全銀EDIシステム(ZEDI)とは?インボイス制度・金融EDIとの関係性やメリットについて
企業間取引で発生する事務作業を効率化できる「全銀EDIシステム(ZEDI)」。支払通知番号や請求書番号などを取引情報に添付できるため、発注側、受注側双方に大きなメリットがあります。本記事では、全銀EDIシステムとインボイス制度・金融EDIとの関係を解説します。
目次
全銀EDIシステム(ZEDI)とは?
全銀EDIシステム(ZEDI)とは、一般社団法人である全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)が提供しているデータ連携システムです。
全銀EDIシステムを利用することで、支払企業は受取企業へ総合振込を行う際に、支払通知番号や請求書番号などのEDI情報を添付することが可能になります。これにより、企業間取引の効率化が図られ、経理処理の迅速化と正確化が促進されます。
全銀EDIシステムはインボイス制度にも対応可能
全銀EDIシステムは2023 年4月、デジタルインボイスの取り扱いを容易にするため、金融EDI情報標準「DI-ZEDI」という拡張版を制定しました。
この新標準により、デジタル形式のインボイス情報を振り込みデータに直接添付することが可能となりました。具体的には、企業が取引先に支払いを行う際、関連するインボイス情報を一緒に送信できるため、受け取り側はその情報を自動的に照合し、迅速に会計処理を進めることができるようになります。
紙ベースのインボイス処理に伴う時間とコストの削減が期待され、同時に取引の透明性も向上します。全銀EDIシステムのこの機能拡張は、デジタルインボイスの効率化をさらに推進してくれるでしょう。
全銀EDIシステムと金融EDIの関係性
全銀EDIシステム(ZEDI)とは、2018年より稼働している全国銀行協会による金融EDIの一つです。
金融EDIは「金融取引を電子的に行い、幅広い情報を交換・共有する仕組み」を広く指す概念であるのに対し、全銀EDIシステムはその一角に過ぎません。全銀EDIを利用することで、振込や支払い、請求などの金融情報がより正確に処理され、銀行間の情報流通がスムーズになりました。これは経済全体の流動性を向上させ、企業における取引時間の短縮やコスト削減を実現し、ビジネスの競争力強化に寄与しています。
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全銀EDIシステムを導入する支払企業のメリット
全銀EDIシステムを導入することで、支払企業は取引の効率を大幅に向上させることができます。具体的なメリットを、以下に解説します。
デジタルインボイスを基に総合振込の作成を自動化できる
全銀EDIシステムを利用すると、支払企業は受領したデジタルインボイスを基に、請求データが添付された総合振込の作成を自動化できます。
多くの支払いを管理する大企業や、多数の取引先を持つ中小企業にとって、この自動化は大幅なコスト削減につながります。インボイス情報が直接システムに入力され、自動で必要な支払いデータに変換されるため、データ入力のミスが減少し、支払い処理の速度と精度が大幅に向上するためです。
この技術は経理処理の自動化だけでなく、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を促進する重要なステップとなるでしょう。
振込・入金データを確認できるため支払い先からの問い合わせが削減する
全銀EDIシステムを導入すると、支払企業は振込や入金のデータをオンライン上でリアルタイムに確認できるため、不必要な問い合わせによる負担が激減します。
従来のEDIでは、取引に伴う必要最小限の情報しかやり取りされませんでしたが、全銀EDIシステムでは各取引の状況を支払い先が自ら確認できる点が強みです。
また、支払元から振込先へ問い合わせがあった際にも、個別明細が確認できるため金額の紐付けが容易になります。問い合わせを行う回数が減れば、企業の経理部門の業務負担が軽減され、企業全体の収益効率も向上するでしょう。さらには、情報の即時性が企業間の信頼を深める効果も期待できます。
全銀EDIシステムを導入する受取企業のメリット
全銀EDIシステムを導入すると、受取企業にも大きなメリットがもたらされます。
以下に詳しく解説します。
総合振込に添付された請求データを基に入金消込作業を自動化できる
全銀EDIシステムを活用すると、総合振込に添付された請求データを基に、入金消込作業を自動化できます。
全銀EDIシステムの振込データには、請求書番号や商品名などさまざまな情報が添付されます。売掛金ごとの入金情報も添付されているため、消込作業を圧倒的に効率化できるでしょう。とりわけ、多くの取引先を持つ企業にとって、この効率化はバックオフィスのコスト削減に大きく貢献します。
取引内容を随時確認できるため入金トラブルの原因を特定しやすい
全銀EDIシステムでは、振込・入金データをリアルタイムに確認できるため、請求額と入金額が一致しない場合の原因特定が迅速になります。
また、全銀EDIシステムはXML形式でデータを交換するため、異なる会計ソフトウェア間でもスムーズにデータの移植が可能です。この互換性は、支払企業と受取企業双方の取引効率化へとつながります。
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全銀EDIシステム導入の手順
全銀EDIシステムの導入には、正しいステップを踏む必要があります。
最大の導入効果を得るためのポイントについて、以下に解説しています。
全銀EDIシステムの導入を社内で検討する
全銀EDIシステムの導入を考える際、まずは費用対効果を入念に検討する必要があります。
具体的には、ランニングコストは適切か、入金処理の自動化によってどれほど人件費が削減できるか、などを試算しましょう。試算した総額から投資回収期間を見積りつつ、関連部署の意見を集め、全面的な評価を行うことが推奨されます。
必要なシステムを事前に導入する
全銀EDIシステムを導入する前に、インターネットEDIとXMLデータの送受信に対応するシステムを準備しておきましょう。
XMLは、全銀EDIシステムにおける金融取引データ交換のためのフォーマットです。XMLに対応できるシステムを整えることで、トランザクションの自動化、エラー減少、運用コストの大幅削減がはじめて可能になります。事前に適切なITインフラの整備を行い、現在のシステムとの互換性を確認することは、全銀EDIシステムを適切に活用する基盤を築くために不可欠な工程です。
振込データに添付する情報を取引先とすり合わせしておく
全銀EDIシステムを導入する前に、振込データに添付する情報の種類やフォーマットについて、取引先企業とよく話し合うことが大切です。
金融EDI情報標準を基に、請求書番号や金額、支払条件などのデータ構造を具体的に決定しておきましょう。互換性のあるフォーマットで情報が整理されると、システム間のスムーズなデータ交換が実現し、金融取引の効率性および正確性が劇的に向上します。
既存の会計ソフトと連携できるか確認する
全銀EDIシステム導入前に、既存の会計ソフトウェアがXML形式と互換性があるか確認しておきましょう。
XML形式に非対応の会計ソフトウェアは減ってきています。しかし、この確認を怠ると、全銀EDIシステム導入後に他の適合するソフトウェアへの移行作業が必要になります。時間のロスが発生しますので、事前の無料体験期間など通じて、必ず確認しておいてください。
取引先へ全銀EDIシステムの利用開始を伝える
全銀EDIシステムの利用を開始するタイミングを、漏れなく取引先に通知しておきましょう。
システムの利用開始日、交換されるデータの種類、および取引プロセスの変更点を詳細に擦り合わせることが大切です。この通知が不十分だと、システム稼働時にデータ処理にエラーが生じ、余計な対応に時間を取られることになります。取引先に迷惑をかけてしまう可能性もあるため、事前の情報共有はしっかり行いましょう。
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全銀EDIシステムを導入する際の注意点
全銀EDIシステムの導入には、注意すべきポイントがいくつか存在します。以下に詳しく解説します。
総合振込のみ対象のため給与振込や賞与振込は利用できない
全銀EDIシステムは総合振込に特化しており、給与振込や賞与振込、預金口座への振替などの取引は対象外です。全銀EDIに対する、よくある誤解のひとつです。
全銀EDIシステムは、大量の取引データを効率的に処理する目的で設計されたものです。したがって、給与や賞与の振込など個別の金融取引には対応していない点を、あらかじめ把握しておきましょう。
もし、個別の金融取引をシステム化する場合には、別の方法を検討する必要があります。全銀EDIシステムの適用範囲と限界を事前に理解し、検討段階で関係者に明確に伝えることが重要です。
外国への送金など海外との取引には利用できない
全銀EDIシステムは、日本国内の銀行間取引専用であり、海外との取引には対応していません。
国外の金融機関とデータ連携を行うことはできないため、国際取引を行う場合はSWIFTなどの国際金融通信ネットワークを利用する必要があります。全銀EDIシステムは、あくまで「全国にある銀行のEDIシステム」であることを再認識しておきましょう。
全銀EDIシステムは社内・取引先と相談し導入しよう
全銀EDIシステムの導入は、取引先とのスムーズなデータ交換だけではなく、社内の業務効率化も実現してくれます。
ただし、導入にはいくつかの重要なポイントがあります。既存の会計ソフトとの互換性を確認する必要性がある、国外取引には利用できない、そして総合振込のみ対応している、などの制限をよく認識しておきましょう。さらに、全銀EDIの利用開始前には取引先への通知も必須です。これらの事項を社内でしっかりと検討し、取引先とも十分に相談したうえで、全銀EDIシステムの導入を進めましょう。
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