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カルチャー専任設置が、最速のビジョン実現へ導く ビジョン実現にはカルチャー浸透を後回しにしない仕組みが必要

取材日:2023/06/23

アタラシイものや体験の応援購入サービス「Makuake」を運営する株式会社マクアケ。ビジョン実現のためにカルチャー推進専任担当を設けている理由とメリットについて伺いました。※本文内、一部敬称略。

お話を伺った人

  • 能城綾香さん

    能城綾香さん

    株式会社マクアケ

    コミュニケーション戦略本部/カルチャープロデューサー

  • 笹田ももさん

    笹田ももさん

    株式会社マクアケ

    人事本部 兼 コミュニケーション戦略本部/カルチャー推進担当

この事例のポイント

  1. 「専任担当者」の設置で高い解像度でのビジョン浸透を実現
  2. ビジョン浸透に向け「見る」「聞く」「話す」「振り返る」を実施

全社員を巻き込み、みんなが熱狂するビジョンづくり

御社は2019年にビジョンを一新しました。当時の課題を教えてください。

能城:当社が運営する「Makuake」は、まだ世の中にない製品やサービスを事業者(実行者)がプロジェクトを掲載し、そのプロジェクトに共感したユーザー(サポーター)が応援購入をする場として、一般的なECサービスでの購入とも異なる全く新しい体験を提供しています。

当時はクラウドファンディングという文脈で紹介されることが多かったのですが、マクアケが本当に実現したい事との乖離が生じていました。

社内でもそのような認識のギャップが発生していた?

能城:そうですね。組織の面でも、社員数が増加し、まさに「50人の壁」を超えようとしていた時期だったこともあり、社員によって事業の定義や価値への認識が個人ごとに異なる状況だったと思います。

たとえば、「Makuake」の方向性を先行販売サイトと捉えたり、輸入品の紹介サイトと考えたりする声も生まれていて……。上場を控えたタイミングで、改めて自社の方向性を検討し、ビジョンを再考する運びとなりました。

どのようにビジョンを策定していきましたか?

能城:社内でワークショップを開催し、全社員で各自が大事にしたいことや自社の強みを話し合いました。

そこで出た意見を元に、役員やマネージャーが議論。3ヶ月ほどかけて生まれたのが、新ビジョン「生まれるべきものが生まれ 広がるべきものが広がり 残るべきものが残る世界の実現」です。

さらに、それまでビジョンとして掲げていた「世界をつなぎ、アタラシイを創る」をミッションとしました。

社歴も立ち位置も違う2名体制でカルチャー浸透を推進

次に、ビジョンの実現に向けた方策をお聞かせください。

能城:個人レベルで求められるビジョンに添った「行動」をより明確にするため、カルチャーと行動指針を示した「Makuake Standard(マクアケ スタンダード)」を策定しました。この「Makuake Standard」は、個人レベルでの、日々の行動・判断の基準として活用されています。

<Makuake Standard>
・私たちにはビジョンがある。
・挑戦を愛し、自ら幕を開ける。
・技術に寄り添い、社会に価値を届ける。
・理解することをあきらめない。
・360°の成功にこだわる。
・ワンチームなプロ集団。
・崇高をめざそう。

そして、前述したビジョン・ミッションと、このMakuake Standardの3つをマクアケのカルチャーの骨組みだと捉えています。

“マクアケカルチャー”の柱となりビジョン実現を支える「Vision・Mission・Standard」。

能城さんは「Makuake Standard」の体現を促進するカルチャープロデューサーとしての役割をお持ちですが、就任した経緯を教えてください。

能城:私は、総務部門の立ち上げとカルチャー施策の推進をミッションに、2018年に入社した後、2020年にカルチャー関連施策を推し進める「専任担当」となりました。

常に人手不足なイメージのあるベンチャー企業で、 インナーコミュニケーションの役割に専任の担当者を置くのは、かなり珍しいかもしれません。

ただ、カルチャー施策は、緊急度は低かったとしても、事業や組織の持続性など、長い目で見た時に「重要度」が高いことに違いはありません。事実、当社では事業への認識のズレが顕在化しつつあったので、手遅れになる前に、社員の拠り所にもなる企業理念を改めて見直し、立ち返ろうとしました。

カルチャー施策をあえてコミュニケーション戦略本部で行う理由は何ですか?

能城:カルチャーの浸透を行う手段として、主に社内広報を用いているためです。

また、人事本部がカルチャー施策を行うと、どうしても社員は評価を意識してしまい「やらされ感」を覚える人もいるのでは?との懸念から、今の組織体制になりました。

ただ、人事情報を持つ人事本部との連携は欠かせません。現在は、人事本部の笹田がカルチャー推進担当を兼任しています。

笹田さんの役割について、お聞かせください。

笹田:現在行っている業務の一例をお伝えすると、人事本部で収集したエンゲージメントサーベイの結果を踏まえてカルチャー施策の企画を立てるといった取り組みを行っています。

そのほか、これは人事だからということではありませんが、社員限定公開のInstagramを活用したコミュニケーションなども担当していますね。

イチ社員としての笹田さんの意見が参考になることもあるそうですね。

能城:そうですね。カルチャー施策は、受け取る側のマインドによってその効果や熱量が変わってしまう特性もあると思います。

そういった状況の中でも、できる限り、全社員のビジョンやミッションへの解像度を上げていくわけですから、さまざまなアプローチが必要です。笹田の私とは違う視点は、気づきをもたらしてくれるので、非常に助かっていますね。

笹田:私は能城と比べるとマクアケで働いている歴も短いため、自分の社員としての感覚を大切にしています。

私がカルチャー施策を進める理由は、会社が目指すゴールであるビジョン実現に全社一丸となって近づくためには、各個人へのビジョンや「Makuake Standard」の浸透が必要不可欠であると“理解”しているからです。

当社はビジョン・ドリブンではありますが、創業役員や社歴の長い方と比べるとどうしても熱意に差が出てきてしまいます。そうした社員に対して、「全員、右向け右!」のような画一的な方法でビジョンを伝え続けても、逆効果になってしまうかもしれない。ビジョン浸透という目的を達成するためのアプローチ方法を考えるうえでは、私の感覚も役に立つのではないかと考えています。

カルチャー浸透にはインプットに加えアウトプットも重要

能城さんがカルチャー担当として最初に着手した取り組みを教えてください。

能城:まず社内外に当社のカルチャーを伝えられるオフィスづくりを行いました。 オフィスのコンセプトは「Buzz in the Box」。「Buzz(バズる)」と「Jack in the box(びっくり箱)」とを掛け合わせた言葉です。当社のサービス「Makuake」がアタラシイものやサービスと出会いワクワクを生み出すプラットフォームであるように、オフィスも驚きと感動にあふれたコンセプトで作りました。

エントランスの一角には「Makuake」をきっかけに生まれた商品も展示して、来訪者だけではなく、社員にも「Makuake」のワクワク感が伝わるようなつくりになっています。

「Makuake」の応援を通して創出された商品が並ぶエントランス。

他にはどんな施策があるのでしょうか?

能城:カルチャーを形骸化させないために「見る」「聞く」「話す」「振り返る」をひたすら行っています。

「見る」は、オフィス内や、社員が日頃目するPCやZoomの背景画像、チャットで使用するスタンプなどにビジョン・ミッション・「Makuake Standard」を掲出。「聞く」は、朝会や月初会、総会での繰り返しの発信と、日常でのコミュニケーションですね。

さらに、アウトプットの機会となるのが「話す」です。その一つが、新入社員研修で行う「Srandardラリー」。スタンプラリーのように新入社員が配属先とは異なる部署も含めた7人のマネージャーに順番に会いに行き、1対1で「Makuake Standard」のうちの1項目について話を聞くというものです。新入社員には「Makuake Standard」に込められた思いを聞く機会であり、マネージャーには自分の価値観を再確認する場になっています。また、全国の社員が一堂に会する社員総会でも、カルチャーをテーマにしたワークショップを開催し、アウトプットの場としています。

また、「振り返る」として、「Makuake Standard」の体現度を評価軸としたコンピテンシー評価を取り入れています。そのほか、「Makuake Standard」を体現した社員を毎月表彰する「ベストカルチャー賞」の発表は、受賞理由を「聞く」場であり、表彰者にとっては自分の想いを「話す」場、そして、全社的には自分自身や仲間の行動を「振り返る」場になっています。

カルチャーの形骸化を防ぐ「見る・聞く・話す・振り返る」の一連の施策。

先ほどおっしゃっていた、社員限定のInstagramも活用されているそうですね。

笹田:Instagramの運用は、今年から開始しました。以前は社内のポスター掲示や紙での社内報の配布をしていましたが、コロナがはじまりリモートワークが導入されてからは、オフィスで過ごす時間が人によってまちまちで、伝えたい情報が全社員に伝わっているとは限らない状態になってしまいました。

そこで、社員自身が主体となって情報を“取りに来てくれる”方法を検討した結果、多くの社員が日常的にアクセスしているInstagramにたどり着いたんです。

Instagramならではの画像・動画や、ストーリーを活用したコミュニケーションの特徴も活かしつつ、デザインなども工夫しながら運用しています。更新内容としては、月に1回開催している社内交流イベント「Makuake Half Times」の告知や「ベストカルチャー賞」など受賞者の紹介、社内報「Makuae Journal」更新のお知らせ、日常のちょっとしたオフィスの出来事などをアップしています。

カルチャーの言語化で社員増でも同じ熱量が保てるように

カルチャー施策を進めるなか、ビジョンの浸透を実感した出来事はありましたか?

笹田:年に2回行っているエンゲージメントサーベイにビジョン共感度を問う項目がありますが、他の項目に比べても非常に高い数値が出ていますね。

能城:カルチャーの浸透に関して私たちが果たした役割としては、浸透の前のカルチャーの言語化が重要だったなと思います。

会社の規模が拡大すると、一般的にはカルチャーが薄まる傾向にありますが、当社の場合、カルチャーをきちんと言語化したことで、多様なバックボーンを持った方が入社してもすぐに当社のカルチャーが理解できる環境を作っています。

ただ、カルチャー自体は、時代や組織の状況に合わせて変化を必要とする場合もあるわけです。ですから、最も重要なのは、カルチャーを保ち続けることではなく、組織が発信するビジョンに共感し実現に向けて社員が自律して動けることではないでしょうか。

これまでを振り返って、カルチャー施策を行ううえでのポイントはありますか?

能城:強いて挙げるとすれば「間違えた」と思ったら、勇気を持って止めることですね(笑)。

以前、週に1回チームで集まって「Makuake Standard」を読み上げ、体現した行動をお互いに称え合うといった施策を実施していたのですが、一部からは不評で、嫌悪感につながらないうちに任意参加にしたという経験もあります(苦笑)。

最初にお話しした通り、カルチャー施策は緊急度が高くはないので、取り組みには現場の理解と協力が必要です。そういう意味では、社員の声は非常に大切ですよね。

最後に、今後の展望を教えてください。

能城:近年当社は、コロナ禍においても組織を拡大し、現在社員数は約200人となっています。

事業としてもさらなるチャレンジが求められるステージに入ってきましたが、そうした時期は先の見通しが立ちにくく組織が不安定になりがちです。

カルチャー施策は地道な継続が肝要なので、これまでの「見る」「聞く」「話す」「振り返る」施策を続けながら組織が一丸となり、ビジョンの実現を目指していきたいですね。


◆アタラシイものや体験を“応援購入”できる「Makuake(マクアケ)」のサイトはこちら

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