サービス資料
ランキング

お役立ち資料
ランキング

セミナー
ランキング

PickUP
キーワード

柔軟な働き方で「眠っていた優秀人材」を発掘 チャレンジ文化が雇用形態に関係ない活躍を後押し

取材日:2024/06/13

会計支援ソフトの開発と販売、および技術サポートを行う株式会社HAYAWAZA。2020年よりテレワーク導入を始めとした柔軟な労働環境を整え、自社の人材確保と良質な雇用の創出を実現しています。その取り組みを詳しく伺いました。※本文内、敬称略

お話を伺った人

  • 大河内信人さん

    大河内信人さん

    株式会社HAYAWAZA

    代表取締役

  • 淺見和宏さん

    淺見和宏さん

    株式会社HAYAWAZA

    取締役管理部長

  • 桜 美鈴さん

    桜 美鈴さん

    株式会社HAYAWAZA

    開発部部長

この事例のポイント

  1. 働き方の自由度を上げて「優秀な人材」へとアプローチ
  2. 「死ぬこと以外はかすり傷」のマインドで従業員のチャレンジを後押し

「優秀なパートさん」のために始めたテレワーク導入

御社は、どのような経緯でテレワークを導入されたのでしょうか?

大河内:テレワークの導入は2020年ごろなので、コロナ禍と重なる時期ではあるものの、きっかけは、あるパート従業員さんでした。

とても優秀なパートさんだったのですが、パートナーのお仕事の都合で遠方に引っ越すことになったので、仕事を続けるのは難しい、と。当時の当社はオフィス出社の勤務スタイルだったので、一般的に考えれば、退職となるのかもしれませんが、私は、何の迷いもなく、「じゃあ、遠方でも働ける環境にしよう」と思ったんです。

テレワークが定着していなかった当時を考えると、思い切った発想のように思えます。

大河内:当社も以前はオフィス出社が普通でしたが、一堂に会することを目的としていたわけではなく、基本的に地元採用で人材が確保できており、通勤にストレスを感じる人が少なかったうえに、会社の方が集中できる、という意見が多かったというのが理由でした。

加えて、すぐに「テレワーク」の発想になったのは、私自身がアメリカのシリコンバレーで仕事をしていた経験や思考があるからかもしれません。

アメリカは時差が複数ある国ですので、そもそも1つの場所に集まって働くというワークカルチャーは重要視されていません。だからこそ、働き方ではなく個人の能力を起点に仕事を選び、柔軟なワークスタイルを実現しているんです。

なので、私にとって、そもそも必須のルールの感覚ではなかった「オフィス出社」の環境を変えることは、至極自然な流れではありました。

とはいえ、急な決断には社内で戸惑いもあったのではないでしょうか?

大河内:そうですね。固定電話からIP電話への切り替えや、コミュニケーション環境をはじめとした社内インフラを完全に整えるまでに1年6ヶ月ほどを要しました。その間は、物理的に出社しなければいけないメンバーもいたので、どうしても不公平感はあったと思います。

ただ、あくまでテレワークへと移行する過程の一時的なものだったので、深刻化することはありませんでした。また、もともとITリテラシーの高いメンバーだったので、ネガティブな意見もなく、導入や移行は、比較的スムーズでしたね。

働き方の壁が、いかに優秀な人材を眠らせていたかを痛感

御社は、役員を除く従業員全員が女性だそうですね。

大河内:はい。ただ、誤解していただきたくないのですが、当社は、決して女性に限定して採用をしているわけではありません。男性を採用したことも、もちろんあります。ただ、結果として、現在は女性のみの組織になったというだけなんです。

ただ、テレワーク導入以降、テレワーク可で週3勤務など、働き方や時間を柔軟に選択できるという募集要件で求人を出したところ、それまで「働き方」に不安を感じて、仕事に復帰するのをためらっていた主婦の方から多くの応募をいただいたのは事実です。 そして、その方々が、とにかく優秀だった。マルチタスクもガンガンこなすし、ある時、サポート職で採用した方に、後になって「私、プログラミングできます」と言われたときは驚きました。このIT人材不足の時代に、ですよ。「働き方」を理由に「働くこと」自体を諦めてしまう人材がいるのは、心底もったいないことだなと改めて実感しましたね。

桜:当社は、管理部、営業部、サポート部、開発部の4部署に分かれているのですが、エンジニアもすべて女性のIT企業は、きっと異色ですよね。

私自身も以前10年ほどエンジニアをしてきたのですが、結婚や出産の後は復職を諦めていた部分がありました。しかし当社で「やってみなよ」と促された結果、週3日の時短勤務から仕事復帰して、「こういう働き方でエンジニアを続けられるんだ!」と、うれしく思ったのを覚えています。

「能力を活かす」に雇用形態や働き方は関係なし!

「働き方」の壁で仕事復帰をためらっていた方からの応募も多かったとのこと、「こんな求人を待っていた」という声も少なからずあったのではないでしょうか?

大河内:そうですね。単にプライベート優先の仕事というのではなく、プライベートを優先しつつ、働きがいを感じられる仕事を待っていた方は多かったように思います。

当社は、従業員の9割が「パートタイマー」としての雇用契約なのですが、だからといって、正社員と業務を区別することはありません。

働き方や雇用形態に関係なく、仕事のアサインは、あくまで最大限能力を活かせる「適材適所」かつ「やりたい仕事」に従事してもらっています。もちろん本人の希望ありきですが、パートさんで全国を出張で飛び回るような方もいますよ。

淺見:当社のサポート窓口の営業時間は、10時半〜16時と、一般的なカスタマーサポートの営業時間よりは短いのが特徴です。

これは従業員の「働きやすさ」を考慮したうえでの決断ですが、従業員間の連携や引き継ぎをしっかり実施しているので、時間内にお問い合わせをいただいたお客様をお待たせすることなく対応していますし、いただいたご質問に対して、明確に回答できない、といったこともありません。

そのため、当社のサポートは、応対時間が短いながらもお客様からも高い評価を得られています。

徹底した「従業員ファースト」ですね。

大河内:付け加えると、「従業員ファースト」が徹底できるのは、当社のサービスが、汎用的なソフトウェアの機能だけで競争力を獲得しているわけでない、オンリーワンのサービスだからという背景もあると思います。

ただ、ソフトの独自性だけで勝負できているからということでもありません。サービスの半分はソフトだとしても、もう半分は、まさに従業員が展開する技術サポートやコンサルティングの質の高さ、細やかさにあります。それらが活きて、はじめて顧客先でソフトが十分に活用されるわけですから、本当に「人材」ありきですね。

テレワークによくある「コミュニケーション」の課題はいかがですか?

大河内:導入当初は、どんなことを気遣うべきなのか?という手探りはもちろんありました。やはりテキストコミュニケーションや相手の様子が見えないテレワークでは、ちょっとした誤解が生まれやすくなる。「相手の反応がわかりづらい」という摩擦は、放っておくと大きなストレスになってしまうので、そのあたりの解消が重要だったと思います。

例えば、同僚に電話をかけてもつながらなかった時に「忙しい時に電話してしまったのかな?」などと不安になることもあるでしょう。それが何度か続くと、放置されているように感じてしまって、「私は会社に必要ないのかな?」なんて思い始めるんですね。こうした些細なズレが積み重なっていくと、関係性の溝を深めるネガティブなスパイラルが生まれてしまいます。

そういったすれ違いは、どのように対処されているのですか?

大河内:仕事上のやり取りだけに終始するのではなく、雑談を目的にしたコミュニケーションの機会も適度に作ることだと思います。

当社の従業員は、どちらかというと、「働きすぎる」「真面目すぎる」くらいの方ばかりなので、それこそ雑談の場が必要だったんです。そこで、スイーツミーティングを行うことにしました。

桜:スイーツミーティングは、「雑談には甘いおやつ」というシンプルな発想からスタートした、スイーツを食べながら自由に話すための時間です。

メンバーの組み合わせは毎回ランダムなので、普段からよく話す人と一緒になるとは限りません。あまり会話したことがない人との雑談の話題づくりは案外難しかったりするのですが、スイーツがあることで、「どんなスイーツにしたの?」というきっかけが生まれるんです。

従業員は、居住地がバラバラなので、ご当地のスイーツが話題になることもありますし、バレンタインシーズンは美味しいチョコの話で盛り上がることもあります。

純粋に楽しいことは良いことですし、こういう機会にお互いの人柄を知ることで、仕事上のコミュニケーションの誤解や摩擦は確実に減っていくと考えています。

コミュニケーションの強化の面で、今後さらに取り組まれる予定の施策はありますか?

大河内:テレワークでも業務を支障なく円滑に進められる環境は整いましたが、「ねぇねぇ」と気軽に相談できる環境整備は、まだまだ必要だと思っています。それでいくと、今後は、ボイスチャットやバーチャルオフィスなどの活用も検討し、距離感や寂しさを感じにくい環境は整えたいですね。

淺見:ただ、どうしても負の要因にされがちなテレワークの距離感ですが、ポジティブな効果もあると思っています。実は、当社もテレワークを導入する前は、従業員同士の人間関係に悩んでいた時期もありました。

やはり人間が集まれば、相性の良し悪しは必ず生まれるものですが、オフィス勤務だと、相性の悪い人との距離感を保つのは難しいですよね。テレワークは、そのあたりの距離感をうまく保つことにも役立つんです。人との快適な距離感というのは人それぞれですが、そこを自分で調整できるのは、テレワークだからこそのメリットだと思います。

優秀な集団だからこそ、性悪説的なルールは不要

テレワークは、管理の目が届きにくい分、ルールが増えていく企業も多い中、御社は「最低限のルール」しか設けないとお聞きしています。

大河内:そうですね。私自身が、不要なルール撤廃論者なので(笑)、とりわけ性悪説を前提としたルールなどは絶対に設けません。

テレワークによるサボりを防止するようなルールが増えていく企業もあると聞きますが、そういう人を働かせるためのルールを作るのは無駄だと思っています。当社の従業員数でしたら、一人ひとりの仕事の成果にも目が行き届きますし、働き方を取り締まるようなルールは必要ないですね。

これは働き方の自由度をあげたことで、優秀な人材を確保できているからこそ言えることかもしれませんが。

なるほど。テレワークの導入は、採用面への影響も大きかったですか?

淺見:それは、とても大きいですね。以前は、有料の広告媒体も利用していたのですが、東京、大阪、名古屋、福岡のような都心部は、まさにレッドオーシャンで人材の奪い合いですので、我々のような中小企業での採用は容易ではありませんでした。

しかし今は、求人広告や求人媒体などには、ほぼコストを割かずに採用活動ができていますし、求める能力以上の採用が叶うこともあるほどです。

「死ぬこと以外はかすり傷」のマインドでチャレンジを後押し

失敗を責めない企業文化があると事前に伺ったのですが、具体例はありますか?

大河内:例えば、マーケティングです。一度、見込み顧客に送付するDM制作を従業員にお願いしたら、真っピンクのデザインを提案されたことがありました。

私たちの顧客の多くは、会計事務所や税理士事務所で、どちらかというとお堅い業界です。あまりにも斬新なので「送っていいのか?」と躊躇しましたね(笑)。

でも、私自身「死ぬこと以外はかすり傷」だと思って、会社を経営しています。経営でいうところの「死ぬこと」は、いわゆる倒産リスクだと思いますが、ピンクのDMを送ったところで倒産はしないでしょう?なので、GOサインを出しました。結果、そのDMが新規顧客につながった。

これは失敗の事例とは違うかもしれませんが、失敗を恐れずチャレンジをする文化を示す例だと思います。

高い心理的安全性があるからこそ、そういった斬新な提案ができるのではないでしょうか?そうした企業文化はどのように醸成されたのですか?

大河内:それは簡単なことで、将来のことは誰にもわからないという考えによるものです。正直、私も全面ピンクのデザイン案には驚きましたが、あの場合、私のイメージとは違うという理由で「NO」と言ったら会社が終わるような気がしました。

会社というものは、経営者の考えだけを実行していては大きく成長することはできません。だから私は、自分からは出てこない発想を優先しています。

人間って、仕事でもなんでも、自分ができるようになると、できなかった時のことや、初めてで戸惑っていた時のことは、すっかり忘れてしまいますよね。だから、「こんな当たり前のことができないの?わからないの?」といった見方になってしまいがちです。それはもう、相手を萎縮させるだけですし、最悪でしかないですよね。

野球経験者にとっては、バットをボールに当てるのなんて簡単でも、初心者にとっては、バットを振るだけでも大変なのと同じです。

だから、アイデアを出すことはあっても、実践は従業員に任せるし、それが初めてのことであれば、「とりあえずバッターボックスに入って、目をつぶってでもバットを振れ」と伝えています。その結果がどうであれ、責めることは絶対にありません。

それでも、何回も続けていれば、目をつぶってバターボックスに立つのが楽しくなるんです。当たるかな?ではないですけど。そうやってチャレンジを恐れない、楽しむ文化が醸成されたように思います。

最後に、今後の組織面の展望・ビジョンについて教えてください。

大河内:女性に限らず、「働き方」の制限で働くことを諦めるようなことがない社会にしたいですし、当社としては、「魅力を感じる働き方」を、もっと増やしていきたいですね。

「HAYAWAZAで働くっていいな」と思ってもらえるようになりたい。まだまだ、日本には育児と仕事の両立に苦労する子育て世代は多いと思います。そうした状況を少しでも解消して、気づいたら日本で女性比率が強烈に高いオンリーワンのIT企業になるのもユニークでいいかなと思いますね。

次に読みたいおすすめ事例

ビズクロ編集部
「ビズクロ」は、経営改善を実現する総合支援メディアです。ユーザーの皆さまにとって有意義なビジネスの情報やコンテンツの発信を継続的におこなっていきます。