年末調整に交通費・通勤手当は含まれる?非課税限度額や注意点を解説
毎年12月に行われる、「年末調整」。1年間の給与収入を対象に行われますが、交通費や通勤手当による収入は年末調整の対象に含まれるのでしょうか。本記事では、年末調整に交通費・通勤手当は含まれるのか、交通費の非課税限度額や年末調整における交通費についての注意点などを詳しく解説します。
目次
年末調整に交通費は含まれるのか?
交通費が年末調整の対象に含まれるかどうかは、年収がいくらかによって異なります。
年収を106万円以下に抑える場合、通勤のための交通費(通勤手当)は非課税扱いとなり、収入の計算には含まれません。
一方、扶養から外れ、社会保険への加入義務が生じる年収130万円を超える場合は、交通費も収入と見なされ、年収の計算に含まれるようになります。
交通費の非課税限度額
平成28年度の税制改正によって、通勤交通費の非課税限度額は引き上げられ、従業員の自己負担が軽減されました。以下では改正後の非課税限度額の詳細について解説しましょう。
[出典:国税庁「通勤手当の非課税限度額の引上げについて」]
公共交通機関を使う場合に支給する交通費
電車やバスなどの公共交通機関を使用する場合、月15万円を上限として、交通費は全額非課税となります。
一方で、支給されている交通費が15万円を超える場合は、例外として15万円を超えた部分が課税対象となります。また、交通費が一律で支給される場合など、実費よりも多く支給されている場合も、実費を超過した部分は年収に含まれ、課税対象となるため注意が必要です。
自動車や自転車などを使う場合に支給する交通費
自動車や自転車通勤の場合、交通費の非課税限度額は通勤距離によって異なります。以下は通勤距離に対応する非課税限度額をまとめたものです。
通勤距離(片道) | 非課税限度額(月額) |
2km未満 | 0円 |
2〜10km未満 | 4,200円 |
10〜15km未満 | 7,100円 |
15〜25km未満 | 12,900円 |
25〜35km未満 | 18,700円 |
35〜45km未満 | 24,400円 |
45~55km未満 | 28,000円 |
55km以上 | 31,600円 |
なお、自動車のガソリン代や駐車場代を考慮する場合は、上記を基準に合理的な範囲で支給額を設定するのが一般的です。
公共交通機関かつ交通用具を使う場合の交通費
公共交通機関と自動車・自転車を併用している場合も基本的な考え方は同じです。
公共交通機関の定期代と自動車などの交通費の合計が15万円以下の場合は全額非課税となり、15万円を超える場合は超えた部分が課税対象となります。
年末調整の非課税限度額を考慮した源泉徴収簿の書き方
年末調整では、交通費の非課税限度額を考慮して源泉徴収簿を書く必要があります。具体例として、以下の条件で考えてみましょう。
- 通勤距離が片道50km
- 自動車で通勤している
- 毎月の給与は30万円
- 通勤手当は26,000円
この場合、非課税限度額として「45km以上」の場合の31,600円が適用されるため、通勤手当の26,000円は全額非課税となります。源泉徴収簿上では、「非課税通勤手当」の欄に通勤手当の26,000円を記入することになります。
年末調整における交通費の注意点
年末調整における交通費について、知っておくべき注意点を3つ解説します。
年収を103万円以下に抑える場合は交通費の非課税限度額に注意
年収を103万円以下に抑える場合は、交通費の非課税限度額に注意しましょう。通勤手当が非課税限度額を超えてしまうと、超過分は年収に含まれることになるため、結果的に年収が103万円を超えてしまう可能性があるためです。
特に、給与と別に交通費が支給されている場合は、非課税限度額内に収まっているかどうかが扶養控除の判断に影響します。通勤手当が年収の壁に影響を与えないよう注意しましょう。
非課税限度額を超えた分は課税の対象になるため注意
通勤手当の支給額が非課税限度額を超えると、その分は課税対象となる点にも注意が必要です。
超過部分が収入に合算されて103万円や106万円などの年収の壁を超えてしまうと、配偶者控除や扶養控除を受けられなくなる可能性があるためです。年収を抑えたい従業員が年末になって望まぬ結果にならないよう、企業側も十分注意する必要があります。
グリーン車の場合は課税の対象
通勤のためにグリーン車を利用する場合、追加料金部分は課税対象となります。非課税対象となるのはあくまでも「経済的かつ合理的なルートで通勤する場合の交通費」であるためです。
グリーン車などの特別料金がかかる乗車券は上記の要件には該当しないため、課税対象と見なされます。
交通費の非課税限度額に注意しよう
適切な年末調整を行うには、交通費の非課税限度額に関する理解が必須です。実際の非課税限度額はいわゆる「年収の壁」や通勤方法などによって細かく定められています。非課税限度額を超過した部分は課税対象となるため、年収の計算に影響が出る可能性があることを考慮しましょう。
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