【図で解説】CVP分析(損益分岐点分析)とは?目的や計算方法・活用法をわかりやすく解説!

最終更新日時:2024/02/08

管理会計システム

CVP分析とは

企業の安定や成長の判断材料となる「CVP分析(損益分岐点分析)」。先行き不透明な現代、企業が生き残るためには、CVP分析に基づく、より現実的な経営戦略の策定が必要です。本記事では、CVP分析(損益分岐点分析)とは何か、CVP分析(損益分岐点分析)の目的や計算方法、活用法を併せて解説します。

この記事の要約

・CVP分析とは、Cost(コスト)、Volume(販売量)、Profit(利益)の3つの数値の関係性や割合を分析する手法のこと
・CVP分析を実施することによって、限界利益、固定費、変動費を把握する目的がある

CVP分析(損益分岐点分析)とは?

CVPは、Cost(コスト)、Volume(販売量)、Profit(利益)の頭文字を取ったものであり、CVP分析とはこれら3つの数値の関係性や割合を分析する手法です。

CVP分析の結果は、損益のどちらが大きい仕事なのか、利益が出やすい事業計画か、企業がどのような経営状態なのかといった判断の材料として活用されています。

損益分岐点とは?

損益分岐点は管理会計上の概念であり、損失と利益がプラスマイナスゼロになるポイントを指します。

言い換えれば損失と利益の境目でもあり、損益分岐点を上回った分が利益となり、反対に下回っていれば、その分の損失が出ているという意味です。

また、損益分岐点における売上高を「損益分岐点売上高」と呼び、以下の計算式で算出できます。

損益分岐点売上高=固定費÷(1-変動費÷売上高)

CVP分析の目的

CVP分析を行う目的は、限界利益と、固定費・変動費を把握することにあります。ここではそれぞれについて解説します。

限界利益を把握するため

CVP分析を行うことで、限界利益を把握できます。

限界利益とは、現在企業や事業においてどのくらいの利益が出ているかを表す数値であり、以下の計算式で算出します。

限界利益=売上高-変動費

限界利益には利益と固定費が含まれます。損益分岐点は限界利益と固定費が等しくなる、つまり限界利益が固定費で相殺されてしまう地点です。反対に、限界利益から固定費を差し引いた結果が黒字であれば、その分析対象はその分の利益が出ていると判断できます。

このように、限界利益を基に損益分岐点を算出すれば、分析対象の現状や売上目標の目安も明らかになるのです。

限界利益とは?計算方法や粗利との違い、損益分岐点・貢献利益との関係性をわかりやすく解説

固定費・変動費を把握するため

CVP分析は、固定費・変動費の把握にも使われます。

分析の結果、赤字であることが判明すれば、販売戦略などを検討するとともに、固定費・変動費のコストダウンを図り、増益を目指す必要があるとわかります。

CVP分析は、企業や事業の現状を把握するだけでなく、抑えるべき固定費・変動費を把握することにも役立つのです。

管理会計における変動費・固定費とは?区分する目的や削減方法を紹介

CVP分析(損益分岐点分析)の計算方法

ここでは、CVP分析において、経営判断に役立つ3つの指標の計算方法を紹介します。

損益分岐点を計算する

損益分岐点(損益分岐点売上高)は以下の計算式でも算出できます。

損益分岐点売上高=変動費(=変動費率✕売上高)+固定費

この式を用いて、損益分岐点売上高を算出する流れを見ていきましょう。今回は単価20,000円の商品、10,000円の変動費、300万円の固定費と設定します。

まず変動費率ですが、これは売上高に占める変動費の割合を示し、変動費を売上で割ることで算出できます。

変動費率=10,000円÷20,000円=0.5=50%

この変動費率に売上高を掛けることで、実際にかかった変動費がわかります。

次に、実際の損益分岐点売上高を算出するために、売上高をXとおきます。損益分岐点では「売上高」と「変動費+固定費」が等しくなるため、以下の式が成り立ちます。

・X(売上高)=0.5(変動比率)×X(売上高)+3,000,000(固定費)
・X=0.5X+3,000,000
・X-0.5X=3,000,000
・0.5X=3,000,000
・X=6,000,000

このように、損益分岐点売上高が600万円であることがわかりました。損益分岐点利益高600万円時点での販売数量をYとした場合には、

・20,000(単価)×Y(販売数量)=6,000,000(損益分岐点利益高)
・20,000Y=6,000,000
・Y=300

上記となるため、300個の商品を売ると損益分岐点に達することも計算できます。

損益分岐点比率を計算する

損益分岐点比率とは、実際の売上高に対する損益分岐点売上高の割合を表す数値で、以下の式で算出できます。

損益分岐点比率=損益分岐点売上高÷実際の売上高×100

実際の売上高に対して損益分岐点売上が低ければ低いほど、損益分岐点比率も低くなる性質があり、以下が大まかな目安となります。

損益分岐点比率企業の状態
70%未満優良企業
70〜80%未満問題のない企業
80〜90%未満要注意企業
90〜100%未満危険な企業
100%以上赤字企業

これを踏まえ、前項で求めた損益分岐点売上高を基に、20,000円の製品が500個売れた場合の売上高、ならびに損益分岐点比率を算出してみましょう。

売上高=20,000円✕500個=10,000,000円

損益分岐点比率=600万円÷1,000万円×100=60%

このように、損益分岐点比率が70%未満であるため、優良企業であると判定できます。業種や業態などによって基準は異なりますが、損益分岐点比率が概ね80%を下回っていれば赤字耐性が高いといわれています。

安全余裕率を計算する

安全余裕率とは、実際の売上高と損益分岐点の差を表す指標であり、以下の式で算出できます。

安全余裕率={(実際の売上高-損益分岐点売上高)÷実際の売上高}×100

また、安全余裕率と先ほどの損益分岐点比率の2つを足すと100%になる性質があるため、損益分岐点比率がわかっている場合には、下記の式でも算出できます。

安全余裕率=100-損益分岐点比率

数値が低いほど危険水準、高いほど安全であることを意味しており、以下が大まかな目安となります。

安全余裕率企業の経営状態
0%未満赤字状態であり、早急に改善が必要
0〜10%未満赤字の危険性があり、改善が必要
10〜20%未満平均水準
20〜40%未満安全圏
40%以上理想的であり多くの利益を得ている

前項で算出した損益分岐点比率を当てはめると、以下のようになります。

安全余裕率=100-60=40%

この場合は40%のため、余裕のある経営状態であるといえます。表にある通り、この数字が高いほど経営に余裕があり、利益を確保できていることを意味します。

CVP分析(損益分岐点分析)の活用法

ここでは、CVP分析を活用できる3つのシーンを紹介します。

事業リスクを把握する

CVP分析は、事業のリスクを把握するのに役立ちます。損益分岐点売上高は、低ければ低いほど事業の安全性が高いことを意味するためです。

事業ごとにCVP分析を行えば、リスクの高い事業と低い事業を見分けられます。分析結果を基に、「リスクの高い事業からは撤退する」「リスクの低い事業にさらなる投資を行う」などの経営判断ができるでしょう。

ただし、リスクが高い事業だからといって、必ずしもデメリットばかりとは限らない点には注意が必要です。なぜなら、このような領域は参入障壁が高く、逆にチャンスがあるとも理解できるためです。

経営リスクとは?種類やリスク対策に向けた管理体制構築のポイント

投資計画変更による影響を把握する

CVP分析は、投資計画を変更した場合、業績にどのような影響があるかを把握することにも役立ちます。たとえば、投資計画を上方修正すると変動費率が増加することになり、損益分岐点売上高も連動して増加します。損益分岐点売上高を求める計算式は、下記のように細分化できます。

損益分岐点売上高(=損益分岐点販売量×損益分岐点販売単価)=変動費(=変動費率✕売上高)+固定費

CVP分析をうまく活用すると、販売数量をどのくらい増やせばよいか、または販売価格をどのくらい値上げすれば費用を回収できるかがわかるでしょう。

利益計画達成に必要な売上高を把握する

CVP分析を活用することで、利益計画達成に必要な売上高も把握できます。損益分岐点がわかれば、「利益目標を達成するにはいくつ売ればよいのか」「いくらで売ればよいのか」も算出できるためです。具体的には、以下のように式を組み替えることで算出できます。

目標利益=目標とする売上高(=販売量×販売単価)-(変動費(=変動費比率×売上高)+固定費)

上記の式における変動費・固定費に、現在の数値または計画上の数値を入れれば、達成すべき売上高を導き出せます。

CVP分析(損益分岐点分析)を取り入れ利益計画を達成させよう

限界利益・固定費・変動費を把握するために用いられるCVP分析。経営判断に役立つ損益分岐点・損益分岐点比率・安全余裕率の算出にも活用されています。

計算式を組み替えることで、事業のリスクや投資計画変更にともなう影響、目標達成に必要な売上高なども算出できます。CVP分析を積極的に活用して、計画の修正・達成を実現させましょう。

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