電子帳簿保存法の改正がEDIに与える影響|対応のポイントや保存要件について
時代の変化に合わせて改正される「電子帳簿保存法」。企業間取引を電子化する「EDI」の普及が進む現代、電子データの保存要件にも大きな影響を与えます。本記事では、電子帳簿保存法の改正がEDI取引に与える影響について、対応のポイントなどを詳しく解説します。
目次
EDIとは?
EDIは「Electronic Data Interchange」の略称であり、商取引で発生する注文書や請求書などの契約書類を電子化し、専用回線やインターネットを使ってやり取りする仕組みです。
EDIを利用することで、取引で発生する注文書・請求書・出荷手配などを電子データとして一括管理できるため、業務の大幅な効率化が図れます。
また、EDIには以下のような種類があります。
- 個別EDI:通信方法や識別コード、フォーマットなど取引に関するルールを取引先ごとに決めるEDI
- 標準EDI:標準化された規格を使い、複数の取引先と同一規格でデータを交換するEDI
- 業界VAN:特定業界に特化したコードを使用するEDI
- Web-EDI:専用回線ではなく、インターネット上で稼働するEDI
- 全銀EDI(ZEDI):全国銀行資金決済ネットワークと連携したEDI
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電子帳簿保存法とは?
電子帳簿保存法とは、法人税法や所得税法などの国税関係帳簿や書類を対象に、電子データで保存する際の取り扱いを定めた法律です。
原則として、すべての企業や個人事業主が対象となる法律ですが、2024年1月から一部が義務化される一方で、引き続き任意でのデータ保存が認められる領域も存在します。
なお、データを電子保存する方法は3種類あり「電子取引のデータ保存」、「国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存(電子帳簿等保存)」、「スキャナ保存」がそれぞれ認められています。
[出典:国税庁「電子帳簿保存法の概要」]
EDIを用いた取引は電子帳簿保存法においては「電子取引」に該当する
電子帳簿保存法は「国税関係帳簿」、「国税関係書類」、「電子取引」の3つを対象としており、それぞれ保存要件が異なります。
ただし、いずれの場合もEDIを用いた取引は「電子取引」に該当するため、電子帳簿保存法にもとづく適切な電子保存が求められます。
2023年で紙保存の宥恕措置が終了!EDIに与える影響とは?
2023年限りで取引データを紙保存できる宥恕措置が終了したことを受けて、電子データで取引した情報は必ず電子データとして保存することが義務化されました。
この法改正により、EDIによる取引データについても、電子帳簿保存法の要件に従い、電磁的記録として適切に保存する必要があります。
[出典:国税庁「電子帳簿保存法の内容が改正されました」]
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電子帳簿保存法における電子取引制度の保存要件
電子帳簿保存法における電子取引制度の保存要件は「真実性の確保」と「可視性の確保」の2つです。
どちらも制度を理解するために重要な概念ですので、以下に詳しく解説します。
真実性の確保
電子帳簿における「真実性の確保」とは、記載された情報が訂正・削除などの加工をされていないこと、または加工された場合にその履歴を残す義務を指します。
さらに、以下4つのうち、いずれかの要件を満たす必要があります。
- タイムスタンプを付与してから取引情報の受け渡しを行う
- データの受け渡し後、速やかにタイムスタンプを付与し、保存状況や監督者の情報も確認できるようにする
- 改ざん防止等のための事務処理規程を作成し、それに沿って運用する
- データを訂正・削除したら記録が残る、または改ざん・削除できないシステム等を利用する
原則として、EDIを活用すれば「真実性の確保」を担保する条件はほぼ自動的に満たされる、と考えて問題ありません。
可視性の確保
電子帳簿における「可視性の確保」とは、保存されているデータを必要に応じていつでも閲覧・確認できる状態にしておくことです。
また、以下3つの要件すべてを満たす必要があります。
- 保存場所にデータを閲覧・確認できる機器、ならびにそれらのマニュアルを備え付けること。また、操作マニュアルはいつでも速やかに使用できる状態にしておくこと
- 同じく、データを保存する機器のマニュアルを備え付けること
- データの検索機能(日付、取引金額、取引先)を確保すること
ただし、以下の条件を満たした小規模事業者(2期前の売上が5,000万円以下)には、検索機能に関する要件は免除されます。
- 真実性確保及び可視性確保の要件に沿って電子取引データを保存できないことについて、税務署長が相当の理由があると認める場合
- 税務調査等において、職員などからの電子データのダウンロードの求めに応じることができる場合
EDI取引の保存方法
EDI取引で受け渡したデータは、電子帳簿保存法の要件を満たす形で電子データとして保存する必要があります。
保存形式はPDFファイルやスクリーンショットなどが推奨されており、取引に関連するすべての書類が保存対象となります。具体的には、以下のようなデータが挙げられます。
- 電子メールで受領した請求書や領収書(PDFファイルなど)
- インターネットからダウンロードした請求書や領収書(PDFファイルなど)、またはWeb上で表示された画面のスクリーンショット
- クラウドサービスを利用した電子請求書クレジットカードの利用明細・交通系ICカードの支払データ・スマートフォンアプリによる決済データ
- 特定の取引に係るEDIシステムのデータ
- ペーパーレス化されたFAX機能を持つ複合機を利用したデータ
- 請求書や領収書のデータを記録媒体(DVDなど)で受領したもの
EDI取引の改正電子帳簿保存法への対応ポイント
EDI取引を改正された電子帳簿保存法に対応させるポイントは、データを一元管理すること、管理ルールを社内で共有することの2点です。
データを一元管理する
改正された電子帳簿保存法への対応として、データの一元管理が強く推奨されています。
なぜなら、一元管理は保存されたデータの可視性を、シンプルに担保できるためです。また、保存方法や保存場所が統一されていない場合には、いざという時に必要なデータを閲覧・確認できず、トラブルに発展してしまう恐れがあります。
もし、データ規模が大きく管理が困難な場合は、改正電子帳簿保存法に対応した電子帳簿管理システムの導入や、データ管理のアウトソーシングを検討するとよいでしょう。
管理ルールを社内で共有する
あらかじめ電子データの管理ルールを定め、社内で共有しておくことも重要です。
なぜなら、電子帳簿保存法で定められた要件を満たせない場合には、常に違法とみなされるリスクを抱えてしまうためです。また、紙ベースの保存習慣とはデータ管理・保存方法が全く異なるため、組織全体が新しい管理ルールに適応するための訓練なども求められるでしょう。
改正電子帳簿保存法に対応したEDI取引を実行しよう
テクノロジーの進歩にともない、企業間の取引の多くが電子化されている現代では、電子帳簿保存法も時代に合わせて改正されています。
改正された電子帳簿保存法の内容を正しく理解しつつ、現行の法令に対応したEDI取引を行えるように、データの管理体制をしっかりと整えておきましょう。
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