【BCP対策】非常用電源の確保の重要性とは?蓄電池導入のメリットも解説

2022/10/13 2022/10/13

BCP対策

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自然災害や事故などの被害の影響を最小限にとどめ、中核となる事業を継続するための取り組みがBCP(事業継続計画)です。しかし、このBCPを発動する前提として、最低限のインフラ確保は欠かせません。本記事では、BCP対策における非常用電源確保の重要性について蓄電池導入のメリットと併せて解説します。

BCP対策で非常用電源を確保することの重要性

BCP対策とは、自然災害や火災などの事故、テロ攻撃といった緊急時に被害を最小限に抑えたうえで、早期復旧を目指すための取り組みです。

そのため、具体的には、従業員(人的資源)、電気・水道などのインフラを含む施設・設備、会社が保有する情報・データ、資金などへの被害を防ぐための方法や手段を考えることになるでしょう。

例えば、各所に甚大な被害を及ぼした東日本大震災では、東京電力管轄内の電気が復旧するまでにおよそ8日程度の日数を要しました。このような大規模な災害では、電力の復旧に時間がかかってしまうため、それらを想定した対策が求められます。

従業員の安否確認や施設・設備の被害状況を迅速に把握するうえでも、通信手段と非常用電源の確保が極めて重要となるのです。

[出典:内閣府防災情報「東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会第1回会合 被害に関するデータ等」]

非常用電源の種類

では、非常用電源にはどのような種類と特徴があるのでしょうか。

災害時のインフラ維持に役立つ非常用電源は、大きく蓄電池と発電機の2種類に分けられますが、それぞれにメリット・デメリットがあります。設置を検討される際は、使用目的と照らし合わせつつ選ぶようにしましょう。

蓄電池

非常用電源として使える蓄電池は、主に「リチウムイオン」「鉛」「ニッケル水素」、そして、「NAS」の4種類があります。以下にそれぞれの特徴をまとめましたのでみていきましょう。

ちなみに、蓄電池の法定耐用年数は、「6年」とされていますが、これは国税庁が定めた減価償却のための期間ですので、6年を過ぎたからといって使えなくなるわけではありません。実際の耐用年数は、種類にもよりますが主に15〜20年程度と言われています。

リチウムイオン電池

小型かつ高い電圧を供給できる蓄電として、近年、主流となっている蓄電池です。家庭用としても幅広く使用されている蓄電池であり、鉛やニッケルよりも高い電圧を蓄えることができます。

小型サイズであるため設置スペースを広く取れないオフィスにおすすめですが、設置場所の安全性の確保に十分注意する必要があるでしょう。

鉛蓄電池

産業用蓄電池としてもっとも多く利用されているのが鉛蓄電池です。大型サイズであるため広い設置スペースが必要ではありますが、ほかの蓄電池と比べて比較的安価でありコストパフォーマンスが高い蓄電池と言えます。

ただし、電解液として硫酸が使われているため、破損した場合、周囲に危険を及ぼすリスクがあること、また寒冷地では、硫酸の凍結による破損の恐れがあります。

ニッケル電池

ニッケル電池は、使用できる気温の範囲が広く、幅広いシーンで利用できるのが特徴です。

しかし、放っておくと内蔵電力が減ってしまったり、残量が残った電池を充電することで使用できる電圧が下がってしまう「メモリー効果」などの問題があり、それらの管理が必要となります。

NAS電池

NAS電池は、日本の蓄電池メーカーが東京電力と共同で開発した開発蓄電池です。

上記の蓄電池の中でも、特に大きいメガワット級の電力を貯蔵でき、充電放電時のエネルギー効率の高さが特徴と言えるでしょう。ただし、動作温度が300度と高く、断熱処理されているとはいえ設置する際には、工夫が必要となります。

発電機

発電機を非常用電源として、使用する方法もあります。ここでは「ディーゼル」「ガソリン」「LPガス」の3種類の発電機について、それぞれの特徴をみていきましょう。

ディーゼル

軽油を燃料に発電するディーゼルエンジン発電機は、豊富な種類から選べることや燃料の安さ、発電効率の高さなどがメリットです。

ただし、稼働時の騒音や煙などの問題から、主に室内での使用には不向きであること。また、燃料の調達が困難となる状況下では、使用が制限される可能性があることなどがデメリットです。

ガソリン

ガソリン発電機も、ディーゼルエンジン発電機同様に種類が多く、出力や大きさなどが用途に合わせて選ぶことができます。また、連続運転時間が長く、パワーもあるため、非常用電力として十分機能すると言えるでしょう。

ただし、ガソリンは危険物となるため、燃料はできれば保管しておかない方が安全です。その点を考慮しつつ、非常用として運用できるのかを検討する必要があります。

LPガス

カセットガスなどのLPガスを燃料とするLPガス発電機は、小型で持ち運びやすく燃料を備蓄しておきやすいのが特徴です。使用するカセットガスはスーパーやホームセンターなどで手軽に調達できるのもメリットでしょう。

ただし、カセットガス1本で約2時間の発電が目安となるため、コストがかかること、また長時間使用には向かないといったデメリットもあります。

BCP対策で蓄電池や発電機を導入するメリット

ここで改めて、蓄電池と発電機それぞれのメリット・デメリットをおさらいしましょう。

蓄電池を導入するメリット

蓄電池はあらかじめ貯蔵しておいた電力を使用するため、燃料を使用する発電機より比較的コストパフォーマンスが高く、緊急時に燃料を別途準備することなく、即座に稼働させることができます。ただし、当然ながら完全に放電した後の再充電には電力が必要となる点に注意が必要です。

発電機を導入するメリット

発電機は燃料さえあれば発電し続けられるため、長期間の停電にも対応できるところがメリットです。その反面、自然災害などで燃料調達ができない環境では、当然使用できなくなってしまうことも想定しておきましょう。

また、蓄電池を長期間の災害を想定した非常用電源とする場合には、大容量である必要があるため、初期導入費用はどうしても高額になりがちですが、発電機であれば、初期費用を抑えることも可能です。

非常用電源は何を優先して使うべき?

次に、確保した非常用電源はBCP対策として何を優先して使うべきかをご説明します。

照明

緊急時の避難経路を事前に確認し、スムーズな避難ができるよう明かりを確保しましょう。非常灯が必要な箇所だけでなく、避難に必要な時間と想定される電力もある程度把握しておきます。そのため、万が一に備えて消費電力が抑えられるLED照明を採用しておくこともBCP対策の一つです。

空調機器

空調機器は消費電力が大きいため、非常用電源で長時間の使用を続けるのは困難ですが、真夏に災害が発生した場合には、空調の停止により、熱中症などの二次災害が生じてしまう可能性もあるため、優先度の高い電気機器と言えます。

また、サーバールームのある企業は、室内の温度や湿度が適切でない場合、サーバーが停止してしまうこともあるでしょう。サーバーが停止してしまうと、企業HPにおける災害時対応の発表といった顧客への重要かつ緊急な情報発信ができなくなってしまうため、非常用電源の確保を含めた対策が求められます。

エレベーター

災害時のエレベータ使用については、稼働していてもできる限り使用しないのが一般的です。

しかし、災害発生時に自力で避難が可能な方ばかりとは限りません。皆が安全に避難できるよう、非常用エレベーターの確保は必要でしょう。電源を確保するだけでなく、必要に応じて、それらを操作するための研修を行っておくことも大切です。

通信機器全般

社員の安否確認をするための機器の電源や情報収集手段として使用する機器の電源も最低限優先すべき電気機器と言えます。

事前に必ず初動対応として必要となる通信機器を確認しておきましょう。

BCP対策用の発電機器の選び方

小規模なオフィスの必要最低限の備えであれば、必ずしも大容量の産業用蓄電池などを設置する必要はありません。もちろんどの程度の電力使用量が想定されるのかにもよりますが、家庭用のコンパクトな蓄電池を利用したり、ポータブルな発電機でも十分な場合もあるでしょう。

ただし、運用の面では、オフィス内での非常用電源であれば、軽油やガソリンを使用する発電機は、燃料保管のリスクが高いことから、あまり現実的ではありません。LPガスタイプの発電機をおすすめいたします。

また、蓄電池に関しては、容量や種類がさまざまなため、まずは緊急事態発生時に、自社でどの程度の電力量が必要なのかを算出した上で、種類やサイズを選ぶ必要があります。

非常用電源の導入方法

BCP対策における非常用電源として蓄電池を導入される際は、まず専門業者へ問い合わせてみるのが一番です。

具体的には、以下のような流れで進められるのが一般的ですが、業者の選定は、時間に余裕を持ち、できれば複数業者の提案と価格を比較した上で選ぶようにしてください。

  1. 専門業者の選定および問い合わせ
  2. 使用目的・使用(設置)環境・予算などの打ち合わせ
  3. 現地調査
  4. 専門業者による提案と見積もり
  5. 業者選定および発注
  6. 施工

非常用電源の確保は「72時間」を目安にBCP対策を

非常用電源の確保は、BCPを発動した際の初動対応として、重要な役割を担うものです。また、大規模災害時の重要な目安として人命救助にかかわる「72時間」の基準があります。

これは、一般的に人間が飲まず食わずで生き延びられる限界が72時間であることなどを根拠にした時間ですが、非常用電源の確保についても、この72時間を一つの指標とすることができます。

まずは、72時間の電源確保を目的として、非常用電源の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

[出典:内閣府「大規模災害時における地方公共団体の業務継続の手引き」]

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