管理会計と制度会計の違いとは?目的や必要性・業務内容について解説

最終更新日時:2024/01/17

管理会計システム

管理会計と制度会計の違い

経理や財務部門で耳にする「管理会計」と「制度会計」。それぞれ目的やルールは異なりますが、どちらも重要な業務のため正しい理解が必要です。本記事では、管理会計と制度会計の目的や必要性、業務内容などを詳しく解説します。

企業会計は管理会計・制度会計に分類される

企業の会計は、主に管理会計と制度会計の2つに分けられます。管理会計は内部的な意思決定をサポートするために行われ、効率的なリソースの配分や予算策定に役立ちます。

一方で、制度会計は社外への報告を目的に行われるのが特徴です。財務諸表や税務申告など、法的要件を満たすために使用されます。これらの会計手法は目的や役割が異なりますが、どちらも企業にとって重要なものです。

管理会計とは?

管理会計は、企業が経営判断を下すために必要な情報を提供するためのものです。英語では「Management accoundting」と呼ばれます。管理会計では、予算計画やコスト管理、業績評価などに焦点を当て、企業の目標達成に貢献するのが特徴です。

とくに経営層や管理者にとって重要なものであり、日々の運営から長期的な戦略策定に至るまで、幅広い意思決定をサポートします。実施については法的な定めはなく、記載方法や決まったフォーマットなどもありません。また、取り入れるかどうかについても企業の任意となっています。

管理会計の目的・必要性

管理会計の主な目的は、企業の運営と発展をサポートするために行われるものです。主に経営者など企業内部の関係者に情報を提供し、今後の意思決定に役立てるために用いられます。

情報の取りまとめや分析については、企業独自のルールで運用されています。法的な義務はないため必ず実施する必要はありませんが、企業が安定的に成長していくためには必要不可欠と言えるでしょう。

管理会計の業務内容

管理会計にはどのような業務があるのでしょうか。ここからは、管理会計の具体的な業務内容を紹介します。

原価管理

原価管理は、商品やサービスの生産にかかるコストを把握し、コスト改善を行うための管理です。材料費や人件費、間接費などさまざまなコストの分析と最適化に役立ちます。

原価管理によって基準となる原価を設定することで、コストを抑える際の対策が立てやすくなり、売値や利益の適正化につながるでしょう。

予実管理

予実管理は、一定期間ごとに予算目標を立て、実績との差異がどの程度あるかを分析する業務です。具体的には、予実管理表を作成して予算と実績の比較を行います。

また、会計システムのデータを紐づけて予実比較が行われることもあります。事前に立てた予算案と実績との乖離を把握することで、成績が芳しくない部署の改善などに役立てられるでしょう。

資金繰り管理

資金繰り管理は、企業で日々行われる入出金の流れを把握し、キャッシュフローを適切に管理する業務です。損益計算書上では利益が計上されていても、売掛金や未収金などすぐに現金化できない債権が多い場合、支払時に必要な現金が確保できないということがあります。

財務状況や運転資金の現状を把握することで、資金不足や過剰な借入に陥るリスクを減らし、安定した運営を維持することが可能です。

経営分析

経営分析は、企業の業績と経営状態を詳細に評価する業務です。分析の方法は企業によって異なりますが、主に以下7つの分析が行われます。

  • 収益性
  • 安全性
  • 生産性
  • 効率性
  • 成長性
  • 損益分岐点
  • 債務償還能力

なかでも、収益性と安全性はとくに重要です。これらについて分析することで、自社がどの程度収益を上げているのか、現在の資本はどのくらいなのかを把握でき、自社の強みと弱みを理解できるでしょう。

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制度会計とは?

制度会計は、会計基準や法令に基づいて行われるものです。主に貸借対照表や損益計算書といった財務諸表の作成や税務申告、監査対応などを行います。制度会計で使用する書類は外部の関係者に示すものであるため、会計基準や法律に沿った信頼性の高い情報を提供することが求められます。

制度会計の目的・必要性

制度会計の主な目的は、投資家や税務署といった外部の利害関係者に示す決算書を作成するための会計制度です。具体的には、企業の経済的な健全性と業績を報告するために財務諸表の作成を行います。

また、制度会計で作成した財務諸表は、外部の利害関係者がその企業を評価する際にも使用されます。そのため、一定のルールに基づいた客観性のある財務諸表を作成することが重要です。

制度会計は「企業会計原則」を基準に行われる

企業会計原則とは、企業会計の実務を行う上で守らなければならない基準のことです。主に「一般原則」「損益計算書原則」「貸借対照表原則」3つで構成されています。ここからは、そのなかでも最も重要といえる一般原則の7つを紹介します。

原則詳細
真実性の原則不正や不当な利益操作のない決算書を提供しなければならない。
正規の簿記の原則正確な会計帳簿を作成しなければならない。
資本取引・損益取引区分の原則資本取引と損益取引を明確にし、資本剰余金と利益剰余金を区別しなければならない。
明瞭性の原則利害関係者に対して必要な会計事実を明瞭に表示しなければならない。
継続性の原則一度採用した会計方針は毎期継続して適用しなければならない。
保守主義の原則保守的な会計処理によって健全性を保たなければならない。
単一性の原則どのような目的であっても、1つの会計帳簿を基に財務諸表を作成し、事実を変えてはならない。

制度会計に関する法律

制度会計は法律に基づき作成されます。ここからは、会社法・金融商品取引法・法人税法について紹介します。

会社法

会社法は、企業の設立や運営、財務報告などに関する手続きについて定めている法律です。もともとは「商法」「株式会社の監査等に関する商法の特例法」「有限会社法」などに分散されていましたが、2006年に統合・再編成されました。

この法律はとくに制度会計において重要で、企業がどのように財務諸表を作成し、監査を受け、株主や公衆に情報を提供するかを定めるものです。具体的には、株主および債権者の保護を目的に、配当可能利益の算出法について規定されています。

金融商品取引法

金融商品取引法は、投資家の保護を目的に投資判断に必要な経営成績や財政状態の開示方法について規定する法律です。株式を公開している株式会社をはじめ、一定額以上の有価証券を発行・募集する大会社を対象としています。

会社法で定められている決算書類のほかに「有価証券報告書」または「有価証券届出書」を作成して内閣総理大臣に提出しなければなりません。

法人税法

法人税法は、企業に課される税金の計算と支払いに関するルールを定めた法律です。法人に対して公平な課税を行うことを目的に、企業の収益に基づく税金の算定方法や、控除可能な経費、納税義務の詳細を規定しています。

制度会計では、会社法で作成した計算書類によって確定した決算に基づき税法特有の調整を行います。

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管理会計と制度会計の違いを理解しよう

管理会計と制度会計は、それぞれ異なる目的を持っています。管理会計は主に内部管理のために用いられ、予算策定やコスト管理、業績評価などに役立てられます。

一方制度会計は、財務諸表の作成や税務申告によって外部の利害関係者に財政状態や経営成績を報告するためのものです。会計業務に携わる上では、これらの違いをしっかりと理解しておくことが大切です。本記事を参考に、会計手法についてさらに深く理解していきましょう。

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