BIツール・DWH・ETLの違いや関係性|メリット・デメリットについて解説
データ活用の領域で耳にすることが多い「BIツール・DWH・ETL」。データ集計や分析、管理に関わる言葉ですが、違いが分からない方も多いのではないでしょうか。本記事では、BIツール・DWH・ETLの違いと関係性や、メリット・デメリットについて詳しく解説します。
目次
BIツールとは?
BI(ビジネス・インテリジェンス)ツールとは、企業が持つさまざまなデータを分析・可視化し、経営や業務に役立てるためのツールです。
BIツールを使うことで、大量のデータを効率的に分析し、一目で理解できる分かりやすいレポートやダッシュボードを作成できます。エクセル等の手作業で同様の取り組みをしている企業も多いと思いますが、専門ツールを活用すれば、より手軽かつ精密なデータ分析が可能となるでしょう。
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BIツールとDWH・ETLの違いとは?
BIツール、DWH、ETLの3つのシステムは、いずれもデータ活用を実現するシステムですが、それぞれの役割が異なります。
- BIツール:データの分析・可視化に特化した分析ツール
- DWH(データ・ウェアハウス):大量のデータを整理・保管するための倉庫
- ETL(エグザート・トランスフォーム・ロード):複数のシステムに格納されたデータベースをDWHで管理できるように集約、変換する
「分析すべきデータをETLで収集し、DWHで保存・管理したうえで、BIツールによって分析する」といった流れでデータ分析は実現されています。
DWH(Data Ware House)とは?
DWH(データウェアハウス)とは、大量のデータを目的別や時系列に整理し、保管するための倉庫のようなシステムです。
企業が生成し続ける大量のデータを一元管理し、必要に応じて迅速にアクセスできる環境を用意することがDWHの役割です。データ分析や報告の基盤となる機能であり、経営戦略や業務改善のためのデータ活用において、欠かせない存在と言えるでしょう。
ETL(Extract Transform Load)とは?
ETLとは「Extract(抽出)」、「Transform(変換)」、「Load(書き出し)」の頭文字を取ったものであり、バラバラに保存されていたデータを、DWHで管理できるようにするために整えるシステムです。
ETLツールは、異なるシステム群から必要なデータを抽出し、分析しやすい形式に変換した後にDWHに書き出しています。もし、ETLツールがなければ、DWHにデータを格納するには膨大な手作業が必要となるでしょう。以下に、ETLが行う各手順の詳細を説明します。
Extract(抽出)
ETLにおける「Extract」は、基幹システムのデータベースやCSVファイルなど、さまざまな場所に点在しているデータを一か所に集約するための抽出する機能です。
このプロセスは、BIツールでデータ分析を行うための第一歩であり、データの正確性と網羅性を保つために重要です。
Transform(変換)
ETLにおける「Transform」は、抽出されたデータをDWHで分析しやすいようにデータ形式を変換する機能です。
具体的には、データのクレンジング(誤りや重複などの修正・削除)やフォーマットの統一、複雑なデータの分解・再構築などを行います。このプロセスにより、データは一貫した形式に整えられると、最終的なBIツールの分析精度が底上げされます。
Load(書き出し)
ETLにおける「Load」は、変換されたデータをDWHに保存する機能です。
変換して整えられたデータはDWHに書き出され、そこからBIツールなどを使って分析されます。もしLoadが行われなければ、分析のたびにExtractとTransformを再実行する必要があるため、スピーディな分析を行うためには必須の工程です。
BIツールとDWH・ETLの関係性
BIツール、DWH、ETLは、データ活用を効果的に行うために密接に連携しています。
まずETLがさまざまなデータソースからデータを抽出して必要な形式に変換し、DWHに書き出します。DWHに蓄積された膨大なデータは、一元管理され必要に応じてアクセスできるように整えられます。そして、BIツールはこのDWHに保存されたデータにアクセスし、分析したうえで視覚的に表示するプロセスを担当しています。
このように、3つのシステムが連携することで、はじめて「BIツールによるビッグデータの分析」という目的を効果的に果たすことができるようになります。
BIツールのメリット・デメリット
BIツールには、データの分析や可視化を効率的に行える反面、導入や運用に際しての注意点も存在します。代表的なメリット・デメリットについて、紹介を解説していきます。
BIツールのメリット
BIツールを導入するメリットは、以下の通りです。
誰でも簡単にデータ分析・可視化ができる
BIツールの最大のメリットは、専門知識がなくても簡単にデータを分析・可視化できることです。
誰にでも使いやすいインターフェースや豊富なテンプレートが備わっているため、専門知識がない人でも複雑なデータ分析を直感的に行えます。経営層や各部門の担当者がデータに基づいた意思決定を迅速に行えるようになるため、事業全体のパフォーマンスも格段に向上するでしょう。
データ収集・分析の手間を省ける
BIツールを使用することで、エクセルなどを用いたデータ分析の手間を、大幅に省くことができます。
自動化されたデータ収集機能や、複雑な分析を直感的に行える手軽さは、分析精度を飛躍的に向上させてくれます。担当者はより戦略的な業務に集中できるようになり、企業全体の生産性が改善されるはずです。
データをリアルタイムで簡単に確認できる
とりわけ、クラウド型BIツールではデータがクラウド上に保管されているため、場所を選ばずにデータ分析をすることが可能です。
さらに、分析・可視化されたグラフや集計表を1つの画面にまとめて表示できるダッシュボード機能により、データの推移をリアルタイムで確認できます。多くの従業員が常に最新のデータをチェックできれば、組織としての意思決定もよりスムーズになるでしょう。
▷クラウド型のおすすめBIツールを比較|導入メリットや選定のポイント・オンプレミス型との違い
潜在的な問題を発見できる
BIツールを利用することで、データに現れた異変や早期発見が可能になります。
潜在リスクの兆候を察知できれば、より少ないコストで対策を講じることができるようになるでしょう。また、同時に予防的なアプローチが取れるため、リスク管理が強化されます。
高度かつ精度の高いデータ分析ができる
BIツールは、OLAP分析やデータマイニング機能を搭載しており、高度かつ精度の高いデータ分析を実現してくれます。
また、従来の分析工程では認識できなかった法則を検出できれば、企業は市場の変化により迅速に対応し、競争力を強化することが可能となるでしょう。
BIツールのデメリット
BIツールにはいくつかのデメリットも存在します。以下に、主な注意点を紹介します。
導入・運用ハードルが高い
BIツールの導入や運用には、ある程度の工数を見込む必要があります。
適切にBIツールを活用するためには、専門知識やDWH構築などの初期準備が必要です。また、運用体制やルール作りも必須となるため、一定の初期投資や教育コストがかかることはデメリットと言えるかもしれません。
使いこなせない・業務負担になる可能性がある
BIツールは高機能であるがゆえに、運用には専門知識が求められる場合があり、一時的に業務負担が増すケースもあります。
導入したツールが業務内容に合わない場合、あるいは使いこなせるようになるまでの助走期間においては、BIツールの存在がかえって業務負担となることを想定しておきましょう。せっかくの投資を無駄にしないためには、適切なツール選定と導入後のフォローが必要です。
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DWHのメリット・デメリット
DWH(データウェアハウス)は、大量のデータを効率的に管理し、分析をサポートするためのシステムですが、導入にはメリットとデメリットがあります。
DWHのメリット
DWHの導入メリットは、以下の通りです。
部署をまたいだ共通の情報共有ツールとして利用できる
DWHは複数の部署からデータを集約するため、部署をまたいだ共通の情報共有ツールとして活用できます。
企業全体でデータに関する共通認識を持つことができれば、部門間の連携や意思決定がスムーズになるでしょう。例えば、営業部門とマーケティング部門が同じデータを共有して戦略を立てることで、より一貫性のある取り組みが可能になるかもしれません。また、部門間で情報を問い合わせる必要性が無くなれば、業務フローの効率化も期待できます。
整理された大量のデータを長期間保存できる
DWHは、目的や時系列に沿って整理された大量のデータを、長期間にわたって保存することができます。
過去のデータを参照してトレンドを分析したり、将来の予測を行うための基盤が確保されれば、BIツールによる分析能力を最大限に活かすことができるでしょう。また、情報の一元管理によってデータの重複や欠落を防ぎ、分析結果の信頼性を高めることにもつながります。
DWHのデメリット
DWHにはいくつかのデメリットも存在します。以下に、主な注意点を紹介します。
DWHの構築・設定が不適切だと上手く機能しない
DWHの構築や設定に問題があると、BIツールによるデータの抽出や分析が実現できないことがあります。
DWHは「情報を正しく整理して管理する」ためのシステムですので、中途半端な構築状態では、その後のデータ分析に混乱を招いてしまいます。DWHには正確な要件定義と設計が求められることを意識しましょう。
運用体制・ルールを構築する必要がある
DWHの効果を最大限に引き出すためには、適切な運用体制やルールを構築する必要があります。
データ管理の方法やアクセス権限の設定、データの更新頻度など、細かい運用ルールを決めることで、DWHの運用がスムーズになります。もし、こうした運用ルールが定められていないと、場合によっては情報流出などのセキュリティリスクにつながります。ビッグデータは企業の資産ですので、適切なスキルを持った人材を育て、厳格なルールのもとで運用することを心がけてください。
ETLのメリット・デメリット
ETLはデータの抽出・変換・読み込みを効率的に行うシステムであり、DWHを活用するためには欠かせない存在です。ここからは、ETLの具体的なメリットとデメリットを詳しく解説します。
ETLのメリット
ETLツールを活用するメリットについて、以下に解説します。
企業に散在しているデータを高速で収集・管理できる
ETLを使えば、企業内に散在するさまざまなデータを高速で収集し、一元的に管理するために整えることができます。
もし、ETLを用いずに同じことを達成しようとすれば、膨大なコストがかかるため、DWHやBIツールの導入を見送らざるを得ないケースもあるはずです。ETLは、そんな旧システムからの移行作業を、強力にバックアップしてくれます。
データ収集・管理にかかる手間・時間を削減できる
ETLツールを導入することで、データ収集や管理にかかる手間と時間を大幅に削減できます。
専門知識がない社員でも利用できるため、データの整備や更新作業を専門部署に依頼せずに済むのも大きな利点です。これにより、業務効率が向上し、各部門がデータ活用に専念できるようになります。
データの質を向上できる
ETLツールは、収集したデータの重複や誤り、表記のゆれなどを自動的に修正し、データの質を向上させるデータクレンジング機能を持っています。
正確で一貫性のあるデータを確保すれば、質の高いDWHを運用できるうえ、ひいてはBIツールの分析結果の信頼性を高めてくれます。手作業では非現実的な作業量であっても、ETLを用いれば難なくデータの質を向上できるでしょう。
ETLのデメリット
一方で、ETLにはいくつかのデメリットも存在します。以下に、主な注意点を紹介します。
ETL単体ではデータを最大限活用できない
ETLはデータの抽出・変換・読み込みに特化したツールであり、単体ではデータを活用することはできません。
つまり、ETLはBIツールやDWHと組み合わせて利用することで、初めてデータの全体的な活用が可能となります。あくまで、補助ツールであることを忘れないようにしましょう。
利用するためには最低限のITスキルが必要
ETLツールを効果的に利用するためには、最低限のITスキルやデータ管理に関する知識が必要です。
特に、初期設定やカスタマイズには専門的なスキルが求められるため、経験の浅い従業員には適切なトレーニングやサポートが不可欠です。ETLを導入する際には、そうした研修にかかるコストも想定しておきましょう。
BIツール・DWH・ETLの関係性を理解しよう
BIツール、DWH、ETLは、企業のデータ活用を支える重要なシステムであり、それぞれが補完し合うことで、ビッグデータを活用した経営を強力にバックアップしてくれます。
BIツールで質の高い分析結果を得るためには、DWHとETLによる正確なデータ管理が必要不可欠です。この関係性を理解し、適切に導入作業を進めることができれば、あらゆる企業がデータドリブンな意思決定を実現し、競争力を高めることができるでしょう。各ツールの特徴を理解して、ビッグデータの活用に役立ててください。
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