年末調整をしないとどうなる?デメリットや対処法・簡単に済ませる方法を解説
多くの労働者にとって重要な手続きの年末調整ですが、もし実施しなかった場合、どうなるか知らない方も多いのではないでしょうか。本記事では、年末調整を行わなかった場合のデメリットや対処法などを紹介します。年末調整の負担を軽減する方法についても解説しているので、ぜひ参考にしてください。
目次
年末調整とは?
年末調整とは、給与から源泉徴収された所得税の合計額と、1年間の給与に対して算出した所得税額を一致させるための手続きのことです。年末調整を行うことで、所得税の過不足が調整されます。
ここからは、年末調整の対象となる人や確定申告との違いについて解説します。
[出典:国税庁「給与所得者(従業員)の方へ(令和5年分)」]
年末調整の対象者
年末調整の対象者は、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している人です。そのため正社員だけでなく、契約社員やアルバイト、パートといった雇用形態の人も含まれます。
また、年末調整では通常の12月の年末調整が対象となる人と、年の途中の年末調整の対象になる人が存在します。前者は、企業などで年間通して働いている場合や、年の途中から入社し年末まで働いた人が対象です。
一方、年の途中で行う年末調整の対象となる人の条件は以下の通りです。
- 海外転勤などで非居住者になった場合
- 病気や死亡による退職
- 12月に支給されるべき給与の支払後に退職した場合
- パートとして働いていた人が退職し、本年中に支払を受ける給与の総額が103万円以下である場合(退職した年に他の勤務先から給与の支払を受ける場合は除く)
[出典:国税庁「No.2665 年末調整の対象となる人」]
確定申告との違い
年末調整は、所得税の過不足を清算するために会社が行う手続きであるのに対し、確定申告は所得税の税額を確定するために納税者自身が行うという違いがあります。
ただし、給与所得者であっても副業をしている人や医療費控除など年末調整では対応できない控除を申告したい場合は、確定申告を行う必要があります。
年末調整をしないとどうなる?
故意に年末調整をしない場合、脱税とみなされて罰則が科せられる可能性があります。税務署から未納を指摘されたのにもかかわらず、その後も納税を怠ると、最終的には資産が差し押さえられることがあります。
このような事態に発展してしまうと、企業の信用問題になりかねないため、適切に年末調整を行うことが大切です。
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年末調整しなかった場合のデメリット
年末調整をしない場合、どのようなデメリットを被る可能性があるのでしょうか。ここでは、年末調整を実施しない場合のデメリットを3つ紹介します。
控除が適用されなくなる
年末調整では、基礎控除や配偶者控除、扶養控除など12種類の控除を受けることができます。これらの控除を受けるには年末調整で申告書を提出することが必要であり、提出しない場合控除を受けることはできません。
控除が適用されなければ総所得額が多くなってしまい、従業員の税負担が増える可能性があります。できるだけ支払う税金を抑えるためにも、必ず年末調整を行うようにしましょう。
税金が過払いになる
年末調整を行わないと、過払い分の税金が還付されることはありません。通常年末調整では各種控除が適用され、過払いだった分が返金されます。
しかし、年末調整をしないと適正な税額を算出することができないため、還付を受けることができず、結果的に税金を多く支払うことになってしまいます。
確定申告が必要になる
年末調整を行わない場合、従業員個人で確定申告をする必要が生じます。通常は企業が年末調整を代行するため、個別に申告する必要はありません。しかし、何らかの理由で年末調整をしていない場合、自分で確定申告をして所得税の計算や控除の適用を行う必要があります。
個人で一から確定申告を行うのは時間と労力がかかるため、しっかりと年末調整を行うことが大切です。
年末調整しなかった場合の対処法
何らかの理由で年末調整ができなかった場合でも、適切に対処すれば問題ありません。ここでは、年末調整をしなかった場合の対処法を紹介します。
年末調整のやり直しを検討する
年末調整を忘れてしまった場合でも、やり直しが可能な場合があります。法律上、年末調整の最終期限は1月31日までとなっているため、翌年の1月末までに申請すれば対応してもらうことが可能です。
ただし、すでに年末調整の書類を税務署に提出している場合などは難しいため、早めに確認するようにしましょう。
個人で確定申告を行う
会社での年末調整をしなかった場合、個人で確定申告を行うことが求められます。まずはじめに、源泉徴収票や控除証明書などの必要書類を準備し、それをもとに確定申告書を作成していきます。
確定申告書の提出方法は、税務署へ直接持ち込むか郵送で届けることも可能です。また、電子申告(e-Tax)を利用すればオンラインで完結させることができます。確定申告の実施期間は、翌年の2月16日から3月15日となっているため、期限に間に合うよう準備を進めましょう。
過去5年分なら還付申告が利用できる
課税対象となる年度の翌年から5年間までであれば、還付申告を行うことが可能です。年末調整や確定申告を忘れてしまった場合でも、還付申告を利用すれば過払い分の税金を取り戻せる可能性があります。
年末調整が不要になるケースもある
給与所得者であっても、年末調整が不要となる場合もあります。ここでは、どのようなケースが該当するのか見ていきましょう。
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書が未提出の場合
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書が未提出の場合、年末調整の対象外となります。この申告書は、年末調整を行う際の前提条件となる書類であり、扶養控除や配偶者控除などを受けるために必要な書類です。
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書を提出しないと年末調整が行われず、正確な所得税が算出できないため、過剰に税金を支払った場合でも還付されることはありません。また、毎月給料から天引きされる所得税が高くなるため、必ず提出して年末調整を受けるようにしましょう。
その年の給与が2000万円を超える場合
その年の給与が2000万円を超える場合、会社員であっても個人で確定申告を行うよう定められているため、年末調整を行う必要はありません。
1年間で2000万円を超える給与を支払っている従業員がいる場合には、間違えて年末調整を行わないよう注意しましょう。
給与支払いが多い他の会社で年末調整を受ける場合
複数の会社から給与を受け取っている場合、一般的には給与の多い方の会社で年末調整を行います。そのため、他の会社では年末調整を受ける必要がありません。
給与を複数の会社から受け取っている場合は、どの会社で年末調整を行うかをしっかり確認しましょう。
年間所得が103万円以下で源泉徴収を受けていない場合
年間所得が103万円以下で、源泉徴収を受けていない場合も年末調整の対象外となります。これは、年間所得が103万円以下の場合所得税が発生せず、年末調整を行う必要がないためです。
このようなケースでは、会社側での年末調整はもちろん、確定申告も必要ありません。ただし、源泉徴収をしていた場合は徴収した税金を還付しなくてはならないため、年末調整を行う必要があります。
災害減免法が適用される場合
災害減免法が適用される場合、年末調整は不要となります。この法律は、災害により大きな被害を受けた人々を対象に、税金の負担を軽減するためのものです。
これに該当する従業員は所得税の猶予期間が設定されるため、年末調整を行う必要はありません。
年末調整を簡単に済ませる方法
最後に、年末調整を簡単に済ませる方法を紹介します。
スケジュールを管理する
年末調整をスムーズに行うためには、スケジュール管理が重要です。まず、提出期限や必要書類を確認し、いつまでに何を準備するかを明確にしましょう。
また、従業員に対して提出期限の周知を徹底し、期限ギリギリで慌てることがないように計画的に進めることが大切です。
年末調整の代行サービスを活用する
年末調整を簡単に済ませたい場合、代行サービスを活用する方法があります。代行サービスは専門家が手続きを代行してくれるため、担当者の手間が大幅に軽減されます。
また、書類の提出期限や控除の適用についても、プロがしっかりと管理してくれるため、ミスを軽減することが可能です。確実に年末調整を終わらせたい場合は、代行サービスの利用を検討してみましょう。
年末調整システムを導入する
年末調整を効率的に進めるためには、専用のシステムを導入する方法も有効です。システムを活用することで、書類の管理や計算が自動化され、手続きをスムーズに進められます。
また、ミスを減らし、時間を節約できる点も大きなメリットです。特に従業員が多い企業では、年末調整システムを導入することで、業務の効率化と負担の軽減が期待できます。
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年末調整しないリスクを理解しておこう
年末調整を実施しないと、控除が受けられず税金が過払いになるだけでなく、確定申告の手間が発生したり、場合によっては罰則が科せられたりする可能性もあります。これらのリスクを避けるためには、ルールに沿って適切に進めることが大切です。年末調整を効率化したい場合は、代行サービスや専用のシステムを利用することも検討してみましょう。
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