【簡単解説】EDIとは?仕組みや種類・導入するメリット、注意点をわかりやすく解説
企業間取引に必要な文書を、電子データのみで完結させる「EDI」。受発注業務を効率化できるシステムとして注目されています。本記事では、EDIとは何か、その仕組みや種類、導入するメリット・デメリットや注意点などを、初心者向けにわかりやすく解説します。
目次
EDIとは?
EDIは「Electronic Data Interchange」の略称で、企業間でやりとりされる契約書や発注書、納品書、請求書などの文書を、電子データでやり取りするためのシステムです。
紙ベースの文書を送る手間が省けるほか、取引のスピードや正確性が大幅に向上することが強みです。また、専用の通信回線を使用することにより、情報セキュリティも確保されているため、企業間での情報共有を安全に行うことができます。
EDIは、現代のビジネスにおけるコミュニケーション速度や安全性を格段に向上させる、重要なツールです。
EDI普及の背景
経済産業省が公表する「令和4年度の電子商取引に関する市場調査」によると、電子商取引の市場は、ビジネス間(BtoB)及び消費者向け(BtoC)ともに拡大しています。
加えて、2020年から始まった新型コロナウイルスの影響で、リモートワークが普及しました。働く場所にとらわれず、迅速かつ効率的なデータのやり取りができる仕組みが求められたことから、多くの企業においてEDIの重要性が認識されるようになりました。
参照元:経済産業省「令和4年度電子商取引に関する市場調査」
EDIとEOS・APIの違いとは?
EDIと混同されがちな「EOS」や「API」との違いについて、以下に詳しく解説します。
EOSとは?
EOSは「Electronic Ordering System」の略称で、小売業や卸売業における発注業務に用いられるシステムです。ただし「発注業務」だけに用いられていることに注意しましょう。
EOSとEDIの違いは、システムの適応範囲です。EOSは発注業務だけを扱うシステムですが、EDIは受発注のみならず、発注から支払いまでの一連の流れを扱います。つまり、EOSは、EDIの仕組みの一部を表現した言葉です。
APIとは?
APIとは「Application Programming Interface」の略称であり、異なるソフトウェアやプログラム、Webサービス間で情報を共有し、機能を連携させるための仕組みです。
例えば、ChatGPTなどのAIに備わったAPIを使えば、AIによる出力をエクセルに書き出して処理させる、といった連携処理が可能です。EDIはあくまで受発注の電子化を扱うシステムなので、APIとは直接関係しない概念です。ただし、業務効率化のためにEDIとAPIを組み合わせて使うケースは十分にありえるでしょう。
EDIの仕組み
EDIのおおまかな仕組みとして、各企業のシステムで作成されたデータは、EDIのトランスレーター機能を通して標準形式データに変換された後、受信先企業のシステムへと通信されます。EDIを介在している限りは、どの取引先にデータを送る際にも、社内システムのフォーマットのままでやり取りが可能です。
さらに、専用回線や暗号技術を利用すれば、セキュリティリスクが起こる可能性も大幅に下げることができるでしょう。
EDIはこのような仕組みで、企業間の書類交換の効率性を高めています。
EDIの種類
EDIにはいくつかの種類があります。それぞれの特徴を以下に紹介していきます。
個別EDI
個別EDIとは通信方法や識別コード、フォーマットなど取引に関するルールを取引先ごとに決めるタイプのEDIです。
個別EDIは、企業間でルールを自由に決められる点が特徴です。しかしながら、ルールの内容は発注側が主導となって決める場合が多く、受注側は不利な条件となる可能性を考慮しておかなくてはなりません。また、取引先ごとに個別に対応しなければならないため、多くの取引先を抱えている企業には不向きです。
標準EDI
標準EDIとは、取引全般に関するルールが標準化されたタイプです。
取引先が同一規格の標準EDIを使用している場合、システムの仕様を問わずデータのやり取りが行えます。取引先ごとに対応を変える必要がないため、業務負担を大幅に軽減できる点が特徴です。企業間の力関係による影響も受けず、取引先を拡大しやすいため、多くの企業で導入されています。
流通BMS
流通BMSとは「Business Message Standards」の略称で、流通業界で統一的に利用されるEDIの仕様を指します。
流通BMSは、「JCA手順」の後継として2007年に導入されました。 長年にわたり普及していたJCA手順ですが、2024年をめどに終了予定とされているISDNサービス(INS回線)と共に使用不可能になると予想されているため、流通BMSの導入の必要性が高まっています。2024年をめどに全流通業者の標準とすることが目指されており、2024年5月時点では小売業215社、卸売・メーカー業203社で導入されています。
[出典:流通システム標準普及推進協議会「社名公開企業一覧」]
▷流通BMSとは?JCA手順との違いや導入メリット・注意点をわかりやすく解説
業界VAN
業界VANは加工食品や酒類、流通など、特定の業界で利用されている標準EDIの一種です。
業界内で共通の商品コードや取引先コードなどが標準化されており、同じ業界の企業とスムーズに取引をおこなえます。専門分野に強いEDIを導入したい企業におすすめです。
Web-EDI
Web-EDI、別名インターネットEDIとは、インターネットを通じて利用されるEDIシステムです。専用のソフトウェアやハードウェアの設置が不要で、ウェブブラウザから直接アクセスして文書を送受信することができます。
Web-EDIの最大の特長はその通信速度の速さです。データのやり取りが迅速に行えるため、取引の効率が大幅に向上します。また、インターネットがあればどこからでもアクセス可能であるため、地理的な制約を大きく軽減します。
なお、Web-EDIという名称は、従来のEDIが専用線によるサービスだったために生まれた呼び方であり、近年開発されたEDIの多くはインターネットが活用されています。
▷Web-EDIとは?EDIとの違いや特徴、メリット・デメリットを解説
全銀EDI
全銀EDIシステム(ZEDI)とは、一般社団法人である全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)が提供しているデータ連携システムです。
全銀EDIシステムを利用することで、支払企業は受取企業へ総合振込を行う際、支払通知番号や請求書番号などのEDI情報を添付することが可能になります。迅速かつ正確な計地処理を行うことができ、企業間取引の効率化が期待できます。
▷全銀EDIシステム(ZEDI)とは?インボイス制度・金融EDIとの関係性やメリットについて
▷金融EDIとは?ZEDIとの関係やメリット・導入方法をわかりやすく解説
EDIを導入するメリット
EDIを導入するメリットについて、以下に詳しく紹介します。
人件費・経費を削減できる
EDIの導入は、経費や人件費の削減につながります。
紙ベースで文書管理を行うと、印刷にかかるコストが発生します。そこで、EDIを導入することで、これらの費用をほぼゼロにすることができます。また、書類の作成や郵送を行う人員の労力も削減でき、人的リソースをより生産的な業務に配置することが可能になります。
人的ミスを低減できる
EDIの導入は、業務の正確性を格段に向上させる効果があります。
手作業によるデータ入力の必要がなくなれば、誤入力や記載ミスなどのヒューマンエラーが激減するでしょう。また、EDIはデータを自動的に取引先システムに送信するため、送信ミスなども防ぐことができます。企業間で信頼性の高い取引をすることができるでしょう。
受発注業務を効率化できる
EDIの導入は、在庫管理における課題を軽減し、受発注業務を効率化します。
発注側と受注側の在庫情報がリアルタイムで共有されるため、双方の在庫状況を正確に把握できます。また、適切な在庫量の維持が可能となるため、不要な在庫が積み上がることを防ぎ、在庫コストの削減にもつながります。
内部統制を徹底できる
EDIの多くは標準化された規格のため、内部統制の目的の一つである「財務報告の信頼性」を大きく向上させることができます。
システムを介した受発注を行えば、データの正確性が保証され、誤報やデータの不一致によるリスクが最小限に抑えられます。また、EDIは取引記録を自動的にログに記録するため、監査トレイル(操作記録の追跡が可能な履歴)も明確に残ります。これにより、不正行為や誤りの早期発見が可能となり、財務報告の正確性と透明性が確保されるため、企業の信頼性と評価の向上につながります。
企業の競争力を高められる
EDIの導入による取引スピードの向上は、企業の競争力強化につながります。
EDIは需要予測から生産、販売、在庫計画までのプロセス全てを効率化するため、企業が市場の変動に迅速に対応し、より戦略的な意思決定をすることを支援してくれます。結果として、生産コストの削減、在庫の最適化、顧客サービスの向上が実現し、企業全体の競争力が大幅に向上するでしょう。
▷【2024年最新】EDIツール17選比較|種類や選び方・メリットを解説
EDIを導入するデメリット
EDIシステムの導入には、一定のデメリットも存在します。以下に詳しく解説します。
取引先もEDIを導入している必要がある
EDIのメリットを得るためには、取引先も同じくEDIを導入している必要があります。
一方の企業だけがEDIを導入しても、相手企業がこれに対応していないと、EDIの効果を充分に活かすことができません。この特性は、EDI導入による明確なメリットが見込めない小規模な企業や、企業間の力関係による交渉が難しい取引先が多い場合などに、大きなデメリットとなることがあります。
システムの導入・運用に費用がかかる
EDIシステムの導入および運用には、一定の費用が必要となります。
例えば、システムの初期設定、必要なハードウェアの購入、ソフトウェアライセンス料、そして継続的な保守・サポートには費用が発生します。また、カスタマイズが必要な場合や大規模なシステムを導入する場合には、さらに初期費用がかさむ場合もあるでしょう。
これらの費用は、中小企業にとっては大きな負担となることもあるため、導入前には長期的なコストや投資回収期間を慎重に評価する必要があります。
▷次世代EDIとは?EDIの課題や違い、注目されているWeb-EDIについて
EDIを導入する際の注意点
EDIの導入には、重要な注意点があります。それは、2024年1月よりISDN回線のサービスが段階的にサービスが終了することです。
長年にわたり旧式EDIの通信インフラを担ってきたISDNが使えなくなるため、企業は通信インフラをインターネット回線へと移行する必要に迫られています。多くの企業がWeb-EDIへの切り替えを進めていますが、Web-EDIは標準化されていないため、取引先の状況によっては別のWeb-EDIシステムの導入が必要となるでしょう。したがって、これからEDIシステムを導入する場合には、将来のインフラ変更にも柔軟に対応可能な設計を考慮することが重要です。
EDIを導入し受発注業務を効率化しよう
EDIシステムの導入は、受発注業務を劇的に効率化してくれます。
書類の作成や送信にかかる時間とコスト、人的ミスを減らすことができるほか、取引先とのデータ交換が迅速かつ正確に行えるため、業務全体のスピードアップが期待できるでしょう。ただし、導入には通信インフラの変更や初期コストが必要であり、取引先との調整が求められることもあります。これらの点を考慮しつつ、EDIをうまく活用してビジネスの効率化を図ってください。
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