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テレワークを軸に働きやすさを追求した環境構築 ワークライフバランスと生産性を両立する施策とは

取材日:2024/06/20

国内外でグローバルマーケティング事業を展開するアウンコンサルティング株式会社では、働き方改革とコミュニケーション施策の両面から、社員の多様なライフステージに応じた労働環境の改善を進めています。TOKYOテレワークアワード大賞の受賞にもつながった、同社の取り組みについて、具体的な取り組み内容と、その成果を詳しく伺いました。※本文内、敬称略

お話を伺った人

  • 高橋 重行さん

    高橋 重行さん

    アウンコンサルティング株式会社

    コーポレートグループ執行役員

  • 田尻 愛さん

    田尻 愛さん

    アウンコンサルティング株式会社

    経営管理チーム/マネジャー

この事例のポイント

  1. 場所や時間に縛られずキャリア形成を進められる制度を構築
  2. コミュニケーション施策を充実させ社員間のつながりに注力

スーパーフレックス×テレワークで家庭と仕事を両立

御社が労働環境の整備に注力する理由から教えてください。

高橋:結婚・出産などライフステージの変化を迎える社員が増えてきたことから、働き方の多様化に合わせ、社員がさまざまな働き方を選択できる環境にしたいと考えたのがきっかけです。

そのほかにも、さまざまなバックグラウンドを持つ社員が増えたこともあり、それぞれの能力を最大限生かせる環境を作るために必要な施策と考え、取り組みを始めました。

具体的にどんなバックグラウンドを持った社員がいるのでしょうか。

高橋:本社の社員数は50人弱ですが、完全テレワークのため住んでいる場所は北海道から石垣島までさまざまです。以前は東京に本社、沖縄に支店がありましたが、テレワークの実施に伴い固定のオフィスは2023年5月になくなりました。当社は、女性社員の比率が60%ほどで、家庭と両立している社員が多いと思います。また、人数は少ないですが外国籍の社員もいます。

御社は、コロナ禍といったテレワークが普及した社会背景よりも随分前の、2011年から在宅勤務制度を導入し、その後テレワークへと進んでいます。

高橋:当時の月に最大4回まで使える在宅勤務制度導入は、災害時のBCP(事業継続計画)の観点から導入した制度でした。

支店のあった沖縄に台風が多いことや、この年に東日本大震災が発生したことを踏まえ、自然災害があっても会社としての機能を止めないことが導入の目的です。

その後、2016年にはパートナーの転勤により出社が難しくなった社員を完全テレワークの1号社員にしました。そして、2020年には新型コロナウイルス流行の影響で全員が強制的にテレワークになり、出社とのハイブリッドワークを経て、オフィスがなくなったタイミングで全社的に完全テレワークとなりました。

導入後、働き方や働きやすさはどう変わりましたか。

高橋:私が所属しているコーポレート部門で言いますと、完全テレワークになる前は東京本社でマネジメント業務を行っていましたが、実働部隊は沖縄支社にいました。ですから、オフィス出社時も、チャットツールを使ったリモートでのやり取りが多かったので、特段「働き方が変わった」という感覚はあまりなかったんです。

社会的にもテレワークが普及したことと相まって、コミュニケーションツールを、より駆使するようになり、逆にコミュニケーションが活性化した、とすら感じたほどです。同時にペーパーレス化も進めたので、バックオフィス側では仕事に対しての混乱や摩擦はなく「良い変化」だったと思います。

田尻さんは、完全テレワークを活用された初期メンバーの一人だと伺いました。出社する働き方とテレワークの両方を経験されてみて、テレワークの働き方はどう感じていますか。

田尻:私は、もともと沖縄支社で働いていましたが、夫の仕事の関係で福岡へ拠点を移すことになり、そのときから完全テレワークになりました。

主に経理財務を担当しているのですが、当初は仕事の面でまだ紙を使う場面が多く、沖縄支社の社員に書類や帳票のプリントアウトやスキャン、押印を頼まなければいけないことが多くて...。効率の悪さに、お互いにストレスも感じていたと思います。

ただ、まだコロナ禍になる前の2019年にペーパーレス化を進めて以降、9割近くが電子化でき、以前は必ずオフィスに出社して行っていた監査業務もすべてオンラインで完結できるようになりました。業務効率も上がりましたし、今ではとても働きやすいですね。

何より、在宅勤務になって小学校から帰ってきた子どもを、家で「おかえり」と迎えてあげられるのが嬉しいです。

スーパーフレックス勤務制度の導入についても教えてください。

高橋:元々は10時から17時をコアタイムとしたフレックス制度だったのですが、子どもを持つ社員が増えたことから、コアタイムをなくした、スーパーフレックス勤務制度へと変更しました。

今は、5時から22時の間で、自由に仕事の時間を調整できます。ただ、もちろん好き勝手にしていいというわけではありません。最大限能力を活かせるタイムマネジメントを前提に、仕事や成果への責任を持って自分で勤務時間を管理できる制度として運用しています。

スーパーフレックス勤務を体験してみての所感はいかがですか?

田尻:非常に助かっています。誰かに仕事を頼むことなく子どもを病院に連れて行けるなど柔軟な対応ができますので。

一方で、勤務時間の自由さがある分、任された仕事は、決めた時間・期日内に必ずこなすという責任感も強くなりました。私自身は、働く時間を自分でコントロールできる方が、無駄のないタイムマネジメントができるので、成果を出しやすいと実感しています。

デメリットや課題は、あまり感じられていないということでしょうか?

高橋:いえ、課題がないわけではありません。田尻のように自分の仕事や、自分に求められる役割に対するコミットメントが高いメンバーにとっては、メリットの大きな制度ではあるのは確かです。

ただ、その一方では、例えば共働き夫婦の場合、融通の利く働き方をしている夫婦のどちらかに家庭での用事や調整事項が偏ってしまうなど、働き方の自由度の高さが、その拠り所になってしまうという問題も見えてきています。

家庭の事情ですので致し方ないこともあるでしょうが、本人のキャリアにも影響する部分ですし、会社としては、成果を求めない訳にはいきません。そのため、メンバーにはキャリアビジョンをヒアリングしつつ、パートナーと働き方についてよく相談してほしいと伝えています。そこは、会社としてはコントロールできない難しさもありますね。

雑談配信やバーチャルオフィスが会話の契機に

テレワークでは社内コミュニケーションの希薄化が問題視されますが、どのように対応していますか。

高橋:テレワークだとコミュニケーションが希薄化するという問題は、私もよく見聞きしますが、私は働き方の変化が原因ではないと感じています。

もしテレワークによる物理的に離れた環境が、コミュニケーションの問題を引き起こす原因なのであれば、テレワークでもコミュニケーションが上手くいっている、当社のような会社はないことになります。少々、極端かもしれませんが、テレワークでも上手くいく会社があるのであれば、その原因は、働き方ではなく、そもそもの社員同士の関係性や心理的安全性など、ほかにあると考えるのが自然です。

とはいえ、オフラインに比べ、どうしても社員の様子や雰囲気はわかりにくくなりますので、当社も何もコミュニケーション対策をしていないということではありません。

社員が「自己開示」する働きかけは意識的に行っています。

その対策の一つが「社員の雑談配信」という斬新な取り組みでしょうか?

高橋:はい。2020年か21年ごろに始まりましたが、完全テレワークへと移行するにあたって「自己開示」できる機会や、一緒に働くメンバーの人となりを知れる取り組みが欲しいよねという話も出ていたタイミングでした。

配信する動画は、もともと採用広報用の社員インタビューを収録したものなんです。広報用として掲載するのは、編集した動画ですが、せっかくだから、フルバージョンは社内で共有して、みんなで見ようかというのが始まりでした。

毎回テーマを決めて、そのテーマにあったメンバーを集めて雑談していますが、あくまでも任意参加です。でも社員のほとんどが登場しているのではと思います。テーマはさまざまで、コーヒー好きが集まって話をしたり、沖縄出身のメンバーが沖縄の話をしたり。私は身長180センチ以上あるので「背の高い人あるある」というテーマで参加しました(笑)。

田尻:ペットについて語る会もありましたね。私は仕事中に、雑談動画をラジオ代わりに聴いています。他の部門の方と接する機会は限られますので、この施策で社員の人となりがわかるようになりました。

仕事ではあまり絡むことのないメンバーとも「この間の雑談面白かったよ〜」と、声を掛けるなど、関係を築くきっかけになりますので、コミュニケーション施策としてはとてもいい取り組みだと思います。

高橋:ほかにも新入社員に関しては、全社員と30分間コミュニケーションを取る時間を必ず設けています。これは現在の規模感だからこそできることではありますが、入社後のオンボーディング研修の一環として社員全員の人となりを知ってもらう機会にしています。新人であっても自己開示しやすくなりますし、何か困りごとがあったときにも先輩社員に相談しやすい環境になります。

2021年にはバーチャルオフィスも導入していますね。

高橋:そうですね。当社は、幸いテレワークでもコミュニケーションが活発な文化があるものの、偶発的な会話の機会をもっと増やしたいという思いはありました。チャットツールやビデオ会議ツールはどうしても能動的にアクションを起こさないと会話が始まりません。それを解消して「ちょっといいですか」というような軽い会話を促進したかったのです。

バーチャルオフィスによって「ちょっといいですか」的なコミュニケーションは生まれていますか。

田尻:画面上に「出社」していればいつでも声をかけていいルールにしているので、相手の様子が分かり「ちょっといいですか」の声かけはかなりしやすくなっています。

とりわけ「わざわざチャットするまでもないけれど、ちょっと聞きたい」時に、もっとも使い勝手の良さを感じます。

実際のバーチャルオフィスの画面。テレワークながら、「ちょっといい?」の気軽な声かけができる環境は、テレワーク時の孤独感の軽減にも役立っている。

高橋:なんなら、私はオフィスにいたときよりも話しかけやすくなったと言われますね(笑)。オフラインでは、考え事をしている雰囲気や忙しそうな様子が伝わるので、逆に話しかけづらいと思われてしまうことがあったのでしょう。

田尻:バーチャルオフィス上には作業専用の部屋もあるので、集中したいタスクや急ぎの案件があるときは、その部屋に入って「今、集中してます」とアピールすることもできます。

なので、オフラインよりも自分の状況を伝えやすい感覚もありますね。話ができるタイミングになったら部屋から出てきて、みんなで会話したり情報交換したりというように使っています。

いずれもコミュニケーション施策の効果を、実感されているのですね。

高橋:そうですね。ただ、バーチャルオフィスは、チームマネジャーの「色」が出る施策かなとも感じます。当社もバーチャルオフィスへの「出社」は任意にしているのですが、私や田尻のように仕事のコミュニケーションの延長で発生する雑談を大切にする人(マネージャー)のもとで運用したからこそ、コミュニケーションが活性化される有用なツールとして機能した背景があるのではないかと。そこは、業務特性やマネージャーのメンバーとの関わり方、仕事観の影響は大きいと思いますね。

そのほかにも、オンラインのカウンセリングサービスを導入されていますが、テレワークの働き方と関係がありますか。

高橋:バーチャルオフィスとも関連しますが、テレワークは社員の雰囲気を察することや孤独感の解消に関する課題があります。

メンバーが仕事をしている最中のふとした表情や様子をキャッチすることができないので、どうしてもメンタル不調の前兆などを、上司や周囲が早期に察するのは難しいんですね。そこで、深刻な状態に陥る前の拠り所の一つになるよう、サービスを活用しています。

また、これまで相談窓口は、労務が担当していたのですが、さまざまな相談に応じているうちに、自身がメンタルへルスの不調に陥ってしまう、という懸念がずっとあったんですね。外部のカウンセリングサービス利用は、労務担当者の負担を軽減する、という目的もありました。

今は、特に部署異動や産休育休から復帰した社員には積極的にカウンセリングを受けてもらいながら、全社としては「任意」の運用になっていますが、今後は全社員が年に1回か2回は必ずカウンセリングを受けられるようにしたいと考えています。

キャリアアップや自己実現を支援する環境づくりへ

さまざまな働き方の施策を伺いましたが、これらの効果をどう評価されていますか。

高橋:財務的にはオフィスがなくなったことで固定費が下がり、利益を生み出しやすい体質になってたので、今後売上高が大きく伸びてくれば、本当に成果が実感できると思います。

ペーパーレス化は、最小限のリソースで多くのアウトプットが出せる状況になっていますし、テキスト化されたコミュニケーションのデータベースは、将来、AIの活用にも生かせる可能性があるでしょう。

また、採用活動の際に居住地の制約が不要となったことで地方の優秀な人材にもリーチできるようになったのは、事業へのインパクトも期待できます。

田尻:私自身の目線で言うと「ママさん社員」の選択肢が増えたことで、より長く働くイメージができるようになりました。

当社は副業も可能なので、副業で別の企業のコーポレート部門をサポートしているのですが、オフィス出社・定時勤務の働き方だった場合、育児と(フルタイムの)仕事の両立だけで手一杯になってしまい、とても副業までは手が回らなかったと思います。

いろいろとチャレンジしながらスキルを伸ばせる機会を得られるのは、まさに柔軟な制度のおかげですね。

今後注力したい取り組みや目標を教えてください。

高橋:会社としては人的資本に関するKPIを設定し、将来の価値向上に向けた取り組みを進めたいと考えています。地方在住者や、外国籍の方、そして女性などのキャリア支援に力を入れ、社会全体として多様なバックグラウンドの人が能力を最大限に活かしながら活躍する場が増える方法を模索する取り組みも並行して進めていきたいですね。

田尻:私個人としては、当社の労働環境は非常に良く、制度としてはもう十分かなと思うくらいです。なので、次のステップとしては、高橋が言うように、働きがいや多様な立場の方のキャリア支援の充実になるのかなと思いますね。

そのすべてを会社の「制度」として支援する必要はありませんが、何かにチャレンジしたいと思い立ったときにできる環境づくりと、社員一人ひとりが持っているスキルをきちんと世の中に生かせるような仕組みに取り組んでいきたいです。

完全テレワークの中で働きがいを高める取り組みは難しさがあると思います。会社として考えていることはあるのでしょうか。

高橋:具体的な取り組みはまだありませんが、個人のキャリア志向に寄り添い、副業も推奨することが、一つ、社員が自己実現できる環境を提供していくことになるでしょうか。これにより、社員のモチベーションや生産性が向上し、会社全体の成長にもつながると考えています。

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