意思決定会計とは?意思決定の種類や必要性・差額収益分析について解説

2024/01/17 2024/01/17

管理会計システム

意思決定会計とは

企業の将来を左右する「意思決定会計」。会社の業績に影響を与える重要な業務ですが、具体的にどのような業務か理解していない方も多いのではないでしょうか。本記事では、意思決定会計の種類や必要性をはじめ、意思決定会計における差額収益分析についても解説します。

意思決定会計とは?

意思決定会計は、経営の意思決定を支援するために行われる管理会計業務のひとつで、戦略管理会計と呼ばれることもあります。

具体的には、将来行う可能性のある取り組みやサービスの変更などについて、経営者や管理者が決定を下すための情報を用意することが目的です。投資家や債権者など外部に提示する財務会計とは異なり、提供された情報は社内でのみ利用されます。

意思決定会計の必要性

意思決定会計は、企業によって任意で行われるため、明確な基準やルールは設定されていません。しかし、ビジネス環境の複雑化と競争の激化が進む現代では、経営者は正確でタイムリーな会計情報に基づいた意思決定を行う必要があります。

過去から現在までの資金の流れを把握して課題を洗い出すことで、客観的な視点を持つことができるため、適切な経営判断が行えるようになるでしょう。

意思決定会計の種類

意思決定会計には、大きく分けて3つの種類が存在します。ここでは、それぞれの特徴や経営に置ける重要度などについて見ていきましょう。

業務的意思決定

業務的意思決定は、日々の業務で頻繁に発生する意思決定を指します。具体的には、業務で使用する材料の調達方法についてや製品単価など、日常業務の進め方や現場の従業員の管理にまつわる決定を行うのが特徴です。

比較的重要度は低いとされていますが、組織の効率的な運営や利益最大化に向けた意思決定を行うために必要な情報提供が行われます。

管理的意思決定

管理的意思決定は、主に部長や課長といった中間管理職によって行われるものです。業務的意思決定よりも重要度は高いとされていて、日々の業務内容や人員配置などの意思決定が行われます。管理的意思決定は部門ごとに行われることが多く、各部門ごとの会計データが使用される傾向にあります。

戦略的意思決定

戦略的意思決定はもっとも重要度が高く、企業の今後の方針を大きく左右するものです。そのため、経営者や経営幹部などによって決定が行われます。

具体的には、新しい事業領域や海外への進出についてなど、企業の将来に関わる重大な決定が行われるのが特徴です。戦略的意思決定では、前例や参考にできる情報があまりないため、慎重に決定を下すことが求められます。

意思決定会計における差額収益分析とは?

企業の経営方針についての判断を下す際は、複数ある代替案の中から最適なものを選ぶことが求められます。そのためには、「差額収益分析」という手法を用いて、特定の案件を採用した場合と採用しなかった場合の収益や原価の差を明確にすることが必要です。

この差額収益分析に必要な概念として、差額収益(原価)・機会原価・埋没原価の3つがあります。ここでは、具体例を交えつつそれぞれの特徴について解説します。

差額収益・差額原価

差額収益とは、採用した代替案と採用しなかった代替案の収益の差を指します。たとえば、A案とB案のどちらを採用するか検討するとしましょう。

A案を採用したときの収益が100万円、B案を採用したときの収益が80万円になるとした場合、差額収益は20万円となります。一方差額原価は、それぞれの選択肢における原価の違いを示します。A案にかかる費用が20万円、B案にかかる費用が15万円の場合、差額原価は5万円です。

差額収益である20万円から差額原価である5万円を引くことで、得られる利益の差額を求めることができます。この場合、差額利益が15万円となり、A案を採用した方が多くの利益を得られることがわかります。

機会原価

機会原価とは、採用しなかった選択肢の場合に得られる利益のことです。採用されなかった選択肢が複数ある場合、もっとも多く利益を得られるものと考えます。

たとえば、AとBの材料のうち、Bを選んだとしましょう。このとき、Aを選んだ場合に得られた費用が機会原価となります。

埋没原価

埋没原価は、どの案を採用した場合でも変化が生じない費用のことです。具体的には、すでに購入している設備の費用や過去の研究開発にかかった費用などが挙げられます。埋没原価は今後の意思決定に影響しないため、判断材料として含めないことが大切です。

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意思決定会計の手順

ここからは、意思決定会計を行う際の手順について見ていきましょう。

課題の発見・情報収集

意思決定会計の第一歩は、課題の特定と情報収集です。この段階では、組織の現状分析と市場環境の調査が行われます。効果的な意思決定のためには、日ごろから関連する財務データや業界の動向、競合他社の情報など、幅広い情報源からのデータを収集しておくことが大切です。

ビジネスの課題を正確に理解しておくことで、意思決定が必要となった際にすぐに対応できるでしょう。

代替案の作成・比較・決定

情報収集によって抽出されたデータを基に、代替案の作成を行いましょう。代替案を複数用意したら、差額収益分析によって比較を行い、最終的な意思決定を下します。このとき、組織の目標と一致していて、最大の利益をもたらすと判断される選択肢が選ばれます。

結果の分析

最後に、結果の分析を行いましょう。代替案の遂行後一定期間が経過したら、採用した案が適切であったかを分析し、軌道修正が必要かどうかを検討します。

そのためには、代替案を数値化することが大切です。それにより、比較が容易に行え、適切な評価が行いやすくなるでしょう。

意思決定会計の必要性を理解しよう

意思決定会計は、財務データと市場の動向を分析し、組織の目標達成に向けた具体的な行動計画を立てるのに役立ちます。管理会計のひとつであり実施は必須ではありませんが、ビジネスを取り巻く環境の変化が激しいなかで、効果的な経営戦略を策定するためには不可欠なものといえるでしょう。

また、意思決定の際には代替案の比較を行うため、差額収益分析についても正確に理解しておくことが大切です。差額収益(原価)・機会原価・埋没原価などの概念を理解し、これらを活用しながら意思決定会計を行いましょう。

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