BIツールの歴史について|誕生した背景や普及した理由を詳しく解説
ビジネスにおけるデータ利活用の重要性が高まっていることから、急速に普及が進む「BIツール」。ところで、BIという概念は、いつどのような背景で誕生したのでしょうか?本記事では、BIツールの歴史を振り返りつつ、今後のビジネスにおけるBIツールの重要性について詳しく解説します。
目次
BIツールとは?
BI(Business Intelligence/ビジネスインテリジェンス)の頭文字が付けられたBIツールは、「ビッグデータ」と呼ばれる、企業が保持するさまざまなデータを効率良く分析し、見える化するためのツールとして急速に普及が進んでいます。
BIツールの具体的な活用方法としては、販売データや顧客情報、市場の動向など、多岐にわたるデータをBIツールに集約。それらを統合的に分析したデータを基に、意思決定やアクションをする「データドリブン」な経営判断や業務改善を行うために役立てられています。
ビジネス現場に活かせる客観的な情報が、スピーディーかつ多角的に手に入ることから、現代のビジネス戦略にマッチしたツールとして、多くの企業で導入が進められています。
▷BIツールとは?目的や搭載されている機能・仕組みなどをわかりやすく解説
BIツールの歴史
そもそも「BI」という概念が生まれたのは1958年のことです。
BIを提唱したIBM研究所(米国)のハンズ・ピーター・ルーン氏は、BIとは「希望する目的のための行動をガイドするための、すでに存在する事実の相互関連性を把握する能力」であると定義しています。
その後、1989年に米国のアナリストであるハワード・ドレスナー氏によって「非専門家でも、データを活用して意思決定の質を高められる仕掛け」とシンプルに再定義されたものが、現在におけるBIの定義として知られるようになりました。
また、同時期には、この概念を実現できるEUC(End User Computing : 個人向けコンピュータ)とDWH(Data Ware House : データを一括管理する仕組み)の技術が誕生します。
この2つが普及・発展したことで、1990年代にはEUCとDWHをかけ合わせて大量のデータ(ビッグデータ)を分析し、ビジネスにデータを役立てるための土台が整いました。
その後もBIの概念は、消費者行動の変化や、社会の変化を受けて、どんどん重要性を高めていき、ツールとともに進化を重ねてきました。現在では、スマホやタブレットでも動作する、コンパクトなBIツールも普及しています。
BIツールの誕生前
BIツールが登場する以前から、経営にデータ分析を組み込む試みは、数多く存在していました。
そんな状況下で開発されてきた以下のシステムは、BIの前身ともいえるものです。
- MIS(Management Information Systems : 経営情報システム)
- DSS(Decision Support Systems : 意思決定支援システム)
- SIS(Strategic Information Systems:戦略情報システム)
それぞれを詳しく見ていきましょう。
MIS(Management Information System)
MIS(Management Information Systems)、すなわち経営情報システムは、1960年代に提唱された考え方およびシステムであり、現在におけるBIの祖先とも言える存在です。
MISは企業活動に関するデータを収集し、それを整理・分析することで、経営陣がより客観的でデータに基づいた決定を下すための支援システムとして使われていました。
例えば、販売データ、顧客情報、市場状況など、多岐にわたる情報を統合的に分析し、経営の効率化や戦略の策定に活かせる洞察を引き出す、などです。
しかし、当時の技術的限界などから、MIS自体はあまり定着しなかったものの、MISの理念を引き継いでデータの記録・分析を意思決定に役立てようとする取り組みは続き、1970年代にはDSSが誕生しています。
DSS(Decision Support System)
DSS(Decision Support System)、またの名を意思決定支援システムは、MISの課題を克服するために生まれたシステムです。
MISとの大きな違いは、利用者が直接コンピュータを操作して、必要なデータの取得や分析などを行う点にありました。技術の進歩によって、リアルタイムのデータ処理や対話式の操作が可能となったために生まれたシステムですが、当時の技術ではまだ操作体系が難しすぎたため、MISと同じく普及には至りませんでした。
SIS(Strategic uses of Information System)
SIS(Strategic uses of Information System)、すなわち戦略情報システムは、MISやDSSを、さらに発展させた考え方です。
SISは1985年に米国コロンビア大学のチャールズ・ワイズマン教授が提唱した概念であり、ワイズマン氏は、企業における情報システムを間接的な役割として捉えるのではなく、競争上の優位を築くための中核として位置づけています。
日本では1990年代前半に大企業を中心にSISの導入が進み、データ活用が、ヤマト運輸や花王、セブンイレブン・ジャパンなどの急成長を支えた仕組みの一つとしても知られています。
BIツールが誕生するまでの技術進化の流れ
BIツールが誕生するまでの過程では、データを効率的に管理・活用するための技術として、まずDWHやEUCといったシステムの誕生がありました。
加えて、データ管理プロセスとしてETL(Extract,、Transform、 Load)やELT(Extract,、Load、 Transform)が普及し、BIツールの誕生へと進化しています。これらの技術について、確認していきましょう。
EUC(End User Computing)
EUC(End User Computing : 個人向けコンピュータ)の普及が、自身の端末でシステム構築やデータ分析を行える環境を実現しました。
それまでは、大型のホストコンピューターが全てのデータ処理を行い、ユーザーにその結果を返すという運用が当たり前でした。しかし、EUCの登場によって、各自が自由にデータを分析できるようになったのです。これにより企業における情報の取り扱いが柔軟となり、企業全体の生産性が劇的に向上しました。
DWH(Data Ware House)
DWH(Data Ware House)は、企業が収集する大量のデータを効率的に管理・保存するためのシステムです。
文字通り「情報の倉庫」として機能するシステムであり、異なるソースからのデータを一元的に収集し、目的別や時系列に整理して保管することに特化しています。DWHにより、企業は蓄積された過去データを基に意思決定を行う土台を整えられるようになりました。
また、DWHはBIツールと連携して使用されることが多く、現在も企業の戦略立案や業務改善には不可欠なシステムとして活用されています。
ETL(Extract Transform Load)・ELT(Extract Load Transform)
ETL(Extract Transform Load)とELT(Extract Load Transform)は、3つの段階を経てデータを整理するための概念です。
ETLは「抽出(Extract)、変換(Transform)、読み込み(Load)」の3段階を経て、異なるソースから抽出したデータをDHWに保存します。一方で、ELTはこのプロセスを少しだけ変え「抽出(Extract)、読み込み(Load)、変換(Transform)」と進行します。
処理順序が異なる理由は、データの処理速度の関係から、大規模なデータセットを扱う際に使い分けが必要なためです。
▷BIツール・DWH・ETLの違いや関係性|メリット・デメリットについて解説
BIツールが普及した理由
BIツールが急速に普及した理由は、情報化社会へと変化し、企業活動における「データ活用の重要性」が理解されたことが前提として挙げられるでしょう。そのほか、具体的な理由を、詳しく説明します。
データを活用した迅速な意思決定が必要になった
BIツールが普及した1つ目の理由は、データを活用したスピーディな意思決定が求められるようになったことです。
すさまじいスピードで変化する現代社会において、企業側は、常にビジネスで遅れを取らないよう迅速かつ効果的な意思決定を行うための投資を積極的に行うようになりました。BIツールが注目されるようになった理由は、まさにこのニーズに応える能力が備わっていたためでしょう。
データをもとにした意思決定は、直感に頼るよりもはるかに生産性や正確性が上がります。ビッグデータから重要な情報を引き出し、より素早く最適な行動を取り続けていくことが、生き残るためのカギとなっているのです。
ビッグデータが増加し保有することが一般的となった
BIツールが普及した2つ目の理由は、企業がビッグデータを保有できる環境が整ったことです。
インターネットの普及、スマホなどのデバイスの進化、そしてITを活用するユーザー数の劇的な増加によって、膨大な量のデータが日々生成されるようになりました。さらに、大規模なサーバーやDWHを導入する障壁が下がり、データ分析の敷居も急速に下がったことで、ビッグデータを保有する下地が整いました。
さらには、これらのビッグデータを単なる情報の集合ではなく、ビジネスチャンスの創出に役立つ「現代の石油」と見なす意識が一般的になったことも大きな理由と言えるでしょう。
▷【無料】おすすめのBIツール10選比較|選ぶポイントや注意点・有料版との違い
現在の進化したBIツール
現代における主流BIツールの種類と、その特徴を詳しく説明します。
エンタープライズBI
エンタープライズBIとは、主に大企業のIT専門部署で扱われる、専門家向けの高度な機能を備えたBIツールです。
最先端の機能を搭載したハイエンドモデルではありますが、その効果的な運用には専門家が不可欠であるため、データ分析の際には社内IT部門などへの依頼が必要です。腰を据えた大規模な分析向けのツールと言えるでしょう。
セルフサービスBI
セルフサービスBIは、専門知識がなくても直感的に利用できるBIツールです。
従来のBIツールは、専門家でなければ使いこなせない傾向がありましたが、セルフサービスBIでは操作性がシンプルに調整されています。「誰でも素早くデータ分析が実行できる」という特徴は、企業全体のデータリテラシーを底上げすることにも貢献するでしょう。
モバイルBI
モバイルBIは、スマートフォンやタブレットからアクセスするタイプのBIツールです。
場所を問わずにリアルタイムでデータを確認し、迅速な意思決定を行うことができるため、ビジネスの効率や柔軟性を強力にサポートしてくれます。アクセス性の良さから、日常的な業務フローにも自然と組み込むことができるBIツールです。
▷クラウド型のおすすめBIツールを比較|導入メリットや選定のポイント・オンプレミス型との違い
BIツールの展望
株式会社グローバルインフォメーションが行った市場調査によると、BIツールの市場は過去10年間で大幅に増加したうえ、2029年までに2024年の2倍近くまで拡大すると予測されています。
BIツールが注目される背景として、ビッグデータを効率的に活用し、競争優位性を確保したい企業のニーズがあるためです。データドリブンな経営が求められる現代において、BIツールの導入は多くの企業にとって欠かせない要素と言えるでしょう。
[出典:株式会社グローバルインフォメーション「ビジネスインテリジェンス(BI): 市場シェア分析、業界動向と統計、成長予測(2024~2029年)」]
BIツールの歴史・誕生や普及の背景を理解しよう
BIツールは、データドリブンな意思決定のニーズを満たすツールとして発展を続けてきました。「BI」の概念が提唱されて以来、情報技術の進化に伴ってOLAPやデータマイニングなどの技術が組み込まれ、現在でも急速な進化を続けています。
さらに、場所を選ばずリアルタイムでアクセス可能なモバイルBI、ユーザー自身がデータ分析を行えるセルフサービスBIが登場したことから、これらのツールはますます普及を続けると予想されています。BIツールの歴史や特徴を理解して、ぜひ自社のデータドリブンな経営にお役立てください。
BIツールの記事をもっと読む
-
ご相談・ご質問は下記ボタンのフォームからお問い合わせください。
お問い合わせはこちら