以降)
- 所得金額調整控除
控除が適用されれば税負担を軽減することができるため、該当するものがないか確認しておきましょう。
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確定申告とは
確定申告とは、1月1日から12月31日までの所得を基に納税額を確定させる手続きです。ここでは、確定申告の対象者や実施時期、受けられる控除の種類について説明します。
確定申告の対象者
確定申告の対象者は、個人事業主やフリーランスなどの事業所得がある人です。ただし、副業での収入がある場合や、年間の給与が一定の金額を超える場合など、会社員であっても確定申告が必要なケースもあります。
また、医療費控除などを受けたい場合も確定申告が必要です。
確定申告の時期
確定申告を実施する時期は、翌年の2月16日から3月15日までです。この期間内に前年の所得を計算し、納めるべき所得税額を申告します。
期限内に申告をしないと、延滞税が課せられることがあるため注意が必要です。なお、納めすぎた税金がある場合は「還付申告」として1月1日から申告することができます。
確定申告で受けられる控除の種類
確定申告では、年末調整で受けられる控除のほかに、医療費控除・寄附金控除・雑損控除を受けることができます。医療費控除は、年間の医療費が10万円以上を超える場合などに適用される控除です。
また寄付金控除は、ふるさと納税など個人で寄付を行った場合に、雑損控除は災害や盗難などによって損害を受けた場合に対象となります。
会社員で年末調整と確定申告両方必要となるケース
会社員であっても、場合によっては年末調整と確定申告の両方が必要となるケースがあります。どのようなケースが該当するのか、詳しく見ていきましょう。
給与以外の所得が20万円を超える人
給与以外の所得が20万円を超える場合は、年末調整に加えて確定申告が必要です。例えば、副業で得た収入や株式売買、不動産収入などが該当します。
会社員の場合、給与分の所得税は年末調整で調整されますが、これらの追加所得に対する税金は確定申告で別途申告しなければなりません。また、所得が20万円以下であれば確定申告は不要ですが、住民税の申告は必要となるため注意が必要です。
2か所以上の会社から給与や賞与の支払いを受けている人
2か所以上の会社から給与や賞与を受け取っている人は、年末調整と確定申告の両方を行わなくてはならないケースがあります。2つの企業に雇われている場合でも、年末調整ができるのはどちらか1社です。この場合、収入が多い方の企業で年末調整を行うのが一般的です。
そのため、年末調整を受けていない方の会社の収入が年間20万円を超える場合は確定申告を行う必要があります。
給与の他に不動産の貸付による家賃収入などがある人
会社員であっても、不動産の貸付による家賃収入がある場合は確定申告が必要です。不動産収入は給与とは別に課税されるため、その所得を正確に申告する必要があります。
また、不動産の売却によって利益が出た場合も、同様に確定申告を行わなくてはなりません。こうした収入は年末調整で反映されないため、正確な税額を確定させるためにも、確定申告を行いましょう。
年末調整・確定申告を行う際の注意点
ここでは、年末調整・確定申告を行う際の注意点を紹介します。
手続きをしなければペナルティ対象になる
一定の収入がある人は、年末調整か確定申告を必ず行わなければなりません。特に、確定申告が必要な人が手続きを怠ると、延滞税や無申告加算税などのペナルティが課される可能性があります。
適切な手続きを行わないことで後々の負担が大きくなる場合があるため、忘れずに期限内に申告を済ませましょう。
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申告漏れがあると控除や還付が受けられない
確定申告や年末調整での申告漏れがあると、本来受けられるはずの控除が適用されず、還付を受けることもできません。医療費控除や配偶者控除、住宅ローン控除などの控除は、申告することで適用されます。該当する控除がある場合は忘れずに申告しましょう。
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年末調整後に確定申告を行う場合は源泉徴収票が必要
これまで給与所得者が確定申告を行う場合、源泉徴収票を添付する必要がありましたが、2019年の税制改正により不要となりました。
しかし、源泉徴収票には、1年間の給与や税金など確定申告に必要な情報が記載されています。これらの情報を基に確定申告書を作成することで、スムーズに手続きを進めることができるため、会社から発行された源泉徴収票はしっかりと保管しておきましょう。
年末調整と確定申告の違いを理解し適切に手続きしよう
年末調整と確定申告は、どちらも正しい税金を納めるために必要な手続きです。会社員の多くは年末調整のみで問題ありませんが、状況によっては確定申告も必要となります。申告しないと控除を受けられないだけでなく、ペナルティを課されることもあるため、それぞれの違いを理解して適切な手続きを行いましょう。
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