外国人社員に年末調整は必要?必要書類や注意点について解説
外国人労働者が増えている現代。外国人社員を採用したけど、年末調整はどうすればよいのか悩んでいる人も多いのではないでしょうか。本記事では、外国人社員に年末調整は必要なのか、年末調整を行う際の必要書類や注意点について解説します。
目次
年末調整とは?
年末調整とは、1年間に収めた所得税の過不足を調整するための手続きを指します。会社員の場合、各月の給与から所得税が天引きされますが、この時点での所得税は概算で算出されたものであり、正しい税額ではありません。そのため、1年間の収入から控除額などを引いた所得額が確定した時点で再計算する必要があるのです。
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年末調整の対象者となる外国人社員
年末調整の対象者には、外国人社員も含まれます。年末調整が必要となる条件は、以下の通りです。
- 日本国内に居住していること
- 1年以上の勤務が見込まれること
- その年の給与が一定額以上であること
- 所得税が源泉徴収されていること
これらの条件を満たす外国人社員であれば、年末調整の対象となり、適切な税額を確定するための手続きが必要です。
外国人社員の納税区分
外国人社員の年末調整が必要かどうかは「居住者」「非永住者」「非居住者」の3つの区分によって決まります。それぞれの区分にどのような違いがあるのか、詳しく見ていきましょう。
居住者
居住者とは、日本国内に住所がある人や1年以上居住している人のことを指します。外国人社員であっても、居住者と認定される場合、他の社員と同様に年末調整が必要です。また、国内で支払われた所得だけでなく、国外での所得に対しても課税されます。
非永住者
非永住者とは、日本国籍がなく、過去10年間において日本に住所や居所を持っている期間の合計が5年以下の人のことです。非永住者の場合、日本国内で得た所得のほかに、日本国内に送金された国外での所得も課税対象となります。また、5年が経過した翌日からは「非永住者以外の居住者」となり、居住者と同様に国内外すべての所得に対して課税されます。
非居住者
非居住者とは、日本国内に住所がなく、1年以上の滞在予定もない外国人を指します。非居住者は、日本国内で得た収入に対してのみ課税対象となり、給与の支払い時に20.42%の税率で源泉徴収します。非居住者の場合税率が一定であり、給与を支払うたびに税額が確定するため、年末調整は必要ありません。
年末調整における外国人社員の必要書類
ここでは、外国人社員の年末調整に必要な書類について解説します。
扶養控除等(異動)申告書
扶養控除等(異動)申告書とは、扶養控除や配偶者控除を受けるために必要な書類のことです。従業員は、扶養家族の有無や配偶者の所得などを申告書に記入して提出します。年末調整の際には、この書類を基に控除額が再計算され、最終的な税額が決定されます。
基礎控除申告書
基礎控除申告書は、所得税の基礎控除を受けるために提出する書類です。基礎控除とは、すべての納税者が受けられる所得控除で、年収2,400万円以下であれば一律48万円の控除が適用されます。
それ以上の所得額では、2,400~2,450万円以下で32万円、2,450~2,500万円以下で16万円の控除が適用となります。また、2,500万円以上の所得がある人は、基礎控除を受けることはできません。
保険料控除申告書
保険料控除申告書は、生命保険や地震保険、社会保険などの保険料を支払った場合に、その金額を所得から控除するための書類です。ただし、損害保険や火災保険など、控除の対象外となる保険もあります。
親族関係書類
日本国外に親族がいて扶養控除などを受ける場合、親族関係書類が必要となります。親族関係書類とは、扶養家族や親族の関係を証明するための書類です。具体的には、住民票や戸籍謄本、婚姻証明書などが該当します。
これらの書類が外国で記載されている場合、日本語に翻訳した書類も一緒に提出する必要があります。
送金確認書類
日本国外にいる親族の控除を受ける場合、親族関係書類のほかに送金確認書類の提出も求められます。送金確認書類とは、国外に住む家族へ送金したことを証明するための書類です。
具体的には、銀行の送金明細書や送金依頼書、受取人の口座情報などが必要となります。これらの書類も、親族関係書類と同様、外国語で記載されているものは日本語に翻訳した書類を添付する必要があります。
日本人社員と外国人社員の年末調整の違い
日本人社員と外国人社員の年末調整には、どのような違いがあるのでしょうか。以下で詳しく解説します。
社会保険料などの控除が受けられない場合がある
外国人社員の年末調整を行う場合、社会保険料などの控除が適用されないことがあります。外国人社員が出身国の社会保険制度を利用していたり、外国企業の生命保険や地震保険などを契約しているケースでは、基本的に日本での所得税控除を受けることはできないので注意しましょう。
租税条約による特例が適用される場合がある
外国人社員の出身国と日本の間で租税条約が締結されている場合、所得税などが免除される特例が適用されることがあります。租税条約とは、二重課税の回避や脱税の防止などを目的に、日本と相手国の間で結ばれる条約のことです。
一定の条件を満たす場合には、日本国内での所得税が免除されるケースもあります。
必要書類が増える場合がある
国外に居住している家族の扶養控除を受ける場合、日本国内での手続きに加えて、親族関係書類や送金確認書類などの追加書類が必要です。これらの書類は、扶養関係や送金の実態を証明するために求められます。
正確に書類を準備しなければ、控除を受けられない可能性があるため注意が必要です。
外国人社員の年末調整をする際の注意点
外国人社員の年末調整をする際には、いくつかの注意点があります。適切に対応しないと税務調査で修正を求められる場合もあるため、しっかりと把握しておきましょう。
外国人社員の居住形態を正しく把握する
外国人社員の年末調整を行う際は、居住形態を正しく把握することが大切です。居住者・非居住者といった区分を正確に把握していないと、必要な人の年末調整が行われなかったり、本来年末調整が不用な人の分まで行ってしまったりといったことがあります。
居住形態を正確に把握することで、適切な手続きを行い、過不足のない税務処理が可能となります。
給与課税漏れがないか確認する
給与課税漏れが発生しやすいケースとして、外国の本社や他の海外拠点から支払われた給与が挙げられます。これらの収入が日本での所得として申告されない場合、課税漏れが生じる可能性があるため注意が必要です。
また、社宅を無償で貸与されている場合や、光熱費・医療費などの費用を会社が負担している場合も給与所得として課税されます。年末調整の際には、給与や賞与といった収入以外の経済的利益についても課税漏れがないよう確認しましょう。
控除申請がないか確認する
生命保険や地震保険など、控除対象となる保険に加入していないかを確認することも重要なポイントです。特に、家を借りる際には家財保険に加入しなければならないことが多く、その保険に地震保険が付帯している場合は控除の対象となります。
該当する保険に加入しているにも関わらず控除申請を行わないと、本来受けられる税額控除が適用されません。外国人の場合、控除という仕組みすら知らないことも考えられるため、必ず確認するようにしてください。
国外居住親族に係る扶養控除制度について正しく理解してもらう
多くの外国人社員は、国外居住親族の扶養控除制度についてよく理解していないことがあります。なお、2020年度の税制改正によって、国外居住親族の扶養控除の適用対象となる親族の要件の見直しが行われました。そのため、留学生や障がい者、送金関係書類において38万円以上の送金などが確認できる30歳以上70歳未満の国外居住者に該当しない場合は、扶養控除を受けられなくなっています。
誤って申告したり虚偽の申告だと判断された場合、源泉徴収義務者である会社が罰金を払わなくてはならないため注意が必要です。
外国人社員の年末調整を正しく行おう
外国人社員の年末調整を正しく行うことは、企業にとっても社員にとっても重要です。基本的には日本人の年末調整と同様ですが、社員の状況によっては追加の書類が必要となる場合もあるため、適切に対応することが求められます。また、しっかりと控除などの制度について説明してあげることも大切です。外国人社員の特有の状況を理解し、正確な手続きを心がけましょう。
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