BIツール活用に向けたデータベース設計の基本|設計方法や活用例を解説
BIツールの活用において欠かすことのできない「データベース設計」。BIツールを効果的に活用するためには、適切なデータベースの設計が必要です。本記事では、BIツール活用に向けたデータベース設計の基本について、基本的な考え方や設計方法やBIツールの活用例を詳しく解説します。
目次
BIツールとは
BI(Business Intelligence)ツールとは、企業がデータベースに蓄積した大量のデータを効果的に分析し、ビジネス戦略の策定や日々の業務の改善に役立てるためのツールです。
BIツールの主要な機能としては、以下が挙げられます。
- 既存の基幹システム(データベース)からデータの収集・統合
- 集めたデータの分析・集計
- データ分析結果の可視化
大量のデータを整理し、ビジネスに必要な情報を抽出・分析する役割を果たします。
BIツールとデータベースの関係性
データベースとは、さまざまな出来事や業務プロセスから生じたデータが整理・保存されたものを指します。
そしてBIツールは、データベース内に蓄積された大量のデータを抽出し、統計的な分析や加工を行うことで、ビジネスを前進させるための情報を発見するためのツールです。したがって、BIツールが効果を発揮するためには、適切に設計されたデータベースが必要であると言えます。
BIツール活用においてデータベース設計が重要な理由
BIツールはデータ分析を行うためのシステムですが、データベースが適切に設計されていない場合、分析に必要なデータの抽出が難しくなり、その結果として分析内容が不正確になるリスクが高くなります。
データベースの初期設計に大きな問題があると、どれだけ大量のデータを蓄積したとしても、それを上手に活用することはできません。したがって、BIツールを活用するためには、データベースの構築が重要となるのです。
BIツールにおけるデータ分析のステップ
BIツールがデータの抽出と分析を行う各ステップについて、以下に説明します。
社内にあるデータをデータベースに蓄積する
BIツールを活用する下準備として、社内にあるデータをデータベースに蓄積させましょう。
このとき、販売記録、顧客情報、在庫状況など、多岐にわたるデータが一元管理されることで、分析の精度が向上します。
データベースに蓄積されたデータをETLツールで加工する
十分にデータが蓄積されたら、「ETLツール」を用いてデータを加工します。
ETLツールとはExtract(抽出)、Transform(変換)、Load(格納)のプロセスを指します。データベースに蓄積されたデータを効率的に加工し、分析に適した形式へと整える処理であり、精度の高い分析には欠かせない工程です。
ETLツールで加工したデータをDWHに蓄積する
ETLツールで加工したデータは「DWH」に蓄積されます。DWH(Data Warehouse)とは、企業の様々なデータを一元的に集約し、詳細な分析を行うための倉庫の役割を担うシステムです。
DWHに一度入力されたデータは基本的に削除されず、すべてが分析の対象として保存され続けます。膨大なデータの扱いに適した構造を持ち、分析のための高速処理を得意としています。
DWHに蓄積されたデータをBIツールで分析・可視化する
DWHに蓄積されたデータは、BIツールを用いて分析され、複雑なデータ群が単純明快なグラフや表として可視化されます。このプロセスにより、企業の意思決定者は直感的にデータを理解できるようになるでしょう。
また、時系列データのトレンド分析や異常値の検出など、詳細な情報をピンポイントで抽出することも可能です。
BIツール活用に向けたデータベースの設計方法・手順
BIツールを最大限に活用するためには、適切なデータベースの設計が必須です。以下に解説します。
データベースの要件を定義する
データベースの設計を始める前に、最終的にどのような情報をデータから読み取りたいかを明確にし、要件を定義しましょう。社内の各部門と十分なヒアリングを行って、必要なデータの種類や範囲を定めてください。
もし、将来的に必要となる情報が予測できないとしても、分析のカギとなるデータ範囲をある程度絞っておきましょう。こうした初期設計は、BIツールを長期的に活用するための最重要なポイントとなります。
データ項目を決める
データベース要件が定義できたら、必要なデータ項目を決定します。また、それぞれのデータにどのような属性(例えば、日付、数値、テキストなど)を付与するかを明確にしておきましょう。これにより、データベース内の情報が整理され、後の分析作業がスムーズに進むようになります。
もし、運用開始後にデータ項目を変更することになると、統一性の維持のために煩雑な作業が求められます。つまり、将来的に変更をしなくても済むよう、網羅性の高い設計にすることが肝心です。
最小単位を設定する
データ項目が定まったら、データの最小単位を設定しましょう。
例えば、売上データにおける「日別」「商品別」「地域別」などの単位を細かく設定すると、より緻密なデータ分析が可能になります。しかし、必要以上に「購買時間帯、時間別、分別・・・」などとデータ単位を広く取り過ぎると、データ容量を圧迫してしまいます。実用的な分析に必要な最小単位を設定することが大切です。
テーブルを作成する
データを効率的に管理するために、適切に設計されたテーブルを作成しましょう。
テーブル設計は、データベース内で情報を整理し保存する枠組みを提供し、各データ項目や属性がどのように保存されるかを定義する工程です。前段階で定めたデータ項目がしっかり機能するかどうか、テーブルを作成しながら再確認するとよいでしょう。
テーブル間の関係性を定義する
テーブルが完成したら、データベース内のテーブル間の関係性を定義します。
データベースには多くのテーブルが用意されています。したがって、それぞれのテーブル間の関連性を明確にしておくことは、複数の情報源からのデータを統合するために必要な工程です。例えば、顧客テーブルと注文テーブルがどのように関連しているかを定義しておけば、顧客IDをキーとして使用することで、顧客ごとの購買履歴を簡単に把握できるようになるでしょう。
データベースが正しく設計されたか確認する
データベースの設計が完了したら、その正確性を確認するためにサンプルデータを使用して、入念な確認作業を行いましょう。
必要なデータの挿入、更新、抽出がスムーズに行われるかを確認し、問題があれば修正を行います。同時に、破綻した内容のサンプルデータなどで混ぜておくことで、将来的にエラーが起きた際の切り分け訓練なども行うことができます。データベースは初期設計が肝心ですので、さまざまな障害対処プランも事前に試しておくとよいでしょう。
BIツールの活用例
以下に、BIツールの具体的な活用例について紹介していきます。
経営分析・売上予測
BIツールは、経営分析や売上予測に役立ちます。
BIツールを使うと、経常利益率、損益分岐点、売上高などを、グラフや表で可視化できるようになります。それぞれのデータを一目で分かりやすく把握できるようになり、今後の経営施策を立てやすくなるでしょう。
営業活動
BIツールは営業活動にも活用できます。売上実績や見込み客のデータを可視化できることで、より効果的な営業施策を立案・実行できるのです。
また、蓄積されるデータをグラフなどで自動出力できる仕組みを整えれば、雑務に追われることなく、顧客と向き合うことに注力できるようになるでしょう。
マーケティング
BIツールは、マーケティングの分野でも活躍します。
「どの商品やサービスがいつ、どこで購入されたか、利用されているか」を詳細に分析することは、大量のデータ処理に特化したBIツールの得意分野です。事前の適切なデータベース設計がされていれば、複数データから新たな相関性も発見できる可能性もあります。例えば、地域別の販売データを緻密に分析することで、特定の地域に効果の高い施策を考案できるでしょう。
人事管理
BIツールを用いて従業員の勤怠状況やスキル、残業時間などを分析することは、人事管理の効率も大きく向上させます。
例えば、部署ごとや個人ごとのパフォーマンスデータを把握し、それに基づいて必要な教育・研修を設定したり、より緻密なキャリアパスを計画することができるようになるでしょう。また、残業時間の分析からは業務効率の問題点を洗い出し、労働環境の改善につなげられます。
生産・物流管理
BIツールで生産工程や生産計画を可視化することで、製造業において無駄のない生産・物流管理を実現できます。
例えば、在庫管理にBIツールを利用することで、適正在庫数や需要を予測し、最適なタイミングでの適切な数量の発注が可能となるでしょう。また、複数拠点のデータも一元管理できるため、管理業務の効率化を図ることができます。
レポート作成
BIツールによるデータ分析は、レポート作成業務を大幅に効率化してくれます。
正しい運用ができていれば、必要な情報は全てデータベースに納められているはずです。その状態からBIツールに指示を出すだけで、質の高いレポートが完成するため、レポート作成業務の時間を大幅に削減できるのです。
BIツール活用におけるデータベース設計の重要性を理解しよう
BIツールを最大限に活用するためには、データベースの設計が極めて重要です。最終的に出力したい情報をよく洗い出して、データベースを慎重に設計しましょう。
正確なデータベース設計をすることで、データの抽出、分析、可視化をスムーズに行えるようになります。BIツールの効果を最大限に発揮するために、データベース設計の重要性を理解し、適切な設計を行いましょう。
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