年末調整の還付金とは?支払日はいつ?受け取り方法や平均額・対象者について
源泉徴収税が給与から天引きされている人は、年末調整で「還付金」を受け取れる可能性があります。では、どのような人が還付金受け取りの対象なのでしょうか。本記事では、年末調整の還付金とは何か、対象者や還付金の支払日、受け取り方法などについて詳しく解説します。
目次
年末調整の還付金とは?
年末調整の還付金とは、給与所得者がその年に支払った所得税額と、実際にその人が納めるべき税額との差額が発生した場合に、過剰に支払われた税金(過納額)が戻ってくる仕組みです。
給与所得者は、原則的に給与や賞与から「源泉徴収」という形で所得税が天引きされて支給されています。しかし、この金額はあくまで暫定であり、所得控除などにより本来納めるべき正確な所得税を算出した際に差額が生じる場合があるのです。
ただし、還付金を受け取れるのは年末調整で差額が発生した場合に限られるため、年末調整を行えば誰でも還付金を受け取れるわけではありません。
[出典:国税庁「No.2675 年末調整の過不足額の精算」]
年末調整の還付金の支払日・受け取り時期
年末調整の還付金の支払日や受け取り時期は企業によって若干異なりますが、一般的に12月〜1月に支払われるケースが多いようです。
年末調整は12月に行われるケースがほとんどですが、企業の給与システムや処理のタイミングに左右されるため、多少のズレが生じます。正確な受け取り時期を知りたい場合は、会社の人事部門や給与担当者に確認してみると良いでしょう。
年末調整の還付金の受け取り方法
年末調整の還付金の受け取り方法も企業によって異なります。
給与などと一緒に銀行振込で支払われるのが一般的ですが、手渡しで支払われるケースもあるようです。受け取り方法についても明確な決まりはないため、正確な情報を知りたい場合は、勤務先の人事部門や給与担当者に確認しましょう。
なお、廃業によって勤務先が給与支払者ではなくなった場合など、税務署から直接還付金を受け取るケースもあります。その際は「源泉所得税及び復興特別所得税の年末調整過納額還付請求書兼残存過納額明細書」を作成し、必要書類を添付して所轄の税務署長に提出する必要があります。
▷年末調整をしないとどうなる?デメリットや対処法・簡単に済ませる方法を解説
年末調整の還付金の平均額
年末調整の還付金の平均額は、個々の給与や控除状況によって大きく異なりますが、一般的には10,000〜50,000円前後とされています。あくまでこれは平均であり、数百円という人もいれば、逆に追加で納税しなければならない場合もあるでしょう。
具体的な還付金額は、年間に支払った所得税の額とその年の所得・社会保険料控除・生命保険料控除・扶養控除などを基に算出されます。扶養家族が増えた場合や生命保険に加入している場合は控除額が大きくなり、還付金が増える傾向にあります。
年末調整の還付金の対象者
年末調整で何かしらの控除の対象になる場合は、還付金を受け取れる可能性が高まります。ここでは、特に代表的な7つのパターンを紹介します。
保険に加入している人
保険に加入している人は、「生命保険料控除」や「地震保険料控除」などの税制優遇措置を受けられるため、還付金を受け取れる可能性があります。
生命保険や地震保険に加入している場合は、支払った保険料に応じて最大で数万円程度が所得から控除されます。
扶養する家族がいる人
扶養する家族がいる人は「扶養控除」を受けられるため、還付金を受け取れる可能性があります。
扶養家族とは、16歳以上の子ども(その年の12月31日現在)や高齢の親などを指し、基本的に納税者と生計を共にしている人が対象です。控除額は扶養親族の年齢や同居の有無などによって異なり、38~63万円となっています。扶養控除は1人あたりの控除額が大きいため、還付金が発生する可能性が高まります。
社会保険料を個人で支払った人
個人で社会保険料を支払っている人は「社会保険料控除」を受けられるため、年末調整の還付金の対象者です。
通常社会保険料は給与から天引きされますが、子供や配偶者の分として国民健康保険や国民年金保険料を支払っている場合は、全額が所得から控除されます。支払った社会保険料に応じて税金が控除されるため、年末調整で忘れずに申告しましょう。
個人型確定拠出年金に加入している人
個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入している人は「小規模企業共済等掛金控除」の対象となります。
個人型確定拠出年金(iDeCo)とは、加入者自身が運用する年金制度で、掛け金を積み立て、株式や債券などで運用し、60歳以降に受け取る仕組みです。
iDeCoの掛け金は全額所得控除の対象となるため、所得税が軽減され還付金を受け取れる可能性があります。
配偶者と離婚または死別した人
配偶者と離婚または死別した場合は「寡婦控除」や「ひとり親控除」の対象になります。
寡婦控除は、夫との離婚後に婚姻をしておらず、扶養親族がいて所得が500万円以下の場合に受けられる制度です。寡婦控除が認められると、27万円の控除が適用されます。なお、死別の場合は扶養親族の有無は問われません。
また、ひとり親に該当する場合は「ひとり親控除」として35万円の控除を受けることが可能です。いずれの場合も控除額が大きく、還付金が発生する可能性が高まります。
▷年末調整におけるひとり親控除について|寡婦控除との違いや適用できる条件・書き方を解説
自分または家族が障害を持っている人
自分または家族が障害を持っている場合は、障害者控除の対象となります。
障害者控除は、本人やその扶養家族に障がいがある場合に適用され、所得税が減額される制度です。一般の障害者控除では27万円、特別障害者控除では40万円の控除が受けられますが、障がいの度合いや条件により控除額は変わります。
住宅ローンを支払っている人
住宅ローンを支払っている人は「住宅借入金等特別控除」を受けられる可能性があります。
住宅ローン控除は、ローンの残高に応じて所得税が軽減されるもので、特に住宅を新築した場合や購入した初年度に控除額が大きくなります。ただし、初年度は確定申告を行う必要があり、2年目以降からが年末調整の対象です。
他の控除とは異なる税額控除のため、該当する場合は還付金が高額になる可能性があります。
▷【2024年最新】年末調整ソフトおすすめ12選|選び方や無料製品を紹介
年末調整の還付金をもらえない人とは?
ここからは、年末調整の還付金をもらえない3つのパターンについて見ていきましょう。
12月31日までに退職した人
12月31日までに退職してしまった人は、年末調整の対象外となります。年末調整はその年の1月1日から12月31日まで在籍している従業員を対象に行われるためです。
その後すぐに転職した場合は、転職先の会社が年末調整を行ってくれる可能性もありますが、タイミングにもよるため確認が必要です。会社での年末調整が難しい場合は、個人で確定申告をすることで通常通り還付金を受け取れる可能性があります。
確定申告をしなければならない人
確定申告をする必要がある人は、年末調整で還付金を受け取ることができません。以下に該当する人は、自ら確定申告を行う必要があります。
- 2か所以上から給与を受け取っている人
- 年収2,000万円を超える人
- 災害減免法による徴収猶予・還付を受けている人
- 12月31日までに退職し、再就職していない人
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書を提出していない人
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書を提出していない人はそもそも控除を受けられないため、還付金は受け取れません。
提出し忘れてしまった場合や、会社の締切を過ぎてしまった場合などは、個人で確定申告をすることで通常通り還付金を受け取れる可能性があります。
年末調整における還付金の計算方法
年末調整における還付金の計算方法は以下の通りです。
- 計算に必要な書類を準備する(給与明細や保険料の金額がわかる書類など)
- 1年間の給与・賞与を合計する
- 1年間の所得を計算する
- 対象になる所得控除を計算する
- 算出した所得から所得控除を差し引き、課税所得を計算する
- 課税所得に所得税率を掛ける
- 算出した金額から住宅ローン控除を差し引く
- 年調年税額から源泉徴収税額を差し引く
手順が多く一見大変そうに見えますが、1の書類が準備できており、該当する所得控除がわかっていれば、計算自体はそこまで難しいものではありません。
計算する時期によっては、1年間の給与や賞与がわからないケースもありますが、見込み金額で補うことで概算を算出することは可能です。
年末調整で還付金を受け取る際の注意点
年末調整で還付金を受け取る際に、知っておくべき注意点を3つ解説します。
控除証明書を保管しておく
控除証明書は現住所に郵送で届けられるため、無くさないようしっかりと保管しておく必要があります。年末調整の際に、金額を確認するために提出を求められる場合が多いためです。
具体的には以下のようなものが該当します。
- 生命保険料控除証明書
- 地震保険料控除証明書
- 社会保険料控除証明書
- 小規模企業共済等掛金控除証明書
これらの書類を提出できないと、控除が適用されず還付金を受け取れない可能性があるため十分注意しましょう。
年末調整の申請書類を正しく記入する
年末調整の申請書類は正しく記入することが非常に重要です。記入ミスや漏れがあると、控除が適用されず還付金が受け取れない場合があります。
また、控除を過大に申告した場合は、追徴課税や罰金の対象となる可能性があるため、あわせて注意が必要です。
▷年末調整で間違えたらどうなる?訂正方法や期限・訂正が必要なケース
追徴が発生する場合があることを理解しておく
年末調整では、場合によっては還付金が受け取れないだけでなく、逆に追徴が発生することもあります。
還付金は、支払った税金が本来支払うべき金額よりも多かった場合に差額が返還される精度です。逆に、年間で源泉徴収された税額が本来払うべき金額よりも少なかった場合は、その差額を納税しなければならないのです。
その年の途中で収入が大幅に増えた場合や、控除額が予想よりも少なかった場合などは、追徴が発生する可能性があることを理解しておく必要があります。
還付金の対象者は忘れずに申請しよう
年末調整で還付金を受け取るためには、正しい手続きと書類の準備が不可欠です。
年末調整の前に届く、控除の申請に必要な証明書はしっかり保管しておき、年末調整の申請書類は正確に記入する必要があります。還付金を受け取れる権利があっても、正しい手順で申告しなければ還付金を受け取れないため、忘れないように申請しましょう。
年末調整ソフトの記事をもっと読む
-
ご相談・ご質問は下記ボタンのフォームからお問い合わせください。
お問い合わせはこちら