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社員の働きやすさこそ事業成功の近道 社員に寄り添う支援から生まれる組織の求心力

取材日:2023/01/12

モノではなく特別な体験を贈る「体験ギフト」で人々に笑顔を届けるソウ・エクスペリエンス。サービスだけでなく、子連れ出勤や副業OKといった働き方でも注目を集めてきた背景には、「社員一人ひとりの人生を大切にする」という創業当初からの思いがありました。※本文内、敬称略

お話を伺った人

  • 楠 大介さん

    楠 大介さん

    ソウ・エクスペリエンス株式会社

    人事総務チーム/マネージャー

  • 中井 裕子さん

    中井 裕子さん

    ソウ・エクスペリエンス株式会社

    人事総務チーム

この事例のポイント

  1. 事業パフォーマンスの向上につながった自由な働き方
  2. 副業OK!で優秀な人材を確保

働き方改革はしていない?自由な働き方の理由は

御社で行っている「働き方改革」の事例を教えてください。

中井:副業や子連れ出勤を認めている点は、よくメディアに取り上げていただきます。そのほか、週4勤務や時短勤務などを行っている社員もいますね。時短勤務というと、一般的には介護や育児といった特別な事情がないとできないイメージがあります。しかし弊社では、副業や自分の時間を確保するために時短で働くという選択ができるのも特徴です。

「働き方改革」を始めたきっかけはありますか?

中井:正直、「今までの働き方を変えなければいけない」という問題意識を持って制度を作ったわけではありません。創業以来、社員のニーズに随時柔軟に対応してきた結果、現在のような働き方になりました。ですので、子連れ出勤や時短勤務も、会社の制度や福利厚生として特別明記しているわけではないです。 私たちが行ってきた働き方は、今の日本の「働き方改革」にマッチしているのかもしれませんが、会社として「働き方改革を推進している」という意識はあまりないですね。

なぜ、社員の柔軟な働き方を支持しているのでしょうか?

中井:まず大前提として、弊社が一番大事にしているのは、あくまでもビジネスです。目指すべきは生産性の向上や事業パフォーマンスの向上。それを実現するための手段として、社員の働きやすさをサポートしています。どういうことかというと、子育てや介護といった事情があっても安心して働ける、自分の時間も大事にしながら柔軟に働ける環境は、結果的に長期的なパフォーマンスの向上につながると考えています。社員あってこその会社です。他社から見ると「緩い働き方」と思われてしまう面もあるかもしれないですが、我々は、社員の働きやすさは事業成功の近道だと思っています。

フルタイムで働く社員の負担は増えませんか?

中井:時短勤務や子連れ出勤をする社員は、週5日フルタイムで働く社員と比べて業務量が少ないということを前提しているため、もし全体の業務量と照らし合わせて人員が足りなくなる場合は採用や人事異動を検討することになります。現状は週5日フルタイムで働いている社員も、家族との時間や趣味の時間を作れている方が多い印象です。労働時間についても、早朝や深夜の勤務はしない、月45時間以上の残業はしないなどの基本的なルールは口酸っぱく伝えており、残業時間も少ないほうだと思います。

御社の働き方に対して中途採用で入社する社員は驚かれませんか?

楠:弊社は労働時間の管理もそうですが、事業として目標もあまり細かくは管理しないマネジメント体制かと思います。弊社の社員はいわゆる大企業から転職してきたケースが多いのですが、それまでの規則がきっちりとしていた会社に比べ「管理が少ない」ことにかなりギャップを感じるようです。

副業は優秀な人材確保への懸け橋

副業を認めることは会社にとってメリットがあるのでしょうか?

中井:副業を許可することは、採用面で会社にもメリットがあると考えています。企業側は優秀な人材を確保したいと思う一方、「1つの会社だけに所属する」という働き方を好まない人材は、仕事に対する向上心があり意欲的な方が多いと感じています。そこで副業を認めることで「自分個人でも事業をやりたい」というくらい意欲の高い方も採用でき、結果的に生産性の向上につながっているのではないかと思います。

いつ頃から副業を解禁していましたか?

中井:2005年の創業当初から副業を認めています。当時は「二足のわらじ」と呼び、社内で推奨していたほどです。創業当初からユニークな人材が集まったものの、なかなか売上が伸びず、「社員には別の手段でも稼いでもらおう」という厳しいがゆえの施策として副業をしてもらっていたのです。結婚式の司会、企業コンサルタント、デザイナー、大学講師、起業家などさまざまな副業をするメンバーがいましたね。

現在はどれくらいの社員が副業をしていますか?

中井 :社員の約2割は副業しているのではないでしょうか。ビジネスや副業という形ではなく、趣味の分野で活躍しているメンバーもいます。そしてそれが本業につながることも。たとえば、食べることが大好きで、それを副業にもしている社員が、食に関する体験ギフトを提案したこともありました。弊社は体験ギフトでお客様に喜びを提供することと同時に、社員が各々の好きなことを事業に活かすことも含めて「自分たちも働くこと自体を楽しんでいこう」という考え方やカルチャーが創業当初からあると考えています。

社員のニーズに寄り添い「まずはやってみる」

これまで新しい制度はどのように誕生してきたのでしょうか?

中井:役員や人事総務チーム から提案することもありますが、出産や介護、体調不調、そのほか社員のライフイベントに合わせて制度が生まれることが多いです。

楠:最近では、エンジニアのマネージャーから「外国人を採用してみたい」という要望があり、積極的に外国人採用を始めました。社内でも一部英語対応が必要になるなど、会社のカルチャーに与える影響は大きく、新しい風が吹いて良いですね。外国人採用も含め、今後も現場のニーズに対応したいと思っています。

制度を実行する際に意識している点はありますか?

中井:現場から声が上ったら「まずはやってみる」という姿勢は大事にしています。いきなり「ダメ」と突き放すのではなくて、どうやったら実現できるかを考える方が多いです。

楠:もちろん提案が通らないこともありますが、役員陣も「いいね」といってくれることが多いですね。ただし、複雑な福利厚生や「〇〇手当」といったものを増やさないようという点は気を付けています。もちろん推進したい施策によって妥当性もありますが、貴重な原資を特定の理由のために出すよりも、シンプルに全員の給与総額に反映させた方が良いケースも多いと考えています。ですので、そうしたものを増やしすぎないようにしていますね。

中井:実際、弊社の福利厚生は「社内でドリンク飲み放題」くらいのもので、特に福利厚生が充実していると胸を張れるわけではありません(笑)。ただ、働き方について考えるときには、個人のニーズをなるべく大切にするよう心掛けています。

「社員の人生を一緒に歩む」の思いから生まれた子連れ出勤

御社にとって社員とはどのような存在でしょうか?

中井:会社としては、社員を“ソルジャー”として見ていません。その方の家族や趣味、好きなことなどを含めて「人生を一緒に生きていく」という意識が強くあります。経営陣を中心に、そのような思いがあったからこそ誕生した制度のひとつが子連れ出勤です。

子連れ出勤の始まりは代表自身だったと聞きました。

中井:そうですね。もともと弊社の西村代表が自分の子どもを連れて出勤することがあり、皆で可愛がっていたんです。。そんな中、今から8年~9年前、スタッフの出産が重なったことがあり、そこでまずはアルバイトのスタッフから子連れ出勤をスタートしたところ、採用面を中心にメリットが多いことを実感しました。さらに、産休・育休に入ったメンバーからも「保育園には空きがなく入れないが、仕事には復帰したい」という声が上がったことが、本格的に子連れ出勤が社内に広まったきっかけです。現在は新型コロナウイルス感染拡大防止のために制度を停止していますが、子連れ出勤は好評で、「再開しないんですか」という声もときどきありますね。

お二人も子連れ出勤をしていたそうですが、いかがでしたか?

中井:私はコロナ禍での休園・休校による在宅勤務も経験しましたが、家で子供の世話をしながら仕事をするのはかなり大変でした。それに比べて子連れ出勤はかなり業務がしやすかったです。たとえば、私が電話で手を離せないときには他の社員が子どもを見てくれるといったように、大人の目がたくさんあることが助けになりました。特に、歩き始める前くらいの月齢までであれば、安全対策もしやすいですし、会社で授乳もできるのであまり困りませんでした。

楠:僕も妻が働いていて、どうしても自分が娘を預からなければならないときがありました。そのときに子連れ出勤ができたのはとても助かりました。ですが、やはり保育園に入れるのならば預けて働く方が、もちろん業務効率は良いです。僕らも、「子連れ出勤はどんな会社でも積極的に推進すべき」と考えているのではなく、保育園に入るまでのつなぎとして、受け入れられる体制があったら良いケースも多いよねという姿勢でやっています。

中井:産休や育休に入るメンバーにも「保育園に入れなかったら私も子連れ出勤をしなきゃ」という変なプレッシャーを感じてほしくないですね。本人や家庭の事情はさまざまで、必ずしも子連れ出勤が全員に合うわけではありません。「子連れ出勤を希望する方がいれば、会社としてもサポートする」という姿勢で臨むのがいいと思います。

子連れ出勤は業務に支障が出ないのでしょうか?

楠:子どもと一緒に仕事をしているときは、普段と比べてどうしてもパフォーマンスは下がります。しかし、短期的に仕事の効率が落ちたとしても、同じ社員に長く働き続けてもらう方が長い目で見れば明らかにプラスです。経営陣は社員から何か要望があった際、「長い目で見てずっと働いてくれるなら、要望をサポートするほうがいい」と判断しています。会社の事業も、短期的というよりは長期的にパフォーマンスを続けることで成長するためです。幸い、子連れ出勤をしていたコロナ禍前も大きく業績が伸びていたこともあり、子連れ出勤はやって良かったと思っています。

オンラインも活用しながら個性が活きる組織へ

新型コロナウイルスの影響で働き方は変わりましたか?

楠:コロナをきっかけにリモートワークは増えました。ギフト配送のために配送部門は出社してもらっていますが、それ以外のメンバーは6割がリモートワークです。しかし最近は徐々にコロナ前のように出社する人も増えつつあります。コミュニケーション面ではやはり対面には対面の良さがあると感じます。

中井:コロナで急に在宅になったときは、今まで手で配っていた給与明細を急いでオンライン化するなど対応に追われました。社員の働き方については「リモートでも集中できる」という方もいれば「会社のほうが集中できる」という方もいて、現状、出勤方法はチームにお任せしています。

リモートワークはどのように運用するのが良いと考えますか?

中井:社員の様子を見ていると、やはりリモートと対面のハイブリッドが一番働きやすいのかなと思います。 それができるよう、労務上のやりとりのオンライン化を進めています。あとは、雑談といったコミュニケーションの満足度をどう担保させていくのかが課題です。社員ひとりひとりがカスタマイズ可能な会社のオリジナルウェアを作成し、それをきっかけにオンラインとオフライン両方でイベントを開催するなど、現状は手探りではありますが、人事・労務・総務の面で会社としてできることを模索しています。

楠:オンラインとオフラインの比率や、どういうやり方がいいのかは経営陣とも常に検討している点です。改善できるところは山ほどあります。そこは人事労務面からサポートしたいですね。具体的にはツール類やその運用方法がとても大事だと思っています。ようやく昨年末には、人事労務ソフトのSmartHRを導入しましたが、必要なコミュニケーションを最小限の労力でできるよう、ツールの導入や特に運用の工夫は他社の事例にも常にアンテナを張っています。

最後に、御社が目指す理想の会社像について教えてください。

中井:社員は人間なので、出産や介護に限らずさまざまなライフイベントが発生します。そのライフステージの変化を心から喜び合い助け合える組織でありたいと思っています。そして、そうなった場合に他の社員にしわ寄せがいかないよう、採用面や制度面で変化に対応できるようサポートすることが大事だと思います。

楠:一人ひとりの個性を活かせる組織でありたいですね。自分の好きなことが業務にも活かせるなど、その人の個性が、しっかりと組織や商品に反映されるような組織を目指したいです。


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